ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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ここからミッション回が続きます。
機体構成が変更されたので記載しておきます。
フレーバー程度ですので、武器以外は一切気にしなくても大丈夫です。

右腕部武装:MWG-RF/220(ロングレンジライフル)
左肩部武装:CWM-S60-10(10連小型ミサイル)
ジェネレーター:KGP-ZS4
ブースタ:MBT-OX/E9
FCS:AOX-F/ST-6
オプショナルパーツ:OP-E/CND
その他:全て初期装備


橋上占拠者排除

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

セクション596-597間で建造中のナイアーブリッジが、武装勢力に占拠された。

占拠者どもは即刻工事計画を中止しなければ、橋を破壊すると通達してきている。

 

この橋の開通は、これまで正式な流通が行われていなかった2つのセクションを直接結ぶ、経済的に極めて重要な計画だ。

 

おそらく犯人は、これまで同セクション間の非合法な物資輸送で利益を得てきた連中だろう。

それも、我が社の警備部隊ではいささか手に余る兵力を持っているようだ。

どこぞの企業に唆されたのだろうが、不愉快なことだ。

 

このままでは我々ミラージュの経済活動に支障が出る事態となる。

 

大至急、敵を排除しろ。

なお、橋の破壊を万全に防ぐため、今回の任務は我々の雇ったMT傭兵と協働してもらう。

失敗は許されないと思え。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

《日没後に失礼します、レイヴン》

「大丈夫だ。レイン、依頼の補足を頼む」

《緊急で依頼してきたのはミラージュ社です。作戦区域は第三層産業区、ナイアーブリッジ建設現場。成功報酬は18,000C。警備部隊からの報告によると、敵戦力は四脚型MTと重装型MTが10機前後。パワードスーツ部隊も確認しています》

「写真からして、重装型はスクータムか。だが、四脚型MT……?なんでそんな代物を、運び屋崩れの武装勢力が持ってる?普及型じゃないだろ」

《提供された現場写真を分析しましたが、四脚型MTは"クアドルペッド"と思われます。ACの四脚パーツをダウングレードして使用した、高級MTですね……主にキサラギが運用している機体のはずです》

「……この前のグラン採掘所の一件以来、キサラギ系のメディアはミラージュ叩きばっかりだ。武装勢力を鉄砲玉にして意趣返しってところか。まあ、ミラージュも勘づいてるみたいだが」

《ミラージュは返答を急いでいます。夜間任務となりますが、どうしましょうか?》

「受ける。機体を大きく改修したところだ。キサラギに採掘所での借りを返してやる」

《了解です。いつも通り、ガレージで待機をお願いします。先に輸送機を向かわせますので。とにかく急ぎとのことですから、細かな作戦プランはMT傭兵と合流後に、現場で説明します》

「ああ。……そういえば、協働するMT傭兵の情報はあるか?」

《はい、ちょっと待ってください……リップハンターという傭兵です》

「リップハンター……道理で」

《?》

「レイン、補足事項があったら携帯端末にかけてくれ。よろしく頼む」

《分かりました》

 

ソラはレインとの通信を終え、ガレージへと向かった。

 

 

………

……

 

 

《作戦領域に到達。レイヴン、足場に気を付けてください》

「分かってる」

 

コーテックス本社の通信室に待機するレインからのスポットを頼りに、ソラのAC"ストレイクロウ"が橋上の指定ポイントに到着した。

現在時刻は21時過ぎ。

セクション596と597の間、建設途中のナイアーブリッジは、暗闇に包まれていた。

地下都市レイヤードの偽物の空は、夜には"天体"と呼ばれるまばらな照明を灯すこともあるが、セクションとセクションの狭間の区間にはその機能はない。

ナイアーブリッジ据え付けの照明が満足に機能していない以上、暗視機能を持たないストレイクロウの頭部カメラでは満足に足元も見えかった。

そんな暗がりの中を、ソラはかなり手前で輸送機を降り、投光器もつけず、出来るだけブースタも吹かさずに忍んでここまでやってきたのだ。

AC頭部の望遠カメラを最大倍率にすると、橋梁の奥に灯りがちらつき、時折動くのが確認できる。

十中八九、武装勢力のMT部隊である。

ミラージュの予測によれば、このポイントが敵に勘付かれないギリギリの位置だった。

 

「それにしても暗いな……」

《ですが、この暗さのおかげで敵はまだこちらの動きに気付いていません》

 

朝を待たず、わざわざ戦闘行動には不向きな時間に作戦を開始したのは、ミラージュの焦りが理由だった。

このナイアーブリッジは、それほどに重要な建造物ということである。

 

《悪いわね、こちらの都合で出撃を急がせて》

 

後方から合流してきたミラージュ製の高級MT"ギボン"から、通信が入った。

妙齢と思しき、女性の声だった。

 

