幻星の戦士、荒廃の世に生まれ来る   作:マガガマオウ

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序章 救出!未来の戦士

ジャスティライザーリゲルとなった彼が横浜に降り立った時、町はBETAの死体とロボットの残骸で溢れそこに住んでいたであろう人々の姿はどこにも無かった。

 

「間に合わなかったか……いや、それでも戦闘は続いているんだ!何処かに避難しているんだろう。」

 

殆ど瓦礫の街と化していた横浜の地だったが、それでもロボットとBETAの戦闘が継続されている事は周囲の音を聞けば明らかだった。

 

「お~い!誰か居ないか~!いたら返事をしてくれ~!くっお前らは読んでない!退け!」

 

人間より少し大型のBETAが闊歩する街の中を声を張って突き進む、声を出せば当然それらは寄ってくるが武器の青龍刀を振るい切り倒して道を切り開く、幾度かBETAとの会敵しては倒す事を繰り返しながら街の中を捜索していると商店街の様な通りに出た。

視界には倒壊した商家の様な家屋や倒れ込む様に沈んだロボット、大小様々な形や大きさのBETAの死骸が通りを埋め尽くしていた。

 

「ここが一番酷いな、こんな所に生存者なんて……っ⁉そこに誰か居るのか⁉」

 

余りに凄惨な光景にこの場の探索を諦め別の場所を当たろうとすると、不意に何者かの息を殺した声が聞こえすぐ近くに倒れ伏せたロボットの影に視線を向ける。

 

「たっ武ちゃん!」

「大丈夫だ純夏、俺が絶対守ってやる!」

「っ!子供⁉何故こんな所に、いやまずは避難させなければ!君たち!」

 

子供が二人、年の頃は11~13歳程と思われる男女がロボットの子供なら隠れられそう隙間に身を寄せ合い隠れていた、きっと避難している間に戦闘が始まり収まる待っていたら敵が其処ら中に溢れ動く動けなかったのだろう。

私が彼等の元に駆け寄ると二人とも怯えた表情でコッチを見ていた、思い返してみれば今は鎧を装着した姿だった戦う為のとは言えこの子たちには得体の知れない恐怖の対象と成ってしまったのだろう。

 

「クラストオフ……私は敵じゃないよ、少しお話をしよう。」

「お話……?」

「本当に敵じゃないのか?」

 

黒い鎧を脱ぎ外し中に人が入っている事を示すと、彼等の警戒心は幾分か和らいだように感じる。

後は状況聞き出せれば私がどう対応すればいいかの判断も出来る、多少怪しさは残るが話し合いの出来る心境になってくれたのなら良いのだが。

 

「君達は何故、こんな危険な場所に他の大人たち一緒じゃなかったのかな?」

「うっ!それは……。」

「私が悪いの!私がお人形さんを落としちゃって、それを武ちゃんが拾いに行ってくれて間に皆が先に行っちゃって……。」

 

私は成るべく優しい口調でゆっくり聞き取れる様に彼らに事情を尋ねる、すると少年の方が言い淀みそれを庇うように少女が訳を説明してくれた。

如何やら少女の大切な物を取り戻すために脇道に逸れていたら避難者の集団から離れてしまった様だ、それから敵が街の中に入り込み漸く逃げ込めたのがここだった。

 

「理由は分かった、だがここも安全と言う訳じゃない。私が同行する、一緒に避難所へ向かおう。」

「……分かったよ、行こう純夏。」

「う、うん。」

 

やはりBETAの闊歩する街の中、いつ見つかるも分からない状況で子供が二人だけで隠れ続けて居られる訳は無い、一刻も早く他の大人たちの元へ送り届ける必要がある。

私には与えられた力が在る、いざと成れば私自身を囮にして彼らを安全な場所へ逃がすと事も出来るだろう、それを彼等も理解していると思うからこそ共に行動しようと誘えば乗って来てくれた。

 

「一緒に行く前に自己紹介だ、私はリゲルと言う君達は?」

「俺は、白銀武……。」

「私は、鏡純夏です。」

 

ここまで接して来てまだ一度も自分の名も名乗っていなかった事に気が付き、遅ればせながら今生での名を名乗る事にした、私が名を明かすと二人もおずおずと名前を教えてくれた。

 

「白銀君に鏡ちゃんか、よろしくね。」

「うん、よろしくリゲルさん。」

「よろしくお願いします。」

 

