異星の少女は未来(いま)を生きる   作:矢田悠進

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転校生 その4

 次の日の朝。どっちつかずな曇り空は、まるで雨雲と太陽が睨めっこしているかのようだ。叶恵は折り畳み傘を振り回しながら歩いていた。

「ふんふんふん、心ってばすぐ危ないとこに突っ込んでいくんだから」

「う、ごめんって。でも叶恵が水筒パスしてくれて助かったよ」

「結果的にはね〜。まさかコードが発動するなんてビックリだよ! しばらくはウワサになっちゃうと思うよ〜?」

「やっぱりそうかな。あと、傘は危ないからちゃんと持って」

 叶恵は自分が振り回していた傘をチラッと見て、鞄にしまう。

「無意識に回してた。あは」

「えぇ……」

「ま、昨日の話はこの辺でおしまい! 大事件みたいになっちゃったけど、いつまでも引っ張ってもしょうがないしね〜。心はサンドウィッチ好きー?」

「サンドウィッチ? 美味しいよね」

 相変わらずの会話の急カーブである。

「ワタシの今日の朝ごはん聞いてよ! 六枚切りの食パンを半分に切ってね、そこにスクランブルエッグを挟む。ケチャップかけて。これがめっちゃ美味いんだ〜!」

「それは美味しそうだね。叶恵が作るの?」

「今日はワタシだった。だいたいパンと卵焼くだけだし、ママかワタシ先に起きた方が作ってるんだー。心は?」

「私は……」

 と、心が朝食事情を話そうとした時、

「あっ……!」

 と心でも叶恵でもない少女の声が聞こえる。

 二人が声のした方向に振り向くと、そこにいたのは。

「あ、晴海!!」

「あ、心ちゃんと、それから叶恵さん……おはよう……!」

「晴海の家ここだったんだね!」

 二人の近所にある公園の前、道路を挟んで立つ新築の一軒家。そこが晴海の家だった。

「あー南条さんだ! 心と仲良くなったの? ワタシも晴海って呼んで良い?」

「え、ええと、良いよ……」

「あ、こんなに一気に喋ったらビックリするよね! ごめんねー」

「ううん……平気だよ」

「晴海、今家から出てきたとこ?」

「ううん……ちょっと前からここにいたかな」

「えーなんで? 立ち止まって何してたのー?」

「道を考えてたの」

「「道??」」

「昨日心ちゃんには話したけど、わたしのコード、透視なの。だから、これでトラップの位置を先に確認して、避けて通るんだ」

 晴海は大きく目を開いて、行く先の道路を眺める。

「例えば、ここを真っ直ぐ行って左に曲がるとトラップがあるから、先に左折する方で行けば、そのトラップは避けられるよ……」

 説明と共に晴海は力の一端を見せた。

「すごーい! でもでも、心と一緒に行けば、回避しなくて済むよ!」

「そうだ! これから3人で登校しない?」

「おー! 2人も能力者がいたら楽チンですなー」

「いいの?」

「うん! あ、じゃあ晴海にトラップの場所を教えてもらって、私は効率よく水を飲めば、我慢する時間も短縮できるかも!」

「我慢? なにを我慢するの?」

「……」

「……くふっ」

 心は頬を赤く染め、叶恵は笑いをこらえる。

「?」

「……おしっこ」

「……え」

「むぅ。やっぱりこれ教えるの恥ずかしいなあ!」

 心はズカズカと進んでいく。

「あ、だからそっちはトラップが……」

「いえ、わかってます。見せてやりますよ私のコードも」

「ムキになってるなこりゃ」

 三人はトラップの前に辿り着く。晴海が言った通りの場所に出現していた。

「はぁ……」

 心は水筒に手をかけ、中身を幾らか飲む。

「よしっ!」

「この『よしっ!』って時に、『でそう』って感じてんだよ」

「いちいち教えなくていいからっ! すぅぅ……『行かせてくださぁぁぁあい』!!」

 トラップはいつも通りきれいに消滅する。

「お、おお……! かっこいい……!」

「そ、そう? なんか嬉しいな」

 晴海に褒められ、心はケロッと機嫌を直す。

「よーしっ! 進も〜!」

「じゃ、行こっか晴海!」

「……うん!!」

 こうして、新しい友達との、新しい毎日が始まりを告げたのだった。

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