「リップハンターだな。噂は山ほど聞いてるよ、ミラージュの凄腕」

《私は傭兵よ。あくまでね》

 

リップハンター。

ミラージュの作戦にしばしば姿を現すことで知られる、名うてのMT乗りである。

スパルタンか、リップハンターか。MT乗りの傭兵の間で世間話になれば、上がる名前は必ずこの2つのどちらかだ。

 

「ミラージュの最新型MTだろ、それ。随分と強いコネがあるんだな」

《おしゃべりは無しにしましょう。それより作戦を。オペレーター?》

《はい。ミラージュの提案した作戦を確認します》

 

レインからデータが送られてきて、ACのモニターに橋の図面が表示された。

 

《偵察したミラージュの警備部隊により、橋下のモノレール保護通路内へのパワードスーツ部隊の待機が確認されています。事前の通告通り、こちらの動き次第では橋脚に対して爆発物を設置すると予測されます》

 

図面上に、パワードスーツ部隊の予測位置が表示される。予測では、総勢15名と言った程度だ。

 

《橋上には重装型MTと四脚型MTの混成部隊が計9機。バリケードの設置も多々見られます。この内、撃破優先度が高いのはパワードスーツ部隊です。ミラージュは橋桁が破壊されるよりも、橋脚に被害が出ることを危惧しています》

 

ACとMTが2機並んで待機する暗闇の橋上。

ストレイクロウのコクピットには、レインのはっきりとした声だけが響いている。

これほど静かな戦場は、ソラにとって初めてだった。

 

《よって、まず橋下の保護通路内をギボンが先行。パワードスーツ部隊に奇襲を加えた後、敵が落ち着く前に橋上のMT部隊にストレイクロウが攻撃を行います。MTの撃破は質量兵器のバズーカを装備したスクータムを優先してください。なお、敵に気取られないよう、攻撃開始までブースタ及び投光器の使用は極力控えるように。以上です》

「分かった。仕掛けるタイミングは、リップハンターに任せる」

《了解よ。健闘を祈るわ、レイヴン。じゃあね》

 

そう言うと、リップハンターのギボンは速やかに橋の上から飛び降り、姿を消した。

肩部レーダーだけが、その動きを捉えている。

よどみない、スムーズな動きでレーダー上の光点が遠ざかっていく。

 

「……橋下の保護通路内は橋上にも増して真っ暗だろう。投光器無しでどうやって進んでるんだ?」

《暗視スコープを装備しているのでは?》

「だとしたら、用意がいいな。ミラージュ御用達なだけはある」

《……御用達、ですか?》

「そういう噂だ。あるいは傭兵はガワだけで、ミラージュの特殊部隊所属って話も……まあいい。レイン、リップハンターの動向を見ててくれ」

《了解です》

 

その場でACを待機させたまま、ソラはモニター上のレーダーを見つめていた。

少ししてギボンの反応が、レーダーから消えた。

直後、静けさを保っていた大橋が、ズズンとわずかに振動した。

 

《……リップハンターが攻撃を開始!レイヴン!》

「投光器起動。オーバードブーストで一気に突っ込む!」

 

ソラは操縦桿横のレバーを引き上げ、前方に勢いよく倒した。

コアの後部ハッチが開放され、内臓の大型ブースタが露出する。

甲高いチャージ音が鳴った後、ACが急加速して、ソラはシートに強く押し付けられた。

歯を食いしばり、加速の凄まじいGに耐える。

モニターに表示される景色が一気に後方に流れていき、最高速度が時速700km超に達する。

オーバートブースト。ACのコアに搭載された強襲用、あるいは緊急離脱用の大推力ユニットである。

その加速力に任せて橋上のバリケードを何枚も突き破り、ストレイクロウは一瞬でMT部隊の喉元に迫った。

 

《おい応答しろ、下で何が……AC!?》

 

保護通路の部隊と連絡していたと思しき、正面のスクータムに最接近。

オーバードブーストを解除し、レーザーブレードを見舞う。

シールドを構える間もなく、スクータムはその正面装甲を切り裂かれて沈黙した。

 

《MT部隊……残り8機です!》

 

レインの報告。ソラはその場でACを跳躍させた。

状況把握の素早い敵が数機反応し、空中のストレイクロウに対して砲撃してくる。

パルス砲、パルス砲、バズーカ、パルス砲。

優先すべきはバズーカの発射元、スクータムだ。

ソラはブースタを軽く吹かせ、慣性を活かして素早く対応してきたスクータムの間近に着地した。

 

《舐めるなっ!》

 

スクータムがシールドを正面に構え、そのまま突進してくる。

ソラはあえて突進を受け止め、零距離の状態でレーザーブレードを発振させ、コクピットを焼き貫いた。

爆散することもなく、スクータムの分厚いボディがその場に停止する。

残り7機。

 

《おい、パワードスーツ部隊何してる!橋脚を破壊しろ!早く!おいどうした!?》

 

