【完結】IS 復讐者の死に方探し   作:ZE

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ラウラ:「私の戦いはこれからだ!」
作者:「あー、まぁ、そうだね。うん(視線をそらす)」
ラウラ:「む?」
作者:「まぁ、頑張れ。福音戦」
ラウラ:「うむ」

 一番書きにくかった二巻編終わり。次は一番書きたい三巻編。ついに栞の前に篠ノ之束が登場します。なお、恐らく栞視点になるため、篠ノ之束に関しては非常に酷いアンチ描写になる可能性があります。まだ書いてないので不明ですが。

 8/18改稿


20.彼女たちのその後

 その後の事を語ろうか。

 

 零落白夜によって切り裂かれた黒い流体装甲の中から救出されたラウラは医務室へと直行。幸い、特に怪我はなく、VTシステム起動時の情報逆流によって気を失っていただけとの診断だった。

 肝心のシュヴァルツェア・レーゲンの方はその後、教員部隊が回収。IS委員会から派遣された技術者とともに解析が行われ、機体のダメージレベルがD以上の状態で操縦者の強い願望に反応して起動する、なんて冗談のような仕込みがされていたらしい。

 確かに操縦者の精神状態が少なからずISに影響を与えるというのは知られた話だけれど、元々そんな条件付けをしていたという事はおそらくドイツ軍・ドイツ政府と利害を反発させる組織の仕業なのだろうと結論が出ている。具体的には亡国機業。

 ラウラ自身の処分はされないようだ。まぁ、多少問題行動はあったとはいえ、VTシステムについては本人の責任は全くないのだから当然ともいえる。

 

 一方、命令無視で独断行動に走った織斑一夏と篠ノ之箒は千冬先輩に叱られていた。ただし、それ以上の具体的な処分はなし。

 この辺は、織斑一夏も篠ノ之箒も厳密には特定国家に所属するIS操縦者ではないという事情が深く関係している。一種の治外法権であるIS学園にはそんなこと関係ないような気がするかもしれないけれど、特定国家に所属していないという事は、他の全ての生徒と違ってあの二人は国際法上軍人ではないのだ。緊急時の一般人の行動に軍人と同じ基準で処分が下せるわけもない。

 

 シャルルについては問題ない。篠ノ之箒と違って終始織斑一夏を制止していたし、あの状況下で力尽くで連れていく選択を選ばなかったのも、敵の前で仲間割れをするリスクを考えれば当然の判断。その後こっそり織斑一夏の奇襲を支援するそぶりを見せていたけれど、それも同様だ。止める事が出来ないのなら支援して確実に成功させるべきという理屈で行動したシャルルを責める者はいない。

 

(ああいうことを繰り返されると私の給料に響くからやめてほしいんだけどね……)

 

 など思うところもあるけれど、今の所有事に役に立たないんじゃ高い金を払っている意味がないとか言われて減給されそうな感じはしない。まぁ、多少減給されたところで痛手を負うほど私の財布は薄くないし、他に彼らの護衛に派遣されている人間も、その程度くいっぱぐれるようなしょっぱい腕ではないけど、減給という言葉の響きからして気が滅入るのは私だけではあるまい。

 一般人はおとなしく護衛されていればいいのだ。こっちはそれで金をもらっている。勝手な善意を振りかざして人の仕事と給料を奪うな。

 

 

 そして、もう一方の顛末。

 

 

「改めまして。シャルロット・デュノアです。これから一年弱、よろしくお願いします」

 

 シャルロットは、衣装を女子用の普通の制服に切り替え、女子生徒として再編入してきた。

 この先の展開を予想して耳を塞いでいた私の手を貫通する「ええぇぇぇぇぇぇっ!?」という絶叫が届く。

 そして、一拍置いて織斑一夏へと振り下ろされるどこからか現れた木刀。武器のチョイス的に勿論犯人は篠ノ之箒。なぜ突然そんなことになっているのかと言えば、想い人である織斑一夏が一ヶ月近くもの間女子と同棲していたから、ではなく、昨日、清掃の為に使用禁止になっていた大浴場が、残った時間分だけ男子生徒に解放されていたという事を彼女たちが知っていたからだ。

 つまり、シャルロットと織斑一夏が混浴した、と彼女を含むクラスメイト達は即座に連想したのだ。

 

 無論、誤解である。なぜなら織斑一夏も普通にシャルロットが女であったということに驚いている。というか、織斑一夏に友人以上の感情を持っていないはずのシャルロットが、混浴風呂でもないのに男が入浴しているところに入っていく理由がない。この年代の少女の貞操観念や妄想力からすれば、そんなことをすればかなりの高確率で襲われる(勿論性的な意味で)と思う方が自然だ。