お互いの名を知ったからだろうか、発見した当初より距離が近づいたような気がする、やはり名も知らぬ他人より、多少なりとも相手の内訳を知っていた方が安心を感じるのだろう。

避難する道中を共にする相手だ全く信頼されないよりも僅かでも信頼関係を築けた方が、心持ち的にも楽なのは誤魔化しようがない。

ロボットの残骸の傍を離れた私は二人の案内に従い、この辺りに暮らす人々が有事の際に集まる共通の避難場所へとBETAとの接触を避け多少遠回りし向かっていた、しかし……。

 

「……可笑しい、避けて通てる筈なのに教えてくれた避難場所に近づくほどBETAとの遭遇する回数が増えている⁉」

「え?そうなのか……まさか⁉」

「そんな……ウソ⁉そんな⁉」

 

しまった不用意に思い浮かんだ事を口にしてしまった!おかげで二人が動揺して不安がらせてしまうなんて……。

 

「すまない二人とも、私がそう感じているだけで実際は違うかもしれない……安全を確保しつつ成るべく早く目的地に着けるように道を選ぼう。」

「う、うん!そうだよな、まだそうだと決まった訳じゃないよな⁉」

「きっと大丈夫だよね⁉きっと皆、無事だよね⁉」

 

不安そうな表情だが務めて冷静に話を振ったおかげで大分持ち直してくれた、ここで焦って敵の密集している場所に鉢合わせてしまったらここまでの行動が水の泡だ、避難の最中は焦りは禁物だこれ以上この子達を不安にさせる言動はしないように注意しなければ。

それでも避難場所に距離が縮まる程、BETAの出現の頻度は増し嫌な予想が私達の脳裏に浮かんで留まる、最初に持っていた希望は懇願の域に達しようかと思う程、絶望的な予感が常に纏わり付く。

そんな不安と緊張が空気が張り詰める中、それらを振り払う様にただひたすら目的地への避難路を選び進んで遂に目的の場所を目視できる距離まで至った時……希望は脆く悲惨な現実に打ち砕かれた。

 

「あ……あぁ……そんな、そんな‼」

「うっ!うぅぅぅぅぅ、わぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……遅かった、済まない二人とも……本当に済まない‼」

 

目的の避難場所は小型のBETAに蹂躙され、生きた人の姿は一人も無く血と肉塊だけが散乱する地獄の様相、ここ迄でも充分限界が近かった二人は遂に絶望の叫びと共に泣き崩れ、私はそんな二人に謝罪を繰り返す事しか出来なかった。

親兄弟のみならず見知った者すべてを失い悲嘆に暮れる二人に、それでもこの生き地獄は絶望に打ちひしがれる時間すら与えてはくれなかった。

 

「っ!二人とも顔を上げるんだ!敵が来てる、立ち上がって生き延びるんだ!」

 

二人の叫び声に呼び寄せられたBATAの集団が此方に迫る、心が折れ立ち上がる力を無くした二人にそれでも生き延びて欲しくて声をかけ続ける。

 

「くっ!クラストオン!」

 

自分達の知る街知る人知らぬがこれから関わっていった人これから覚えていく場所、その全て失い絶望が全てを覆いつくした今の二人には、どんなに大きな声で呼びかけても届かないかもしれない……。

それでもほんの僅か、普通ならすれ違ったり路を聞いたりする程度の時間でも接して関わった二人でも、私は諦めたくなかった、例え今を生き延びても辛い日々が続くのだとしてもそれでも生き延びて欲しい。

私の遅すぎた目覚めのせいで救えなかった……助ける事が出来なかったこの街の人々の分まで、それが私のエゴだったとしても!

 

「よく聞きなさい、白銀君!鏡さん!君達は生きなければいけない、亡くなった人たちの分までこれから犠牲になるかも知れない人たちの為に!今は悲しいだろう!苦しいだろう!悔しく遣る瀬無いだろう!」

 

だから今の心に抱いた込み上げる想いを全て吐き出す、例え殆ど届かなくても僅かでもいい二人が立ち上がり前を向いて歩いてくれるなら……私は恨まれても良い!

