一夏視点だと鉄壁の無口無表情だし栞視点だと本人だから、栞の情緒不安定具合の表現って難しい。
考えたネタをきちんと物語にするのはやっぱり大変ですね。もっと無鉄砲に好きな事を書ける、出来の悪いものを晒すのが恥ずかしいとかあんまり思わなかった時代に、書くことに慣れていたらよかったかなと思います。
8/18改稿
スイーツ(笑)。
じゃなくて。
「デザート半年無料券デザート半年無料券デザート半年無料券デザート半年無料券デザート半年無料券デザート半年無料券――――」
つくづく、私がクラス代表になれないのが惜しまれる。今の織斑一夏では三組の代表にもたぶん勝率は半々を少し超えるぐらいが精々だ。セシリア戦から大分強くなってるのに勝率が低すぎる気もするが、あれは最大の理由が機体の相性で、次いで
――セシリアと仲良くなったことで、表面上のスペックデータだけ閲覧させてもらったが、酷かった。
ビット兵器制御の為のイメージ・インターフェース処理や、それに耐えるレベルの応答速度の向上と通信ノイズの排除などにとんでもなく大量の処理能力を喰われていて、機体性能がとても残念だった。スラスターもPICも、出力ばっかり高くても使える物ではないのだ。
セシリアには悪いが、総合的には第二世代機の方が強い。まぁ、元々のコンセプトが支援機だから、優秀な前衛がつくと鬼のように化けるはずだけど。
「このまま基礎スペックを上げれば、あの中国には高確率で勝てるようになるけどねぇ…………」
ここは私の信条を少し棚上げして、直近のクラス対抗戦に勝つことだけを考えて織斑一夏を鍛えるべきだろうか、と呟く。
織斑一夏はエネルギー変位観測と相性がいいから、エネルギー的に比較的認識しやすい上に発射までのタイムラグがかなり大きい甲龍の衝撃砲はさほど脅威にならないだろう。
一応盤石にするために目隠しでビットの多角攻撃を避けさせる訓練を少しすればいい。
近接格闘は、向こうの武装のサイズからくる威力差が多少問題とはいえ、所詮元々はスポーツがかなり得意程度だった人間の、一年での俄仕込みだ。瞬殺したから見られなかったけれど、たぶん大したレベルではない。剣術の才能で単純に上回るはずの一夏なら余裕で隙を見つけられる。
問題は、四組の簪だ。あの子、ダウナーな割に意外に負けず嫌いだから、クラス対抗戦用の訓練機用装備を自作してた。私は一組で、しかも織斑一夏の指南役だから流石にその内容を見るようなことはしなかったけど、正直侮れない。
理論型秀才肌の並列思考タイプで、能力が基本的に研究者向けな簪の戦いは理論とデータの戦いだ。時間が伸びてデータが増えれば増えるほど、織斑一夏は完全に封殺される。しかもその研究者としてのスキルを使わなくても普通の代表候補生よりずっと強いのだからたちが悪い。
白式の基礎性能は確かに高いけれど、操縦者が未熟なので、その気になれば突っ込んできたところを交差して距離を開く事なんて余裕だ。
「目指すべきは最短決着。あれを早い時期に仕込むと動きが雑になるからやりたくないんだけど、
◆◇◆
「今日から教導方針を変える」
言って、織斑一夏とセシリアにコアネットワークを通してそのメニューを送信する。
今日からクラス対抗戦までの訓練はクラス対抗戦に勝つことだけに全精力を注ぎ込む。なので、攻撃面は白式の高出力スラスター・PICによる瞬時加速に任せて、とにかく回避を磨く。勝負勘は結構鋭いので、戦闘構築のレベルで敗北しなければ大体戦えるだろう。
(本当は、瞬時加速を乱用する戦い方は機動が雑になるし、上に行くとカモになるからあまりやらせたくないんだけど)
でも、私はデザート半年無料パスの為に鬼になる。あるいは悪魔になる
まず、PICのみによる空中遊泳五分間。ただし私が攻撃するので避け損ねたら罰ゲーム。
次に、私とセシリアの二人で織斑一夏を五分間袋叩き。セシリアは全力攻撃だけど、私はセシリアのフレンドリーファイアを避けながらの上で加減して戦うので、シールドエネルギーがゼロになったら罰ゲーム
