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「の……心殿!」
「ああああっ!?」
心は目を覚ました。地べたに座って、路上の外壁に寄りかかっている。目の前には晴海の筆箱の妖怪フデコがいる。彼女が起こしてくれたようだ。そして心の腕の中では、叶恵がすぅすぅと寝息を立てている。
「叶恵? ちょっと、大丈夫!?」
「んん……次は……絶対離れないから……」
「叶恵〜?」
心は叶恵の体を優しくゆする。フデコも心配そうに叶恵の顔を覗き込む。
「んっ……あれ? なんだ、ここ」
「叶恵! 気づいたんだね、よかったあ」
「心!? わーおキュートなお顔」
「ちょ、じろじろ見ないでぇ……立てそう?」
「うん」
二人はよろよろと立ち上がる。
「えっと、どういう状況なんだろう」
「心殿と叶恵殿はトラップに巻き込まれてたんじゃ。九時を回った頃にトラップが消えて出てきたら、二人とも抱き合って寝とったんじゃぞ! わっしは心配したご主人に言われて二人を探してたのじゃ」
「そうだったんだ、ありがとうねフデコ。そういえば私、トラップに落ちたんだった……でもなんで叶恵もいるの?」
「落ちていく心が見えて、飛び込んだんだよお!」
「助けようとしてくれたの!?」
「当たり前でしょ! だってワタシ……ワタシぃ……」
「叶恵……? なんで泣いてるの……?」
「えぇ? 心だって、めちゃくちゃ涙出てるよ……?」
「あれ? ほんとだ……あはは……だって、だってさ……じゃあ、叶恵も見たの?」
「見たよ……トラップの奥で、心を見つけて、手を握ったら、色んなことが頭に流れてきたんだ……」
「そっか……う、ううっ……うっ」
「も〜、泣かないの〜! うぇっ、えぇん……」
そのまま二人は抱き合って、気が済むまで泣いた。
「さて……そろそろいいかの?」
「あ、フデコいたんだ〜」
「いたわい! お主らが泣き止むのを待ってたんじゃぞ! 何があったか知らんが、もう大丈夫なのか?」
「うん。すごく悲しいものを見たんだ」
「なるほどのう……」
「ねえ心。あれってなんだったんだろう……」
「分かんないけど……本当にあったこと、だよね。ヘレネさんの『歌』のことを考えようとした瞬間に、世界がぐるっと変わって色々見せられたの。何か、特別な条件をクリアしちゃったのかも」
「ふーん……グレートマザー教会は嘘くさいと思ってたけど、昨日はトラップを全部消しちゃったのも事実だし、何かあるんだろうね」
「私、ヘレネさんに聞いてみるよ」
「それがいいとは思うけど、どこにいるか分かるの?」
「うーん……あ。ポスターに電話番号書いてなかった? 昨日一枚もらったから」
「たしかに書いてあったかも! じゃあ学校終わったら連絡だね!」
「え。学校行くの?」
「行かないの……?」
「……今日はサボっちゃおうよ」
「心がそんなこと言うなんて……にっひっひっ。いいね〜サイコー! よしっ、遊んじゃおうぜ!」
「……わっしは学校に戻るぞ。ご主人には二人とも無事だったと伝えておくが……学校には来ないでいいんじゃな?」
「「いい!」」
「了解じゃ……」
フデコは学校の方向にひゅんと飛んで行った。
「……よし心。なにして遊ぶ?」
「なにする? やることないね! あっはは!」
「はっはっは!」
二人はとりあえず公園で鬼ごっこをして、それから、それから、とにかくはしゃいでいた……。