ACの頭部COMが剣呑な通信を傍受する。敵の隊長機らしい。

リップハンターは下で上手くやっているようだが、こちらも悠長にはしていられなかった。

次のスクータムを探そうとしたその時。

モニターの端から、四脚型MTクアドルペッドが3機、並んで動きつつパルス砲を撃ち込んできた。

ACの防御スクリーンを、EN兵器の光弾が少しく焼き炙る。

だが、なめらかで良好な機動性を持つクアドルペッドも、狭い橋の上ではその強みが活かしきれない。

ソラはライフルで3機の内中央の1機のみを撃った。

MTの4本足が1本もげ、バランスを崩してガリガリと地面を擦り火花を散らす。

動きを止めたその1機にもつれるように残りの2機が激突して、すっ転んだ。

肩部ミサイルユニットを起動、バランスを崩した敵機にFCSが素早く多重ロックをかける。

よろよろと立ち上がろうとする3機に向けて、ミサイルを4発見舞った。

命中、爆発。MTがまとめて木っ端微塵に吹き飛び、金属片を飛び散らせた。

 

《残り4機です!スクータムが1機残っています!》

《クソ!パワードスーツ部隊!!……ちくしょうダメか!ふざけろ!一泡吹かせてやる!》

 

ストレイクロウは再びその場で跳んだ。

今度はブースタを吹かし、より高く。

パルス砲が何発も撃ち込まれてくる。だがバズーカの砲撃はない。

ソラは頭部カメラを下に向けた。

最後のスクータムが、ブースタを吹かして橋の縁へと移動し始めている。

飛び降りるのか。ソラは直感した。

飛び降りつつ捨て身でバズーカを放ち、橋脚を少しでも破壊する気だと。

ソラはロックサイトを向け、ミサイルの多重ロックをかけた。

1発、2発、3発、スクータムの脚が橋桁の際にかかり、4発目のロック。

発射。4本の噴射炎がスクータムに向かい、そして。

 

《ぐわぁっ!》

 

ミサイルがスクータムの背中を直撃した。

暗闇に身を乗り出していた重装MTは、爆発の衝撃で四肢をバラバラにもがれながら落下していった。

ストレイクロウが橋の上にズンと着地する。

残る3機のクアドルペッドが最後の意地とばかりに、突進しながらパルス砲を乱射してきた。

 

《こちらギボン。パワードスーツの殲滅完了。橋脚は無傷よ》

 

リップハンターの通信が入った。

ソラは了解、とだけ返し、ライフルを連射した。

 

《……武装勢力の全滅を確認。お疲れ様でした》

《お疲れ様。よいしょっと》

 

リップハンターのギボンが器用にブースタを吹かし、橋の下から上がってきた。

狭い通路内で多数を相手に戦闘していたはずなのに、ギボンには目立った損傷はなかった。

 

《高級MTが9機……そう容易くないはずだけど。やるわね、さすがレイヴンだわ》

「戦場がよかった。橋の上じゃ四脚型MTはあまり素早く動けないからな。そっちこそ、噂以上の凄腕だ」

《ありがとう。じゃあ、これで失礼するわ。機会があれば、またよろしく》

 

リップハンターはギボンを空中で旋回させると、ブースタを吹かして橋の上を引き返していった。

 

《レイヴン、ミラージュの警備部隊から通信です。よくやってくれた、とのことです》

「ああ。輸送機は……橋の上には着陸できないか」

《ええ。レイヴンも、最初の投下ポイントまで引き返してください。機体の回収はそこで》

 

レインの言葉を聞きながらソラは何気なく、橋の上の暗闇にACのカメラを向けていた。

激しい戦闘で昂ぶっていた気持ちが、再び訪れた静寂と暗黒によって急速に冷まされていく。

 

「……静かだな」

 

リップハンターのMTは既にレーダーの外だ。周囲で動くものはもう、何1つない。

余りに現実味のない静けさに、ソラは変な感覚を覚えた。

見上げるのは天体照明の灯りすらない、セクション間特有の暗い空。

ここからACのブースタで上昇して行けば、きっと何の意味もない無機質な鉄板か岩盤のみがモニターに映るだろう。

このレイヤードが地下都市で、その空が本物の空でないことの証を、見ることになるのだ。

そう思うと、妙に心がざわついた。

頭が、ぎしぎしと痛む。

あの日、幼い頃に、自分に偽物の空を教えた教師の顔が――

 

「…………」

《……?レイヴン?どうしましたか?レイヴン?》

「え、ああ。悪い、ぼっとしていた。レイン、今回も良いオペレートだった」

《……はい、あの》

「ん?」

《いえ……お疲れ様でした》

「ああ、お疲れ様」

 

ソラは、ナイアーブリッジの上を引き返した。

カメラを再び空に向けることは、しなかった。

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