鈴:「私の戦いはこれからよ!」
作者:「あ、ちっぱいさんおっすおっす。でもお前の出番福音戦までねーから」
鈴:「えっ?」
※半分冗だ(ry
戯言は置いといて、二巻編開始です。この話のラスト部分にはシャルロットに関する非常に衝撃的な設定があります。シャルロットファンの方、キレないでください。無能な私にはこれ以外八方丸く収まる回答が浮かばなかったんです。
亡国機業対策の為のIS学園の戦力拡充って言っても、箒と更識姉妹を除く他のヒロインズ(過剰な男嫌いのセシリア・権威を敬わず、他国に愛国心が強い鈴・生まれから問題だらけで精神的に未熟が過ぎるラウラ)と違ってシャルロットにはそこまで深刻な問題が見られないので、デュノア社はともかくフランスという国家から厄介払いされそうには見えませんしねぇ。あんな、国際社会から格好の攻撃材料にされるようなやり方を平然と推し進めるほど、デュノア社に価値があるとは思えません。
8/18改稿
「――――これで、朝の連絡事項は以上です。では最後に、今日からこのクラスで一緒に学ぶことになる編入生を、二人紹介します。では二人とも、入ってきてください」
朝のホームルームの最後に告げられたやまや先生の言葉に、私は他のクラスメイトとは少しだけ違う理由で「?」と首を傾げた。
転入――じゃない。編入生が今日うちのクラスに来ること自体は私は一週間以上前から知っていた。
当たり前だ。緊急時専門で普段は常時自由待機(基本的には休みだが、連絡、ないし呼び出しに即座に応じられるよう遠出などは禁止という状態)みたいなものとはいえ、一応織斑一夏と篠ノ之箒の護衛だ。そこそこ詳細なPDと共にその情報は学園側からも
が、私の知っている情報では、編入生は一人のはずだ。
――そもそも、IS学園への編入というのはハードルが高い。
普通、IS学園に入学する枠は二つ。“国家推薦枠(通称:普通枠)”と“特別国家推薦枠(通称:特選枠)”だ。滅多に使われないものを含めれば私も使った“IS委員会特別推薦枠(通称:委員会特選枠)”や、“一般公募枠(通称:特待枠)”を含めた計四つになる。
それぞれの特徴は、普通枠はとりあえず飛ばして、特選枠は国が代表候補生や特に優秀な生徒を送り込む「人格審査が行われない」枠。純粋に能力のみで合否が決定され、その基準は事後に公開しなければいけないので、事実上「絶対に合格する」枠と言っていい。よって、十分な理由もしくは建前があれば数に制限のない他三つと違い、数はかなり少ない。
次の委員会特選枠は「主に生徒会長のような、IS学園内で特に特別な位置に置かれる生徒をIS委員会が送り込む」ための枠だ。数に限りはないけれど、下手に使うと加盟国に怒られるので滅多に使われない。あくまで加盟国間の過度な競争を予防する目的が主。
最後の特待枠は、「突き抜けてぶっ飛んだ才能/能力を持つ、特定国家の庇護を現在において受けていない人物」を、とりあえずIS学園に保護するための枠。これの特色は、IS委員会すら通さなくていいので国の思惑に口出しされないという点だ。無論、「争奪戦になる前にIS学園で一時的に保護した」と言ってこの枠を使った事に文句を言われないぶっ飛んだ成績を叩き出してくれないといけないけれど。
そして、最初に飛ばした普通枠は、「国の推薦さえあれば基本的に能力次第」だが、「試験に人格審査があり、統一基準を定めにくいこの試験の合否を操作することで、事実上IS学園が独自の利益で生徒を選別できる」枠となる。まぁ、それもあくまでIS委員会に怒られない範囲でだし、基準を公開するのは特選枠と同じなので実技や筆記で十分な得点を取っている事は必要になる。ちなみに篠ノ之箒辺りは成績が足りなくて普通や特選だと合格が危うく、委員会特選で入学している。彼女が偽名ではなく実名なのはそのためだ。素性を隠した偽名入学では委員会特選を使う建前が絞り出せない。
――話を戻そう。それで、IS学園の編入というのは、IS委員会の特別な推薦状がある場合を除いて、基本的にはその年の特薦枠を利用しないと不可能なのだ。当然、一般枠で入学する程度の生徒では不可能だし、十分な能力と地位があっても、既に自分の国がその年の特選枠を使い果たしていたら翌年にもう一つ上の学年へと編入するしかない。
それぐらい、IS学園の編入というのはハードルが高い。大事な事なので二度言った。
そんなハードルが高いIS学園への編入を、IS操縦者としては世界でも屈指の情報収集力を持つ――というか、私とその他一部の連中以外の“
ごく一部の事情通の生徒を除き、全く持って寝耳に水だった編入生の登場に、教室全体がざわめきだし、
(は?)
