家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題) 作:寺桜
友人め、寺桜に嘘付きやがったな!?
くっそう、前回あれだけ盛大に警告しといたのにこれじゃあ赤っ恥だぜ。
つまり何て言うか、今回の話は一行目に凝縮されてます…。
抵抗できない状態で強烈な一撃をくらったザンザスは、ギロリと優奈に視線を向けた。
「ごほっごほっ…、何しやがる。」
「何しやがる、はこっちのセリフだよ! ザンザス、明らかな契約違反。」
「……、オレは謝らねーぞ。」
「謝る、謝らないの問題なんかじゃないって理解してるのね。契約違反だって事は認めるわけ。それならそれで良いわ、…綱吉は死ななかったんだもの。
私の怪我なんて今更すぎて何も言うつもりも無いし。」
「それならとっとと放棄させてきやがれ。」
「いいえ、もうさせないわ!
だってザンザスは、私にとって、最重要事項の契約違反を行ったのだもの!!だから私も契約を破らせてもらうわっ。」
「カスかお前は!ごほっ。」
「契約内容を怒りで忘れる人ほどカスじゃないよ。本当は全て破棄しようか考えたけど、ザンザスに恩があるからね、一部だけ履行してあげる。」
優奈とザンザスの意味不明な会話にどうしたら良いかなど分からない。契約とはいったい何なのか、優奈の雰囲気がさっきとはうって変わり別人のようにさえ思える。分からない事ばかりなのだ。
ギャーギャーとしばらく話しあった?後に、優奈から全員に集まる様に指示が出た。訳も分からないままに優奈の前に集う綱吉たち。一応リング戦の最中という事もあり、ヴァリアーとある程度の距離はあるが充分に優奈の声は届く。
「さて、そろそろ爆弾の制限時間も近付いてきているのでサクサク終わらせるね。まずは爆弾を解除させてもらおうかな。」
優奈はザンザスの指から抜き取ったリングでヴァリアーの爆弾を素早く解除すると、綱吉たちの爆弾も解除してそのまま大空のリングを綱吉に握らせた。
「次にこれを見てくれる?」
そう言って優奈の懐から出てきたのは、9代目の直筆の審判代理権限書であった。それは優奈の小型端末からモニターにも映し出されており、リボーンたちも内容を理解する。
内容を簡単に説明するのならば『チェルベッロが何らかの理由により審判としての役割が不可能になり、リング戦の場を収める者がいなくなった場合に限り「雌獅子」が審判代行として公正な審判を執り行う事を許す』というものであった。
頭の回転が速い者は、書状の力に気付き表情を変える。
これを利用すればどんな無茶でも押し通せると気がついた綱吉サイドの獄寺が、速攻で優奈に文句を言い実力行使をしようとするが綱吉に止められる。
「内容を理解してもらえたところで、今回のリング戦の結果を発表させてもらう。」
優奈が結果を告げようとしたが、ザンザスによって遮られる。
「おい、こんなものがあったなんて聞いてねぇぞ雌獅子。」
「当たり前でしょ、ザンザス。私はあなたの味方だけど、これを執行する時はあくまで公正な審判。利用させるわけがない。
そんな事より結果を発表させてもらうわ。
リング争奪戦、ザンザスの失格により大空戦勝者は沢田綱吉。」
結果はあまりにもあっさりと告げられた。格式ばった口上があるものだと思い込んでいたので、綱吉は優奈の言葉を飲み込むのにやや時間がかかった。
「オ、オレやったんだ…! あっ!?でもそうなるとマフィアに!!?」
勝利した事を喜ぶ綱吉。
しかし、まだ雌獅子は口を閉じたわけでは無い。
「そう、勝者は沢田綱吉ではあるものの、本人による意志が不十分。そのため4年間を準備期間として与え、4年後…つまり沢田綱吉が18歳になるまでに正式な決意をしてもらう。
沢田綱吉がボンゴレ10代目を継がないもしくは継げなくなった場合に限り沢田優奈、つまり私が10代目に就任する。
現時点をもって沢田綱吉と守護者6名を暫定的にボンゴレ次期後継者とする!!
準備期間である4年間にボンゴレに所属する人間から!
沢田綱吉及びその守護者への危害や暗殺を禁止し!
それを犯した者へは掟にのっとり制裁を下す!!!
