【完結】IS 復讐者の死に方探し   作:ZE

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楯無:「私の出番はこれからよ!(かっこ)原作的に(げんさくてきに)(かっことじ)
作者:「楯無頑張れ超頑張れ、お前がナンバーワンだ! そう、正しく世界の運命はお前が握っていると言っても過言ではない!」
楯無:「えぇっ!?」
作者:「続きは本編へどうぞ」
楯無:「ええぇっ!!?」

 8/18改稿


26.復讐者の死に方

 司が撃墜された。

 

 更識さんの指示通り福音を一撃で撃墜して帰還した俺は、そんな知らせを受けて危うく卒倒しかけた。

 目覚めてすぐ福音の所に向かったのは、白式にそう言われたからであってその事の意味を考えた行動ではなかったのだ。

 しかも、ただ撃墜されただけでなく、俺のように誰かに回収されておらず、その後の消息が不明だという。

 

 ――俺のせいだ。

 

 そう、思った。

 俺があの時密漁船なんかを庇わずにきちんと福音を落としていれば、こんな事にはならなかった。

 

 …………結局、俺には覚悟が足りなかったんだろう。

 自分の信じる事の為に、自分以外を犠牲にする覚悟が。

 だから、密猟者たちを見捨てられなかった。自分の失敗は自分でカバーすればいい、なんて、心の底で思ってた。

 

 三年前、モンドグロッソ当日に誘拐されたあの日を遥かに超える巨大な後悔。

 死にたくなるほど自分を責めながら、考えるのは司の事ばかりだった。

 初めて会ったあの時の事。毎日スパルタで鍛えられた事。極稀に魅せてくれるあの、思考をとろけさせるような極上の笑顔に、ほとんど変わらない表情をほんの少しだけ緩めて、とても幸せそうな雰囲気でお菓子をほおばる姿。

 幾つもの司の姿が、表情が浮かび、気付いた。

 

 ――あぁ、俺、あいつの事、好きだ。

 

 失って初めて気づく、という奴なのだろう。まだ失ったと決まったわけじゃないけど、本当に大切なものは、手元にあるときには気付けないのだ。

 

 ――今度会えたら、謝ろう。

 

 そして、伝えよう。

 

 ――――俺にお前を、守らせてくれ、と。

 

 

 そんな事を思ったその日の夜、司を連れた千冬姉が旅館に帰ってきて。

 

 翌日昼過ぎ、司からのメールが届いた。

 

 

 そして、箒と一緒に部屋に入っていった俺と箒に、突然司が抱き着いてきて――――

 

 ――――視界の左半分に、鮮血が舞った。

 

 

◆◇◆

 

 

「あらごめんなさい? 痛みを感じる間もなく死なせてあげようと思ったんだけれど、反応が鋭すぎて手元が狂ってしまったわ」

 

 抱き着くと同時にその首に爪を突き立てて引き裂いた私は、ウフフ、と血に染まった両手の爪を舐めながら、床に倒れ伏す篠ノ之箒を見下ろす。

 その顔に浮かぶ疑問の表情は、昨日までの友人がいきなり殺しにかかってきたことか、あるいは演技をやめた私の豹変か。彼女と同様に頸動脈を抉られた織斑一夏はすでにこと切れて――――はいないな。大量出血のショックで気絶しているだけっぽい。どうせすぐ死ぬけど。

 

 ――一見何の変哲もない付け爪に、ダイヤモンド粉末を塗布して凶器に仕立て上げた私の仕込みの一つ。人の一人や二人なら使い方次第で必殺出来る攻撃力と、あくまで宝石でしかないから金属探知器に引っかからない隠密性を兼ね備えた優秀な暗殺用武器だ。

 

「何が起きているのかわからない、という顔ね、篠ノ之箒」

 

 ぺり、ぺり、ぺり、と付け爪をはがす。この二人ならともかく、もう一人のターゲットをこんなちゃちな仕掛けで殺せるとは思っていない。

 

「貴女の姉が悪いのよ? 白騎士事件なんてものを起こして、私の家族をぐちゃぐちゃにしてくれたあいつが。そしてついでに言えば、あいつが貴女を溺愛してる事とか、あるいはあいつがバグキャラすぎてとてもとても私の手で殺せる気がしない事とかが、ね」

 

 ――本当、残念だわ。と、呟く。

 

 嘘ではない。友人をこの手で殺めることになったのは本当に残念だ。例え最初からそれを想定して近づいたとしても、そうなるだろうと思って元々諦めていたとしても、残念なことは変わらない。

 

「そうね、きちんとあなたが私を恨んで死ねるように言っておくと、貴方達に近づいたのは最初からこの為。篠ノ之束を殺す目途が立ったとか、白騎士事件の主犯が別にいるとかの展開になったらまた違ったでしょうけど、貴方達と仲良くしようとしたのは、七割方こうやって、油断させて殺す為よ。だから思う存分私を恨みなさい、貴女にはその権利が――――」

 

 と、初めて人前で復讐心をさらけ出した――雛菊は別だ、あれは私の半身に近い――ことへの解放感で気分よく演説をしていると、いつの間にか篠ノ之箒がこと切れている事に気付いた。

 

「あら? もう死んでる?」

 

 ……まぁ、別にいい。

 

