作者:「…………(土下座)」
シャル:「えっ?」
作者:「…………(土下座)」
シャル:「えっと?」
三巻編開始。書いていて特に面白みもなにもない繋ぎから入ります。
ちなみに、前話のシャルの涙の理由は設定集の項目をご覧ください。本当は、本編の理解に必要なものはきちんと本編で解説するつもりだったんですが、多少アレンジを加えたにせよ、自分で考えた設定ではないだけに本編に組み込むのは少々気が咎めたので。
8/18改稿
そういえばもうすぐ箒の誕生日だ。
そう気付いたのは、朝のHRで配られた臨海学校のしおりの日付を見た時だ。見事に臨海学校二日目が箒の誕生日に重なっている。
って訳で、六年ぶりの誕生日プレゼントを買いに行こう。
「それは分かったけど、それで呼ぶのがどうして私なのさ」
というか一体それは誰に向かって言ってるのさ。と、買い物に付き合ってくれという申し出を快く了承してくれたシャルがぼやいた。
「いや、一番気軽だし?」
箒は本人だから論外。鈴は色々引っ張ってかれて本題がおろそかになりそう(流石にそんなことはないと思うけど、一応)だから却下。セシリアは、友達というよりライバル、精々戦友って感じだし、最近なんかよそよそしいからちょっと誘いにくい。ラウラはあてにならん。司は買い物を楽しんでるイメージがない。他のクラスメイトは単純に一緒に買い物に行くほど仲が良くない。
よって、俺にはシャル以外の選択肢がないのだ。
そう説明すると、シャルはげんなりとした表情で肩を落とした。そして、つんと澄ました表情でそっぽを向いてしまった。
「それってつまり、消去法ってこと? それ、特別な関係じゃなくても女の子相手に言う台詞じゃないよ一夏。私もちょっと不快だし、やっぱり帰ろっかな?」
なるほど勉強になった。俺に女心は分からないからな……じゃなくて。
本気で帰ってしまいそうなシャルを慌てて静止する。
「いやいやいやそんなことはないぞ? 誰を誘うかって考えた時一番最初に思いついたのがシャルだったからな。他にも誰か誘おうかと思ったけど誰もいなかった、ってだけだ」
「ふぅん、ま、それならいいか」
そう弁解する俺の様子が面白かったのか、あるいは元々冗談だったのか。シャルはあっさりと機嫌を直して微笑んだ。
「じゃ、行こうぜ」
「あ、ちょっと待って。え~と、」
シャルの機嫌が直ったところで。とモノレールの駅に向かおうとすると、シャルはなぜかその場にとどまって周囲を探し始める。誰か他にも来るのか? と少し考える。思いついたのはラウラだった。
シャルが“シャルロット”として改めて編入してきてから、シャルの部屋はラウラと同室になり(俺の所はようやくの一人部屋だ)、その縁で、軍での生活以外ほとんど何も知らないラウラの世話を楽しそうに焼いているシャルの姿はたびたび目撃されるようになっていた。そして多分ラウラは水着なんて持ってないだろう。シャルもなぜか持ってなかったぐらいだ。
「う~ん、見当たらないね。ちょっと電話してみるから待っててもらっていい? 一夏」
「いいけど、誰が来るんだ?」
「ん、栞だけど、聞いてない?」
不思議そうに首を傾げるシャル。しかし俺は全く聞いてない。ほぼ毎日訓練を付けてもらっているからその時に聞いていると思っていたんだろうか。いや、別にいいけどさ。というか、買い物を楽しむイメージが全くないので非常に意外だった。
「へぇ、もしかして、司も水着持ってないのか?」
何となくありえそうな話だ、と思いながら世間話ついでに聞くと、シャルは微妙な表情で首を振った
「えっとね、栞って、よっぽど気に入ったのじゃない限り一度着た水着は二度着ないんだって。だから今期分の水着を補充するって言ってたよ?」
「…………ブルジョワかあいつは」
水着だけとはいえ、一度着たものは二度と着ないとかどこの貴族だ。本当に貴族であるところのセシリアに感想を聞いてみたい。
「僕の収入から想像するに、栞の年収は最低でも
…………なんかもう、言葉がない。
とすると千冬姉もそのぐらいあるんだろうか。織斑家の家事全般を担っている俺だが、通帳は厳重に管理しているのかついぞ見かけたことがない。…………とすると、俺のバイトって100%無駄? いや、鬱になるからそれを考えるのはやめよう。
