ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

10 / 69
アリーナ防衛です。ゲーム本編とだいぶ違います。
今後、ミッション毎に色々な僚機を出す予定です。


アリーナ防衛

「もしもし、いてっ。やめろってば……あ、レインか?」

《はい、午前中のアリーナはお疲れ様でした。初勝利おめでとうございます、レイヴン》

「おう、なんとか勝てたよ、おかげさまで。……やめろって、通話中だから。それで、何かあったのか?もう次の依頼か?」

《いえ、そういうわけでは……その……ひやひやしながら見ていました》

「ああ……対AC戦なんて初めてだったし、コアに内蔵する自律砲台も初見だったからな」

《ACは無事ですか?》

「中破ってところだ。防御スクリーンが切れる寸前で決着ついたからな。まあ、アリーナの修理費はコーテックス持ちだって言うし、パーツ片っ端から替えるから、4日はかかるってよ」

《そうですか……あなた自身は、怪我などは》

「最後の激突で、ちょっと打撲したくらいだ。あとは帰ってきた後でこいつら整備班にもみくちゃに……うるせえよさっきから!!」

 

ソラは携帯端末から顔を離し、周囲の整備班を怒鳴った。

ヒューヒューと酒の勢いで騒がしく囃したてていた連中はそれを聞いてさらに大笑いし、再び飲み食いに戻っていった。

ACガレージはボロボロで帰還したストレイクロウを放置したまま、宴会の最中だった。

担当レイヴンのオーダーマッチに金を賭けるのが、コーテックス整備士の密かな伝統らしい。

チーフのアンドレイから聞いた話だが、本当かどうかは分からない。

はっきりしているのは、アリーナから帰ってきてこっち、酔っぱらった整備班の絡みが鬱陶しいことだけだ。

 

《あの……とにかく、お疲れ様です。それで、どうしますか?ACの修理が完了するまでは、もし依頼が入ってもこちらでキャンセルしておきましょうか?》

「そうだな。半端な状態で出撃するわけにもいかないしな。だけど……」

《?》

「いいや、アリーナに出る度にここまでボロボロになってたら仕事が滞ると思っただけだ。まあ、ACの性能も俺の腕も、まだまだ上げていかないとな」

《……私も、可能な限りサポートできるよう努めます。では、これで》

「ああ、じゃあまた」

 

ソラが通話を終えると、それを遠巻きに見ていた整備班が再びヒューヒューと囃したて始めた。

チーフのアンドレイが赤ら顔のまま、酒瓶片手にふらふらと近寄ってくる。

 

「でへっ、ええのぉ。初勝利を祝ってくれる美人オペ子」

「酒臭えよチーフ。くっつくなって」

「ワシも、あと30若けりゃなぁ……ミラージュ時代は結構モテたもんじゃ。知っとるか?」

「知らねえ」

「オペ子とそういうカンケイになるレイヴンって多いんだっての。ええ?このスケベが」

「スケベはチーフだろ……いいからいい加減、離れろって……!」

「いたた、わはは!おーい、お前らじゃんじゃん飲めぇーい!!いきなりE-5に上がった我らがレイヴンに、かんぱーい!!いえーい大儲けー!!」

 

かんぱーい、と整備士たちの合いの手がガレージ中に響き渡る。

これからはアリーナで勝つ度にこんな調子かと思うと、ソラは少しだけ気が重くなった。

 

「あ、そんでな。ひっく。コーテックスから褒賞パーツが届くんじゃがな。ええ、なんだっけ?納期に遅れが……あー、2日後くらいらってよ!」

「褒賞?ああ、なんかそんなことメールに書いてたな。遅れるのか……いや、そういうのは先に言ってくれよ」

「あのパーツはなぁ、初勝利するとだいたいあれよ……あー、なんだったか……まあええか、明日明日。わははははっ!ほら、お前さんも飲まんかい!主役が飲まんでどうする!」

「分かったよ、分かった分かった。まったく、ははは……」

 

アリーナ初勝利を祝す宴会は、空が白むまで続いたのだった。

 

 

………

……

 

 

5日後。

 

専用住居で朝のニュースを見終えたソラの元に、レインから通信が入った。

 