 

 そうして、“やまや先生滅茶苦茶疲れた顔してるから、また何か疲労回復グッズをプレゼントしよう”などと私が現実逃避気味に考えていると。続いて教室のドアをけ破らんばかりの勢いで丁寧に開いて入ってきた凰鈴音の跳び蹴りが織斑一夏へと飛ぶ。

 

(というかスカートで跳び蹴りは、暴力行為云々以前にはしたないからやめた方がいいと思うんだけど。「パンツじゃない(スパッツはいてる)から恥ずかしくないもん」とでもいう気なのかしら)

 

 やれやれ、と肩をすくめながら顔を上げると、同じように肩をすくめた織斑先生と目があった。

 お疲れ様です、と目礼すると、勘弁してくれ、と苦笑が返ってくる。

 止めないんですか? と首をかしげると、私が止めなきゃならんのか? とうんざりした表情。

 

 

 ――――どんな誤解を受けているか理解して必死に弁解しようとするも、誰にも話を聞いてもらえないシャルロットがブチギレて教室の空気を凍らせるまであと五秒。

 

 普段大人しく優しい人ほど怒ると怖い。なぜならば、そういう人たちはあまり激情を発散する機会がないから、キレるとキレ慣れている人と比べてタガが外れすぎるのだ。

 その剣幕がどれほどのものだったかは、千冬先輩まで表情を強張らせて冷や汗をかいていた、と言えば理解してもらえるだろう。

 

 

◆◇◆

 

 

「ねぇ、司さん」

 

 シャルロットの性別暴露事件から数日、ようやく落ち着いてきたころに、誰に聞いたのかシャルロットが私の部屋を訪ねてきた。

 

「栞でいい」

 

 部屋にあまり人を入れたくないので、断りを入れてセシリアの時も使った食堂の一角に移動。軽く気配を探って見つけた、あまり気配を消していないシャルロットの護衛に目礼して人払いを頼んだ。

 

「ん、ありがと。僕――私の事も、シャルでいいよ?」

 

 別に気が進まないなら無理にとは言わないけどね。と付け足した()()()()()()は、やはり気配りの人だ。私の中での名前の呼び方の使い分けは結構曖昧な基準ながらその区別は厳格で、シャルロットはまだ愛称で呼ぶ水準には達していない。その辺を何となく理解しているのだろう。フルネームで呼び捨ての相手に対しては、あまり隔意を感じ取られないよう、可能な限り代名詞を利用しているから本人たち以外にはあまり気付かれないのだけれど。

 

「それで? ()()()()()()

 

 シャル、と相性で呼んでくれなかったことに少しだけ残念そうな顔をするシャルロット。しかし、その表情にわずかに罪悪感を感じるあたり、愛称で呼んでいいレベルの親密度になる日は遠くないだろう。

 

「うん、栞はさ、私の事情、知ってるんだよね。それも多分、()()()()()()()()

 

 無言で首肯。その気になって調べれば、ある程度の伝手があれば十分わかる情報。否定する理由もない。

 

「だよね。分かってた」

 

 自分自身の事で、私の両親の事なのになぁ、とシャルロットは自嘲気味に笑った。

 気持ちは分かる。事情も何もかも、方向性も大きく違うけれど、私も、両親に裏切られたその感情は知っている。

 

「それでさ、愚痴を……少し、聞いて……もらえないかな」

 

 言いながら、取り繕っていた感情があふれてきたのか、目には涙を浮かべ、僅かに声を震わせている。

 その姿が五歳の私を連想させたのを抜きにしても、そんな状態の友人を放置するほど私は薄情ではない。私の目的にとって害にならないのなら、だけれど。

 

 ――少し、言うべき台詞を考える。

 

「クッキー」

 

「?」

 

 へ? と疑問符を顔全面に浮かべて首を傾げたシャルロット。私の返しが意外過ぎたのか、涙も一時的に引っ込んでいる。

 

「お菓子作りが趣味と聞いた」

 

 焼きたてクッキーで手を打つ。といつも通りの無表情で告げる。

 そんな私の様子がツボにはまったらしく、シャルロットはクスリと笑い、口元とお腹を押さえた。

 

(――良い表情)

 

 声に出かけたのを、慌てて押しとどめる。

 そして、未だに笑いの衝動をこらえているシャルロットに手を伸ばし、その頭を、胸元に抱きしめた。

 

 ――泣きたいだけ泣けばいい。そう、声に出さずに告げて。

 

