TS逆行したら才能に満ち溢れてた   作:黒髪赤眼すこすこ侍

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メリークリスマス


3.動画投稿者戦国時代
入学式


 2013年4月、私もとうとう中学生へ学年が上がった。幼かった周りの子達も随分と大人染みて来たのは感慨深いものがある。子どもの成長は早いね。

 

 この春から変わった事と言えば、由希さんが産休及び育休を取っている事くらいだろうか。

 つい先日、無事に健康な女の子を出産した彼女は幸せに満ち溢れている様子だった。私も赤ちゃんを抱かせてもらったが、こんな小さな子が十数年で大人になる神秘を思うと不思議な感覚だ。まあ、他の動物に比べればそれでも遅い方なのだろうけど。

 何はともあれ健やかなる成長を願っているよ。

 

「——はい、こちらで問題ありません。お忙しい中御足労頂きありがとうございます」

「いえ、時間の都合も良かったので気にしないでください」

 

 そんな春休みのある日、進学先の中学校へと足を運んでいた。

 内容は入学式における新入生代表挨拶について。日本でのライブも一段落ついていたので断る理由も無く依頼を受けた次第だ。

 汚文字にならないよう気を使って式辞を書くのも慣れたものである。なお中学校の先生が低姿勢で対応して来る事には違和感を覚える模様。もっと普通の生徒と同じように扱って欲しいのだが……

 

「それにしても、今年は新入生が多いみたいですね。去年の原稿と比べると2クラス分も増えているような」

「これでも学区外から来ようとしている人達を結構な人数弾いているんですよ」

「学区外?」

「珍しい事に」

「へぇ〜」

 

 計算すれば1クラス40人になりそうだし、大分ギチギチな教室になりそうだ。逆行前を含めてこんなに人数が多いクラスは初めてなのでどんな生活になるのか楽しみでもある。

 ……冷静に考えてみれば、これって私のせいの可能性が高いような気もする。迷惑をかけたお詫びと言ってはなんだが、私の出来る事があれば可能な限り手伝ってあげよう。

 

「では入学式の日にまた会いましょう」

「はい!これからよろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 私の担任になる先生とも顔合わせをして解散となった。そのまま学校前に来ていた車に乗り込み新しいオフィスへと送迎してもらう。

 4月1日より部屋数の多い建物を借りており、引越し作業もつい先日終わらせた。衣装部屋も併設されているので、スタイリストの高野さんが違う場所へ行く必要も無くなった。

 みんなの顔を一斉に確認出来ない点が寂しい所だが、配信部屋も用意出来たので良しとしよう。

 

 車に揺られる事1時間弱、3階建ての小さなオフィスビルに到着した。守衛さんに挨拶をしてカードリーダーに社員証をかざしカギを開ける。

 2階に上がるとコーヒーの良い匂いが漂って来た。お昼時なので誰かがコーヒーサーバーを動かしているのだろう。

 

「おはようございます」

「社長!お疲れ様です!」

「おはようございます!」

 

 休憩スペースでお昼ご飯を食べていた会計組に挨拶をしてから自分と母に割り当てられた部屋へと向かった。

 特にこれと言ってやる事は無いのだが、日当たりのいい立地なので動画編集等をここでやるのが最近のトレンドだ。眠っちゃってもお母さんが起こしてくれるし最高の環境である。

 社長とは名ばかりのぐうたら生活を出来るのも優秀な社員が居てくれるからこそだ。ありがたやー。

 

「葵ちゃんはご飯食べてきちゃった?」

「移動時間にサンドイッチを摘んだよ」

「ならお野菜も摂らなきゃね。ママのお弁当と一緒に頼んじゃうから」

「はーい」

 

 去年から1年おきでアメリカ、ヨーロッパを巡るツアーをしているので、昔ほど長期休暇の予定がギチギチになる事も無くなった。その分海外のテレビ番組のカメラが来る事も増えたが弾丸ツアーよりは楽なので無問題です。

 

 それから偶にやって来る書類を捌きながら夕方まで作業を続けた。世間の社長様もこんなに簡単な業務なのか謎ではあるが、起業した特権と思っておこう。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

「うーん予想通りの可愛さ。その格好で電車に乗っちゃダメよ」

「乗る機会は無さそうだけどね。それはそうと日常的にスカートを履くのは慣れないね」

 