《レイヴン、先ほどの報道はご覧になりましたか?》

「ああ。コーテックスがレイヤードの癌なんだって?」

《……企業間紛争に大きく関与していると言われれば、否定はできませんが》

「冗談だ。武装勢力の言い分なんて、真面目に聞くもんじゃねえよ」

《そうですね》

 

レインが携帯端末の向こう側で小さくため息を吐いた。

用件はやはり、先ほどニュースで取り上げられていた武装勢力の犯行声明のようだった。

声明によれば、攻撃対象はこのセクション301――グローバルコーテックスだ。

 

《既に隣接するセクション302において、所属不明のMT部隊の集結が報告されています。数日前から、不穏な動きはあったようですが……》

「奇襲してくればいいものを。声明なんて馬鹿正直に出すとはな」

《……それで、本件の対処について、レイヴンにコーテックス本社から出撃依頼が入っています》

「俺に?」

《続きはブリーフィングルームで話しましょう》

 

レインに求められ、ソラはブリーフィングルームに移動した。

備え付けの端末に、コーテックスから依頼のメッセージが届いていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

我がグローバルコーテックスに対する、テロ攻撃の動きがあります。

 

彼らはコーテックスの経済活動の停止と、所属レイヴン全員の身柄の引き渡しを要求しています。

武装勢力の背景は現在のところ不明ですが、レイヴンの活動に恨みを持つ者は多く、また既にセクション302に大部隊の集結が確認されています。

 

声明によれば、要求が受け入れられない場合、彼らはACアリーナ及びコーテックス本社ビルを破壊するつもりのようです。

当然、グローバルコーテックスは武装勢力に従うつもりはありません。

 

そこで、各レイヴンは敵部隊の侵攻ルート上で待機し、施設に被害が出る前に1機残らず殲滅してください。

 

なお、今回の依頼に関する報酬は、撃破した敵の機体数に応じて支払うこととさせてもらいます。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「レイン、メッセージを確認した。複数名のレイヴンによる共同作戦だな?」

《はい。あなたと同じように、Eランクのレイヴン数名に参加を呼びかけています》

「Eランク?このセクション301への直接攻撃なのに、最低ランクのレイヴンしか動員しないのか?」

《管理者の指示です。敵はかなりの頭数を揃えているとはいえ、安価な普及型MTが中心と予想されます。また、企業のような統率の取れた作戦行動は難しいという判断です。ですから、こちらも相応の戦力で対応すると》

「……なるほど」

《それと……Eランクレイヴンのみを動員する一番の狙いは、彼我の圧倒的な力の差を見せつけることにあります。管理者の予測によれば、およそ3機のEランクACでこちらの被害を最小限に抑えつつ敵勢力の殲滅が可能とのことです》

「一番低いランクのレイヴンにさえ敵わないんだから、無謀なことは考えるなってことか」

《はい。今後同様の活動を抑止するためにも、必要最小限の戦力で完全な迎撃を遂行するそうです》

「報酬は歩合制……分かった。依頼を受ける。本社の管制室に参加を伝えてくれ」

《分かりました。今日はガレージで待機をお願いします。出撃時刻が決まり次第、伝達します》

「了解」

 

通信を終え、静まり返ったブリーフィングルームで、ソラは携帯端末を操作した。

各メディアで武装勢力の声明の件が、既に大々的に報道されている。

グローバルコーテックスが、その要求を拒否した件についてもだ。

武装勢力の情報は、ほぼ筒抜けと言ってもよかった。

 

「……こいつら、何が目的だ?レイヴンの巣をつつくなんて、ただの自殺行為だろ。それとも、何か別の狙いでもあるのか?」

 

ソラの疑問に、答える者はいなかった。

 

 

………

……

 

 

今日の偽物の空には、珍しく青空が映し出されていた。

コーテックス所有の双発式戦略輸送機から、ソラのAC"ストレイクロウ"が投下される。

 

《レイヴン、待機場所をスポットします。そちらへ向かってください》

「了解」

 

ACのレーダーに、レインの記したスポットが表示される。

輸送機から降りたのは、ソラが最後だった。

残りの2機のACは、既に所定ポイントへ投下されていた。

 

《各レイヴンへ連絡。敵勢力のセクション侵入を確認……数は逆脚型MTが約30、ホバー型戦闘車両が約20。エスペランザ、アリーナ方面への誘導を開始しろ。ゲルニカは調整用ガレージB-2付近で待機。ストレイクロウはスポットした高台で待機だ》