 

◆◇◆

 

 

()()()、嫁に来ない?」

 

 焼きたてクッキーのあまりの美味しさに魅了されて、ついそんな事を口走っていた。焼きたてクッキーのおいしさもシャルがお菓子作りが得意な事も知っていたけれど、まさかシャルの作るクッキーの味がセミプロ級以上だとは予想していなかった。

 バリエーションの少なさと形の歪さ、焼き加減などの微妙な偏りでどうしても本業には一歩及ばないけれど、純粋に味だけ評価するならセミプロか、あるいはプロを名乗ってもいい腕前だ。

 

 一方、始め一瞬、「やっと愛称で呼んでもらえた!」と喜んでいたシャルは、直後、その理由が“自分の作ったクッキーが美味しかったから”という、“褒められて悪い気はしないけどこの場合においてはあんまりにも現金すぎる”理由だったことにがっくりと肩を落とし、似たような理由でフルネーム呼び捨てから名前に昇格したセシリアに慰められていた。

 

 ちなみに、今いる場所はいつぞやの応接室、ではなく、同室になったシャルとラウラの部屋。メンバーも私とその二人とセシリアの四人で、いつものメンバーの残り三人は仲良く綱引きごっこ中。勿論綱の役目は織斑一夏だ。

 

「それにしても、なんで一夏ってあんなにモテるんだろうね」

 

 微妙によくわかっていない風のラウラに頭を撫でられ、その無垢っぽい仕草に復活を果たしたシャルは、唐突にそんなことを口にした。

 事実、単なる好奇心やらではなく織斑一夏に本気の恋慕を抱いている人間は、この学年の半数を超えている、と私の情報網には入ってきている。これはもう、魅力というより呪いだ。シャルが疑問に思うのも無理はない。

 が、三ヶ月ほど結構近くで接して、何となくその理由に気付いていた私は即答する。

 

「匂い」

 

『匂いぃ?』

 

 いぃ?(↑)と声を合わせるセシリアとシャル。気持ちはよく分かるので、それについては突っ込まない。

 

「私、鼻がいい」

 

 それは知っている、と二人は頷く。私が滅多に他人を部屋に招かない理由が、部屋に匂いを入れたくないという物であることを二人ともが知っていた。

 

「あれの匂いには、性的興奮を感じさせる成分がある、気がする」

 

 何の客観的な証拠もない話だけれど、少なくとも、私の主観的には事実だ。ただ、ちょっとばかり正義感が強くて、男尊女卑時代の「男は女を守る物」なんて時代遅れな思想を残しているだけの男にあれだけの人間が惚れるとは思えない。それこそ呪いじみた、女性に対して万能に働く何かがあると考えるのが自然だろう。

 そう考えた時、思い当たったのが匂いだった、という事だ。

 途端にセシリアがシャルを凝視する。やっぱり今一つ話についてきていないラウラの世間知らずっぷりは半端ない。

 

「…………そういえば、一夏と同室の時、その……()()の回数、増えてたかも」

 

 セシリアの追及の視線を受け、シャルは顔を真っ赤にしながらそう口にする。

 シャルは性的な方向に限り妄想が激しい性質だとこの一ヶ月ほどで気付いていたので、それは単に年頃の男女が同室で暮らしている事に妄想を逞しくしていたんじゃないかと思ったけど、口にしない。それは流石に羞恥プレイにすぎる。私にサドの性癖はない。

 

「…………」

 

 絶句するセシリア。たぶん「汚らわしい!」とか言いたいけど、本人の意思でどうこうなるものではないし、一夏の人柄自体はそこそこ認めているのでそんな事を言うのは憚られる、という感じの心境だ。

 

 

「篠ノ之箒と凰鈴音と、その他大勢の犠牲者に、黙祷」

 

 

 

 ちなみに、シャルは嫁に来てくれなかった。




・うちのラウラ
 意識して変えた変更点はあまりなし。あえて言えば、栞のファンクラブ(?)関係で、IS学園入学前にすでにシュヴァルツェ・ハーゼ隊の面々と仲が良くなっていることぐらい。
 ただ、この世界の軍属IS操縦者全般への変更点として、クーデター防止のために指揮能力や諜報能力その他を可能な限り与えないように教導プログラムが施されている、という裏話がある。多人数での連携が苦手なのもその延長。
 ISというのは、その力の振るい方が個人の手に大きく委ねられている点である意味核兵器以上にヤバい兵器なので、基本的に軍属IS操縦者は、実戦でISを使用するための訓練をほとんど受けていない。
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