最初に入ってきた、
本気の性別詐称なのか、男装趣味や
――まぁ、生物学的に女なのは、見て明らかだ。誰でも見分けられるほどわかりやすくはないけれど、武術をきちんと理論実戦両面で習得していれば十分見分けられる。
(でも――)
チラリ、と周囲の様子を確認。
男装美少女の登場、というには驚きの度合いが強すぎる気がするので、たぶん少なくない人間が本気で男だと思っていそうな様子。バレバレすぎる性別詐称に驚いているという可能性もないではないけれど、そのレベルの人間が多数派になるほどIS学園生徒は
その次に入ってきた、銀髪赤目の小柄な眼帯少女は事前情報で知っている通りなので取りあえずスルー……
(したかったんだけど、そうもいかなそうかなぁ)
なんか、織斑一夏にめっちゃ敵意を向けている。この情報は知らなかった。相手が特殊部隊の隊長だから情報を集めにくいのは分からないでもないけど、もっと仕事しろ
まぁ、想像はつかないでもない。何せ彼女は千冬先輩を崇拝に近い域で慕っている。弟とはいえぽっと出の素人に雪片と零落白夜を握られたらキレるのも致し方あるまい。
「初めまして、みなさん。僕の名前はシャルル・デュノアです。ここに
と、シャルル・デュノアが
ニコリ、とシャルル・デュノアが笑顔で自己紹介を締めた直後、「きゃーーーーーーー!!」と、耳を塞いだ掌を貫通する大音量の嬌声が教室内を蹂躙する。
隣に座っている織斑一夏が音響兵器を喰らったかのようにダメージを受けているけれど、気にしない。
続いて自己紹介の順番がもう一人の少女に移ったのを確認して、耳から手を退けた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
――沈黙。
それ以外に言う事などあるか? とでも言いたげな、冷然とした表情。
「え、えっと、以上、ですか?」
やや、どころではなく引きつった表情で、やまや先生がラウラ・ボーデヴィッヒに声をかける。心なしか涙目になっている辺りやっぱりやまや先生だった。
「以上だ」
言って、何故かラウラ・ボーデヴィッヒはトコトコとこちらに、正確には、織斑一夏の方へと歩みを進める。
「認めないぞ、織斑一夏! 貴様が教官の弟であるなどと、認めるものか!!」
唖然とする織斑一夏とその他全員を置き去りに、怒声と共に振り上げられた右手。そこにこもった膨大な殺意に、思わず反射的に体が動く。
――パシリ。
と、その手を右手で受け止めてしまってから自分の失態を悟る。いや、必ずしも失態とは言い切れない。その気になれば、殴る瞬間にISを部分展開して織斑一夏の頭部を血煙にすることも可能と言えば可能なのだ。それをするほどの馬鹿かどうかはまた別の問題として。
「公衆の面前」
やるならせめて目立たないところでやれ。と、何故かこちらを呆然とした表情で見つめている赤い瞳を無表情に睨み返す。
「司……栞……??」
何故か、呆然と私の名前を呟く彼女。どうも、私の声は届いていないようだ。というか、
(なんか、眼がすっごいキラキラしてる気がするのは気のせい?)
