家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

50 / 61
第50話 顔合わせ

雌獅子の素顔を見て、沢田綱吉は困惑していた。

ただただ目の前に居る人物を見ている事しかできなかったのだ。なぜならその人物は自分がまだ赤ん坊だった頃に行方不明となり、正直死んでしまっているとすら思っていたのだから。

さらに言えばその人は敵陣で、憎しみと悲しみに溢れる眼で自分を見ていた。

素顔を、眼を見てこの人が誰なのか超直感が告げる。

 

「…姉ちゃん?」

 

「久しぶりね、綱吉。けれど貴方にとっては初対面と一緒だから、はじめましてが正解かしら?」

 

逆立ち艶のある茶髪、凛とした決意を秘めた瞳、眉間にしわを寄せながら拳を握るその姿は。

 

「まるで、ツナが2人いるみたいだ…。」

 

誰が呟いたかなど分からない。その場に居る誰もが思っていた事なのだから。

それ程までに2人の姿は酷似していた。違いをあえて挙げるのであれば、優奈の後ろのおくれ毛が肩まで垂れている事と、体型が女性特有の丸みをおびている事だけだろう。

 

隠れて見えない範囲も含めるのならば、明確な違いがある。

体中のいたる所に傷が有るか無いか。それだけのことだ。優奈は現在ヴァリアーの制服に身を包み、肌が出ている場所など顔しかない。顔だけが傷もなく『キレイなモノ』だ。

 

 

雌獅子、いや優奈は綱吉の傍へと近付く。優奈の雰囲気があまりにも近寄りがたく、声をかける事すら躊躇わせる。自分の意志をしっかりと持たなければ、優奈に全てを飲みこまれてしまう。

 

それほどまでに優奈は凄まじかった。

 

 

死ぬ気がとかれつつある綱吉は優奈を見ている事しかできない。逃げる事も、戦う事も何も思い浮かばない。混乱の極みにいた。

 

なんで姉ちゃんがここに居るの?どうやってオレはこの人を姉ちゃんだって認識したんだろう。でも間違いなくこの人は姉ちゃんだ。なんでヴァリアーにいるのなんで今まで帰ってこなかったんだよ。違う!そうじゃなくてオレは謝らなきゃ姉ちゃんに謝らなきゃいけない。けどでもどうやって?姉ちゃんは敵でオレの仲間を傷つけてそれでも姉ちゃんはオレの姉ちゃんで。でも雌獅子さんはランボを助けてくれた。雌獅子さんが姉ちゃんで姉ちゃんは敵で皆を守るためにオレは戦って。姉ちゃんはザンザスの味方だしこれ以上ほかの皆に手出しなんてさせたくない。でもオレはオレが雌獅子さんと戦いたくなくてそれはつまり姉ちゃんと戦いたくないって事で。でももしかしたら姉ちゃんは皆に攻撃してくるかもしれないけど…。

 

優奈は、綱吉の目の前で立ち止まった。

しゃがんで座り込んでいる綱吉に視線を合わせた。優奈からは鈴を転がすような彼女本来の声が響いた。

 

「ねぇ綱吉、今この場でボンゴレの継承権を放棄して。

そうすれば私たちは姉弟でこれ以上戦わなくて良くなるよ。それに綱吉はマフィアにならなくて良いし、また日常に戻れるよ。」

 

「え?」

 

「綱吉はこれからもずっと、マフィアになんてなりたくないんでしょう。大丈夫よ、綱吉が継承権を放棄しても私が継ぐから。綱吉はザンザスには継がせたくなかったのよね?私ならどうかしら。これからは爆音も銃声も関係の無い日々を送れるわよ。」

 

「何を言ってるの、姉ちゃん。 突然過ぎて分からないよ…。」

 

「ごめんね、綱吉。そうだよね、綱吉にとっては何もかもが突然過ぎたよね。

 

それじゃあ一から説明していこっか。数年前までボンゴレには4人のボス候補が居ました。最有力候補はザンザスだったけれど、彼は養子だったから無理でした。他の3人は事故だったり暗殺だったりで死んじゃったの。

そこで慌てて他の候補を探した時、一般人ではあっても血を継いでいるという理由で綱吉が候補に挙がったよね。その時既に私は行方不明だったし。綱吉は一般人だったし性格的にも暴力や陰謀の渦巻く世界なんて嫌でしょ。

 

私ね、行方不明中にいろいろあってザンザスに拾われていたの。けれど彼の邪魔にはなりたく無くて名乗りでなかったわ。

今回のリング戦はザンザスへの恩返しのつもりで参加してたの。

でもザンザスはリングに拒絶されてしまったから、私が継ごうと思うんだ。ザンザスとは将来的に婚姻を結ぶ事で事前に合意がとれてる。

 

マフィアのボスになりたくない綱吉と、なりたい私。

 

これで理解できたかな?だから綱吉、継承権を放棄してよ。」

 

「ダメ、だよ。」

 

「ん?何がダメなの綱吉。」

 

ぼんやりと、ただ優奈の声に耳を傾けているだけだった綱吉が反応する。先ほどまで視点が定まっていなかった眼が強く優奈を見た!

 

「姉ちゃん嘘は言ってないかもしれないけど、本当の事も言ってないじゃないか!」

 

「何を…。私がボンゴレを継ぎたいと思っているのは本当の事…よ。」

 

「オレ正直言えば、姉ちゃんの事なんてほとんど何も知らない!

