家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題) 作:寺桜
テンションは上がっている、やる気も十分だ!
……なのに、筆が進まないorz
第59話
ゴン!
勢いよく雌獅子は何かに頭をぶつけた。驚いて周囲の確認をすると、薄暗く狭い空間に閉じ込められている。そして、朽ちた花の匂いが充満していた。
「綱吉!」
優奈の言葉は誰にも届かない。先程胸に抱え込んだはずの綱吉にさえ。綱吉が共に居ないことで軽いパニックに陥る。しばらくしてどうにか自身を無理やり落ち着かせた。
どうしてこうなったのかを、状況を整理するために思い出してみる。
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・・
・・・
綱吉たちのイタリア旅行も表面状は無事に終わり、裏で蠢いていた者達を裁ききって数日経った日の事だ。
ゾワッ!!!
全身に鳥肌がたち、怖気が駆け巡る!
雌獅子は仕事を最低限割り振り、すぐさま日本へと向かった。日本へ向かう最中にもソレは収まらず、雌獅子を急かすばかりである。
早く早く、一分一秒でも早く綱吉の元へ。
何故かなど知らない。しかし優奈に流れるボンゴレの血が訴えているのだ。綱吉に危険が迫っているのだと。この危険から綱吉を遠ざけなければならない。今の綱吉では到底敵わないほどの危機が迫っているのだ。
入国して直ぐに用意させていた車を走らせる。並盛の近くの街で渋滞にはまり車を乗り捨て、跳びだす。全速力で超直感の告げられるままに迷いなく走り、綱吉を見つけた。
綱吉の後ろからは弾が今にも彼を捕まえそうだ。
「綱吉っ!!」
「え?姉ちゃ…」
とっさに綱吉を胸に抱え込んだ。それと同時に背中に衝撃を受ける。だが、それは予想に反して身体へは害を及ぼさなかった。煙たいと思ったのはほんの一瞬の出来事で、次の瞬間には頭をぶつけていた。
そして冒頭へと繋がるのである。
・・・
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綱吉を庇うまでの数瞬の景色を思い出す。
弾は通常の銃弾より速度は遅く、弾の大きさは何倍も大きかった。あれはバズーカの弾。綱吉の周囲からは殺意を感じ無かった。
それに見覚えがある…あれは、10年バズーカに間違いない。どうして10年バズーカに危機感を抱いたのかは分からないが、ここに綱吉がいない以上当たらなかったのだろう。
優奈は綱吉を庇う事には成功した。だが代わりに雌獅子は窒息死へのカウントダウンがはじまっている。先程から雌獅子はどうにかこの空間から脱出しようともがいているが、蓋は微動だにしない。
雌獅子は、ここが何処なのかはもう予想がついていた。朽ちた花の匂いと人一人が入るだけの狭い空間。
ここは、棺桶の中だ
かなりの力を込めて蓋を叩き付けても空かないことから、随分と深くに埋葬されてしまった様だ。それに花だった物が長い年月の経過を教えてくれる。数か月程度では、こんなふうになりはしない。体勢を変えようと体を動かすと、所々で小物らしき物の感触がする。きっと10年後の雌獅子の思い出の品なのかもしれない。残念ながら今はそれを確かめる術はない。
雌獅子は『自分の死』に対して恐ろしいほど冷静に受け入れていた。そしてそれを当然だと考えている。初めて人を殺したあの瞬間から、殺される覚悟はできていた。あれからも数え切れないほど、殺した。自分にとって見知らぬ相手だったり、憎い敵だったり、殺したくなかった友は、誰かの大切な人なのだから。
もし、骸が殺されたとしよう。優奈は必ず復讐する。
もし、ザンザスが殺されたとしよう。雌獅子は必ず報復する。
もし、……もし綱吉が殺されたとしよう。 きっと相手を殺して『私』は壊れる。
優奈にとっての、雌獅子にとっての彼らが、誰かにとっての彼らなのだから当然なのだ。10年後の未来では死んでしまっていたかとため息をつく。10年以内に死んでしまっているのはしょうがないが、現在の雌獅子は生きている。生きている限り死ぬ気はない。