問いかけに頷きながら、「そう、これはあれだ。時々遭遇する私のファンが私に向ける目だ」と思考は自動的にその情報を処理する。
再び、イタイ静寂が場を支配する。
瞳のキラキラが数倍に増して、いつの間にかその白すぎるほど白い肌に興奮で朱が差している。
「――――お姉さまと呼ばせてください!!」
そして、怖いほどの勢いで私の手を両手で握りしめ、ラウラ・ボーデヴィッヒはそんな事をほざきやがってくれた。
最早場の空気は私含めて「わけがわからないよ」一色だ。唯一の例外は最早取り繕うのも忘れて全力で頭を抱えている千冬先輩である。
(え? 何このカオス)
――――情報部の資料にちょっとだけあった、「非常に世間知らず。空気が読めない」という情報が間違いではないのだと、諦観を持って私は確信した。
「保留。後で聞く」
「はい! お姉さま!」
保留なのにお姉さまって呼ぶなよ小娘。小動物系クーデレ後輩キャラの更識簪に並ぶ、私の人間関係には非常に珍しい被庇護者枠、人生初の妹キャラに萌えてしまうじゃないか。
(とりあえず後で、状況を理解しているっぽい千冬先輩に
――唐突過ぎる状況に困惑するあまり、この時の私が性別詐称娘の存在を完全に忘れ去っていたのは余談である。
◆◇◆
「あ~、なんだ。私がドイツで一年教官をしていたことは知っているだろう? こいつはその頃に特に目をかけてやった教え子の一人でな」
放課後、千冬先輩に時間を作ってもらい、二人の編入生についての情報を聞き出す。その際、仕事を押し付けられたやまや先生が絶望していたので、今度リラックス効果のあるちょっとお高めのアロマキャンドルでもプレゼントしてあげようかと思う。
それはさておき、千冬先輩の前置きにコクリ、と相槌をうって、先を促した。先に個人的に気になるラウラの方からだ。
「その時、話の流れで少しお前の事を話したんだ。その時はやたら敵愾心を向けてて正直失敗したかと思っていたんだが…………」
そこまでは、予想の範囲内。彼女はドイツ軍人であること以上に千冬先輩の元教え子であることに誇りを持っているぐらいだから、教えを受けただけでなくそのスタイルを継承までしている私に、嫉妬からくる敵意を向けるのは自然な流れだ。
「……翌日、見事に熱烈なお前のファンに変貌していてな。正直、目を疑った。何でも、『織斑千冬の再来という言葉に相応しい、同年代としては圧倒的な実力』を持つことに加え、八歳の頃からストイックに強さを求めていたお前の姿勢に憧れたらしい」
とてもとても気まずそうな表情で、冷や汗すらかきながら全力で視線を逸らす千冬先輩。そんなに威圧感を放っている自覚はないので、たぶん千冬先輩がそれだけ強い罪悪感を持っているというだけだろう。そう、そのはずだ。そうに違いない。そうということにしておけ。
「まぁ、なんだ、仲良くしてやってくれないか? 一応、あれでも可愛い教え子だ。お前にとっても妹弟子のような物だろう」
「…………善処します」
それなり以上に気を引き締めて綻びそうになる口元を引き絞り、いかにも不本意という様子を作って頷く。
その内心では、完全に彼女を邪険にする気など失せていた。
――――実際、よほど下心や誤解があるのでもない限り、千冬先輩の頼みがあろうとなかろうと私の答えは同じだっただろう。なんというか、私はああいう、被庇護者枠の相手に弱いのだ。それがわかっているからこそ、千冬先輩も
「善処します。それで――」
何かに言い訳をするようにもう一度同じ言葉を繰り返してしまった私を、微笑ましいものを見る目で見ている千冬先輩。
表情はともかく、感情は完全に隠せてはいないようだ。まぁ、感情から本当にヤバい類の思考を読み取らせるようなへまをしなければさして問題ではない。
「デュノアの事に関しては警戒する必要はない……と言っても納得はしないのだろうな?」
頷く。
デュノアのお家騒動の事は知っている。現在社内で分裂の危機に陥って第三世代機の開発が著しく滞っていても、腐っても第二世代量産機最後発にして最強、世界シェア第三位を誇る第二世代の傑作機を作り上げた会社の事を、私が知っていないはずがない。
当然その中心人物である社長令嬢の“シャルロット・デュノア”の顔写真だって見ているから、シャルル・デュノアと同一人物であることは容易に連想できる。
が、本来女である彼女が男として入学してきたというのは話の次元が違いすぎる。