三つ目、零落白夜瞬間展開訓練。エネルギーパックを一個支給し、袋叩きの時に残ったエネルギーとエネルギーパック分のエネルギーで零落白夜の発動を五百回。制限時間は五分間。三秒に五回やればいい計算。これもエネルギーが切れたり制限時間を越えたら罰ゲーム。セシリアはこの間私と鬼ごっこ。
で、その後五分休憩し、最初に戻ってエンドレス。
その内容を見て、織斑一夏とセシリアの頬が引きつる。ちなみに篠ノ之箒は、訓練機が借りられなかったので剣道部に出ていて不在だ。
「覚悟はよいか?」
「よくねぇぇぇぇ!!」
絶叫する織斑一夏を無視して、菊一文字を振り抜く。
幾度となくこの刃の味を味わってきた織斑一夏は、恐怖から一時的に集中力が上がっているのだろう、不意打ちでも完全に回避して見せた。
けど、
「スラスターは禁止と言った」
ちゃんとPICだけで回避しなかったので、罰ゲーム。高速で懐に入り込み、腹部に掌底打ちを叩き込む。
「グっ……!!」
ISのシールドバリアの上から殴られたとは思えない激痛に、盛大に混乱しながらうめく織斑一夏。
「なっ、シールドエネルギーが減っていない、ですって!?」
それを眺めていたセシリアが驚愕の声を上げる。理由は、本人が言ってくれた通りだ。
「PICのちょっとした応用。試合では反則」
所謂浸透頸という奴だ。反則と言ってもまぁ、PICの制御力に大幅な格差があるからできる事であって、同格に近い相手には無理だけれど。
「セシリアも」
きちんと二人ともにやらせると書いていたはず、という意味の事を言いながら、セシリアのブルー・ティアーズに斬りかかる。
恐怖に表情を歪めるセシリア。しかし、その恐怖に負けて全力回避したらそれこそ織斑一夏の二の舞だ。慌てず騒がず冷静に、ただし顔は恐怖一色に染まりながら、セシリアはPICとパワーアシストだけで私の斬撃を回避する。
地面を蹴って移動されてもあまり意味がないので、至近距離まで肉薄し、二の太刀で足元を薙ぎ払って強制的に飛ばせる。
続く三撃目はさらに上に飛ばせるための切り上げで、そろそろ復帰しろとの意味を込めて次は織斑一夏へ。
そして改めてこの一言。
「覚悟はよいか?」
「軟弱」
まだアリーナの使用時間が終わっていないにもかかわらず地面にぶっ倒れている二人に、辛辣な言葉を浴びせる。
結局織斑一夏は三セット目で集中力が完全に尽きて脱落、セシリアは四セット目、二十一回目の腹パン(浸透頸)で危うくゲロイン昇格しかけ、半泣きで懇願してきたので今日の所は脱落を許した。セシリアの泣き顔はちょっと萌えた。
「い、いや、軟弱って、いきなりレベル上がりすぎだろこれ……」
「メニューそのものはともかく、ノルマと罰ゲームがおかしいですわ……」
「これもクラス対抗戦に確実に勝つため」
そして私のデザート半年無料券の為だ。
それが手に入れば、毎日三食デザートのみ+サプリメントで必須栄養素補給という夢のような悪夢のような(体重的な意味で)の食生活だって可能なのだ。いや、今の私の収入でも可能だけど、流石にそれは財布が薄くなる。糖分は、まぁIS操縦でかなり思考力を使うのでほとんど消費できるはずだし、そもそも私は基礎代謝が高い。最悪代謝を増やすための薬を飲む。
「よ、欲望が透けて見える…………」
「以前も思いましたが、本当に甘いものに目がないのですね栞さんは」
織斑一夏とセシリアが何か言っているが、無視。
演技とか演技とか演技とか人の心を弄ぶ罪悪感とか男性恐怖症とか、色々ストレスを溜め込んでるから仕方ない。うん、仕方ない。
破壊衝動にぶつけるよりよほど健全なんだから許してほしい。IS学園内で、料理用の各種酒類をがぶ飲みして酒浸りになるわけにもいかないし。部屋の防音も、ドアの前で聞き耳を立てられたら普通に会話が聞こえる程度には完全ではないから一日中オナ○ーとかできないし。
