TS逆行したら才能に満ち溢れてた 作:黒髪赤眼すこすこ侍
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払い戻し金が現実味を帯びてなかったため変更してあります。指摘してくださった方ありがとうございます!
私がした事は想像以上に大きな関心事になったらしく、テレビ出演のオファーがたくさん来た。大体は天才と呼ばれるような子を集めて何かをやらせるような番組だったので丁重にお断りしておいた。
そういうのは私が個人的にやりたいし、現状これ以上公の場に露出するのはあまりよろしくないと考えたからだ。お母さんもこの意見に賛成らしくテレビマン達は残念そうにしていたとか。
約束通り新型のパソコンを買ってもらった私は早速とばかりにメキシコ旅行動画の編集を始めた。今回の動画は日本語で話してることが多いので英語字幕を入れておこう。
ただ、新型とはいえ時代が時代だ。約20年後の世界を知っている私からしたら動きが重いように感じてしまう。スマホも早く欲しいなあ。
以前あげたホームビデオ動画はパート10まであげてある。3歳くらいまでならあげてもいいかなと考えているのでまだ動画の弾は残ってる状況だ。
10月現在、最初にあげた動画は何が面白いのか85万再生もされていた。世界一のファンタジスタのゴール動画は100万再生されているので1番とは言えないが凄い数字だと思う。本当はネタ動画とかもアップロードしたいんだけど、まだそういう流れではないので自重する。ニッコニコくん、早く来てくれ。
最近になって曲の準備もするようになった。というのもこの身体、声質が凄くいい。声域も自由自在で新しい才能が植え付けられているようでビックリである。
いつの時代でも音楽は人々の間で関心を向けられる対象だ。なのでこの能力を人気を得る事に使えればと考えた。都合のいい事に2007年になれば電子の歌姫がデビューする。声の良さと作曲の才能はイコールじゃないが、彼女を使って最初はコツコツと作品を投稿出来たらいいな。
最高な筋書きとしては、私の曲がヒットし、作品を出しながらニコ生などの配信で容姿を餌に人を集め、最終的に世間の誰もが知る有名人となること。そうすれば憧れた彼らとも会える気がするしお金も手に入るしで万々歳だ。
そんなに上手く事が運ぶことはないと思うので時代の潮流を読んで適宜方向修正していく必要があるけれど。
10月22日、私は東京競馬場に来ていた。大きなレースとして11Rにて行われるGⅢの富士ステークスがある。そのため今日の会場はちょっと人が多いように感じる。ディープインパクト全盛期ということもあって競馬ブームが再燃しているのかもしれない。まあ私は最終レース目的なんだけどね。
お母さんが競馬に乗り気だったのは意外だった。先週ダメ元で提案してみればあっさりと通ってしまったのである。
『お母さん、お馬さんがみたいな』
『あら、じゃあ動物園にでも行く?』
『走ってるやつがいい!』
『競馬かしら?ママも日本のは見たことなかったし、行ってみましょうか!』
『わーい!』
みたいな会話をして日程も今日に合わせることが出来た。日本のは見たことないってことは故郷では行ったことがあるのかな。
「お母さんはカリュシアで競馬見に行ったことあるの?」
「もちろん!ヨーロッパは競馬が盛んなのよ」
8Rのパドックを見ながら「あの子は汗が出すぎてるわね」や「あのトモの張り、素晴らしいわ」など呟く様子は言葉通り競馬に精通しているようだ。世界一のレースと言われる凱旋門賞もヨーロッパだし、向こうは結構バチバチにやり合っていたりするのだろうか。
「馬券、買わないの?」
「葵ちゃん、こういうのは大きいレースにガツンと賭けるものなのよ。勝負師のママを見せてあげるわ」
珍しくかけていたサングラスをクイッと上に持ち上げる自信満々のお母さん。そういう言葉は負けフラグっぽいので言わない方がいいような気がするよ……
力が入っているお母さんは競馬新聞を片手に件の11Rのマークシートを塗り始めた。あれ、早くないか?
「パドック見なくていいの?」
「直前になると混んじゃうの。だから前もって自信のあるものだけは塗っちゃいましょう」
「ふーん」
「もちろんパドックを見た後にも買うわ」
なるほど。前世の私は時勢のこともありネット購入が多かったので時間ギリギリまで考えていたものだ。現地だとこういうことも考えなきゃいけないんだなと一つ学んだ。
塗り終わったシートを見せてもらうとワイドの12-14に1万円……1万円!?