どうやってDNA検査その他をパスしたのかなど単純に難易度でもそうだけれど、編入できたという事は特選枠を使ったという事。そんな暴挙、というかそんな浅慮を行っては、はっきり言ってフランスという国自体が国際社会で干される可能性が高い。少なくともIS業界での地位はコア保有国で底辺に近いほどまで転落するだろう。
それをするほどの何かが彼女にあり、それができるほどの何かが後ろにいる。シャルル・デュノア云々より、その後ろにいる存在の方が問題だ。単純に日本代表候補生として見逃すには大きすぎる。
「私の一存では難しいな。日本政府も一応了解している事だから、そちらに聞いてみろ」
権限がない。流石にそう言われて、反論は難しかった。
「少なくとも、奴が何かやらかしてもお前の責任になる事はない。報酬もきちんと満額支払われるよう、学園側には私の方からも口添えしておく。それで納得しろ」
「分かりました」
少なくとも、その背景にはそれだけの価値がある、という事。
それだけ大きい事なら何かしら目的に利用できる可能性も高いだろう。必ず後見人を説き伏せて多少強引な手段を使っても情報を収集させようと決意した。
――――ちなみに、以下はまるで用意してあったかのように翌日の昼には返ってきた調査報告を私が、何故か千冬先輩経由で受け取った時の場面である。
◆◇◆
「は?」
一ページ目から、いきなり私は口を半開きで間抜けな声を上げてしまうほどに驚いた。
驚きに驚いている私と冷静に読み進める私が別々の存在になったかのように、指は勝手にページをめくり眼は自動的にその内容を読み取り、思考が情報を組み立てていく。
「分かる。分かるぞ。栞。私も初めて知った時はそんな顔になった。それは恥ではない。誰だって
まるでその言葉通りの感情を表情に浮かべ、千冬先輩はうんうんと頷く。いや、まぁ、情報の精度については千冬先輩に保証されるまでもなくわかっているし、そもそも、恩人に言うのもなんだけれど、個人的な情報網を持たない千冬先輩の保証なんて大概においてあんまり信憑性がないからどうでもいい。
が、この時の私は余りの驚愕で、そういった事を理屈として理解していてもとりあえず誰かの同意が欲しい状態だったのだ。
「え、と、つまり…………」
キャラ崩壊寸前の口調と声音で問い返す。千冬先輩は大きく大きく二度も頷いた。
「読んでの通りだ。IS学園に編入したのも納得がいっただろう?」
「…………はい」
納得した。非常に納得した。納得した、けれど。
「知らなかったことにします」
忘れよう。そう思った。織斑一夏経由で相当接する距離が近くなると考えると、正直、この情報を持ったままか……のじょに普通に接する自信がない。それに、関わっているモノが多すぎ/大きすぎて、私のスキルで下手に利用しようとすると藪蛇では済まなそうだし。どんなバタフライエフェクトが起こるかわからない物を利用するほど、私は現実に絶望していない。
「そうだな。精神衛生上その方がいいかもしれん」
私もそうしたかったよ。千冬先輩の心の声が聞こえた気がした。
「――しかしまさか、あれが
「同感です」
詐欺だ。詐欺じゃないけど、詐欺だ。骨格も声帯も体格も性器形状も、勿論本人の性自認と性衝動も、ホルモンバランスすら女なのに
まぁ、彼女(と言ってあげる事に決める)にとって数少ない救い? は、本人には「男に成りすまして織斑一夏に近づき、親密になってから正体を明かしてハニトラを仕掛ける」的な説明がされていて未だにその事を知らず、本人のIS操縦者としての優秀さや容姿の美しさもあり、彼女にそれを知らせないまま過ごさせてあげようという意見が世界でもかなり強い事か。
(とりあえず、あの子には優しくしてあげましょう)
・うちの鈴ちゃん
「
完全一般人から僅か一年で専用機持ちに上り詰めた超天才。
なのだが、権威を敬わない(IS学園入学の為に上層部を脅すなどの原作での本人の言動から考えて)上に、歴史的にも国家間の仲が結構悪い日本に対して愛国心が強い(と推測できる)等の理由で国内では干されており、特に周囲のIS操縦者仲間に自分の事を認めさせようと血反吐吐くほど頑張ったらここまで上り詰めた。けど今度は逆に才能の格差で周囲から距離を取られるようになるという可哀想な鈴ちゃん。
IS学園に行くのを最初拒絶していたのは、その状態でIS学園に行くと「逃げた気がする」から。
単純な才能の総量としては、もう三年前から優秀な師と恵まれた環境の下で血反吐を吐いて努力していれば四聖剣に並び得たほど。伸びしろの最も多い十代前半を逃したのでもう無理。
この時代に存在するIS操縦者の中で第十五位という圧倒的才能の持ち主で、未発見操縦者二人と格の違う千冬束エムを除けば第十位。準怪物級。