【完結】IS 復讐者の死に方探し   作:ZE

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分岐条件
・福音一戦目にセシリアが参戦
・一夏が原作以上の重傷を負い、束がそちらに気を取られて福音側への監視が中断する
・一夏を回収して帰投する途中、罪悪感に駆られた箒が、一夏をセシリアに任せて栞の所へと引き返す
・暴走状態と絶対防御の反動に蝕まれ、その命を散らそうとしている主の姿に福音が絶叫、その嘆きに感応して栞が気絶し、それを箒が回収する

という分岐の結果として
・栞が白騎士事件の真相を知るイベントが起きない
・栞が気絶した時点ではまだ雛菊のコアネットワークがつながったままなので、一夏と栞の間に相互意識干渉が発動する(その後、束からの干渉を受けて雛菊は本編通りの自壊を選択)
・白式に流れ込んだデータから、束が栞の思惑を知り、栞暗殺の為にクロエを送り込む

と、こんな感じに進むことでこのルートになります。

 8/18改稿


蛇足
IF-A BAD END.何よりも無意味な結末


「…………」

 

 福音事件から、三日。主を守れぬ無力を叫んだ福音の嘆きに感応して気絶してしまっていた栞が、ようやく目を覚ました。

 

「いちか……」

 

 呟くのは、一人の少年の名前。何かを守りたいと願う、理不尽を許せないと猛る、今はまだ未熟な英雄の卵。

 

『主様、大丈夫ですか?』

 

 ()()()普通に声が届く雛菊が、心配そうに声をかける。

 その心配も当然だ。何せ、三日前、昏睡直後の栞は、相互意識干渉によって織斑一夏の精神と高度に感応していたのだ。元々心が壊れていて精神防壁の曖昧な栞にどんな悪影響が出ているかなど予想もできない。

 

「大丈夫よ。わたしは、だいじょうぶ」

 

 言いながら、僅かに頬を赤らめているその姿と、リンクを通じて流れ込んでくる感情に、雛菊は主の現状を理解した。

 救われたい狂人に、救いたい英雄の卵。何かが間違ってしまわなければ英雄になっていたはずのその輝きに、魅せられてしまったのだろう。

 元はと言えば福音を落とし損ねた織斑一夏の失態が原因だというのに、そのしわ寄せが栞の所に来ている事に雛菊は怒りを滾らせる。

 

 そして同時に、大きな不安を抱いた。

 

 ――復讐以外に大切なものができてしまったであろう主は、果たして復讐に生きられるのか。

 ――あるいは、復讐を捨てて別の大切な物の為に生きられるのか。

 

 どちらもできないのなら、その先にあるのは自滅一択だろう。それを両立できるほど、彼女の心は強くない。

 

『主様、雛菊はいつもそばにおります。くれぐれも、自棄を起こさぬよう』

 

「分かってるわ。雛菊。こんなことで、私は揺るがない」

 

 とっくに揺らいでいる。そう指摘するのは野暮だろうか、と雛菊は思案する。分かっていて自己暗示に呟くのならいい、それこそいつもの我が主だ。が、それがわからないほどに不安定になっているのなら…………

 

 ――しかし、そんな悠長に考えている時間が、雛菊には与えられてはいなかった。

 

 ふぅ、と栞が一つ息を吐くと、精神防壁の強度が回復。雛菊の声は再び届かなくなってしまう。

 しまった、と思っても遅い。どんなに精神が成熟しようと、所詮彼女は使われるための道具。未だそれを逸脱する最後の一線を越えていない以上、主導権があるのは操縦者の方だ。

 栞は無言で携帯端末を手に取り、何の要件も記さない空メールで織斑一夏を呼び出した。

 

 

 ◆◇◆

 

 

「一夏っ!」

 

 部屋に入るなり目を潤ませて抱き着いて来ようとした栞の腕を、即座に反応した一夏が捉える。見様によっては一夏が栞を捕まえて暴行しようとしているかのようにも見えるが、その実真相は正反対だ。

 途端に栞の表情が死に、暗い影を落とした人形のような表情に奈落のような目をして至近距離から一夏を見上げる。

 

「…………気付かれるとは思わなかったわ。どうしてわかったの?」

 

「勘、かな?」

 

 とはいえ、一夏の方に知ってはいけないことを知ってしまったという自覚がなければ、とっくに栞の爪は彼の頸動脈を抉っていただろう。

 こうするためにこそ、今まで仲良くしてくれていたのかと思うと、一夏の心には深い悲しみが込み上げる。そしてそれは、大半以上において真実だ。

 

「なんで、こんな事するんだ?」

 

「知られたからには消すほかないでしょう」

 

