TS逆行したら才能に満ち溢れてた   作:黒髪赤眼すこすこ侍

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一日が24時間なのって明らかにバグでは?
せめて48時間にしろ


祖父母

 8月下旬、ヨーロッパツアーを終わらせ日本へ帰国した。到着した空港には警官や黒服の人達が大量にいて物々しい雰囲気に包まれている。

 

「超厳重体制だわ。ありがたやー」

「八色様はこちらにお願いします」

「承知しました。由希さんは夜のフライトに備えて休養をとっててください」

 

 国の職員の案内の下、普段のゲートとは別の所から外へ連れ出され、待ち構えていた黒塗りの自動車に乗り込んだ。色んな手続きをすっ飛ばしたスピーディな対応に、絶対遅らせてはならないという強い意志を感じる。これがVIP待遇ちゃんですか。

 

「皇居にてお召し物を替えていただき、音楽隊とのリハーサルがございます」

「衣装は以前に打ち合わせした物ですかね?」

「そう聞いております」

 

 車の中で今後の流れを改めて説明された。

 今日は遂に祖父母と対面する、と言うより国賓対応のパレードの中で私がパフォーマンスする事になっている。直接会話する機会はないだろうけど無様を晒さないように気をつけよう。

 

「おじいちゃんおばあちゃんは優しいから心配しないでね?」

「ちょっ!?それ言っていいの!?」

「平気平気。ママも一緒って事はこの職員さんは知っているって事だし。ね?」

「左様でございます」

「はえー」

 

 そんな簡単に知れる事なんだろうかと思ったが、向こうがお母さんと会いたいと言えば迎えの人にも伝わるものなのかな。

 

 初めての皇居に内心ドキドキしながら専用テントの中で用意されていた衣装に着替えた。顔がよく見えるようにと髪もアップスタイルに纏めてもらう。

 その後は音楽隊の人と音合わせをして出番まで待機である。

 

「あと30分ほどでこちらにお見えになります。準備の方をよろしくお願いします」

 

 用意された椅子に座りながら音楽隊の人達と雑談していると職員が声をかけてきた。

 私はまだ座ってて良いらしいが音楽隊の人達はキビキビ動き出して既に持ち場に立っていた。一般の演奏団とは異なり普段から訓練もしている彼らの動きは見ていて気持ちがいいものがある。大人になって自由な時間が増えれば観艦式とか観にいきたいな。

 

「八色さん、そろそろです」

「了解です」

 

 20分ほど周りをぼーっと眺めていれば時間がやってきたらしい。私も立ち上がり用意された台の上に移動した。聞かせるべき相手も少ないのでマイクは無しだ。

 これから遂にお母さん以外の肉親に、それも一国の王族と会うことが出来ると思うとドキドキしてきた。

 前世では知る由もなかったし、存分に今の私を見てもらおう。あなた方の孫は元気に暮らしていますよ、と。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

『あなた、ソワソワしすぎではありませんか?』

『そうは言うがやっと葵ちゃんに会えるんだぞ?これで落ち着いていられるものか』

『陛下が秘密裏に対談時間をお作りになられたのですから、それまでには平静を取り戻してくださいね』

 

 今は亡き陽仁さんと我が娘との間に生まれた子は、今や世界中でフィーバーを起こしている。その事を知った時は嬉しさと同時に安堵もした。

 血縁上、彼女はどうしても頼れる身内が少ない。その所為で寂しい想いをさせているのではないかと何度も心配していた。

 それでも、テレビで見た彼女は真っ直ぐに力強く生きている事が分かった。本当に強い子だ。

 

『国王陛下、こちらに』

『ありがとう』

 

 車から降りれば目の前には日本の陛下が。この機会を作ってくださった事に感謝してもしきれない。

 

『よくぞお越しになられました。久しぶりの日本はどうですかな?』

『お招き頂き感謝致します。国民の皆さんも温かく迎えてくれました』

 

 皇室お抱えのメディア用の対応を交わす。本心は今すぐに孫に会いに行きたくて堪らないが、それだと彼女に迷惑をかけてしまうので自重する。

 ……いや、娘の事がバレているならばもう良いのでは?そうだ、もう日の目に浴びてしまっているのだから今更だろう。……いかんな、気が昂ってる。一旦落ち着こう。

 

 式典用に設置されていたレッドカーペット上を陛下に並んで歩く。見えてきたのは大勢の演奏隊と1人の少女。

 

「これよりカリュシア国国王陛下並びに王妃陛下の歓迎式典を執り行います」

 

『——陛下、彼女が……』

『そうです』

 

 目に映るは圧倒的美。

 そして、娘譲りの青い、けれど様々な色が混ざりあった宝石の様な瞳。

 

 彼女が、世界を魅了してやまない、私の可愛いかわいい孫娘。

 

