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ところで、ISにおいて最も多くの量子変換領域を喰うのは一体なんなのか知っているだろうか。
これはまぁ少し考えればわかりそうな話だが、ISコアそのものだ。
ISの格納領域は、より高度な技術で作られた物ほど多くの変換領域を占有するのだから、未だ篠ノ之束以外の人間には解析すらできていない超技術の塊であるISコアがその筆頭に立つのは当然だろう。
なら、二番目は?
これも恐らく、少し頭を働かせれば分かるだろう。一番がコアとくれば、二番目は筐体だ。
ISの量子変換領域の95%以上は元々コア自体の容量で埋まっていて、残りの5%の内の3%ほどが筐体の容量、残った2%に更にリミッターが掛けられたのが、一般のISの量子変換領域の容量だ。
前置きが長くなった。本題に入ろう。
……では、
ここに示されるのは、その一つの答えである。
◆◇◆
ここは、IS学園第二アリーナ。
たった今から学年別トーナメント一年の部、一回戦第二試合が開始されようとしているその場所で、三機のISと一人の人間が相対していた。
一つは銀髪赤目の小柄な少女が操る漆黒の機体、《シュヴァルツェア・レーゲン》。
一つは長いポニーテールがトレードマークの、気の強そうな黒髪の少女が操る鋼色の機体、《打鉄》。
一つは、赤みの強い茶色の髪をした、のほほんとしてどこか気が抜けたような少女が操る深緑の機体、《ラファール・リヴァイブ》
そしてもう一つは
三機のISが空中に浮遊する中、たった一人だけISスーツを着用するのみで一片の装甲も纏わず地面に立っているその少女の有様は、異様という一言で表現するのが躊躇われるほどに非常識な姿だった。
相対する二人も動揺を隠せないが、しかし、管制室が何も言ってこない事を考えるとこれで問題ないのだろう、と割り切って、戦闘に集中しようとしている。
「思兼、コード認証。稼動率100%承認、特殊戦闘プログラム01起動」
独り言を呟くような小さな声が、しかし、まるで死神の宣告のように、おかしなほど強く、全ての人間の耳に訴えかける。
直後、管制室からのカウントダウンが開始。あくまで自然体な少女の姿とは対照的に、鋼の鎧を纏った三人の体に緊張が走る。
そのうちの一人、水色の髪の少女のタッグパートナーである、ラファールを纏った少女の顔が不自然に強張っていたことに気付けたのは、果たして何人いただろうか。
――――そしてその中に、その表情の理由が戦闘前の緊張とは全く関係のないものであると気付けたのが、果たして存在しただろうか。
5、
4、
3、
2、
1、
0、カウントアウト。
試合開始と同時にスラスターを最大稼働して距離を詰めようとするシュヴァルツェア・レーゲンと打鉄。直前に展開した重機関銃二基の掃射によってその正面を塞ごうとするラファール。
そして、
「
この期に及んでなお、身体ではなく口を動かし、目を見開く事すら――ハイパーセンサーがあるので不要と言えばその通りだが――しない少女。
「《
だがしかし、直後、少女の周囲に広がった猛烈な光が、その中から現れる無数の鋼の輝きが、全ての疑念の答えを示し、相対する二人に絶望を運ぶ。
――――光が収まった後に残されたのは、
「――――
言霊じみた少女の音声コールによって、百八基のミサイルポッドが三百を超える無数のミサイルを一つとして互いに衝突させる事無く吐き出す。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
これも軍人としての教育の賜物か、本能的な恐怖に駆られて、肩のレールカノンでその恐怖の根源たる水色の髪の少女を撃ち抜くシュヴァルツェア・レーゲン。
回避どころか受け身もとらずに少女はその弾丸を受け入れてアリーナの外壁まで吹き飛ぶ。
――だが何の問題にもならないし、何の問題解決にもならない。
ミサイルの全てをその圧倒的な思考能力で
「くっ、このっ!!」
呆気にとられて反応の送れた打鉄が、慌ててアサルトライフルを展開してミサイルを迎撃しようと弾幕をばらまく。
本来なら、発射点の至近距離で爆破されることで、全てのミサイルがブラザーキルして逆に操縦者自身を焼き殺すはずのその対応策すらも、無意味。
後続のミサイルを守るかのように前面に展開されたKEM(運動エネルギーミサイル)がその強固な弾体でもってアサルトライフルの銃弾を弾き返す。直進することができなくなった弾丸に最早貫通力など存在せず、鋼の壁をすり抜けて後ろへと届いた一部の弾丸すら、
レールカノンを実質無駄打ちしたシュヴァルツェア・レーゲンは、再装填を待ってはいられないとワイヤーブレードでもってミサイルを撃墜しようと六本のワイヤー全てを射出する。
だが、それをカバーするのはラファール・リヴァイブ。重機関銃二門による圧倒的な弾幕は、小回りが利かな過ぎて相手の機体を捉える事こそ敵わないが、ミサイルを攻撃しようとするワイヤーをその圧倒的物量で押し返すには十二分に過ぎる。
そんな、僅か数瞬の攻防の果て。ついにミサイルの一基が打鉄を捉え――――
――――アリーナの半分を焼き尽くす総勢2341発のミサイルが、シュヴァルツェア・レーゲンと打鉄のシールドエネルギーの全てを瞬く間に消し飛ばした。
『シュヴァルツェア・レーゲン、打鉄両機シールドエネルギー0。試合終了、勝者、更識簪&布仏本音ペア!!』
「戦いは数だよ。本音」
どこか自慢げに、無表情というこの上ないドヤ顔で言う己の主の姿に、本音の顔は終始引きつりっぱなしだった。
・《
簪の固有戦技(?)
コア本体と思兼を除く全てのパーツを取り外し、残りの領域全てに詰め込んだ無数のミサイルポッドを思兼の演算力で
国家代表級未満ならほぼ全ての相手を一方的に撃滅可能だが、余りにも非常識すぎるというか非常にアンフェアな気がするので、簪が使用することは基本的にはない。