ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~ 作:神父三号
フレーバー程度ですので、武器以外は一切気にしなくても大丈夫です。
右腕部武装:MWG-RF/220(ロングレンジライフル)
左腕部武装:CLB-LS-1551(初期ブレード)
右肩部武装:CRU-A10(初期肩レーダー)
左肩部武装:CWM-S60-10(10連小型ミサイル)
頭部:CHD-02-TIE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAM-11-SOL
脚部:MLM-MX/066
ジェネレーター:KGP-ZS4
ラジエーター:RMR-SA44
ブースタ:MBT-OX/E9
FCS:AOX-F/ST-6
オプショナルパーツ:OP-S-SCR(実弾防御上昇)、OP-E/CND(ジェネ容量増設)
時刻は21時15分。
レイヤード第一層第二都市区セクション307の暗い夜空を、コーテックスの双発式戦略輸送機が飛行していた。
《レイヴン、そろそろアダンシティ上空です。出撃準備をお願いします》
「分かった……管制室のオペレーションシステムから、敵の姿は見えてるか?」
《はい。既に市街地の北部に展開済みのようです》
「市民は?」
《避難命令が数時間前に発令済みです》
「了解。下ろしてくれ。これ以上接近すると、輸送機も危険だ」
《分かりました。……では、くれぐれもお願いします》
輸送機の後部ハッチから、ソラの黒いAC"ストレイクロウ"が飛び降りた。
モニターに映るビル群は半数以上が停電していて、市街地の南部では煙が幾筋も立ちのぼっている。
試験目標のテログループが暴れているのだろう。
だが、ソラの任務はそちらではない。
目標はレイヴン試験の妨害阻止。北部に展開している武装勢力の掃討と、爆撃機の迎撃だ。
「オーバードブースト起動。一気にアダンシティへ突入する!」
操縦桿横のレバーを引き上げ、コア内蔵の大型ブースタが火を噴く。
ACが急加速し、ビル群へ向けて突進した。
高層建築の間から、戦闘ヘリが羽虫のように湧き出してくる。
ソラは牽制のために、まだ敵をロックできていないライフルを連射した。
徹甲弾がビルの外壁を削り、きらきらと光るガラス片をぶちまける。
オーバードブーストが、彼我の距離をどんどん縮めていった。
《シティへ到達!カバルリー9機、戦闘ヘリ……12機!全機向かってきます!》
シティの舗装路へと脚を踏み入れたストレイクロウに対して、戦闘ヘリ部隊が一斉に機銃とロケットを撃ち込んできた。
ACに対してはろくに有効打となりえない、豆鉄砲だ。
ソラは回避運動を取らず、オーバードブーストの莫大な慣性で機体を滑らせながら、モニター上のレーダーへと視線を送った。
肩部レーダーが大量の敵影を全て捕捉しようとして、自動で最大範囲表示へと切り替わっている。
レインの報告の通り、シティ北部に展開していた武装勢力は、全てソラの元へと向かってきているようだった。
好都合である。シティ南部の試験区画への立ち入りが禁止されている以上、この北部ですべて片づけるしかないのだから。
「よし……まとめて相手してやる」
ソラが独り啖呵を切った直後、ビルとビルの間から3機のMTが地面を滑るように素早く姿を現した。
同時に放たれる、赤いプラズマの閃光。
弾速の速い3本の熱線、うち2本がACへと直撃した。
削れるAP、上昇する機体温度。
高機動型MT"カバルリー"だ。
「鬱陶しい!」
1機で突出してきたMTをライフルで粉砕する。
残りの2機は無理攻めせず、ビルの陰に姿を隠した。
かと思えば別の場所からMTが現れ、プラズマを撃ち込んでくる。
ソラがACを上空へと逃すと、ヘリが一斉射撃で飛翔を阻もうとした。
集中砲火で高度を取れずに思わず着地、再びカバルリー達が一撃離脱を仕掛けてくる。
「……っ」
思わず舌打ちが漏れた。
高機動型MTカバルリーはビルを遮蔽物に使うことでプラズマ砲のリロードの隙を消しつつ、上手く奇襲をしかけてくる。
ヘリは遠巻きにACを数で囲んで乱射し、ひたすら妨害に徹するだけだ。
アリーナ防衛戦の時のお粗末な侵攻からかなり改善された、組織的な戦闘である。
それは、武装勢力に確かな支援があることを物語っていた。
「少しは勉強してきたか……だがな!」
ソラはブースタを吹かして大通りを進み、ビルから飛び出してきたカバルリーを出会いがしらにレーザーブレードで一閃。