第一あの時点では俺がISを動かせるなんてわからなかったんだから、「(金銭的には)ほぼ意味のないバイトするぐらいなら剣道やってた方が良かった」なんていうのは無意味な感傷だ。
「っと。来た来た。しおり~! こっちこっち~!」
あと、“僕の収入から想像するに”ってことは、シャルも年収数千万とか行ってるのか? と思ったけど、丁度司が来たので口にする機会はなかった。
◆◇◆
「ところでさ、栞」
俺やシャル、司の水着に、箒の誕生日プレゼントとして白いリボン、と必要な買い物を終え、喫茶店(やっぱりちょっとお高め)で遅めの昼食がてらゆっくりしていると、シャルが唐突に真剣なそぶりで司を見た。
――なお、買い物にあたっては「見られるのも仕事の専用機持ちが安っぽいものを付けるな」と司によって高級店に連れ込まれたが、その顛末は思い出したくない。
「栞って、一夏の護衛だよね」
そんな、唐突なシャルの言葉に「は?」と俺は間抜けな声を上げた。
「?」
何を言っているのかわからない、とばかりに司は首をかしげる。表情はいつも通りの無表情だ。
「うん、だってIS学園で栞が学ぶことなんてほぼ無きに等しいでしょ? 織斑先生に教えてもらえるってメリットはあるけど、こっちには競争相手が生徒会長さんしかいないし、その生徒会長さんとも滅多に戦えないみたいだし、何より栞は一夏や箒にかまけて自分の訓練をほとんどしていない」
全くその通りだった。が、何故か俺はそんな理屈をどうしても認めたくなくて、思わず反論していた。
「いや、でも司は休暇だって、」
シャルは即答で首を振る。司は何も言わない。
「本当に社会勉強、というか一般的な高校生の生活を送らせる為に外に出されたのなら、それこそISと関係ない一般の学校に送るべきだよ。セシリアとかに聞いたけど、学校通いながら訓練受けてる代表候補生だってそんなに少なくないもの。警備上の理由から、完全に普通の学校っていうのは無理だろうけどね」
「でも、護衛っていう割には別行動も多いし……」
「うん。だから私も最初誤解してた。実際、栞みたいにIS一本で鍛えてきた人が、護衛としての働きに必要な能力を過不足なく持ってるわけないんだよね」
大きくシャルは頷いて、俺の言葉を字面の上では否定することなく推論を展開していく。
「
どう? とシャルは司に流し目を向ける。
司は大きく頷き、俺はその事に言い知れぬ衝撃を受けた。
「否定しないんだ」
「本国に問い合わせればわかる事。本人以外に対しては隠されてないし、私にとってはその隠蔽も努力義務」
俺に対してその事が隠されていたのは、あくまで千冬姉の配慮に過ぎない。と司は語る。
つまり――――
「じゃあ、一夏の事をフルネームでしか呼ばないのはそういう訳なんだ? あくまで仕事上の関係だ、って」
シャルのその質問に、
「違う。あれは千冬先輩への恩義とかが理由。緊急事態でもISに襲われなければ、緊急事態でなければ敵がISであってすら私の出る幕じゃない。普段から付きまとう意味はもっとない」
その答えに、ずっと真剣すぎる表情をしていたシャルは、ふわり、と表情を緩めた。
「ん、そっか。なら問題ないね。良かったじゃん、一夏」
「あ、あぁ……」
いつの間にか軽くなっている心に気付く事無く、俺は生返事を返す。一拍置いて、たぶんシャルは俺の事を心配してくれていたんだろう、と自惚れ気味に思い、シャルの方を振り向く。
何の事? と言わんばかりに首を傾げてはいるが、微笑ましそうな笑みを隠せていない。
ありがとう、と声に出さずに呟いて、俺はコーヒーを飲みほした。
・うちのシャル
「これだから、一芸特化の
あざとい。一夏に惚れていないので恋愛的なあざとさがない代わりに、戦術があざとい。メタ戦術の鬼。
第二世代機は装備を変更することであらゆる局面に対応できるというコンセプトなのになぜ原作ではメタ戦術をとらないのか。機体性能差による蹂躙に比べればメタ戦術なんぞ卑怯でも何でもないだろうに。
一夏を噛ませにしてまでああもシャルを優遇した理由は勿論例の設定の対価。
IS操縦者になってから二年、それも、デュノア社での扱いを考えると他のIS操縦者と比べて圧倒的に環境が悪かったはずなのに専用機持ちと第二世代機で渡り合える原作シャルは、鈴ほどではないにせよかなり強キャラのはず。