 そんなこんなで迎えた入学式の日。我が家までやって来た理華ちゃんに制服姿を褒められながら登校の準備をする。

 勿論この時代にはパンツルックの女子用制服なんて存在しないので学校生活は四六時中スカート姿です。夏は風通しが良くていいのだが、冬は寒そうだ。ストッキングが手放せなくなる予感がある。

 

「お母さん、準備出来たよ」

「ではでは参りましょう!」

 

 今年は天候に恵まれており、未だに咲き誇っている桜を登校途中でも確認する事が出来ている。この調子であれば校門前での記念撮影もいい感じに撮れそうだ。日本人としての心を持つ私的にも背景に桜があるのは風流を感じるので好きな撮影ロケーションである。

 

 その予想通り中学校の校門前では満開の桜の木が待ち構えてくれていた。「入学式」と書かれた看板前には多くの新入生がたむろしているので、時間の節約の為に理華ちゃんと一緒に写真を撮る。

 その際に小学校が同じ子達に声をかけられたが、この後はリハーサルがあるので丁寧に断りを入れて職員室へと向かう。申し訳なさもあるけど一人ひとり対応していたら遅れちゃうからね。

 

「失礼します。八色葵です。本日の入学式のリハーサルの件で参りました」

「あれが……」

「リアルで見ると——」

「ハイハイ!私が行くから外でちょっと待っててね」

「承知しました」

 

 ザワザワしている先生方を横目に担任の先生が出てくるのを待った。あれだね、小学校の時は途中から世間に知られたけど、最初っから芸能関係の人が入ってくる中学校はそこそこ注目を集めそうだ。変な行動をして悪評を広められないように気をつけよう。

 

 1分程後に出て来た先生の誘導の下、体育館へと向かい校長先生等に囲まれながらリハーサルを終えた。入学式に参列する為に来ていた市長の対応は面倒であったが有名税としておこう。笑顔の仮面を貼り付けるだけの簡単なお仕事だ。

 

 その後は教室へと移動し、新たな学友達と親睦を深めた。半分以上は初めて見る顔なので、小学校みたいにヨイショされる事も無くなってくれるだろう。と言うよりそうなって欲しい。

 

「もう終わったんだ」

「動きの確認だけだからね。八色葵です、よろしくね」

「はっ、はいっ」

「本物だぁ……っ!」

「はーい、席についてー」

 

 なお相変わらず理華ちゃんは同じクラスの模様。ここまで行くと作為的な意図を感じるが、真相は如何に。

 担任の先生の軽い自己紹介を経て廊下へ整列。出席番号順で並ぶ為私は最後尾に近くなるが、動きやすい様に1番後ろに着く。

 隣の男子が挙動不審になっていたが思春期にはよくある事なので気にしないであげよう。可愛い子が近くに来ると焦るよね、分かる分かる。私も男子校時代そんな感じだったし。

 

「よろしくね」

「よよよろしく」

 

「は?殺す」「許すまじ」「協定違反だ!処せ!」

 

 まあ、仲良くしようじゃないか。大丈夫、私は気持ち悪いとは思わないから存分に話しかけてくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『新入生代表挨拶。1年1組、八色葵』

 

「はい」

 

 鈴を転がすような美しい声が響く。立ち上がり壇上へと向かうその声の主を誰もが目で追っていた。

 彼女を知らない者は存在するはずも無く、保護者や学校の係の者が一様にカメラを構えているのが分かる。世界の大スターに、誰もが目を奪われていた。

 

「やべえよ、マジで可愛すぎる」

「この中学に入れてよかった…もう死んでもいいわ」

 

「俺、絶対に告白する」

「鏡を見てから出直せよ」

「あ?」

 

 そこかしこで生徒が小声で彼女の事を話している。それも、男子に限らず女子もだ。

 

「藤崎さんは同じ小学校?」

「幼稚園からの付き合いよ」

「えぇ!いいな〜」

 

 両隣の子からの聞かれ慣れた質問に答える。相変わらず私の幼馴染様は他者の羨望を集めずには居られないようだ。中学からは腹黒い子も出て来るだろうし、注意を払っておこう。

 

「ねね、後でLINE交換しようよ」

「学校にスマホ持って来てるの?」

「内緒にしてね?それより、どう?」

「私は持って来てないからIDだけ教えるわね」

「やった!追加しとくから藤崎さんもよろしくね」

「いいな〜。私スマホ持ってないよ……」

 