なお、雌獅子の正体を外部へ伝える事は禁止とする!」
雌獅子の言葉は、聞いた者全てへと叩きこまれた。
それは、幼子にとっての母の言葉。 騎士にとっての王の宣言。
反抗することさえ思い浮かばせることは無い。
誰もが、優奈の雌獅子としての言葉に頷く。バジルもシャマルも、千種も犬も、ベルもスクアーロも、山本も獄寺も。名前の挙がらなかった者たちも皆、それが最善として受け入れる。
ボンゴレでは無いディーノは黙認する他なく、ザンザスは苦虫を噛み殺したような表情で承諾した。
リボーンは、生徒たちの行く末を見守る。
綱吉は…。
綱吉は、頷きたくなかった。
初めは他のみんなと同様に、命じられた事に疑問も無く頷きそうになった。
リング戦に勝ったとはいえ、マフィアのボスになどなるつもりは無い。だがこのままだとリボーンに無理やり継がさせられそうで、嫌だった。だから4年でも猶予期間が与えられたのが嬉しかったし、それまでにはどうにかなるだろうと楽観視した。
さらに優奈がボンゴレ内だけとはいえ、暗殺を禁止してくれて安堵している。優奈ならば例え暗殺計画が建てられても、絶対に阻止してくれると訳のわからない確信がある。
頷かない理由なんて無かったのだ、最後の一言さえなければ。
優奈の言う『外部』とはいったい何を指すのだろうか。ディーノさんやランチアさんの事だろうか。確かに彼らはボンゴレに所属していないし、シャマルだって獄寺くんの師ではあってもボンゴレでは無い。けれど彼らはこの場で姉ちゃんの正体を知ったから、口止めする意味なんて無いのだ。
だったら、外部とは……!?
「姉…ちゃん。」
綱吉は、分かってしまった。
ボンゴレにとっての部外者では無い、マフィアにとっての部外者なのだと。
「姉ちゃん。」
先ほどよりしっかりと、優奈に話しかける。ここでこのまま頷いてはいけないのだ。周りの人間は皆、何故綱吉が頷かないのか疑問に思っている。頷く事が当たり前なのにと。
「姉ちゃん!!」
「その外部って…」
「綱吉。」
「……っ、………ぅ。」
眼を見て、名前を呼ばれた。
たった、それだけの事なのに。もう綱吉の喉から、声が言葉として出る事は無かった。
ダメだ。
ダメなのに。
綱吉は、ゆっくりと頷いた。
頷いてしまった。
こうして、リング争奪戦は幕を下ろす。
ヴァリアーはキャバッローネと猟犬の監視の元、イタリアへと帰国。バジルも家光に今回の事を報告するため早々に飛行機に乗り込む。
犬と千種は優奈との再会に喜びの涙を流し、クロームは優奈に妹と認められた。ランチアは黒曜メンバーと行動を共にすることはせず、ボンゴレの外で優奈個人の部下になる事にしたと言う。
獄寺たちは勝利に喜びながらも雲雀の「明日遅刻した奴は咬み殺す」と言う脅しに、それぞれの家に帰り眠る事にする。
優奈は会話や部下への指示が終わるまで、シャマルの治療を断固として拒否した。だが、いい加減にしろと怒ったリボーンの物理的説得に優奈は仕方が無く折れた。シャマルに顔を知られたことにより治療中に仮面をつけなくて良くなったのが楽だと優奈は笑った。
治療が終了した途端にまた仮面は彼女を覆い隠してしまったが。
バジルとは入れ違いに家光は日本へ到着するも、全てが終わった後だった。リボーンに説明を求める場には『家光の知る雌獅子』が居た。元通りになった雌獅子に笑いかけ、久方ぶりに会話をした。彼は悲しくも自身で気付く事も無ければ、彼女の口から教えてもらう事も出来なかった。
真実を告げるのは、入れ違いになった部下の報告からだった。
家光への嘘では無いが一部隠された状況報告を終え、家へと帰宅したリボーンはパジャマに着替えて綱吉の部屋に入る。ドアを開けた音も、足音も一切聞こえないのは一流のヒットマンである彼らしい。
きっと綱吉は疲れ切って寝ているだろうと考えていたが、どうやらそうでは無かったようだ。枕に顔を埋め、時折小さな呟きが聞こえる。
「何で、頷いちゃった…んだよ。せっかく、やっと…見つかったのに。
どうしてだよ…、こんなんだからオレはダメツナなんだ。…ごめんなさい。」
ごめんとは、いったい何に対しての謝罪なのだろうか。
綱吉はリボーンによって確かに成長していた。1年前の彼ならば優奈に継承権を放棄して欲しいと言われた瞬間に、喜び勇んで放棄していた事だろう。けれど綱吉は成長した。氷の仮面をつけていた優奈を見事突破する事が出来た。
だが、氷の仮面の下から覗いたのは人の上に立つに相応しい王の姿だった。
同じ王の素質を持つ者でも、格が違ったのだ。優奈はたった17年の間に幾つもの修羅場を潜り抜け、死ぬ気で常に命を燃やし続けてきた。一方の綱吉は最近になり裏の世界を垣間見たにすぎず、命の燃やし方も覚えたばかりですぐに消えてしまう。
野生で成長した獣と、動物園で飼育された動物ほどに格の違いがある。
だからこそ、優奈が本来の彼女を取り戻した時点でこの結果は必然だった。
「…くっそ。」
「強くなれ、ツナ。今度こそ優奈を救えるように。」
ヴァリアー偏で綱吉は優奈を完全には救えませんでした。
今回の優奈の心理的な何か
雌獅子の仮面 = 優奈を覆い隠すもの ← 綱吉視点
氷の仮面 = 黙する優奈の虚像 ← リボーン視点
鎖 = 雌獅子の心を縛る物 ← ザンザス視点
氷の棺 = ?????? ← ????
愚痴 ほのぼのを2・3話くらい書きたいよ~。