他にも3連複や3連単にもいくつか賭けてあって総額2万円。G1にしか賭けて来なかった私からしたらG3にこんなに賭けるのかと驚愕だ。
一応今日の11Rは3番人気の12、11番人気の10、1番人気の14という順だったはずだ。ワイドのおかげでガミらないと思うけど3連単で12-14-10とニアミスしているのは凄い。
「このタニノマティーニって子、新聞だと丸とか書いてないけど大丈夫?」
「その子はママの勘ね。3着に来たら大きいしね」
ちょっと惜しいけどその勘凄いよ。
とりあえずそのマークシートを馬券に変えた。時刻は14時で、11Rのパドックまでは1時間くらいある。
「葵ちゃん。ポニーに触れるみたいだから行ってみる?」
「行く!」
時間もあるしもちろん了承。ふれあいコーナーの様になっているところは私たちと同じように子連れの親子が多くいた。
しばらく待って私たちの番になるとビデオカメラをお母さんに渡す。可愛い幼女と動物の触れ合いは需要があるはずだからね。
餌をあげると美味しそうにモシャモシャ食べてくれた。
「乗ってみるかい?」
「いいんですか?ぜひ!」
首筋を撫でて意外な硬さを感じていると特別に乗馬の許可が出た。これ幸いにと抱き上げて乗せてもらうと目線が高くなる。おおー、小さい身体に慣れていたからこの目線の高さは新鮮だ。
「葵ちゃん!こっち見て、手を振って!うん、かわいい!」
大きな声で親バカ全開なお母さんに視線が集まっていたが本人は気にせず撮影を続けていた。私にも視線が集まるので顔が赤くなってるかもしれない。
狭い柵内をパカパカ歩いてもらい十分堪能してから降ろしてもらった。動物との触れ合いも久しぶりだったので大変満足である。
時間も程よく消費して戻ろうとしたのだが、ふれあいコーナーは来た時より混雑していた。これから目玉レースなのにいいのかな?
戻ってきたパドックでは11R出走馬を一目見ようと多くの人がいた。G3なのに凄い熱気だ。私もお母さんに抱きかかえられ馬の様子を見るが、正直なところどこを見ればいいのか分からない。前世知識があるので「この子が勝つのかー」という感想がせいぜいである。お母さんの方は今まで見た事のないような真剣な眼差しで馬を見つめ、うんうんと頷いている。
「葵ちゃんはもう見なくても平気?」
「大丈夫」
「よしっ。じゃあ追加の馬券を買いに行くわよ!」
新しいマークシートに塗るのは10-12-14の3連複で5000円。最初に買ったもので当たりはワイド1万円と単勝4000円。前世と結果が変わらなければ約60万円の払い戻しになる。知識チートなしでこれはお母さんのガチ具合がよく分かる。
お母さんが早速馬券に変えようとしたが待ったをかける。このタイミングで12Rのも買ってもらわないと今日来た意味がないのだ。
「お母さん、私も何か買ってみたい」
「そうねー。うん、好きなの選んでちょうだい!」
許可を貰えたので早速とばかりにマークシート台へ。身長が足りないので抱き上げてもらいレース番号に12、式別には3連単、そして3、11、4と順番にマークした。
「12レースでふむふむ。葵ちゃん、本当に1000円だけでいいの?」
「うん。おみくじみたいなものだから」
「偉い!賭け事は入れ込まないようにしなくちゃだもんね」
ヨシヨシと頭を撫でてくるお母さんはこれがとんでもない金額になることを知らない。
なぜ私が10月22日を希望したかと言うと、この12R、前世では歴代で7番目の高額配当が出るのだ。本格的に動き出すためには自由に使えるお金が必要で、この時期に、そして近場でとなるとこのレースが最適であった。
それにこのレースの結果が前世と異なるなら、知識チートは出来ないということで諦めもつく。つまりこれからの私のムーブの試金石でもあるのだ。一応は有名どころのレース結果から着順に変化がないことは確認済みだ。
本当は1万円くらい賭けたいが流石に怒られるかもしれないので1000円で我慢した。お母さんの言い方的にはもっと賭けてもよかったかもしれない。
マークシートを馬券へと変えてスタンドへと向かった。既に輪乗りが始まっており、観客のボルテージも上がっている。その様子を眺めながらビデオカメラを取り出し、お母さんに向けた。
「それでは解説のお母さん、このレースの見所はどこでしょうか」
「解説のママでーす!見所はズバリ、タニノマティーニ!この子が来るかどうかが鍵になってくるでしょう」
いきなりカメラを向けても即座に対応し聞きたい言葉を答えてくれた。それを聞いたのか、近くにいたおじさんは「タニノマティーニなんて来るわけねえだろ」と呟いて離れていく。前世知識なしだと全くの同感だ。それでもお母さんはニコニコと自信あり気な表情を崩さない。
ゲート入りの時間になったので一旦撮影を止めた。レース映像は著作権に引っかかりそうだからだ。後は結果がどうあれレース後に掲示板とお母さんの姿を撮って繋げればいいだけだ。容姿が優れているとこういう時に楽だと感じる。当たれば「すげー」となり外れても「可愛い」ってなるからね。
いよいよレースが始まった。飛び出した逃げ馬を追いかけるように先行策を取るタニノマティーニ、中段で脚を溜めるウインラディウスとキネティクス。そのまま第1コーナー、第2コーナーを抜け、レース後半戦へ。第3コーナーでも陣形は崩れはしないがタニノマティーニが先頭との差をジリジリと無くしていく。第4コーナーでウインラディウスが進出してくるがキネティクスこれ間に合うか?
