【完結】IS 復讐者の死に方探し   作:ZE

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 日常話。いつもより原作ISテイストに近い感じになった…………かな?
 次への繋ぎというか、一巻終了の打ち上げみたいな話なので短いです。
 次回、十四話からの二巻編ではプチ原作改変が入ります。

 8/18改稿


13.一時の休息

『お疲れ様―』

 

 チン、と軽い音でグラスやカップがぶつかり合い、小さなお茶会が始まった。

 今日の事件のお疲れ様会、という事で参加者は俺と鈴と司、そして観客の避難や万が一の時盾になる為に待機してくれていたセシリアに、何故か俺以外の参加者が満場一致で連れてきた箒の計五人だ。

 

「しっかしほんと、狙ったようなタイミングで来たわよねぇ……」

 

 あのままなら私が勝ってたのに。と鈴は不満げにこちらを睨んでくる。ちなみにここは学園にある応接室の一つだ。なぜ使用許可が出たのかはわからないが、まぁ機密とかを気にせずに好きなように話せるのは確かに楽だった。

 

「本当に狙ったのでは? データによれば速度はマッハ30を超えていたそうですし、超遠距離から狙撃でまとめて葬ろうとした、とか」

 

「そうだとすると一夏たちが倒したのとは別にもう一機いることになるぞ。着弾からあの機体が視認されるまで一体何秒あったと思う。それに、その距離からあの威力の狙撃を撃てるなら、相手が近づいてくるまで狙撃に徹するのがセオリーだろうが」

 

 どちらの意見も尤もだった。確かに、俺達を狙撃でまとめて葬るならあのタイミングは絶妙だったし、学園設備に気付かれないだけの距離を取っていたから照準がずれたというのは十分ありえそうな話だ。

 

 が、箒の言う通り、あの機体がいつ入ってきたのかは不明だが、少なくとも爆風の中にいたあれは元々いたかのように存在していた。

 あの超大出力レーザー砲の攻撃の余波でハイパーセンサーを誤魔化している間に侵入してきたとなれば、着弾までの時間を足しても猶予時間は十秒もない。繰り返し狙撃をしなかった理由は、使い捨ての武器、もしくは数十分単位でチャージが必要な武器だからとかどうだろう。アリーナで戦った時の威力はそこまで脅威的でなかったことを考えても、ありそうな話ではないだろうか。

 

「無人機に操縦者保護は不要」

 

 それに対し、セシリア並に優雅に紅茶を飲みながら、さらに別の意見を述べたのは司だ。これは多分セシリア擁護の意見で、操縦者保護を気にしないでいい無人機なら有人機とは次元違いの速度を出せて何らおかしくない、という事だろう。戦闘機だって、俺が知ってるだけでも有人機は精々マッハ2とか3に対し無人機はマッハ10オーバー。空気抵抗を無視しても運動エネルギーは十倍以上だ。

 と、納得した俺を何故か司が凝視していた。そして首を横に振る。

 

「飛行形態を持つ可能性もある」

 

 それはつまり変形という事だろうか。確かに、中に人間が入っていないならできるかもしれないし、基本、飛行に適さないフォルムをしているISを飛行、それも超高速での突撃特化に作り替えた時の速度など想像もできない。

 何となく、目の前のお菓子に手を伸ばすのもためらわれる深刻な空気になってきた。まぁ、司は100%無視して口元をわずかに綻ばせながら紅茶とアップルパイを堪能しているが。

 

 ――数秒、沈黙が場を支配する。すると一番最初にその空気に耐えかねた鈴が大きな声を上げて淀んだ空気を吹き飛ばした。

 

「あー、んな暗くなりそうな話はやめやめ! 私から話振っといてなんだけど、その辺は考えても仕方ない、ってかその辺を考えるのはIS操縦者(あたしら)の領分じゃないでしょ。それよか今はこっち楽しみましょうよ」

 

 全くだ、とばかりに大きく頷く司。気にしていないようで案外気にしていたらしい。確かに、空気が悪いと飯もマズくなるからな。

 

「鈴の言う通りだ。そういう難しい話はするとしても後にして、今はパーッとやろうぜ。俺も身体ってか精神的に疲れたしなぁ」

 

 大きめの声で、意識して普段より明るく振る舞う。これでとりあえず今は楽しもう派が五人中三人で多数派だ。確かに無粋だったと思ったのか、箒やセシリアも深刻そうな表情を緩め――箒は少しぎこちなくだが――二人揃って笑顔を浮かべた。

 

「ただ、その前に一つ」

 

 そうして深刻な空気の払拭された一拍後、完全に場の空気を掌握する的確なタイミングで司が指を一本ピンと立てる。

 そして、びしりと俺を指さし。

 