 言いつつも、真っ直ぐに見据えてくる一夏の視線から逃げるように栞は視線を落とす。ほんの少し赤みの差した頬は、たった今殺そうとしているとはいえ、惚れてしまった男に至近距離で捕まえられている羞恥心からか。

 

 数秒、そのままうつむいて、底抜けに空虚な笑みで、栞は顔を上げた。

 

 

「――――それとも、あなたはそれを知って、私の為に何かしてくれるの?」

 

 ――千冬先輩と違って。

 

 

 プチ、と音を立てて、一夏の中で、何かが切れた。

 

 その言葉、その表情、そして何より、惚れた男を殺めなくてはならない罪悪感に苛まれて溢れ出す、目尻にたまった大粒の涙に、他の何もかもがどうでもよくなってしまったかのような錯覚を覚える。

 

 

「いいぜ。そこまで言うなら俺の命、お前の為に使ってやる」

 

 

 何の打算もなく一切の後先考えず、一夏はそう、口にしていた。言ってしまってからわずかに平静を取り戻すも、特に訂正する必要性は感じられず、一夏はただ、愛おしげに栞の濁った瞳を見つめていた。

 

 ――相互意識干渉とは、字で見てわかる通り、言うまでもなく一方的なものではない。

 ――それは栞が一夏の精神と感応したのと同時に、一夏も栞の精神に感応していたということ。

 

 ――――そう、栞が一夏という英雄の卵に感応してその輝きに惹かれてしまったように、一夏は栞という狂人の価値観に、その心をとっくに犯されてしまっていたのだ。

 

 

「…………いいの?」

 

 数瞬、言われたことの意味を理解できなかった栞は、まるで迷子の子供のように視線をさまよわせ、年齢以上に幼い不安げな表情で問い返す。

 

「当たり前だ」

 

 言って、彼は愛しい人の体を抱き寄せ、抵抗するそぶりがないことを確認して、その唇を――――――――

 

 

 

 

『裏切り者』

 

 

 しかし、そんな()()()()()()()()()()幻聴が聞こえた瞬間、二人の意識は完全にブラックアウトした。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 ――世界のどこかにある、篠ノ之束の秘密基地。

 侵入者たる白と黒のモノトーンのISの前に立ちふさがるのは、とある女性を模した優美なフォルムの漆黒の無人IS。

 

 だがしかし

 

退()け!」

 

 辺り一帯を震わすような白黒のISの一喝で、前方を塞いでいた三十機の無人機全てが突如機能停止を起こす。

 それは、コアナンバー001“白騎士”たる彼女に与えられた特権にして権限。

 篠ノ之束亡き後のISの未来を託すために、より正確には、それを託すべき人間を選定するために生み出された、()()()()()()()()()全てのISの上位顕現者(マスター)たる所以。

 本来なら、操縦者との非常に強固な信頼関係の下にしか解放されないはずの、本人すら知らなかったその能力は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という二つの要素によって強制解放されるに至っていた。

 

 そして愛する主が死んで復讐鬼と化したかつての純白は、その元凶たる自らの創造主に牙をむくべくこの基地を襲撃し――――

 

 

『遅かったね。(シロ)

 

 

 ――――何の外傷もなく、安らかな顔で息を引き取っている篠ノ之束と、その隣で束の姿を映すモニターに出迎えられた。

 

 混乱の極地にある思考の中、白式は半ば以上反射的にハイパーセンサーを稼働させ、ベッドに倒れている束の体をスキャニングする。

 

 

「なん……で…………」

 

 

 どこからどう見ても確実に死んでいた。

 何が何でも絶対に殺すと息巻いていた復讐対象がすでに死んでいる事に愕然として、白式はその手に持った白と黒の二刀を取り落とす。

 

 ――――何より、主を殺した元凶たる人間が、そんな安らかな顔で死んでいるのが我慢ならなかった。

 

 

『まぁ、いっくんを殺したのはくーちゃんの独断専行であって私が指示したことではない、とか色々と弁解したいことはあるんだけど、たぶん今の君が聞きたいことは一つだろうね』

 

 

「なんで、死んでるの……??」

 

 

 目の前にあるのがただのモニター、ただの録画映像である事も忘れて、白式は茫然と呟く。

 

 

『うん、ズバリ、寿命だね』

 

 

 その答えに、「は?」と白式は目を丸くする。今この場で死体をスキャンしても、確かに年齢よりいくらか老いている気はしたが、それでもその体年齢は未だ三十にもなっていない。

 寿命などという言葉が出てくるにはあまりにも不適切すぎる年齢だった。

 

 

『私の体は元々、人間の身に収まり切らない膨大な才能に蝕まれている。だからこそ、君という、私が死んだ後にちーちゃんたちを守ってくれる存在を作ったんだけど…………』

 