 

「それでも……だからこそ生きろ!生きて、生きてこの街で起きた惨劇を世の中に伝え続けるんだ!それが、今この時まで生き延びた君達の意義だ!私の知らぬ人々の生活を未来、それを守る事が出来たでも出来なかった私の贖罪だ……それでもまだ、目の前が暗く見えるのなら隣を見ろ!そこには誰が居る!誰が傍に居る!」

「隣……純夏?」

「武ちゃん……。」

 

私の最後の思いの丈は僅かでも彼らの心を呼び戻せた、言われるがまま直ぐに傍にへたり込むお互いの姿を見つめ合った二人の目に生気が戻る。

 

「忘れるな!武!純夏!君達はまだ一人じゃない、お互いがまだ存在している!君達が生き続ける限り、君達がこの街の元の姿を覚えて居続ける限り……この街も!生きていた人も!完全に消えはしない!君達の中で生き続ける!」

「俺達の中で、生きている……父さんっ母さんっ!」

「お父さん……お母さん……私!」

 

二人の感情が戻っていくの表情でも見て取れた、良かったまだ生きようとする活力を取り戻してくれた……後は私がこの場を切る抜け二人を逃がせば……っ!

 

「後ろだ純夏!」

「っえ⁉」

「やらせない!純夏まで失ってたまるか!」

 

私が二人が持ち直してくれた事に安堵していたのも束の間、純夏の背後からBETAの異様が這い迫り声を張り上げるが、純夏の反応が一拍遅れて異形の手が彼女に延びるその間に武の幼い体が割り込んで阻もうとする。

その時、武から強い意志の力が溢れた様な真っ赤なオーラが溢れ、私の中から赤い力が武の意思の光に吸い寄せらる様に抜け出し彼の元で一本の刀の姿に形を変えた。

 

「っ!もう……俺から、俺達から誰も……何も……奪わせねぇ!」

 

少年の手には大き過ぎる刀の柄を両手で確り握り、大きく横に振り被ってBETAの腕を振り払い腰元へ引き寄せる。

鞘の端が地面の着き小さな体を倒れない様に支えると、鞘の鍔に近い個所にあるメーターのメモリが少しずつ刃元へ登っていき光で満ちると鍔が横に回転する。

 

「レイジングフレイム!」

 

鞘から刀を抜き放つと赤熱に燃える刀身を上段に構え振り下ろし、斬撃は灼熱の衝撃波と成って迫るBETAを焼き切りその背後にも控えていた個体諸共燃やし滅していく。

 

「武……ちゃん?」

「純夏……大丈夫か?」

 

よく知る少年の見せたそれまでに見た事の無い覚悟を決めた勇ましい姿、少女は自分の目の前で起こった事を認識するの少し時間が懸かり少年に声を掛けるでやっとだった。

少年が少女の呼び掛けに笑顔を見せて振り返るが、その表情にはあまり余裕が感じられない。

 

「うっうん、武ちゃんは?」

「俺は……大丈……。」

 

一先ず自分には大事が無い事を武に伝えた純夏は逆に彼に異常が無いか尋ね、武は如何にか自分も平常であると伝えようとして意識は置途切れ倒れ伏せる。

 

「た、武ちゃん⁉」

「落ち着くんだ!揺らしちゃいけない!」

 

急に倒れた武の姿に動揺した純夏が慌てて彼の体を揺すりだし、私は敵を切り伏せてから彼らに駆け寄り純夏を落ち着かせてから武を仰向けに寝かせた。

 

「大丈夫だ呼吸はしてる、きっと急に力を使ったから体力がもたなかったんだろう。」

「本当ですか⁉良かった……。」

 

しかし、あの力は勇の力……まさか彼が三人の内の一人だったとは、だが彼は幼い子供……この星の状況では、親の居ない彼等がこの力を正しく使える様になるのか分からんな……。

武の小さな手から握られた刀の柄を取り出し刃を鞘に納めると、刀の姿の力を印籠に変えて再び彼の手に戻してやる。

 

「純夏これから君たちを私が一番安全だと思える場所に送る、出来るだけ武に体を密着させてこのインローダーを手に触れておきなさい。」

「は、はい!」

 

自分の目の前で起きた事に驚いて緊張してしまったのか、純夏は少し声を上擦りながら大きな声で答えてくれた。

 

「転送座標は格納衛星シェイドスター。純夏、向こうに着いたら君たち以外は誰も居ないし不安になるかも知れないだからこれを渡しておくよ。」

「これって……水晶?とっても綺麗ですね。」

 