 

通信機を通して、コーテックス本社の管制室が呼びかけてくる。

アリーナ施設から南東へ約500mの地点の高台に、ストレイクロウは陣取った。

歩行型MTや戦闘車両でアリーナに向かうためには、通過せざるをえない地点である。

 

「MT30機、戦闘車両20台か。武装勢力にしては随分と頑張ったな……企業でもなかなか用意できないだろ」

《ええ。予想以上に戦力を投入してきたようです。……一体どうやってこれほどの数を》

「参加レイヴンは俺とアップルボーイと……ゲルニカ……誰だ?レイン」

《"ゲルニカ"の搭乗者はE-3ランカー"ゲド"です。DランクとEランクを往復している、比較的ベテランのレイヴンですね。ミッションの遂行率も高めです》

「E-9と、E-5と、E-3……普及型MTが相手ならこれで充分だって判断か」

 

やがて、AC頭部の望遠カメラが、遠方で火線と爆発を確認した。

このセクション301と隣のセクション302を繋ぐ大橋の近くである。

既に、最前線のアップルボーイのAC"エスペランザ"が武装勢力と戦闘を始めたようだった。

 

《エスペランザ、分散しようとする敵を迎撃して、アリーナ方面に進路を向けさせろ。…………そうだ、それでいい。撃破は無理のない範囲で構わん。残りはゲルニカとストレイクロウがやる》

 

どうやら、アップルボーイが上手くゲドとソラの方向へ敵を誘導しているらしい。

事前の管制室との打ち合わせ通りである。

武装勢力は予想外の行動をとることもなく、素直にコーテックスの思惑に乗っていた。

 

《……ガレージB-2付近で、ゲルニカが交戦を開始しました》

「なんだ、あのレーザーの嵐は……」

 

頭部の望遠カメラが捉えたゲドのAC"ゲルニカ"の戦闘に、ソラは目を奪われた。

見たこともない密度と頻度で、赤い逆関節ACが腕部から拡散レーザーを撃ち出していた。

密集していたMTと戦闘車両が数機まとめて、光の嵐に焼かれて爆散していく。

"武器腕"と呼ばれる、短期決戦特化の腕部パーツである。

そして武器腕のレーザーが止まったかと思えば、今度はコアがイクシードオービットを射出し、これもまたレーザーを乱射しては敵機を薙ぎ払う。

大雑把な攻撃だが、普及型MTごときでは手も足も出ない火力であることは明白だった。

こういう派手な戦い方もあるのかと、ソラは少なからず衝撃を受けた。

 

《ストレイクロウ、出番だ。アリーナに向かってくる敵を駆逐しろ》

「……了解」

 

管制室から入った通信に、ソラは気持ちを切り替えた。

たまらずゲルニカの乱射から逃げた敵部隊が、高台の坂の下に向かってくる。

ストレイクロウがブースタを吹いて躍り出し、坂を駆け下りながら先頭のMTに向けてロングレンジライフルを見舞った。

 

「エピオルニスか……悪いが消えてくれ」

 

普及型逆脚MT"エピオルニス"数機が反撃のガトリングをばら撒いてくる。

弾幕は決して薄くないが、ACの防御スクリーンを大きく削るほどの威力はない。

ソラはACに回避運動を取らせつつも冷静にトリガーを引き、MTを1機ずつ丁寧に撃破していった。

随伴していた戦闘車両からも、ロケット砲弾が撃ち込まれる。

狙いはたいして正確ではない。とりあえず牽制に撃っているという程度だ。

ライフルを撃ち込み、敵の攻撃をかわし、反撃にまたライフルを撃ち込み、堅実に立ち回った。

 

《この……管理者の犬が!知ってるんだぞ、お前ら地……》

 

激しい砲弾の応酬の最中、頭部COMが傍受した敵MTの戯言をライフルで黙らせる。

ソラは傍受機能を切りつつ、舌打ちした。

思っていたより敵の数が減らず、こちらのAPが削られている。残りAP6000。

調整用ガレージ付近で待ち伏せるゲルニカの砲撃を迂回した敵が、次々に合流してきているからだ。

ゲルニカはEN兵器をばら撒く戦法を取るため機動力と継戦力に欠け、積極的な追撃ができないのだろう。

エスペランザが誘導に徹し、ゲルニカから敵が逃げて来れば、必然的にこのアリーナ手前の坂が激戦区となるのだった。

 