でも!姉ちゃんが本当の事なんて言って無いことぐらいわかるよ!!」

 

「そんな事ない。」

 

「じゃあ何でそんなんに悲しそうなの!?笑ってるのに泣いてるの!?姉ちゃんだって本当は継ぎたくなんてないんだろ!

 

姉ちゃんみんなと戦ってる時も、オレと戦ってる時もずっと悲しそうだった!!マスクで顔が隠れてたってわかるよ!!」

 

「そ…れ以上、何も言わない…で。」

 

ピシリ、ピシリと何かが崩れ落ちていく。

 

「それに…父さんと母さんだって、姉ちゃんの事ずっと、ずっと待ってるんだよ。」

 

「ああああぁあああああぁぁああああああ!!!」

 

「何をごちゃごちゃ喚いてやがるっ!!オレの計画を邪魔すんじゃねぇええ!!!」

 

ザンザスが横たわりながら綱吉へと照準を合わせた。

 

「死ね!沢田綱吉!!」

 

ドンッ!

 

                        …パリーン

風で起こった砂埃の中で、ザンザスの弾は確かに当たった。

 

「ぐっ。」

 

頭から地面へ落ちていく。

 

「あ……。」

 

ドサリ

 

「ツナ大丈夫か!?」

 

「10代目!」

 

「おい、マジかよ。」

 

「これはどうなったかな。」

 

視界はまだ晴れないが、獄寺たちは無理やり綱吉の元へ行く。ヴァリアーはあの状態からの射撃に驚くも、その場から動かず見ている。ヴァリアーの面々は知っているのだ、ザンザスが外さない事を。砂埃が少しずつ晴れる。

 

そこに倒れていたのは、優奈だった。

 

 

 

「な!?」

 

「う゛ぉおおお゛い!どうして雌獅子が倒れてやがる!!」

 

「簡単だ。雌獅子が庇ったんだぞ。」

 

「リボーン、そりゃどういう事だ?」

 

言いきるリボーンにシャマルが尋ねる。

 

「ずっと、見て来たからな。雌獅子だってオレの生徒だぞ、これくらい分かって当然だ。それより、お前にははやいとこ傷を看てもらわないとな。」

 

モニターからでは傷の具合は確認する事が出来ない。弾が貫通していなければ最悪、保健室で取り出す事になる。

審判のチェルベッロが殺され、キーマンである優奈も倒れた。このリング戦はいったいどのようになってしまうのだろうかとリボーンが案ずる中、雌獅子が立ちあがった。

 

 

 

 

「姉ちゃん!!姉ちゃん何で!?」

 

「沢田自身に怪我は無いのか?」

 

「オレは、姉ちゃんが押したから、体勢が崩れて…それでっ!」

 

「落ち着けよツナ。傷口押さえる物ないか。」

 

「雨の人、私のハンカチ。」

 

弾丸は、雌獅子の脇腹を貫通していた。医療知識に乏しい綱吉たちでは、傷口を何かで塞ぐくらいしか思いつかない。それでもどうにかしようとクロームのハンカチや服の切れ端で出血を抑え込む。

 

綱吉たち以上に焦ったのはヴァリアーである。ザンザスの弾は綱吉を狙って撃ったにも関わらず、実際には仲間であるはずの雌獅子が敵を庇って負傷したのだから。

 

「ごめん姉ちゃん。ごめんオレのせいだ。」

 

自責の念に潰されそうな綱吉。その時だった。

 

「大…丈夫、だよ。 待っててね綱吉。」

 

「姉…ちゃん!?」

 

優奈が起き上がったのである。呆気にとられた綱吉たちを置いて優奈はヴァリアーの、ザンザスの元へ歩き出した。

 

「……ってた。」

 

「どうしました10代目?」

 

「姉ちゃんが、怒ってた。」

 

 

 

 

「みんな、どいてくれるかな?」

 

「うぇっ!!?」

 

「あ…うん、どうぞ。」

 

「あら、お邪魔だった…かしら!?」

 

優奈の顔には、どこからどう見ても怒りが浮かんでいた。それは、一般人がちょっと人相の悪い人間に、反射的に道を譲ってしまいたくなるような心境をヴァリアーに抱かせるには充分だった。

傷などまるで無い様にスタスタと歩き、横たわっているザンザスの前に到着した途端。

 

 

バッシーンッ!!

 

 

雌獅子から放たれた強烈なビンタは、一切のためらいも無くザンザスの頬へ着弾した。ザンザスを衝撃だけで僅かな時間地面から浮かせ、転がる。砂まみれになりながらも仰向けになった彼の頬には、もともとある傷痕が目立たなくなるほどに見事な赤いモミジが刻まれた。

ヴァリアー、黒曜、綱吉サイド関係無く周囲は状況についていけていない。

 

ただ1人、ザンザスを除いては。

 

 

 

 

 





う~む、大丈夫なんだろうかこの文。
意外と早く投稿できたけど、不安で仕方が無い。
あ、優奈のビンタの着弾は例えだよ。
まあ、それほどヤヴァイものだと認識してくれればOK。


※お知らせ
次回、優奈が久しぶりにいっぱい話すZE!
これまでのシリアスを『一時的に』シリアル(原作のコメディに近い感じ)に
変えるので、激変注意!
やっとほのぼのが(一時的に)書けるワーイ!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。