彼等を宇宙にあるシェイドスターに送れば一先ずこの惨劇から逃れる事は出来る、だが転送された先に不安させるのも不憫だと思い私はあの声の主から預かっていた水晶を一時的に渡して二人を送り出し安堵する、それと同時に周りが静かになった事に気が付いた。

 

「戦闘の音が止んだ……この街を守っていた兵士が全滅したのか⁉……召喚!幻星獣ライゼロス!」

 

静かになった街の様子に不安を覚え、私はライゼロスのセンサーを使い周囲の生体反応を探るために呼ぼ出す。

 

「来たか……ダイブイン!」

 

数分待ってシェイドスターから発進したライゼロスが大気圏を突破して視認できる範囲まで降下してくる、途中レーザーがライゼロスに向かって伸びていったがその装甲に大きな損傷を与える程の威力は無かった。

街の上空に差し掛かるとブレスレットを手を翳し、ライゼロスのコックピットへ転送され吊るされた操縦桿を握って起動する。

 

「周囲の生体スキャンを開始……街な中にはあいつ等以外の反応は無し、だが街を出た場所で移動する反応を確認……戦闘を止めたのは避難の為か。」

 

街中を含めた少し広めの範囲の生体反応を探査すると、街の中はBETAの反応のみを示すが街の外ではまだ多くの人の反応が探知され、他にも生体ではないが巨大な熱源恐らくはあのロボットの物と思われる反応も多数確認でき、その手前で群れを成すBETAの集団もいる様だが。

 

「それで避難者を追っていた敵生体反応が引き返してきてるのはライゼロスが現れたからだな。」

 

街の外に出ていたBETAの群れが今度はまた街の中へと戻って来ていた、ライゼロスに引き寄せられた様にも見えるが丁度いい。

 

「少し……暴れていくか!ゼロスキャノン発射‼」

 

街の中に元々残っていた残存BETA群と会敵、ライゼロスの内蔵武装を放ち地上を埋め尽くす敵を一掃。

 

「死骸に隠れてる?ならばゼロスフレア‼」

 

戦闘後に残った死骸の影に隠れた敵を、ライゼロスの口から放った高熱光線で死骸諸共焼き払い。

 

「今度は大物だな、だが動きが遅い!クラウドダッシュ‼」

 

通常の個体より大きい相手には、機体を浮かせてホバー移動で突撃して吹き飛ばし。

 

「周りからも集まってきたな、だがライゼロスは接近戦も熟せるぞ!スマッシュクロー‼」

 

両腕に備わった爪で集ってきた敵を切り裂き、そのまま地面に叩きつける。

 

「後ろを取ったか、それでもテイルスマッシャー‼」

 

背後回り鉤爪状の針を突き刺そうと突き出す敵には、機械の尻尾で敵を足元から払い倒して。

 

「突進して腹部の針を刺しに来たか、だがライゼロスの装甲は貫けはしない!そして、ライゼロスの胸のゼロスカッターは飾りでもない!ゼロスクラッシャー‼」

 

その巨体を使った突進と腹部の針での刺突を仕掛けるが、ライゼロスの装甲材は宇宙科学で作られた船にも使われる物そう簡単に損傷はしない、それどころか胸の二枚の丸鋸も回転と振動でズタズタに切り裂かれる。

 

「コイツの体液は濃硫酸だったか、だがそれでもライゼロスは溶かせない!」

 

全身に多数の武装を積んだ機械の獣、その巨大な力が振るわれれば街に蔓延っていたBETAが全滅するのは時間の問題だった。

 

「敵生体の反応は無し、全て片付いたか……二人が心配だな、直ぐに帰ろう。」

 

街の中にも外にもBETAの存在を示す生体反応がない事を確認すると、彼はロボットの残骸とBETAの死骸だけになった横浜の街から飛び立った。

この日、横浜に現れた機械の獣は混迷を極めた世に波乱を呼ぶ、人々は考察しまた謀を巡らせ将軍が本宅の宝物庫から獣に関する言伝えを記した書物を見つけ世に公表するまで様々な考察が世に溢れた。

そして、噂の渦中に居る当人は今、保護した二人を守りつつ武には戦士としての稽古をつけるのだった……彼が勇の赤武者と成れるその日まで、彼は武と純夏を守り抜くと固く誓い。

 

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