「レイン、敵の数は?」

《……現在15機。いえ、まだ来ます!》

 

普段より焦ったレインの報告に、ソラは額の汗を拭った。

ロングレンジライフル一丁では、とても処理が追いつかない。

無理にでも例の褒賞パーツを、装備してくるべきだった。

このまま高台付近の数が増えると、突破を許してアリーナに攻撃される恐れがある。

念のため管制室に一報入れるべきか――そうソラが思い始めた時だった。

 

《手こずっているようだな……手を貸そう》

 

レーザーの嵐が、並んだMT数機を後方から貫いた。

持ち場を離れ、こちらにゲドのゲルニカが合流してきたのだった。

 

《すまないな。思ったより逃がしてしまった》

「いや、助かった。挟み撃ちでいこう」

《了解。手早くな》

 

背後から追いついてきたACの奇襲に、武装勢力は目に見えて浮足立った。

動きを停止する機体、めくらに撃つ機体、僚機ともつれ合う機体とまるで統率が取れなくなり、坂の下はレイヴン2人の狩場となった。

ライフルとレーザーが前後から撃ち交わされ、MTも戦闘車両も次々に爆散した。

 

《これで……打ち止めだ》

 

拡散レーザーが吐き出されて、最後のエピオルニスを焼き尽くす。

2機のAC――ストレイクロウとゲルニカの間で、動く物体は何一つない。

夥しい数の兵器の残骸が、焼け野原の上に散らばっていた。

あとはレーダーの端に、この高台まで到達できずに撤退していく敵が数機、映っているのみだ。

 

《武装勢力は撤退を開始。エスペランザ、1機も逃がすな。ゲルニカ、ストレイクロウ、まだやれそうか?》

《こちらはゲルニカだ。拡散レーザーは弾切れだ。イクシードオービットも回復には時間がかかる》

「こちらストレイクロウ。まだやれる」

《了解。ストレイクロウ、エスペランザの援護に向かえ》

「分かった」

 

管制室の指示に従い、ソラはACを動かした。

武器腕を下ろし、臨戦態勢を解いたゲドの赤いACとすれ違う。

通信が入った。

 

《いい腕をしているな、小僧》

「……あんたも。すげえなそのレーザー」

《戦場かアリーナで、また会うとしよう。その時は失望させるなよ》

「ああ、楽しみにしてる」

 

その後、残存の敵機を軽く始末し、ソラはコーテックスの依頼を終えた。

 

 

………

……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

FROM:アップルボーイ

TITLE:お疲れ様でした

 

アリーナ防衛任務、お疲れ様でした。

ソラさん、この前のアリーナ見ていました。

いきなりE-5ランカーと戦って、しかも勝つなんてすごいです。

 

僕はつい1週間前に初めての任務で、今回が2度目の任務でしたが、どうにか管制室とオペレーターの指示通りにこなすことができました。

ソラさんとも共闘できて嬉しかったです。

 

ソラさんのACが装備しているライフルって強いんでしょうか?

僕もそろそろエスペランザの武器を替えようと思ってまして、とりあえず褒賞のミサイルユニットをつけたんですが、しっくりこなくて困っています。

やっぱりFCSを先に替えるべきでしょうか?今のFCSだとミサイルの連続発射機能を活かしきれないように思います。

 

また、任務で共闘できれば幸いです。

そういえば、今回の武装勢力の襲撃ですが、彼らはどうも気になる―――

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「俺はお前の友達かっつーの」

 

ソラは途中でメールを読むのをやめ、机の上に携帯端末を放り投げた。

1人きりのブリーフィングルームでパイロットスーツの上半分を脱ぎ、一息つく。

 

「……………」

 

戦闘で熱くなっていた頭を冷やし、考える。

この前のスネークウッドと戦ったアリーナ戦。

そして今回の防衛任務。

ジェネレータに悩まされ、武装の択の少なさに悩まされた。

少しずつ、自分のACに何が足りないのかが分かってきた気がしていた。

それを補うための費用も、徐々に溜まりつつある。

 

「……よし」

 

少しずつ、少しずつだが前に進んでいる。

レイヴンとして、飛べ始めている。

自分は、やれる人間だ。

 

ソラは芽生え始めた"実感"に、1人両手を握ったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。