このレースが当たってくれないと12Rも不安になるので川添さん頑張ってー!その子はスイープトウショウみたいな癖ウマじゃないから行けるはず!
想いが通じたのか最終直線でグングン伸びてきて結果は前世通り12-10-14だ。11番人気のタニノマティーニが2着に来てしまったので周りでは券を投げ捨てている人もいる。3連単のオッズは800倍越えなので荒れるのも仕方ない。
「いえーい!ママ大勝利ー!」
「すごい!すごい!」
喜んでいるお母さんを撮影するのも忘れない。換金しに払い戻し機に向かうと、次の12Rで取り返そうとしている人が多くいることに気づいた。次のレースも地獄なんだよなあ……
払い戻された60万円はお母さんの財布の中にしっかりと仕舞われた。そういえば1000万円を超える払い戻しの場合ってどうやって受け取るんだ?お母さんに聞いてみれば100万円以上の時は窓口で渡されるとのこと。それ襲われそうだけど大丈夫かな。
「葵ちゃんの馬券が当たったら窓口に行かなくちゃかもねー」
「もし当たったらさ、それ自由に使ってもいい?」
「そうなったら葵ちゃんの好きな事に使っていいよー」
恐らく当たるはずがないと考えているお母さんから言質を貰った。絶対とは言えないんだけど、多分当たっちゃうんだよなーこれが。
さっきと同じようにスタンドへ出てレース開始を待つ。地面に落ちている馬券を清掃員の人がせっせと集めていた。
「……次に競馬場に来る時は指定席でも買いましょうか」
お母さんはその光景が嫌いらしく、次回は立ち見を避けられそうである。
「このレースが終わったら、久しぶりにお寿司を食べに行きましょう!」
「お寿司!?やったー!」
気分を入れ替えるように夕食の提案をされ、それが大好物の寿司だったから大喜びだ。寿司と聞いてお腹が貝類を欲しているのが分かる。貝、貝が食べたい。
何を食べようか悩んでいるとレースが始まる。このレースはダートの1400mなので早々に決着が着くはずだ。浮かれている私を尻目に馬たちは第4コーナーを回ってきた。げぇっ!3番も11番も後ろじゃん!このレースは結果しか知らないんだからこの展開が史実通りなのか分からない。
「頑張れー!」
思わずあげた声は周囲の喧騒に掻き消されることなく響き渡った。周りの人がバッとこちらを振り返ってくる。やば、競馬場で大声出しちゃいけないんだったっけ?馬は大きい音に敏感だって話だからマズかったかもしれない。自分の行動を反省していると前の方から怒号とも悲鳴とも取れる声が聞こえてくる。
気づけば既にゴールしてるらしく掲示板を見た。そこには3-11-4と上から順番に書かれている。凄い、あそこから差したのか。
「勝ったー!あーちゃん大勝利〜!」
「……」
私を抱き上げているお母さんは声を失っていた。お母さん視点で見れば、娘が適当に選んだ馬券が億を超える額になったのだから当然だ。
「お母さん?」
「……葵ちゃんっ!すっごいよ〜!こんな所でも天才だなんて、ママびっくり!」
知識チートがありますから。
なんて言える訳がないので曖昧に微笑んでおいた。
◆◇◆◇◆◇
お母さんの説明通り配当金は窓口で渡されるらしく待機札をもらった。宝くじみたいに銀行振込にしてくれれば楽なのだが、どうやら必ず現金での手渡しでなければいけないらしい。
私はその時間を利用して係の人に動画をアップロードしていいかの旨を確認した。その際にあちらの人が私のことを知っていたらしく上に連絡するから待ってくれと言われる。
IMOの件は世間で大きく取り上げられたのだが、ここで役立つとは思わなかった。
しばらく待つと見るからにお偉いさんという人が3人来た。
「お待たせしました、八色さん」
「いえ、待ち時間のついででしたので大丈夫です」
代表者の人と話すと、アップロード前に確認して修正してほしいところはその時に連絡するということになった。寛大な措置でありがたい。
「実は我が息子が八色さんをテレビで見て惚れてしまいましてね」
「あー……ありがとうございます?」
「この機会に出来れば写真を撮ってもらいたいのですが、可能ですか?」