ここに入ってきてからストレス発散の手段がとてつもなく減っているのだ。破壊衝動を発揮できる模擬戦も、雑魚を蹴散らしてもストレス発散にならないし、数少ない例外の楯無は千日手になるからやっぱりストレスが溜まって、しかも負ける方が多いから結局あんまり効果ないし。千冬先輩と戦いたいなぁ。
(あ~、やばい、いつにもまして情緒不安定かも)
段々暴走し始める思考に、自分が常態から
というか、罰ゲームでセシリアを戦闘不能にしてしまってどうするんだ私。よく考えれば織斑一夏の集中力の消耗も蓄積した体の鈍痛が大きな原因の気もするし、明らかに腹パンの加減ミスってるじゃないか私。
「今日は、終わり」
後で何か埋め合わせしよう。そう思いながら、私は逃げるようにアリーナを後にした。
◆◇◆
――――大きく息を吸い、花の香りを吸い込んで精神を整える。
真っ暗な部屋でグラスを傾け、ブランデーを舌の上で転がす。緊急手段の為に確保しておいた調理用の(=IS学園で手に入る)品だ。
暗闇と静寂に包まれた部屋に響いてくる微かな音色に耳を傾け、精神をトランス状態へと誘導していく。
コクリ、コクリ、とリズムを刻むように、少しずつ、灼けるように強い人肌の蒸留酒を流し込む。
トクン、トクン、と自分の血流の音が脳裏に響く。
アルコールの効能によって少しずつ加速していく脈拍ののリズムが、大きくなっていくその音が、暗示のように意識の内から外界の存在を消し去る。
――まだ辛うじて外界を認識できるうちに、残ったブランデーを口に含み、ゆっくりとコップを置いて、体をソファに横たえる。
脈拍の音に合わせるように、少しずつ口内の酒を嚥下する。
外に開かれた感覚は全て意識の内から弾かれて、筋弛緩剤を撃たれたかのように全身から力が抜けていく。
喉から半へとわずかに抜けてくる香りは、酩酊感を及ぼすアルコールのそれと、蜜のように甘い花の芳香。
――コクリ、コクリ、トクン、トクン、同じテンポで刻まれる二つの音が、意識の過半を占拠する。
ブランデーの味も、花の香りも曖昧になってくると、次に感じ取れるのは体内に奔る血流の流れだ。
意識に響く音と同じテンポでループするその流れは、思考の全てを真っ白い靄で塗りつぶしていく。
――自分という存在の境界が曖昧になる。
内界に響いていた脈拍の音が、世界の全てから響いてくるように錯覚する。
自分という存在が、薄く広く世界へと遍在する錯覚。
全身に感じる血流が、星の海を巡る大いなる流れであるように誤認。
――自分という存在が、透明になっていく。
自分の、ひいては自分以外の全てよりも優先する、復讐という価値観がほどけていく。
存在の殻が壊れた先、認識できないはずの内界の底にいるのは――――
――大声をあげて泣きじゃくるたった五歳の少女と、それを抱きしめ頭を撫でる、無表情で涙を流す七歳の少女。
そして、
――その二人を、滂沱の涙を流しながら、聖母のような笑みで抱きしめる、
“――また、いらっしゃいましたね”
どこに向けるでもなく、女性はその、鈴のなるような声を響かせる。
“――えぇ、また、世話になるわ”
白い空間の全てから、波紋のように私の声が響き渡る。
“――はい。では、心安らかに。主様”
――意識が、暗転する。白い世界から光が失われていく。
――――全てが闇に染まる寸前、空に鎖で磔られた一人の女性と、体のあちこちが虚ろに喰われた男性が、見えたような気がした。
・瞬時加速
便利かつ強力なだけに、未熟なうちに修得すると乱用する形で戦闘を組み立てがちになる。
上位になれば瞬時加速にカウンターを合わせる事など容易なので、本当に上を目指すなら、必殺の機会と緊急時にしか使ってはいけない。逃走時すら、高速切替持ちなら即座に武器を変えて軌道上に攻撃を撒ける。
・浸透頸
通常、違うISのPIC同士は干渉を起こして効果を打ち消し合うが、その干渉を起こす要因である波長のパターンをを相手のPICに同調させることで相手に直接PICを作用させる。
ただし、自分も相手のPICに対して無防備になるので、よほどこちらの方が練度が高く相手のPICの逆流を防ぐことができなければ自分もダメージ。