「長所に逃げるな、織斑一夏」

 

「む……」

 

 微妙に自覚があり、思わず固まってしまう。俺の鈴への最後の突撃、あれはもう言い訳のしようがないレベルに完璧に読まれていた。それはまぁ当然俺と鈴の経験の差なんだろうけど、挑発に乗って真っ向勝負をした俺が悪いともいえる。

 

「つってもなぁ。あの瞬時加速が読まれてるとは思わなかったし」

 

 だから司の助言通りあれまで瞬時加速を一回も使わなかったのだ。知られていない最初の一回なら不意を突ける、そう思って。

 

「バーカ。あんたの機体は完全な近接格闘専用の高機動タイプ。一ヶ月で習得できるかは別として、短時間で戦えるようにするなら瞬時加速ぐらい仕込まれてるに決まってんでしょうが」

 

「私が隠せと言ったのはその練度。データ型の四組代表と戦うならそれを収集させない事には大きな意味がある。そもそも、私が仕込んだ対策はより勝率の低い対四組用」

 

 マジかよ。それは先に言って欲しかったぜ。

 

「は? つまり何、その四組の代表の方があたしより強いって?」

 

 そういえば、四組代表も専用機を持っていると聞いた覚えがある。鈴との戦いの事ばっか考えててすっかり忘れてたけど。

 不当に弱く評価されたと思ったのか、鈴がぎろりと司を睨むと、僅かに思案していたセシリアが「あっ、」と声を上げた。

 

「四組代表。確か、日本の専用機持ちの方で、更識簪さんとおっしゃいましたね。その……栞さんが雛菊の調整を任せている、という技術者の」

 

 は? と司とセシリア以外が声を上げ、セシリアから司へと全員の注意が移動する。

 

「相性の問題。戦術的直感も弱い単純馬鹿で、先読みを凌駕するスペックを持たない織斑一夏では開始三分のラッキーパンチ一択」

 

 だそうだ。つまり、俺が仕込まれたのはその開始三分のラッキーパンチを叩き込む技量という事だ。その割には回避訓練が多かった気がするけど。いや、相手の弾幕をかいくぐって接近するには回避能力も必要なのか?

 そして、否定しなかったってことは本当に雛菊の調整を行っているのはその簪って子らしい。続いてその台詞に反応したのは箒だった。

 

「待て、更識というと……」

 

「生徒会長の妹。でもコンプレックスだから触れては駄目。あなたならわかるはず」

 

 生徒会長。そう聞いて思い出すのは、一回だけ見学させてもらった司との試合。四聖剣とか言われる、若手の最強格四人のうち二人の織りなす異次元バトルだ。あの人の妹と聞いて、思わず体が震える。セシリアもわずかに顔色を悪くしていた。一方それを見た事のない鈴には俺たちの反応が理解できないようで、首をかしげている。

 

「IS学園生徒会長更識楯無。以前お話した“水神”ですわ」

 

「うげっ、アレの妹!? い、いやいやいやいや技術者タイプなのよね? あんな化け物勢の仲間じゃないわよね?」

 

 セシリアの補足を受け、司に秒殺されたのを思い出したのか鈴は顔を青くして慌てて司に詰め寄った。微妙に機嫌が悪そうな雰囲気で司が首を振る。チラリ、と視線を向けられた箒が軽く頷いて、セシリアと鈴を窘めた。

 

「セシリア、凰、姉妹だからと言って同一視するのは失礼だ。本人もコンプレックスにしていると司が言っていただろう」

 

「話は終わり。今はお茶会(こっち)

 

 パクリ、とチーズケーキを一片口に運んでから紅茶を一口含み、司は精神状態が不安になる勢いで表情を蕩けさせた。

 

 

◆◇◆

 

 

 途中、どこからか持ち出してきたブランデーを紅茶に垂らして飲み始めた司を呆れた目で見ながら、お菓子類の中でも塩気の多いものを選んで食べていると、不意にセシリアが歩み寄ってきた。

 

 ちなみに箒は未成年飲酒常習者だとカミングアウトした司を説教して完全に無視されており、鈴はなんか高そうな雰囲気のブランデーに興味を示している。手に持っているクッキーを浸す気だったりするのだろうか。やめておけ鈴。前酔った千冬姉に飲まされたことがあるけど、そんなにいいもんじゃないぞ(あれ)は。酔う気で飲むならともかく、普通に飲んで美味しい飲み物だと、少なくとも俺は思えなかった。

 

「ところで一夏さん?」

 