「それくらいなら」
「おお!ありがとうございます」
見返りと言ってはなんだがお偉いさん達と写真を撮ることになった。私に惚れてしまった少年には申し訳ないが彼と会うことはないだろう。
お母さんもついでに入ってもらい撮った写真は満足するものだったみたいだ。
「ありがとうございます。しかし動画をアップロードと言いますがどちらに?」
「YouTubeというサイトがありまして、海外の多くの企業もコマーシャル動画をアップロードしてますね」
「ほう、YouTubeですか……興味深いことを聞かせてもらいました。丁度配当金の方も準備が出来たみたいですので、我々はこれで」
「はい、本日はありがとうございました!」
「あっ、ガードの方をつけてもらってもよろしいですか?」
「もちろんです。直ぐに手配します」
日本の企業もYouTubeに目をつけているはずだが、JRAはまだみたいだ。前世では2012年くらいに公式アカウントが作られていた気がする。こちらの世界でどうなるかは分からないがもしかしたら早まるかもしれないね。
というか警備の人つけられるんだ。
渡してもらった紙袋にはたくさんのお札の束が入っていた。総額として1億1000万円ちょっと。ずしりとした重さが金額の多さを物語っている。ここから税金などが引かれたものが手元に残るので、返ったらどれくらいの金額になるか調べてみよう。
紙袋はお母さんに渡し、警備の人に囲まれながらタクシー乗り場へと向かった。いまはとにかくお寿司の事で頭がいっぱいだ。何食べようか考えていると順番が回ってくる。タクシーに乗ると警備の人は戻っていった。
「銀座の適当なところで補完へお願いします」
「承知しました」
「そこに行ったことあるの?」
「パパとのデートでよく通ってたの。せっかく東京に来てるし、丁度良かったね」
「そうなんだ」
銀座のお寿司屋さんなんて格式が高そうだがお父さんもなかなかやるようだ。私は前世で教授に連れて行ってもらった1回しか行ったことがない。あまりの美味しさに感動した覚えがある。
目的地へ向かう道中、外の景色を眺めているとお母さんが真剣な顔をして声をかけてきた。
「このお金は葵ちゃんの物になります。何に使おうが自由です」
「うん」
「ただし!お友達に物を買ってあげたり、そのままお金を渡したりしないこと。これは約束出来る?」
「うん、約束出来る」
「それならよし!」
金銭のやり取りは小中学生まではご法度だ。その事についての注意みたいなものだった。
「今度、葵ちゃん用の口座とカードでも作りましょうか」
「えっ、カード!?いいの!?」
「怪しいサイトとかには注意してね?」
「分かった!」
まさかクレジットカードまで作ってくれるとは。これで行動の幅が大きく広がった。明日辺りにこれからのムーブと照らし合わせて買うものリストでも作ろう。
◆◇◆◇◆◇
到着したお寿司屋さんはシンプルな店構えでいかにも高そうな雰囲気が出ている。入るのに躊躇しているとタクシーのお金を払い終わったお母さんが扉を開けた。店内は優しい色の明かりで照らされており、カウンターにはお客さんがまだ居なかった。
「大将さん、お久しぶりです」
「っ!これはリーナさん、そちらのお嬢さんは……」
「娘の葵です」
「八色葵です」
自己紹介をしてぺこりとお辞儀をする。大将さんがお母さんの名前を知っているってことはだいぶ贔屓にしていたんだと思う。
私の名前を聞いて大将さんは朗らかな笑みを浮かべた。
「リーナさんに似て将来は大層な美人さんになりそうだ」
「あら、葵は今でも美人ですよ?」
「これは手厳しい。おい、灯りを落としてこい」
「はいっ」
何かの指示を出されたお弟子さんが外へ出ていく。
「貸切にしちゃって大丈夫ですか?」
「今日は予約も入ってないので構いません」
「私のせいで潰れたりしないかしら」
「そんな経営してたら先代に怒られますよ」
さっきの指示は貸切にするってことか。戻ってきたお弟子さんの手には入る時に見た暖簾があった。……土曜日に予約がないお寿司屋さんって本当に大丈夫かな?