 小学校では気にならなかったSNSサービスに熱心な子も居るようだ。これからは対面だけでなく電子の世界でのコミュニケーションが中心になるのかもしれない。

 それに乗り遅れる子も出て来るだろうし、差別やイジメは色んな形に発展しそうだ。便利は便利だけど、嫌な世の中になったもんだ。

 

「中学生でも半分くらいは持ってないんじゃないかしら。気にしない方がいいわ」

「そうだけど〜……私も八色さんと気軽に話せるかもしれないじゃん?」

「葵はLINEあんまり見ないよ」

「そうなの!?」

 

 案の定LINEに誘って来た子も幼馴染目当てだったようだ。分かるけど、もうちょっと本心を隠してくれ。まあ、害にならない存在なら問題無いけれど。

 それに、葵がLINEを見ないなんて事は嘘である。むしろ暇な時は速攻で既読を付けてるので、忙しそうなスターとは何ぞやと思う事もしばしばだ。

 「スマホ依存症には気をつけないとね」等と忠告してきた彼女自身にブーメランが刺さっているような。

 

「まあ、葵のLINEは本人に聞いてみてね。断られはしないと思うから」

「うっ……ハードルが高い」

「等身大の葵として接してあげると喜ぶから、心に留めておいて」

「ほえ〜、そんな感じなんだ」

「りょーかいっ」

 

 そんな話をしていれば幼馴染の式辞も終わりに近づいていた。毎年似たような内容だろうに教師は彼女に目が釘付けの様子。おかげでお喋りしていても怒られそうにないので有難い。

 

 入学式後、簡単な部活動紹介を挟んで教室に戻ると幼馴染の机の周りには人垣が形成されていた。朝の時間は話せなかった人が多いので仕方ないか。クラスメイトが彼女に慣れるまではこの光景がデフォになるんだろうね。

 

「クラスのグループには入るんだ」

「そりゃ入るでしょ。人数は少ないみたいだけど、情報共有は出来るからね」

 

 帰り道、今日あった事を聞いてみればLINEの垢を教えたようだ。本人の好きにすればいいと思うけど、男子連中が無謀な特攻をしそうな予感もある。せめてリアルで仲良くなってから突っ込む事を周知しておこうかしら。

 

「ちなみにLINEで告白ってどう思う?」

「別にいいんじゃない?なに、理華ちゃんされたの?」

「葵の話よ」

「私の場合は断るけど……」

 

 本人もこう言ってるのだし、男の子の皆さんには気を強く持って頑張って欲しい。

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

「はい」

 

はい

やあ

はい

おはよう!

はいじゃないが

カメラの角度変わってる!

はい

胸像キターー!

こんばんは

むしろ何故今まで顔だけ映していたのか

 

 新しい学校生活にも慣れてきた5月。平日の夜ではあるが、いつも通りYouTubeを開いてライブ配信を開始した。最近要望が多かったカメラの角度も胸まで映るように調整してあるので不満は出ないだろう。

 

「今日は時間が時間なのでマイクラの整地配信という虚無空間をお送りします。ラジオ替わりに使ってくださいね」

 

そういえば普段より1時間くらい遅いね

デスクワークをしながら聞くことにするよ

無理はしないで

まーたエンドが更地になるのか

この翻訳はどうやっているんだい?

虚無はワロタ

あれ、同時通訳出来てるじゃん

何かあったの?

未だに死んでないスティーブ君

ワオ!英訳が表示されているじゃないか!

ブランチマイニングでもいいぞ

 

「遅れた理由は病院に行ってたからなんですが、特に何処が悪いという訳でも無いので気にしないでください。翻訳作業は色々やった結果出来るようになりました。ツールを作ってくれた方に感謝ですね」

 

 そう言いながら掘りたい山の近くにビーコンを設置し採掘速度を上昇させておく。後は適当に雑談しながらひたすら無心で露天掘りするだけだ。

 

病院!?

休んで

どこも悪くないのに病院に行く奴があるか

両手は塞がってるのに英訳が可能とは、日本はまたクレイジーな発明をしたな

病気?

今日はエンド行かないのね

どうやって文字打ってんの?

見慣れた横移動式整地作業

無理しないでね

 

「病気ではなく血を抜いて貰ってるだけなんですけどね。文字についてはお行儀が悪いですが足の指で打ってます。慣れると案外速くタイピング出来るようになるんですよね」

 

血を抜くって何事よ

?????

確かに行儀が悪いwwwwwwww

葵は吸血鬼の親戚なのかい?