本当は彼女が全力を出せば、地上まで蓋を吹き飛ばすことなど容易い。しかしそれをしないのは、この墓に詰め込まれた気持ちまで吹き飛ばすことになってしまうからだ。なのでそれは最終手段にとって置く。希望としては知り合いに掘り起こしてもらいたいところだ。
どれほど時間が経過しただろう。体感時間では3時間半だが、こちらに来たときは綱吉の身を案じてそれどころではなかったので、もう少し経過しているかもしれない。息が苦しくなってきた。それでもまだ耐えれる、この中の想いを壊したくない。
意識して呼吸を浅くする。それでも頭がくらりくらりと揺れる。
仕方がないと覚悟を決めて、腕に拳に力を込めたその時だった。
土を掘り返す音がする。
誰かは分からないが、雌獅子が棺桶から発する音を聞きつけくれたのだ。けれど確証が無いのか、掘る音の感覚は速くはない。あとどのぐらいでこの棺桶に達するかは分からないが、それまでに意識を失っている可能性は高い。それまでにどうにか掘り返してもらわなければと、力強く蓋を叩く。
「そこに居るのね。私はここに居るわ!」
雌獅子の声に応えるように、掘り返す音が速まる。お互いに音を返して、お互いを励ます。掘り返す音が初めに比べて大きくなり、そして雌獅子に近くなった。逆に雌獅子が蓋を叩いて返す音はどんどん小さくなっていった。
意識が遠のく。
まだ見ぬ誰かが話しかけてくれている様だが、もう言葉を発する力すらない。
せめて『彼』が私を見つけてくれるまで、頑張りたかった。
雌獅子の意識はとうとう落ちていった。その数秒後、爆音と共に蓋が開くが彼女は眼を開かない。
「やれやれ、スコップじゃ間に合わなくなるところだったよ。」
彼はきらきらとした笑みを浮かべ、大切な宝物に触れるかのように優奈を抱き起した。そして本人に意識がないことを良い事に、ずるりと彼女のマスクを剥いだのである。彼女は彼の記憶にあるよりもずっと幼かった。
「ふふふっ、あははっ!! 今日はなんていい日なんだ!
ずっと欲しかった彼女が僕の目の前に現れるなんて。
彼女の部下でも友でも弟でも夫でもない! この、僕の前に現れたんだ!!
傑作だよ、最高だっ!早く起きてくれないかなぁ、その瞳に僕を映してよ。今までスペアで我慢してきたけど、それも今日でお終いさ。」
彼は抱き起した優奈を、ゆっくりと木陰へ寝かせる。首回りを寛げて息をしやすくした。優奈が寝ている間は暇だったので、勝手に墓を漁る。写真だったり、子供からの絵であったり、別れの手紙であったり、手作りのお守りであったりいろいろな物がでてきた。
けれどそのどれもこれも、今の彼女には必要ない物ばかりだ。それらの中で唯一使えそうな物が出てきた。雌獅子のボックス兵器だ。この幼い優奈はもしかしたらボックス兵器の事を知らないかもしれない。それどころか炎の扱い方も怪しい。
「な~んにも知らなかったら僕が教えてあげるよ、優奈ちゃん。」
優しく優奈の髪をなでる。好奇心いっぱいで今にも胸がはち切れそうだ。
本来の予定なんてもはやどうでもよくなった。壊れかけだと噂のスペアを彼直々に壊しに行く予定だったのだが、スペアなんてもう知らない。優奈がいるのだから、優奈と遊ぶのだ。何をして遊ぶかはまだ決めていないが、それでも楽しくて仕方がない。できるだけ長い間一緒に遊びたい。
早く起きてくれないだろうか、起きてくれないのなら…。
彼の手が優奈の首に迫る。
「ねぇ、まだかい?」
「ぅ、うぅん…。」
優奈の目蓋がゆっくりとあがる。その瞳に彼を映す。
今にも殺されかけていたことなど、知るよしも無い優奈は彼を見てふんわりと笑った。
「見つけてくれて、ありがとう。」
「…っ! どういたしまして。」
彼は危うく、優奈の笑みに引き込まれそうになった。それをグッとこらえて彼女に応える。敵意の無い彼女の笑みがこれほどとはと歓心もした。
「自己紹介をさせてよ、僕は白蘭って言うんだ。 仲良くしてね優奈ちゃん。」
月一更新が遅れてごめんなさい。