とりあえずお弟子さんの引いた席に座る。もちろん背が足りないためお母さんに抱き上げてもらった。
「葵ちゃんは何が食べたい?」
「貝と光り物!」
「今日はいいサバが入ってるんだ。きっとあまりの美味しさに葵ちゃんはビックリすると思うよ」
「楽しみです!」
「私は大将さんのオススメで」
大将さんとお弟子さんは注文を聞き手際よく貝と魚を捌いていく。一人暮らしをしていた時でも魚は捌かなかったので、その速さに感嘆のため息が漏れる。
職人の技に見惚れながら、邪魔をしては悪いと思いつつも気になることを聞いてみた。
「お父さんとお母さんはよく来てたんですか?」
一瞬、手が止まる。大将さんはそのまま何事もなかったかのように作業を続けた。
「そうだねー、陽仁さんとリーナさんが学生の頃からの付き合いかな」
「そんな若い頃から……」
「葵ちゃん、ママはまだ若いのよ」
大学生の頃からと言うと、お父さんは相当無理してここに来てたんじゃないかな。お母さんくらいの美人を捕まえるためには必要経費だったかもしれないけど。
「お母さん、大学生の時には日本にいたんだ」
「ママが留学生としてこっちに来ててね。その時にパパがここに案内してくれたの」
「へー」
「陽仁さんとリーナさんは常にその席に座ってたね。はい、こっちがタイで葵ちゃんにはカキの握りだよ。味はもうつけてあるからそのまま食べてね」
出されたのは丸々と太ったカキだ。シャリがその大きさに隠れてしまっている。
いただきますと言って掴んだカキはプルプルと震えている。
「ん〜〜!!」
「いまつぶ貝と一緒に焼いてるのも作ってるからね」
圧倒的美味しさの前には語彙力など融けてしまう。それほど美味しい。こんなおっきいカキも初めてだ。私が悶えてる様子をお母さんは微笑ましそうに眺めていた。
その後もお父さんとの思い出を聞かせてもらいながらお寿司をいただいた。お母さんはバランスよく食べていたが私は貝と光り物オンリー。ミル貝とか初めて捌いている様子を見た。
1番美味しかったのは生サバだ。私の中の美味しい魚ランキングトップに躍り出た。今までトップにいたシイラくんは2位に格下げです。旬だからか脂ののった身が最高だった。この味を覚えてしまうと他所のお店ではサバを頼めそうにない。
帰りもタクシーだ。お店の前に呼んでもらいそこから埼玉の家まで送ってもらう。
「葵ちゃん、もうキミもここの会員だから、何時でも来ていいんだよ」
「ここ会員制だったんですか!?」
帰り際に会員制のお店だった事実を伝えられた。座席数も5つしかなかったけど本当にやっていけてるのだろうか。
帰りの車内にてあそこは大将の道楽でやっていると教えられた。なんでもお弟子さんを育てるためだけに開けているようなものらしい。お金持ちの考えはよく分からないが、あのお店は月に1回は行きたいな。それくらい稼げるように頑張ろう。
会員制なのに予約なしで開けている店とかは言ってはいけない
余談ですが作中の12Rの3-11-4の3連単は16頭立ての3345番人気だったので3340番人気にしようと思いましたがオッズを見る限り変わらなそう
めちゃめちゃ変わりました
ちなみにこの間の秋天はパンサラッサくんのおかげで美味しかったです(隙自語)
エリ女?知らない子ですね…
—追記—
寿司屋の場所は適当にみなさんの頭の中で補完してください
ネタが思い着き次第修正します