TS逆行したら才能に満ち溢れてた   作:黒髪赤眼すこすこ侍

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リアルが多忙なため、今週の更新及び感想返しが遅れる可能性があります


邂逅

 4月になりウコンちゃんがコミュニティを爆破した。案の定ゲームのセーブデータ消失と失恋でメンタルブレイクが起きたらしい。どうせ直ぐに戻ってくるので気にしないでおこう。

 

「八色様、到着致しました」

「ありがとうございます!あの、帰りは……」

「ご帰宅の際は係りの者が案内致しますので」

「承知しました!」

「ではドアを開けますので少々お待ちください」

 

 ハイヤーから降りると目の前の受付テントには既に多くの人が。私とお母さんも遅れないよう入園引換券と名札を交換してもらう。

 15日木曜日、春の園遊会に参加するため東京は赤坂御園にやって来ていた。

 

「ここはマスコミも入らないんだね」

「受付の画は流石に地味なんじゃないかな?」

「八色さん、お写真の方は撮られますか?」

「あっ、お願いします!」

 

 宮内庁の職員の方にスマホを渡し、私とお母さんのツーショットを撮ってもらった。色鮮やかな振袖と落ち着いた留袖の和装コンビの画は後でホームページに上げておこう。

 

 案内されたテントの中には軽食が用意されていたので摘みながら他の招待者と挨拶を交わした。誰も彼も公的機関所属の肩書きを言ってくるので顔と一致させるのに苦労する。

 

「八色さん、そろそろ三笠山テント前に移動をお願いします」

「承知しました」

 

 時間が近づいてきたので既に並んでいた参列者の所へ移動する。近くには現政権のトップが集合していた。え、ここ?

 

「八色さんはこちらになります」

「あれ?私もあっちのメダリストたちの傍じゃないんですか?」

「こちらになります」

「アッハイ」

 

 今回の招待者の中にはバンクーバーオリンピックでのメダリストもおり、私も一般人枠としてそっちだろうなと思っていたのだが……これ、この前生意気言った文句をつけられるんじゃないだろうか。

 

「なんか場違い感凄くない…?」

「大丈夫大丈夫。葵ちゃんは普段通りで平気だよ」

「八色さん、お久しぶりでございます」

「お久しぶりですね」

「えっ!?」

 

 お母さんと小声でやり取りしていると隣にいた大臣が話しかけて来た。

 

「娘の葵です」

「存じ上げております。お嬢様のご活躍は私も楽しみにしていますので」

 

 紹介された際に軽くお辞儀をしておいた。何やら積もる話もあるようで盛り上がっている。

 

「どういう繋がり?」

「昔にお会いした事があるの」

「へぇ〜」

 

 一段落したところで聞けば旧知の仲であるらしい。本当にどういう縁だよ。

 

「ねえ、それってさ——」

「天皇皇后両陛下がお見えになられます!」

「それはまた後でね」

 

 間の悪いことに時間切れとなった。帰ったら絶対に教えてもらうからね。

 

 宮内庁職員の言葉に待機していたマスコミ達も慌ただしくなった。私も気を引き締める。お母さんは普段通りで良いって言ったけど、流石にテレビカメラがあるところで醜態は晒せないよ。

 両陛下がお出でになると総理大臣を初めとした各大臣は順番にお言葉をいただいていた。次は私の番になるので緊張感が高まる。

 そして、皇族との初めての対面が始まった。

 

「この度はおめでとうございます」

「はっ、ありがとうございます」

「歌手としてご活躍されている他に、動画も投稿されているようですね」

「はいっ!?」

 

 えっ!?待て待て待て、陛下も動画見るの!?驚きすぎて敬語が崩れる!

 

「幼い頃の映像も拝見させていただきました。健やかな成長を嬉しく思います」

「あ、ありがとうございます!」

「リーナさん、お一人での子育ては大変ではなかったですか?」

「はい。娘は全く手のかからない子でした。流石は陽仁さんの娘です」

「彼も葵さんの成長を喜んでいますよ」

「陛下の仰る通りでしょう」

「お二人とも、これからのご活躍を楽しみにしています」

「ありがとうございます!」

 

 最後に手を差し出されたので恐る恐る握り返す。想像していたよりも大きな御手は暖かかった。

 

「握手っ、握手しちゃったよ!?」

「よかったね〜」

 

 この興奮をお母さんに伝えると淡白な返事が返ってきた。なんでそんな平常心なの!?