謎を増やすな

足の動き見たすぎる

つまりどういうことだってばよ

足の指で俺より速く打ってて草

????

これがブラインドタッチちゃんですか

お行儀が悪いですわ!

そういえば葵ちゃんの血液型って何?

ドラキュラは血を吸い取る方さ

相変わらず整地がはやぁい!

多分O型

足目線の動画出して♡

もしかして稀血?

 

「おっ、正解です。血液型はOで——匠さん!?無言で背後から近寄ってくるなぁ!」

 

大慌て葵かわよ

忌まわしい緑の悪魔め

建造物じゃないのでセーフ

匠さん、今日も元気に地形破壊

葵ちゃんはO型な気したわ。大雑把だし

整地を手伝いに来てくれた良い奴じゃないか

クリーパー「喋れないのにそんな無茶な」

ハードコアにおける最大の敵の一つ

葵ちゃんの方が地形破壊してるんだよなあ

お前そろそろ死んでも良いんだぞ?

性格的にO型は解釈一致です

で、なんで血抜くの?

環境破壊は楽しいぞい

 

「結果的に地形を大きく削ってくれたのは有難いですね。流石匠さん、プロの仕事だ。O型は大雑把っとか言ってる人達は悔い改めて、私が雑なだけですので。そも、血液型性格診断なんて信じてるのは日本くらいなんじゃないですか?」

 

 言いながら「血液型性格診断」をどのように訳すかを少し悩む。欧米の人は初めて聞くだろうしちょっとだけ詳しく説明しておこうか。

 

「珍しい血液型らしいので定期的に血を抜いて冷凍保存してるんですよ。病院へ行ったのはそれが理由です」

 

長文書き出してワロタ

珍しい血液型?

なにそれ

そんな迷信があるんだね、興味深いよ

葵ちゃんのウィキが更新されてまう

Rh陰性でもそんな対応取らないぞ

それはアジアの文化なのかい?

A型は云々言う奴らな、†悔い改めて†

口と手と足で別々な動きさせてるのヤバいな

中東住みだが初めて聞いた

足の動き見てぇ、絶対気持ち悪い動きしてる

これは日本人がバカにされる予感

ある種の差別に繋がらないか?

マルチタスクの鬼

葵ちゃんRh型血液型って分かる?

科学力あるのにそんなのを信じる人もいるのか、日本人は面白いね

なんかコメントのIQ高くない?

 

「あらダイヤ発見。Rh抗原は持ってません」

 

どういうこと?

ファーwwwwwwwwwwww

Rh?

ワオ!

黄金の血で草ァ!

この高さだとダイヤは珍しいね

ウィキ更新よろしく

やっぱり突然変異じゃないか!

研究させてくれないか?

つまり?

お前てんこ盛りすぎるだろ

知らない人はRh nullでググれ

希少な要素をガン積みされた女

 

「マグマ溜まりを埋めて、と。遅れた理由はそんな所です。さっきも言ったように心配する必要はありません」

 

 稀血と言っても、他の血液型グループを含めれば結構な人数が該当しそうなものなので大袈裟にする事も無い。ただ万が一の際に危ないというだけだ。

 

病気じゃないなら安心した

葵の血を俺に入れることが可能なんだね

それより勉強しなくていいの?

休日に行かないんだ

なるほど

そんな事も病院でやるんだ

ほーん、分からんけど理解した

キモい海外コメあってワロタ

なんで山削ってるの?

中学校はどうよ

 

「整地しているのは拠点を広げるためです。ついでにそろそろトラップも作りたいので」

 

まーた悪い事考えてら

村人農場かと思ったら違うのね

アイアンゴーレムを溜めてるのは解消しないのかい?

村に隣接する崖を消す理由なんて一つだよね

【悲報】アイアンゴーレム君、未だに解放されない

刑務所に突っ込まれた村人を供養しろ

葵ちゃんはオープンワールド作らないの?一緒に何かしたい

 

 未だにアイアンタイタンは作っても意味な無いが、丸石や木材の生産所は無駄にならないので用意しておこうと思う。

 コメントでは一緒にプレイしたい勢も湧いているのでそのうち視聴者参加型のワールドでも作っておこうかな。まあ、その前にコラボ用のワールド生成の方が早くなりそうだけど。

 最近になってやっとウコンちゃんとコンタクトに成功したのでニコ動勢とはコラボを沢山していこう。

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