【完結】IS 復讐者の死に方探し   作:ZE

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 次の栞視点とワンセットの話なので、今回は短いです。

セシリア:「わたくしの戦いはこれからですわ!」
作者:「あ、ちょろいさんお疲れ様でーす。次、出番福音戦なんで画面裏で練習しててください」
セシリア:「えっ?」
※半分は冗談です。
セシリア:「えっ?」

 ISってヒロインが多いから、きちんと取り上げてると尺がいくらあっても足りないんですよねぇ。

 8/18改稿


7.彼女の事情(正)

『詳しくはwebで。もしくは織斑先生に』

 

 セシリアの話を盗み聞いてしまったのとは別に、あまりにも衝撃的だった司の過去の事が気になっていた俺たちに、司は先手を打ってそう言ってきた。

 俺も箒も自己紹介でのあれは洒落だと思っていたんだけど、セシリアの反応を見る限り、結構な割合でマジらしかった。

 が、やはりネットで調べるというのは、本人の許可を得ていてもなんだか後ろめたい気がして、俺達はその足で千冬姉のいる寮長室へと向かったのだった(司とセシリアはお茶会中)。

 

「あいつがそう言っていたのか…………」

 

 セシリアの事を伏せて千冬姉に事情を話すと、千冬姉は何やら難しい顔で考え込んでしまった。ちなみに、現在地は俺と箒の部屋だ。

 

「まぁいい。あいつと関わる以上、いずれ知る事だ」

 

 大きく息を吸って、千冬姉は何やら決心を固め、能面のような表情で告げた。

 俺も箒も、そのあまりに深刻な千冬姉の様子に、どんな悲劇的な過去があっても受け入れる決心を固める。

 

 が、

 

「あいつは、栞はな、ある意味で――――」

 ――――――白騎士事件の、被害者だ。

 

 そんな決心は、ガラスの鎧のように砕け散った。

 

 

◆◇◆

 

 

 ――白騎士事件。十年前のある日突然、全世界のコンピューターがハッキングされ、2341発のミサイルが日本に向けて放たれ、そこに突然現れた、純白の飛行型パワードスーツを纏う女性、通称白騎士がその全てを撃退。

 その脅威におののいた世界中の国々が軍隊を派遣し、鹵獲ないし抹殺しようとしたが、その全てを無力化され、白騎士はそのまま、光学系すら騙す完全なステルスでどこかに消えていった、という一連の事件だ。

 そして同時に、世界に初めてISという存在が本当の意味で知られた日でもある。

 

 しかし、その事の重大さに反比例するように、被害は余りにも少なかった。

 死者ゼロ人。全てのミサイルは海上で撃墜されて本土には一切の被害を出さず、その後襲来した多国軍すらも、たった一人の犠牲者も出さずに白騎士は鎮圧して見せた。

 なので、実質の被害はそれら各国軍の撃墜された兵器群と、元々のハッキングによる損失だけだ。

 

 ――しかし、「人死には出なかったから大団円」で済むわけがなかった。

 

 当然、ミサイルへのハッキングを許した各国では関係部署で無数の人間の首が切られた。それが結果として、後に女尊男卑の社会体制へと移行する際、それらの部署に女性を就職させるための丁度いい空き枠になった、それどころか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことすらあったという大人の生臭い事情もあったらしい。

 

 では、ハッキングされていない、ミサイルを撃たれた被害者側である日本はどうなのか。

 

 流石に2341発のミサイルを防ぎきれなかった責任を誰かに取らせる、なんて話にはならなかったらしい。その辺は白騎士という英雄に全面的に押し付けたほうが、後のIS政策でも都合が良かったからという理由が大きかったようだけど。

 

 だが、もう一つはダメだった。

 

 何がダメなのかと言えば、緊急事態に混乱していたとはいえ、全くの無許可で進軍してきた――その規模からすれば、宣戦布告と取られて何もおかしくない数の――他国の軍隊の侵入を許してしまったことだ。

 

 それによって首を切られた唯一の――正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が司の父親だったのだそうだ。

 それはつまり、他の政府高官たちが自分の立場を守るために日本国民へと捧げた、体の良い生贄の羊(スケープゴート)である。

 司の父は、国の為にこれまで必死に尽くしてきたにもかかわらずスケープゴートにされて職を追われた事で心を病み、妻と娘に幾度となく暴力を振るい――――

 

「妻と娘を巻き込んだ無理心中を企て、娘を命がけで庇った妻と刺し違えて死んだ。それが、栞の両親の死の真相だ。過程はともかく、原因が白騎士事件という意味では、白騎士事件の犠牲者遺族で間違いないよ」

 

 ――――だから、私はあいつを見捨てられない。世界から束を庇う事を決めてしまった私は、ISという存在そのものの被害者であるあいつに、償う義務があるからな。

 

