家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題) 作:寺桜
次回、未来編に突入!
彼は文を綴る。もうすぐだ、もうすぐ来るであろう愚かな自分へ向けて。
彼にとっては消し去ってしまいたいほど憎いのだ。当時は知るよしも無かったこの感情。そんな自分が来るのかと思うと、怒りがふつふつと湧いてくる。
みしりっ
彼の手元で軋む音がした。何だろうと手元を見れば、歪んで壊れてしまった万年筆。隙間からインクが零れて彼の手を汚した。
これを含めて何本になるのだろう、これを含めて何枚になるのだろう。
ゴミはゴミ箱へ。
万年筆も紙も、決して安物ではない。それでも惜しみなく何本無駄にしても、何枚消費しても、書ききらねばいけない。少しでも自分の意識がこの手紙に向くようにしなければならないのだ。これから書く内容を嘘偽りだと侮らないように。自分の事は自分がよく知っている。だから侮らせてはならない。全てを記さなければならない。
甘いだけの理想
無意識の逃走
無自覚の責任転嫁
どれだけ自分が罪深い、業に塗れた人間なのか教えてやらないと。スケープゴートにしてしまった彼女は師と同じ場所に行ってしまった。
残り時間は少ない、早く手紙を書ききらねばならない。この手紙に自身の全てを託そう。協力者達に伝えるべきことはもうない。後は彼らがうまくやってくれる。
そうすれば、きっと彼女は帰ってきてくれるのだ。
一番最後に見た彼女の笑顔が彼の脳裏に浮かぶ。
彼は一呼吸すると、もう一度手紙を書いた。先程まで一文字を書くことですら血反吐を吐く思いだったにも拘らず、今度はすいすいと筆が進んだ。それでも…書けたと思い読み返すと、誤字を見つけて書き直しになってしまった。そんなところばかりが昔の彼と変わらない部分なのだろう。
さて、手紙は書けた。けれど眠る前にもう一つ忘れてはいけない、大切な事がある。
今の自分では何故『これ』を用意したのか、どうして使うことになるのか、予想すらつかない。彼女ならばきっと解かってしまったに違いない。けれど彼は彼女にはなれない。
これを使う事が無いのなら、それでいい。だが、必ず使うだろうと彼の超直感が告げている。だからこれを完成させるのが彼の役目だ。これを完成させるのはとても疲れるから、完成とともに彼は眠ってしまうだろう。
『これ』を完成させようと、覚悟を籠める。
あぁ、疲れたな…
でもやっと完成だ。
落ちてくる目蓋。ぼんやりとした意識の中で協力者がこれを確かに受け取ってくれた。証拠は隠滅してくれると嬉しいが、彼はそこまで気が回るだろうか。
彼は久方ぶりの笑みのまま眠りに落ちた。
青年は退屈していた、欠伸を噛みしめ微睡むほどに。お人形遊びにはもう飽きたし、このお人形を欲しがっている彼に下げ渡すのも良いかもしれない。そうすればこの死にそうなほどの退屈をしばしの間忘れることができる可能性がある。
青年にとって一人遊びは苦痛でしかない。
遊び相手はかくれんぼが終わった途端に消えてしまった。
もう一人青年の遊び相手になりそうな奴も居たが、噂では壊れてしまったという。本当に役立たずだ。どうせ壊れるのならば、青年の遊び相手になってから壊れれば良かったのに。それはただの八つ当たりだが構うものか。子どものように口を尖らせ、じたばたする。それで退屈が紛らわせれる訳ではないが、そうせずにはいられなかった。
あれもこれもそれも、全部ぜーんぶヤツが悪いのだ。
あの気弱で挙動不審で……張りぼての覚悟しかなかったヤツのせいなのだ。そういうことにしてたくさんの濡れ衣を着せる。
そんな事を考えてもすぐに退屈は彼にのしかかる。
この退屈をどうにかしようと本当にお人形を下げ渡そうかと考えたとき、そう言えばと彼は思い出した。ずっと育ててきた『あれ』がようやく駒になりそうなんだった、と。あれの存在を思い出し、どんどんいろんなアイディアが浮かぶ。
『あれ』はきっと手負いの猛獣ほど良く効くに違いない。
青年の口元がニヤリと弧を描く。
そうだ、そうしよう!そうと決まればさっそく準備に取り掛からねばと青年は退屈を忘れた。青年は鼻歌を歌いながら、本当の駒たちに命ずる。そうそう、せっかっくだから一部のネズミにもあれを見せてあげよう。きっと絶叫するほど驚いてくれる。
オッドアイの術師は青年と彼を殺そうと、今日も今日とて機会を窺がった。
皆さん、良いお年を!