 音楽に乗って響く彼女の歌声に自然と涙が流れそうになった。高々10歳の少女に世界が魅せられる訳だ。贔屓目無しに、この美貌と歌声ならばいずれ世界を獲れると確信した。

 

 彼女のパフォーマンスが終われば盛大に拍手をする。大袈裟過ぎてテレビで放送される際に不審に思われるかもしれないが関係ない。身内贔屓かもしれないが、これこそが人生最高の催し物だったのだから。

 

『では移動しましょうか』

『はっ!』

『今から初対面になりますが時間は5分だけです。よろしいですか?』

『感謝の極みでございますっ』

 

 式典後に対談用に用意された部屋で彼女を待っている。隣に座っている妻もなんだかんだ言って待ちきれない様子が窺える。

 平時であればこの様子もメディアに撮影されるのだが、今回は特別に時間を空けてもらっている。こちらの我儘を受け入れてくれた日本国には頭が上がらない。

 

 そして、運命の時が。

 

「失礼いたします」

「失礼します」

「お忙しい所申し訳ありませんでしたね、葵さん」

「い、いえっ!両陛下とお会い出来る栄誉を賜りました事、光栄の至りでございます!」

「この場は親戚の交流の場ですので、楽にしてくださいね」

「っ!?」

 

 陛下が早速話を進められたので私もリーナに目配せをして合図を送る。こくりと頷いた娘が口火を切った。

 

『お父さん、お母さん。久しぶりです』

「えっ!?いいの!?」

『リーナ、久しぶりだね』

『元気そうで安心したわ』

『ほら、葵ちゃん』

『えーっと……はじめまして、葵、です?葵でございます?』

 

 その言葉に思わず彼女を抱き締めてしまった。

 

「わわっ!」

『はじめまして!おじいちゃんです!』

『おばあちゃんです!』

『大伯父です』

『義大伯母です』

「あっはい……ん????」

 

 突然の事に混乱しているのか反応が薄い。もっと「わー!おじいちゃん!」みたいに抱き締め返してくれてもいいのだが。

 とりあえず葵ちゃんを解放して椅子に案内する。この部屋には側近すら居ない、本当のプライベート空間になっているので存分に会話を楽しめる。

 

『いやー、葵ちゃんがワールドワイドになってくれたおかげで会いに来る事が出来たよ。凄い!自慢の孫娘!』

「あっ、すごいお母さんみを感じる……流石は親子」

「ニホンゴワスコシナラハナセルヨ!」

『すみません!つい癖で……』

 

 慌てている姿も可愛い。母国にいる孫達も含め、なぜ孫という存在はこんなにも可愛いのだろうか。

 

『気にしない気にしない。でも、本当に会うのを楽しみにしていたんだよ』

『お父さんなら葵ちゃんが生まれた時に会いに来るかと思ってたわ』

『リーナ鋭いわね。でも流石に一般人に狙って会う事は出来ないからみんなに止められたわ』

『それはそうでしょ』

『そんな事が……』

 

 仮に葵ちゃんが日の目に当たらない一般人であれば一生会えなかったかもしれない。カリュシアに来てくれれば、もしかしたら程度まで可能性は上がるが。

 

『葵さんがグラミー賞を受賞してくれた事は渡りに船でした。こうして場を設けられたのですから』

『陛下っ……あれ、先程仰っていた事って』

『私共も葵さんの親戚なのです』

『あっ、言い忘れてたわね。葵ちゃんのパパは元皇族なの』

「?????」

 

 またしても混乱の渦に舞い込んでしまった葵ちゃんだけれど、残念ながら時間も限られている。伝えたい事を話さなければ。

 

『ほら葵ちゃん。大丈夫?』

『うん……いやいやいや、待って待って。情報で殴りつけないで』

「陛下、お時間でございます」

 

 ノックの後に職員の声が響いた。この後は国賓としての仕事が待っているのだ。その前に悔いは残したくない。

 

『葵ちゃん。生まれてきてくれてありがとう。これからも元気な姿をおじいちゃんおばあちゃんに見せてほしい。テレビの向こうで応援しているよ』

『私共も葵さんの活躍を楽しみにしています。今度会う時迄にはミクちゃんの事を勉強しておきますね』

 

 陛下と2人して葵ちゃんの手を握った。小さいと思っていた彼女の手は存外に大きい。嗚呼、本当に、よくここまで育ってくれた。

 私達の言葉を目を白黒させながら聞いていた彼女は一旦深呼吸をしている。

 そして。

 

『はい!お任せあれっ!』

 

 その笑顔は、世界を照らす太陽のようで。キラキラと眩しく輝いていた。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「いやダメでしょお母さん。すんごい大事な事を言い忘れてたよね?」

「ごめんね〜?でもほら、今回知れた訳だし」

「驚きすぎて頭がおかしくなったと思ったよ!」

 