 クローゼットから取り出した、総重量十数キロのベストを羽織り、その上からコートで適当にごまかす。

 本気で隠す気なんてないんだからこれで十分、と頷いて、端末から千冬先輩にメール。緊急と言って呼び出す。

 

 

 

「しおり――っ!?」

 

 バタン、と大きな音を立てて扉を開いた千冬先輩は、その目の前に広がる鮮血の光景に、そこに倒れ伏す織斑一夏と篠ノ之箒、そして血まみれの私の姿に絶句した。

 

「おっとそこまででーす。千冬先輩とはちょっとお話ししたいんで近づいてこないでもらえます? 後、ドアも閉めてください」

 

 千冬先輩が状況を理解する前にコートの内側にある物、格納庫からパクってきたグレネードを改造した爆弾を見せる。織斑千冬を殺すなら、これぐらいの仕込みは必要だろう。

 まぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、普通に接して信頼関係を築ける相手は楽でいい。

 

「…………貴様、何者だ」

 

 震え上がる程の殺意がこもった視線が私を刺し貫く。でも、それがどうしたという話だ。そんなもので足がすくむ程度の覚悟で、私はここに立っていない。

 

「それは随分と寂しい言い分ですね。一度も本性を見せた事なんてなかったとはいえ、あれだけ可愛がってくれたのにいざ本当の姿を見せたら偽物と勘違いされるだなんて」

 

 いつもとは全く違う、感情豊かな表情にオーバーアクションで「よよよ」と泣き崩れる演技をする。

 私のそんな姿を数秒凝視して、千冬先輩は頷いた。正直、今の私と仮面の私、どこをどう見たら同一人物と判別できるのかわからないのだけれど、その辺は千冬先輩だから仕方ない事なんだろう。

 

「確かに、お前は栞だな。では何故――」

 

「さっき自分で言ったでしょう?“私が篠ノ之束を憎んでも千冬先輩は何もしてくれない”って。だから私は、千冬先輩の手を借りなくとも可能な方法で篠ノ之束に復讐するんです」

 

 千冬先輩が協力してくれれば、あれも殺せるかもしれなかったんですけどねぇ。と、心底残念だという顔をして私は呟いた。

 千冬先輩は、完全に血の気を失っている。

 

「だが、なぜそれで一夏や箒を――」

 

「常識的に考えてください。世界中にハッキングして2341発ものミサイルを強制発射させられる化け物をどうやったら殺せると? 全世界の総力を挙げて追いつめたところで、向こうが本気になって情報面での攪乱を行ってきたらあっという間に国家体制なんざ崩壊するでしょうに。非ローカルな電子化されているシステム全てが当てにならないんですよ? 無線電波すら妨害されるでしょうに、先進諸国は一体どうやって足並みをそろえるっていうんです。そんな化け物を殺せるとしたらそれは、信頼を逆手にとってだまし討ちができる、貴方達身内の連中ぐらいですよ千冬先輩」

 

 しかも、福音の例から考えればISすらあてにならないというのに。と吐き捨てる。

 

 自分で作った、兵器として利用できる物を世界に放出した以上それに対する対抗策を持っていないわけがないと思っていたけれど、その正体はISに対する天敵としての何らかの兵器ではなく、創造主権限によるIS自体の強制無力化。これでは本気でどうしようもない。篠ノ之束に敵対したら最後、自陣営の全てのISを強制停止させられて篠ノ之束の無人ISに蹂躙されるだけだろう。

 

「私の手であいつを殺すことができないのなら、せめて、あいつが私の大切な物を奪ったように、私もあいつの大切なものを奪う。何も難しい話ではないでしょう?」

 

 まるで気が狂ったかのような、恍惚とした笑みで語る。僅か十五年の私の人生の半分以上を費やした、復讐の成就。実際、篠ノ之束を苦しめる事を復讐の目的とするなら、本人を殺すよりきっとこっちの方が上だろう。何せ、死んでしまったら何もないのだから。

 

「ま、待て! 確かにISが原因かもしれないが、お前の父を狂わせたのは――――!!」

 

 ここまで来て命が惜しくなったのか、あるいは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、千冬先輩はまるで出来の悪い言い訳のようなことを叫ぶ。

 

 

「――あぁ、そういえば千冬先輩は知らないんでしたね」

 

 

 パン、と大きく手を叩いてにっこりと笑う。その手の間に挟まれた起爆スイッチに、千冬先輩の顔が強張った。すごく楽しい。私、実はサディストかも。

 

 

「父はこの国を守るために自らスケープゴートになって、そんな父の娘であるという事実が私の未来に影を差さないように、あんな無理心中未遂を仕組んだんですよ? ちなみに母も同意済みだったようですし、夕さんも知ってます。なので、私が恨むべき相手は篠ノ之束以外存在しないんですね」

 

 

「…………」

 

 そう、楽しそうに教えてあげると、千冬先輩はとうとう言葉を失ってしまった

 

 

「ではそろそろさようなら。ヴァルハラで会いましょう? ブリュンヒルデ」

 

 

 カチ、と手に持ったスイッチを押し込み、体に巻き付けた爆弾が、私の肉体を血煙にしてしまう一瞬前――――

 

 

 

 ――――ドアをぶち破って入ってきた水流が、爆風を抑え込むかのように、私の周囲を包み込むのが見えた。

 

 

 

 あぁ、殺せなかったか。

 

 

 まぁいいや。

 

 

 これでようやく、ゆっくり休める――――




-DEAD END-
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