家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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第8話

私も、ここまでなのかな?優奈の意識は朦朧としていた。布を当てただけの粗末な止血、新たにできる傷とそれに伴う出血。致命傷を負う事無く襲撃者達を撃退する事は成功したが、血が流れ過ぎていた。不幸中の幸いと言っていいのか、何を思ったか襲撃者の一人が火炎放射器を使ってきた。避けきることができず、腕を焼いてしまったが、ついでにエストラーネオの焼印も消してくれた。

 

一番酷い腹の傷を押さえながら、ゆっくりと歩く。万が一犬と千種が戻って来た時のために、ハンカチに血でメッセージを残しておいた。無駄に終わったのならそれでいい。

 

犬や千種は無事に骸と接触できただろうか、今お腹をすかせてないと良い、犬は直ぐに拾い食いをするから、前に一度腹を下した事があった。千種は手間がかかる事はめんどいと言って諦めてしまう。骸は潜伏先で無理をしてないと良いが、どうせ優奈がいない事を良い事に絶対に無理をしている。

あぁ、家族達には幸せになってもらいたい。今までが辛い事ばかりだったのだ。3人がただ笑って過ごす事くらい許してくれ、神様。

 

歩きながらふと気付く。そう言えばデータにあったこの地点は、ボンゴレのシマに近いという事に。優奈は思った、自分の体力では決められた合流地点まで行けないだろう。ならばこの血、この災いの根源であるボンゴレを一目見てから死んでやろう、死体は迷惑料として片づけてもらえばいいと。

 

今にも倒れそうになりながら、ようやく本部が見えて来た。だが、体に力が入らない。体が倒れていくのが分かるが、どうにもならない。

 

どさっ

 

その時、倒れた優奈の近くに誰かがやってきた。

 

「なんだ、このカス。ボンゴレの前にゴミを置いて行った奴は誰だ、殺してこい。」

 

自分は不法投棄された粗大ゴミではない。かろうじてだがまだ生きている。死体になったらこの男が処分してくれるのだろうか。

 

「このカス、生きてやがったか。サッサと退け、邪魔だ。」

 

「生憎だけど、もう、動けないの。私の事はどうしてくれても構わないわ、もうすぐ死ぬのだもの。でももし、私を探しに来てくれた家族に手を出すのなら許さない!」

 

顔だけを必死であげ、男を睨みつける。羽根の飾りを頭に付けた男だった。男は驚いた顔をしているが、理由なんて分からない。優奈は目蓋が閉じていく中、目蓋の裏にいたのは床で泣き続ける綱吉で、そんな自分にクスリッと笑った。

それを最後に優奈は動かなくなり、心臓は鼓動を今まさに止めようとしていた。

 

 

 

「っおい、カス!その炎を何処で手に入れた、答えろ!!チッ、死にやがったか。このまま楽に死ねると思うなよ。」

 

 

 

ここで、運命は大きく動いた。

優奈はある世界では間に合わないと分かっていても、合流場所を目指し力尽きていた。

ザンザスはある世界では優奈を邪魔に思い、蹴り飛ばしそのまま本部へと帰宅していた。

何億通りの可能性の中で、初めて優奈はザンザスに拾われたのだった。

 

 

 

 

犬と千種は骸の潜伏先まで走り続けた。潜伏先に着くとどうやって接触しようかと迷っていると、骸のほうから来てくれた。窓から外を見ていたら犬と千種を発見したらしい。よほどのことが無い限り来ない事は分かり切っている、つまり緊急事態だと思い出て来たというのだ。

2人はこれまでの事を急いで説明した。主に喋ったのは犬だが、ところどころ説明不足の部分を千種が補った。

 

「分かりました。僕も現場へ行きましょう。僕の不在は世話役に幻覚を見せておくので問題ないです。連れていきなさい。」

 

3人で優奈がいた地点へ行くと、そこには争った跡と、大量の血が残っていた。襲撃者の姿も優奈の姿も無く、3人で別々の方向を探す事になった。

 

「クンクン、ちょっと待つびょん!骸様、柿ピー、近くから少しだけど優奈姉さんの臭いがする。」

 

「ここに優奈がいたからじゃないですか?」

 

「最初はそう思ったびょん。でも、確かに優奈姉さんの臭いがする。」

 

「犬、それどこから?」

 

「こっちだびょん!」

 

犬の鼻を頼りに臭いのもとを探すと、物陰の木箱の裏に一枚のハンカチが落ちていた。

ハンカチには、優奈から骸を含め家族へのメッセージが残されていた。

 

『  家族の絆は何処まで繋がっている

   私の事は大丈夫、それより自分を大切に。

   また、生きて会いましょ。         』

 

 

骸はハンカチを優しく折りたたみ、大切にポケットに片づけた。

 

「こんなメッセージを残しているのです。死んでたらただじゃおきませんよ、優奈。」

 

「骸様、優奈様はどうなさったのですか。」

 

「オレ達はどうしたら良いびょん。」

 

「どうやら今すぐには会えないようですが、生きていればいずれまた再会できるでしょう。行きますよ犬、千種。」

 

 

 

 

 

日本、並盛町。

 

3歳になった綱吉は、特に大きな怪我や病気に罹ることなくすくすくと育っていた。そんな綱吉の姿を見て、奈々は嬉しいと同時に悲しかった。綱吉は姉の存在も顔も知っているが、すべて写真とビデオでだ。

 

「お母さん!お空に飛行機が飛んでる。」

 

綱吉が空を指さしながら奈々に声をかける。

一瞬、綱吉が優奈に見えた。綱吉が優奈がいなくなったときと同じ歳なのもあるだろうが、何より顔立ちが親の自分よりそっくりだ。身長は優奈の方が高かった気がする。けれど、そのうち綱吉が抜いていくだろう。

 

優奈が誘拐されてから風紀委員と警察、家光もとうとう見つける事が出来なかった。家光は今でも優奈を探してくれているようだが、目覚ましい報告はない。誘拐以来、奈々には緊急連絡先が一つ教えられ、知らされてはいないが護衛も付いている。

 

綱吉にはGPSが常に服のバッチとしてつけられ、お守り袋の中にはイチゴのボタンが入っていた。それは優奈が誘拐された日、服についていたはずのボタンだった。見つけたのは随分後になってからだ。大掃除をしている時に、キッチンの隙間から出て来たのだ。初めは優奈の他の品と一緒に保管しようかと思っていた。だが、その時額縁に入れた優奈の絵が目に入ったのだ。

 

『つなよしまもろゆな』

 

そうだ、あの子はいつも言っていた。おねえちゃんだもん、綱吉守るよと。だからイチゴのボタンは綱吉のお守りになった。優奈が綱吉を守ってくれるように。

 

奈々は思う。あの日、優奈は綱吉を守っていなくなってしまったのではないかと。足跡は綱吉のベビーベットまで着いていた。しかし綱吉はベビーベットから床へ下ろされていただけで何処も怪我をせずに無事だった。

詳しい事なんて分からないから、想像だ。それでも間違いなく、優奈が綱吉を守ったのだと感じていた。

 

あの子は今何処で何をしているのだろう、できればもう一度生きて会いたい。

奈々は行方の知れぬ我が子の無事を願った。

 

 

 

 

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