 今日の仕事を終え空港に向かう道中、父の血縁を伝え忘れていたお母さんを詰問する。ワザとやっているのではないかと見紛うレベルだ。

 ……よくよく考えてみれば、前世でもこんな大きな爆弾を抱えて生活していたのか、私。

 

「もう秘密な事は残ってないよね……?」

「それは大丈夫っ。パパの事で最後だよ」

「はぁ〜……」

 

 もう、全くもうだよ、本当に。

 とりあえずは私の血筋という爆弾は中学生までは爆発しないらしい。その後にどうするのかはまたその時になったら決めるとの事。

 態々公表する必要は無いと思うんだけどなぁ。

 

「もしかしたら、おじいちゃんが暴走して言っちゃうかもしれないから。そうなったら最悪引っ越しかしらね」

「はあぁ!?」

「まあ大丈夫でしょ。今住んでる地域の人達は何となく察してるみたいだし、それでも問題は起きてないからね」

「それなら良いんだけど……」

 

 流石に言わないと信じよう。

 

 それよりも今日は疲れてしまったので何もしたくない。けどここから空港に移動してオーストラリアにフライトだ。忙しいったらありゃしない。

 次にワールドツアーをする時は1年かけて回ることにしよう。夏休み中だけで日本以外を終わらせようとしたのがバカだった。

 

 空港にて由希さんと合流、ラウンジでシャワーを浴び一息ついた。

 

「流石の葵ちゃんもお疲れだね」

「由希さんは今までどちらに?」

「私はホテルで仮眠を取りながらオーストラリアに先に着いた組と連絡を取ってたよ」

「ご苦労さまです」

 

 フライト時間までまだ4時間はある。遅めの昼食を食べながら何をしようか悩むな。

 

「葵ちゃん、寝ちゃったら?時間になったらママが起こしてあげるから」

「いや、今寝ると機内で寝れないかもしれないから止めておくよ。向こうとも時差はそんなに無いし」

「私も寝た方が良いと思うな〜。ロングフライトに気を張った仕事と立て続けになったし、多少は昼寝しても夜はグッスリ寝れるよ」

「そこまで言うなら、少し寝ます」

 

 仕事中の由希さんには申し訳なく思いながらも、お言葉に甘えて仮眠を取る事にした。元はと言えば私が無理に決行した過密日程なので自業自得な面が強い。このワールドツアーが終わったら遠征メンバーには存分に休暇を取ってもらおう。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

「はい、雑談配信始めまーす」

 

はい

久しぶりじゃねーか!

はい

生存確認

こんばんは!

ライブツアーお疲れ様

はい

久しぶり

ばんちゃ

元気そうでよかった

はい

 

 9月に入りワールドツアーも残すところは日本だけどなった。日本での公演は週末や連休中に行う予定なので平日は久しぶりにゆっくり出来る。

 

「ミクちゃん達を世界に布教する旅が終わった訳なんですが、何から話しましょうか」

 

日本はまだ終わってないじゃんかさ

布教……布教?

東京公演当たりました!

日本でも受け入れきれてないのに海外は無理でしょ

おじいちゃんと会ってどう思った?

全国ツアーはよ

ぶっちゃけどれだけ儲けた?

無理に押し付けるのはNG、最悪の場合マイナス感情でイメージが固まる

各国の旅動画か舞台裏動画ちょーだい

日本は最近のボカロ勢の勢い凄いけどね。プロデビュー組何人もいるじゃん

 

「布教と言っても、スクリーンに出すとかそういうのでは無いですから安心してください。ボカロ曲のシングルを会場で売り捌いただけですので。利益は禁則事項です」

 

それなら問題ないな!

外人達の困惑してる顔が容易に想像できる

売っただけなら問題ないよね、うんうん

やるじゃねえか

買っていく奴いたの?

外人「作詞作曲は八色葵?なら買うか」

自発的に買っていく分には問題ねえわ

禁則事項は未来人の特権だよ?さあキビキビ話すのです

騙されてて可哀想wwwwww

禁則事項使いということはやはり人生n周目

 

「みなさん喜んで買って行ったので平気平気。舞台裏映像は個人的なカメラで撮ったものだけ投稿予定で、公式な映像は円盤で販売します」

 

うおおおおおおお

ライブ当たらなかったからありがてえ

約40日で世界を巡るトンデモツアーを映像化か

うおおー!!買うぞー!

まーた財布の紐が緩んじまうよ……

小学生からそんなに稼いで何に使うの?

おじいちゃんおばあちゃんと会った感想を!

日本ツアーが待ちきれねえわ

撮影スタッフ今頃死んでそう

 

 こう、コメント欄が日本語だらけだと「あぁ、日本だなぁ」と実感出来る。

 夏休みは休みじゃなかったし、9月の平日に疲れを取るという意味不明な事になりそうだ。

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