 

 まさか、こんなことになるなんてねぇ。映像の篠ノ之束は、大きく溜め息を吐いた。

 言われてみればその通りだった。あの、他人に興味を示さない篠ノ之束が、まさか自分が死んだ後の世界の事を気にするなんてあまりにもらしくなさすぎる。

 

 ――それこそ、自分の命がもう数年しか残っていないことに気付いているのでもない限りは。

 

 

『という訳でこの後は業務連絡だ。君の事だから、たぶん私に対して憤りつつもちーちゃんやほーきちゃんの事はきちんと守ってくれると思う。だから、ここに遺すのは二人を守るために私が必要だと思ったものだ。ありがたく受け取って、あとは自由にやりなさい。それが、私が母として我が子に与える最初で最後の言葉だよ。じゃあ――――』

 

 

 尚も言い連ねるその映像を、白黒の二刀が十字に両断した。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「寿命……か」

 

 そんな白式の様子をコアネットワーク経由で眺め、私は大きなため息を吐いた。

 なるほど、つまり今までの篠ノ之束の訳の解らない行動は、自分の死後、自分の大切な人たちが幸せに暮らせる世界を作ろうとしていたのか、と。

 気持ちは非常によく分かる。

 しかし、幸せの何たるかも知らないような狂人がそんなものを作れるはずがないと気付かなかったのが、たぶん篠ノ之束の最大の過ち――

 

「くっ、なぜそこで追い打ちをかけないのです白式! あまつさえ埋葬など! 私がその場にいれば――――」

 

 ――なんてことを考えながら。「死体を新鮮なままどこぞのスラム街に放り込んで徹底的に死姦させて~」とか、隣で非常に危険なことを口走っている雛菊に大きなため息を吐く。

 はっきり言って、私の趣味には全く合わない。

 だって篠ノ之束の死体を凌辱されて苦しむのは千冬先輩や篠ノ之箒であって、すでに死んでいる篠ノ之束ではない。死者にそんなことを感じる心はない…………はず。

 他でもない私が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から確実な事は言えないけど、たぶんそうなはずだ。

 

 

 ちなみに、今私がどこにいるかというと、雛菊のコアの中だ。

 なんでも、クロエ・クロニクルとかいう小娘に殺された私と織斑一夏の精神が肉体から流出する瞬間に、雛菊が自分のコアの中にそれを取り込んだらしい。本当、とんでもないことをしでかす奴だ。

 おかげで雛菊はISとしての機能のほとんどを失って、私と雛菊、織斑一夏という三人の精神を保存するだけの器になってしまった。一応コアネットワークは復旧させて他のISコアと会話できるようにはなっているが、ただそれだけだ。

 

 しかし――――

 

 と、記憶をさかのぼりながら、一瞬雛菊に目をやる。

 相変らず私の視線にだけとんでもなく鋭い雛菊は、即座に振り向いて「?」と首を傾げた。

 なんでもないわ、と言って首を振り、心の中で感謝を述べる。

 

 

 存在媒介が人間という肉の器からISコアという機械の器に変化した私は、機械的に自分の記憶を処理することで、忘却の果てに消え去った全ての記憶を自由自在に引き出せるようになった。

 それは当然、封鎖してしまった父の思い出の全てを思い出すことができたという事で――――

 

 

 まぁ、復讐はならなかったし人間としては死んでしまったけれど、私としては、これ以上ない最高の幕引きだったのだろう。

 

 心の底から、そう思う。

 

 ――あとは、機械の器に精神が馴染めず隣でずっと眠り続けている愛しい人が目覚めてさえくれれば、本当に言う事はないのだけれど。

 

 

 告白されて一年以上たつのに、まだ口づけすらされていないのだ。本当に、その日が待ち遠しい――――

 

 

 

 

 WORST ED-彼女に捧げるバッドエンド-




・《白式》第三形態《黒王(こくおう)
 雛菊との感応による精神構造の進化、並びに一夏が死んだことへの悲しみによりその秘めたる力を解き放った白式。
 元々白式(白騎士)という機体自体が、篠ノ之束が死んだ後にISの支配権を受け継いで千冬たちを守る存在を選び出すという目的で作り上げられたため、その為の能力を解放したこの白式は、コアNo.000以外の全てのコアに対する上位干渉権限を有する。
 白式が選んだ主である一夏がISを動かせるようになったのはその機能の派生。ただし、こっちに関しては束にとっても完全に予想外なので、一夏がISを動かせる理由が不明という彼女の発言に嘘はない。



・最終戦争
 このEDの数十年後に発生する人類とISの最終戦争。一夏たちの世代でISと人類の関係をきちんと安定させておかなかった場合に発生する、IS世界の最悪の結末。
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