 というか、今の私、「はい」と「ありがとうございます」しか発してなかったんじゃないか?

 

「あら、リーナさん。お久しぶりですね」

「お久しぶりでございます」

「!?」

 

 その後の皇族の方々も私達、正確にはお母さんにお言葉をかけていかれた。私も何か話した気がするのだが、その事に動転し過ぎて何を言ったか覚えていない。マジでお母さん何者?

 

「参列者の方はテントの方へ戻っていただいて構いません」

 

 皇族の方がお帰りになると宮内庁職員がマスコミの所へ行くよう指示を出してきた。その前に隣に居る唯一の肉親に聞きたい事が山ほどある。

 

「お母さん!なんで皇族の方とお知り合いなの!?」

「帰ったら教えるから、ほら、行って来なさい」

「え〜……絶対だよ!」

 

 私の生まれる前にどんな事をしたら日本の皇室と繋がりを持てるのだろうか。

 またしてもはぐらかされてしまったので大人しくマスコミの所へ向かう。そこでは私と同じ様にメディア対応しているメダリストたちの姿があった。あれ、ピンマイクも付けているんだ。集音マイクがあるのに珍しいな。

 

「八色さん!陛下とはどのようなお話を!?」

「緊張していてよく覚えていませんが、これまでの活動へのお褒めの言葉をいただきました」

 

 実際はよく覚えているが、流石に「陛下が動画投稿サイトをご覧になられているようです」なんて言える訳が無い。いや、本当に見ているかも怪しいのであれは私の緊張が成した幻覚かもしれない。

 

「なぜマイクを付けられなかったのですか!?」

「マイク……?」

 

 その後もいくつかの質問に答えていると変な質問が飛んできた。

 

「ごめんなさい、質問の意図がよく分からないのですが…」

 

 そう答えると何やらザワザワし出すメディア陣。聞こえてくる声の中には「特別誘導者」や「宮内記者会」、「天皇陛下」のワードが。なんでそこで陛下が出てくるの?

 

「いえ、こちらの勘違いでした。申し訳ありません」

「はあ……」

 

 「マイクってもしかしてアスリートの方が付けてるやつですか?」と聞く前に次の質問が来てしまった。モヤモヤするので帰ったら「特別誘導者」について調べてみよう。

 

 その後職員が来てくれたのでマスコミ対応から解放された。先程と同じように軽食を摘んでも良いのだが、お母さんの事が気になってしょうがないので即帰宅です。

 お母さんと職員を捕まえて送迎車まで案内してもらった。

 

「車の中でもダメなの?」

「そんなに気になる?」

「それはもう、夜も眠れないほどに」

 

 朝と同じ送迎担当者に家まで送ってもらう。その道中でも焦らされてしまったので相当凄いネタなんだろうな。私の中で勝手に期待値が上がってるぞ、お母さん!

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「さあさあさあ!リーナさん、教えてもらおうじゃありませんか!」

 

 黄昏時、自宅のリビングにてお母さんと対面して席に着いた。気分はさながら取調べをする刑事のようだ。

 

「別にいいけど、そんな大層な事じゃないのよ?ただ、ママが元王族なだけなの」

「ここまで引っ張って大層じゃな……はぁ!?」

「ほら、最近ニュースでやってたカリュシア国王。あれ、葵ちゃんのお爺ちゃんよ」

「……」

 

 突然のカミングアウトに思考が止まる。元王族、お爺ちゃん……?

 うん、今日は色々あったから脳がバカになってるみたいだ。

 

「ごめん、寝惚けてたみたい。もう1回言って?」

「だから、ママはカリュシアの元王族なんだってば」

「……聞き間違えじゃなかった!」

 

 身内にとんでもない人がいたらしいという事実に震える。それなら確かに皇室と繋がりがある訳だわ!というか何で前世じゃ教えてくれなかったの!?