 

◆◇◆

 

 

 白騎士事件の被害者。

 ISという存在の被害者。

 束さんが殺した人。

 そんなもの、考えたこともなかった。

 確かに束さんはISを生み出して世界を大きく変革させ、巨大な混乱を生み出した人だけど、俺にとっては、ちょっとエキセントリックではあるけど、気のいい近所のお姉さんで、箒の姉で、千冬姉の親友で。

 マッドな天才科学者ではあったけど、人体実験とかするような人じゃなかったし…………

 

 だけど、一人の天才科学者が人体実験で何十人何百人の人を犠牲にするよりも、ISという存在を世界に放り込むことで、結果的に束さんが破滅させた人は遥かに多いのだ。

 その中にはもちろん、司のお父さんのように、死んでしまった人だっていて…………

 

 

 ――――束さんは、その事を、一体どういう風に思っているんだろう。

 

 

 無性に、それが聞きたかった。

 

「なぁ、箒」

 

 何となく、隣のベッドで、俺と同じように横になっている箒に声をかける。

 

「なんだ、一夏」

 

 やはり、その声は硬い。箒は昔から正義感が強かったし、何より融通が利かなかったから当然だろう。束さんがISを生み出したせいで家族が離れ離れになったといって嫌っていたけれど、そうでなかったとしても反応は同じだったと思う。

 

「束さんのこ――――」

 

「私とあの人は関係ない」

 

 言いかけた俺の言葉を遮り、箒は非常に強い口調で断じた。先週、篠ノ之束の妹という事で周囲から色々言われた時とは、言葉は同じでもその重みが違う。

 

「――――関係していて、たまるものか」

 

 余りにもどす黒い感情が宿った声。ありったけの負の感情をこめてとことん煮詰めたような、瘴気すら感じさせるそれに鳥肌が立つ。

 

「あの人をまだ親友と呼べる、千冬さんがわからないよ。私には」

 

 ――お前はどうなんだ? 一夏。お前はあの人の事をどう思っているんだ? あるいは、それでも擁護する千冬さんの事を。

 ジロリ、と、仰向けになったまま視線だけを向けてきたその瞳が、そこに宿った、八つ当たりとわかっていても抑えきれない怒気が、まるで俺に贖罪を強いているかのようで。

 

「わからねぇよ」

 

 ――俺は、自分がわからない。

 

 それが、今の俺ができる、唯一の回答だった。

 守りたい、とは思う。それは箒の事でもあるし、千冬姉の事でもある。束さんだって、正直千冬姉以上に俺が守れる気はしないけれど、俺は守りたいと思っているだろう。

 

(でも、だからと言って――――)

 

 脳裏に浮かぶのは、あの時の司の声、聞いているだけで胸が張り裂けそうになるほど悲しみに満ちた、しかし、この上なく優しげな。

 きっと普段、司が感情を表に出さないのは、内に秘めた悲しみを押し殺す為なんだろうな、なんて、思ってしまうような。

 直接手を下したのは全く別人でも、あの悲劇の原因を作ったのは、束さんだ。無理心中はともかく、司のお父さんが心を病んだこと自体は。

 

(司は、ISの事、どう思っているんだろう)

 

 一度考え始めると、思考は瞬く間に彼女の事で埋め尽くされている。

 彼女は、ISに親を奪われたも同然であるのに。どうしてあんなにISに対して一生懸命になれるのか。

 あるいは、強くなったのはただの結果で、お父さんの記憶を切り捨ててしまった事に苦しむあまり、自分で自分を痛めつけていただけなのか。

 いや、だとしても。

 

「司はISの事、どう思ってるんだろうな」

 

 独り言をつぶやくようでいて、その実、箒に何か答えを出してくれることを求めて、ポツリとそう口にする。

 

「嫌っては、いないと思うがな」

 

 少し思案する風に時間をおいて、箒はそう答えた。俺もそうであると、そうであってほしいとは思う。

 実際、俺が零落白夜を握った時にはその事への嫉妬を感じたのだ。ISを嫌っていたらそんな感情は出てこない、と思う。

 ISは嫌いだけど千冬姉は好き、という事もあり得るのだろうか。司の感情は、ひどくわかりにくい。でも何となく、千冬姉や山田先生の事を慕っているのは感じ取れる。

 

「一夏は、栞に、名前で呼ばれたことがあるか?」

 

「ん? いや…………」

 

 数秒考えて、首を振る。

 千冬姉や山田先生以外の人間を、司は基本フルネームの呼び捨てで呼ぶ。最初は二人が先生だからか、と思ったけど、“せんせい(先生/師匠)”と呼ばない時でも“千冬先輩”や“やまや先輩(やまや先生)”などと呼んでいるから、単純にそういう問題でもないんだろう。