 セシリアの手には、司がブランデー同様取り出していた赤ワイン。

 ただ、色が薄い気がするので薄めてあるのかもしれない。目で勧められたが断った、西欧(むこう)では、子供でも薄めたワインぐらい普通に飲むらしいからセシリア的には普通の事なのかもしれないけど、俺は日本人なので未成年飲酒はNGだ。代わりという訳ではないが、もう一方の手に乗っている皿のチーズとクラッカーはありがたくいただいた。

 なお、わりかし日本の常識が強いIS学園でなんで普通に酒が手に入るのかと後日聞いてみたところによれば、料理用やお菓子作り用という名目で日本酒やワイン、ブランデーは普通に売っているし、その人の文化圏で許されているレベルの飲酒なら教師にも特に咎められないらしい。司は勿論アウトだが。

 

「ん? なんだ? セシリア」

 

 首を傾げる俺に、再び左手の皿を軽く差出し、自然な動作で普段よりも二歩分近づいてくるセシリア。

 俺は男であってお菓子は別腹ではないので断ると、セシリアは近くにその皿を置き、クラッカーにチーズをのせてやたら妖艶な動作で食べると、何やら声を潜めて話し出した。

 

「先日、少し小耳にはさんだのですけれど、」

 

 何となく、直前のセシリアの姿とか声を潜めたその色気のある声とかでいけない事をしている気分になり、こっそりと司たちの方を窺う。

 司は気付いているようだが無視で、箒は説教に夢中で気づいておらず、鈴はブランデーの強力なアルコールの匂いに顔をしかめて断念していた。

 というかセシリア、お前、酔ってないか?

 

「鈴さんに『料理が上達したら、毎日酢豚を食べさせてあげる』と約束されたそうですが、」

 

 等と俺が言葉を返そうとした瞬間、気配を読んだのか、絶妙なタイミングで口を開いたセシリアに出掛かりを潰された。

 俺の記憶では『毎日酢豚を奢ってあげる』だったと思っていたんだけど、言われてみればそうだった気もする。

 

「それは、日本で言うところの『毎日味噌汁を』というあれの変形なのではなくて?」

 

「は?」

 

 その言葉に、思考が凍結する。

 毎日味噌汁を~の意味ぐらい俺でも知っている。伝統的な日本食なら毎日三食全てに出てくる味噌汁を自分が作ってあげる、というのは、要するにその食事を全て自分が作ってあげるという事であり、つまり家族になるという事で、要するに女性から男性へのプロポーズだ。

 

 ――が、少し考えて、俺はバカバカしい、と首を横に振った。何せ、鈴に言われたのは味噌汁ではなく酢豚なのだ。

 

「あれは味噌汁っていう、毎日毎食食べるようなものだから意味があるんだろ? ご飯を炊くとかパンを焼くとかならともかく、酢豚は幾らなんでもセンスがないって。あれは要するに『私が実家の料理屋を継いだらオマケしてあげるから食べに来なさいよ』って事だろ」

 

 常識的に考えて。と付け足そうとすると、いつの間に近寄ってきていたのか箒と鈴の鉄拳が間近に迫ってきていた。

 

『お前が/あんたがいうなぁぁぁぁぁ!!』

 

「ぐはぁっ!!」

 

 だ、ダブルアッパー!?

 

「…………言っている事は尤もですが、確かに、『センスがない』とはギャグセンスの壊滅的な一夏さんの言っていいセリフではありませんわね。ところで栞さん、学園で手に入るお酒はこの水準が最高なのですか? IS学園の食べ物の質に比べて、随分劣るような気がしますが」

 

「これ以上は食堂の偉い人に伝手が必要」

 

「成程、試してみる価値はありそうですわね」

 

 急速に暗転していく視界に、目に炎が宿っている錯覚を覚えるほどの熱意を振りまくセシリアが見えて、ついでに、その顔が幾らか赤くなっているのに気付く。

 

 ――――やっぱり酔ってる!!

 

 なお、ワインよりよほど強いブランデーを、割っているとはいえそこそこの速度で飲んでいた司は完全に素面だった。

 

 

 ちなみに、司が未成年飲酒常習者だという事は千冬姉も知っていたのだと、結構後に知った。




・ヒロインズの暴力行為
 今まで全く描写はありませんでしたが、人格面での変化は栞が与えたもの(ないしその二次、三次効果)が全てなので、暴力行為がなくなっているという事はありません。描写してないだけです。
 ただ、基準はリアル準拠になっていて、コメディ的な補正がないとやばいレベルの暴力は振るっていません。今回も、箒に顎を狙われて脳震盪しただけです。ちゃんと手加減したのに気絶されて鈴はめっちゃ慌ててます。
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