 

「お姫様じゃん!そんな人が何で日本で平民やってんの!?」

「ママ、上に3人も兄が居たから後継者的な問題はなかったのよねぇ。だから18歳で王家から離れたの。日本だってそうでしょ?」

「いや、確かにそうだけどっ……えぇ!?」

 

 日本も()()()()()()()()()()()()()皇籍離脱は可能だ。それは偏に皇族の人数が多いからだ。昔は八色の姓といった八つの姓が与えられたらしいが、今はそうじゃないと聞いた事がある。だとしても、そんな簡単に事が進むの?

 

「葵ちゃんが天皇陛下とお爺ちゃんの対談に呼ばれたのもそれが理由かしらね」

「……そういえばそんな事もあったね!!驚きすぎて忘れてたよ!」

 

 それじゃあ私の戸籍って不完全な物だったって事か!あれ、でもお父さん方の祖父母も居なかったような。

 

「お父さんの方のお爺ちゃん達は?」

「パパのご両親は40年前に亡くなってるの」

「早死にしすぎじゃない……?」

「ほんとにねぇ。パパもお義父様方も葵ちゃんに会いたかったでしょうに」

 

 どうやらお父さんの家系は悲しい運命を背負ってるらしい。これ、もしかしたら私も死んで転生した可能性が出てきたか?

 

「は〜……もう、疲れたよ……」

「そういう事なので、葵ちゃんにはロイヤルファミリー()の血が流れているのでした!めでたしめでたし」

「目出度くないんですが?……それなら、お母さんの顔、今日はバッチリカメラに映っちゃってたけどいいの?」

 

 いつもはテレビカメラがある所や人が多い所ではサングラスをかけていた。今思えばそれで騙せるのかと疑問が浮かぶが騒ぎになってないって事は大丈夫だったのかな。

 

「ここまで葵ちゃんが知られちゃったから、今更かな?」

「それは、なんというか……ごめんなさい?」

「それにそろそろ葵ちゃん叩きが起きるかもしれないし。牽制よ、牽制」

 

 曰く、正式に国から発表されない限りは疑惑で済むという事もあるらしい。週刊誌が騒がしくなりそうだけど、私が近くに居る事で写真も撮られないとの事。未成年である事実がここで味方になるとは。

 

「……もしかして、今までも警備の人が近くにいたり?」

「御明答!葵ちゃんのジィジは心配性なので、国から出て行った娘に国費を使ってまで自宅周辺の安全を確保していたりしてます!」

「日本だったら税金の無駄遣いで批判が起きてそう……」

「そんな事もないんじゃないかな?」

「いや絶対に起きる。間違いない」

 

 だって逆行前でも似たような事が起きてたし。

 そこまで言ってから脱力してソファに身体を預ける。本当に今日は色々あって疲れたわ。

 

「葵ちゃんもこれからは気をつけて行動してね?登下校は仕方ないにしても、会社や仕事の移動は必ず送迎車を使う事!」

「そうだね、肝に銘じておきます」

 

 今に思えば遅すぎる判断ではあったけど3月からは移動用の送迎サービスと契約している。これからも面倒くさがらずに続けていこう。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「特別誘導者ってそういう事ね。陛下が決定した事なんだから、そりゃマスコミも黙るわ」

 

 自分のルーツを知ったあの日から幾日か経過して疑問に思っていた事を調べた。園遊会が終わった後の妙な質問の意図がやっと判明した。

 というかあの質問をした記者は普通にプレミなのでは?ボブは訝しんだ。

 

 そして先月収録したロケ番組が2週に渡って放映された。

 それと同時に政府が原発の見直しを全国的に行う事も発表。津波の影響が心配される所から順に点検及び施設の改修を行うらしい。

 世間様は今までの政府の姿勢を批判、ワイドショーもその話題で盛り上がっている。私的には早急な対応に評価しているところなんだけどな。

 

 とりあえず、これで1つ目の対策は終わった。ただし、これは震災の二次的被害を減らしただけに過ぎない。そもそも本当に原発事故を避けられたかは疑問な所でもある。まあ、実際に起こってみない事には分からないので一先ずは置いておこう。

 

 次に行うのは最大の難点、津波の被害の軽減だ。1年で堤防の増強なんて間に合うはずも無く、やれる事は「津波がどういう事象なのか」の周知だ。

 今の私の影響力を考えれば不可能ではない。絶対に間に合わせてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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