 俺達がまだそう呼ばれていないのは、司の基準で呼び方を変えるようになるレベルまで仲良くなれていないからだと思っていたけど……

 

「そうか」

 

 だが、俺の答えに何の説明も返すことなく、箒はそのまま押し黙った。もしかして、何かに気付いたのだろうか。

 気付いたのだとしたら、どんな些細なことでも知っておきたい。そんな思いを込めて箒を凝視する。どこか心ここにあらずの様子だった箒は、五秒ほどして俺の視線に気づき、苦笑した。

 

「あぁ、一夏が悪いんではないだろうさ」

 

「何のことだよ」

 

 司の事だというのは分かるが、司の何のことについてなのか、疑問も心当たりもありすぎてわからなかった。

 

「一夏が栞を名前で呼ばせてもらえない事、だ」

 

「あ~…………」

 

 声が漏れる。そう、司の事を“司”と呼んでいるのは、俺の知る限り俺と、教師モードの千冬姉や山田先生だけだ。俺が男だからなのか何なのか、俺以外に対しては基本、栞、と名前で呼ぶように言っているらしい。

 何故だか真剣に落ち込んできた俺の様子を見て、箒はクスリと笑った。笑うようなことか?

 

「おそらくだが、男性恐怖症だ。何となく、一夏が一定以内の距離に行くと体が強張っていた。IS操縦者の例に漏れず男慣れしていないだけかと思っていたが、それにしては何となく違和感があった。きっと、父親に殺されかけたのがトラウマになって男全般が怖いんだろう。一夏と栞では結構な体格差もあるからな。初対面でも握手を断られただろう? IS操縦を教わっている時だって、身体接触をされたことは一度もないはずだ」

 

 記憶を掘り返す。握手を断られたのは覚えてるし、そういえばよく考えるとIS越しにでさえ手を触れた/触れられたことがなかった気がする。

 

「まぁ、知っているであろう千冬さんも何も言っていないから、周りが特別気を使うほどでもない、かなり軽度の物だとは思うが」

 

 少なくとも、自室に招いても大丈夫な程度には、か。

 確かに、あの時の格好だってかなり露出度高かったし、雛菊だって胴体装甲はあるけど上体だけで、むしろそれが逆に腰回りを強調している感じがあるし、本当に、そうたいしたものではなさそうだ。

 あんな薄着で男の視線にさらされるのは大丈夫なのに名前呼びはNGっていう判断基準はよくわからないけど。やっぱり全寮制女子校育――ちじゃないんだったな。IS訓練施設育ちで男と全くと言っていいほど接してないから少し感覚が違うのだろうか。

 

「まぁ、そういう事だ」

 

 俺がそんな微妙なことに頭を悩ませていると、箒は少し呆れた様子でそう言って、体ごと向こう側を向いた。

 ()()()司の事で頭がいっぱいだった俺は、その時一瞬、箒の表情が苦味を噛み締めるように歪んだことに、俺を適当にごまかせたことに対する安堵が混ざっていたことに、気付く事が出来なかった。

 




・白騎士事件被害者
 司一家の事はともかく、基本的にはおそらく原作の裏であったであろう話。一夏が世間知らずに育てられたのって、そういうのに気付く事を千冬さんが恐れたからじゃないんだろうか、というのはうがち過ぎか?
 でも、束が犯人だと千冬が感付いていた(確信していた?)事を考えればそこに亀裂が入る事を恐れたっていうのはあり得ない話じゃないと思う。己の正義感故に親しい人を守りたい織斑一夏は、己の発明品で世界中を混乱の渦に叩き込み数多の人々を混乱の渦に陥れ、あまつさえそれに何の感情も抱いていない篠ノ之束を許せるのか。

・うちのセシリアさん
「塵は塵に、灰は灰に。アダムの末裔(土くれ)アダマ()にお還りなさい!」
 単純な操縦者としての能力ではラウラに次いで原作一年専用機持ち組第二位。ただし、扱いが難しい割にあんまり実戦的じゃない(タイマン向きじゃない)機体特性のせいで一夏、箒を除くと最弱。ビット操作中動けないとか、武装切替なしで遠距離攻撃できる第三~四世代機相手に勝てるわけないじゃないですか。しかも残る白式第一形態は前話で解説した特性上天敵で、シャルは瞬時切替持ち。
 茨の道です。可哀想。まぁ、弱いからって一回一回の戦闘での勝敗がどうなるかはまた別ですが。
 後、セシリアに限らず、うちの外国勢ヒロインズはテンションが上がると母国語が出るという設定があります。
 が、ただ訳すならともかく気取った言い回しってどうすればいいのかわからないので、今後その設定が生かされることはほとんどないと思います。
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