ロックサイトに入った目障りなヘリへ向けてトリガーを引き、撃墜。
敵MTが一斉に姿を見せた瞬間に、ACを素早く後退させながら機体を左右に揺らした。
MTのFCSではACの運動性を捉えきることはできず、プラズマの火線が虚しくビルへと突き刺さる。
そして、欲をかいて追撃してきた1機へと、ライフルを連射した。
カバルリーも懸命にかわそうともがくが、かわしきれずに被弾して沈黙する。
「レイン、MTの残数だけ報告しろ!」
《MTは残り6機です!》
戦闘ヘリには、強力な火器も機動性もない。
MTを始末し終えてから片づけてもいいし、最悪シティの南部へ逃げられても適性試験に大きな支障は出ない。
今倒すべきは、強力なプラズマ砲を備えた高機動型MTだった。
ソラはストレイクロウをわざとシティの北へと大きく退かせた。
ヘリが何とかACの動きを止めようと、上空からまとまって追いかけてくる。
何の対応もせず、無視した。
するとカバルリー達もまた、逃げたACの様子を窺おうとして、3機がビルの陰から這い出してきた。
ソラはオーバードブーストを起動、逃げていた大通りを一気に逆走して、追ってくるカバルリーの群れに迫った。
驚いた敵機達がプラズマで迎撃してくるも、焦って撃ったせいでまともに当たらない。
先頭の1機に最接近、ブレードで薙いだ。
怯えて動きを止めた1機に、ライフルを連射。
ビルの陰に隠れた最後の1機を執拗に追いかけ、これも撃破した。
《MT、残り3機……レイヴン、現在21時25分です。受験者を載せた輸送機が、アダンシティに南から接近します。……っ!さらに偵察班から報告あり!武装勢力の戦術爆撃機がシティ北部に接近中!至急、迎撃準備を!》
「始まるか……急がないとな」
そう呟いた矢先だった。
残り3機となったカバルリーが、レーダー上でその動きを変えた。
先ほどまでじりじりと距離を詰めていたのに、今度は遠ざかっていく。
ソラは直感した。受験者狙いに目的を切り替えたのだ。
「させるかよ!」
しつこく邪魔立てしてくるヘリ部隊の乱射を無視して、MT達を追う。
ビルの上へとACを飛び乗らせてさらに跳躍し、オーバードブースト3度目の起動。
カバルリーがいくら高機動型MTとはいえ、ACの大型ブースタには歯が立たない。
ストレイクロウは一息にカバルリーを3機とも追い越した。
「ぐっ、ぅっ……!」
ブースタを止めるも、慣性に機体が大きく引っ張られる。
ソラはコクピットシートで身体を傾けながらも操縦桿を強く引き倒して、ACを180度旋回させた。
新調した脚部がその姿勢制御スラスターでソラの操縦に応え、素早く意図した方向に向き直る。
ロックサイトが、追い越されて慌てるMTを捉えた。
「まず1機!」
トリガーを引くと、ライフルが徹甲弾で敵機のコクピットを穿つ。
《戦術爆撃機、シティに突入!レイヴンっ!》
レインの焦った通信。
せめてもう1機。モニター上をソラの視線が往復し、迂回しようとするカバルリーを睨む。
ビルの隙間に逃げていくそれを、ACが追いかけ、捕捉し、3度撃ち抜いて鉄屑に変えた。
最後の1機は、ソラの後ろにすり抜けていった。だが、もう構っている暇はない。
戦術爆撃機が、上空を通過しようとするのが見えた。
「間に合え!」
肩部ミサイルユニットを準備しつつ、ブースタで爆撃機めがけて飛翔する。
何とか追いついてきていたヘリ数機が、必死に押しとどめようと弾幕を張ってくる。
敵の高度が、思ったより高い。FCSがようやく標的をロックし始めた時、ジェネレータのEN残量は半分を下回っていた。
1発、2発、3発、4発、爆撃機にミサイルの多重ロックがかかっていく。
突如コクピットに衝撃。赤いプラズマの残滓が、モニター端に映った。
カバルリーからの砲撃だ。気にする余裕などない。
ジェネレータがレッドゾーン突入、5発、6発――
「落ちろっ!!」
ソラはトリガーを引いた。
肩のユニットからミサイルが6発連続発射され、空を進む巨体へと殺到する。
爆撃機は一瞬旋回しようと機首をひねり、だが虚しくミサイルの大爆発に呑まれて翼を傾けた。
《や、やった、また1機撃破!えっ、え、何あれ、爆撃機!?何よそれ!そんなの聞いてない!!……ってあれ?》
受験者の大きな独り言を、自由落下中のストレイクロウの新型頭部COMが傍受する。
武装勢力の戦術爆撃機は大きく炎上しながら、徐々に高度を落として墜落していった。
そしてそれは一際大きなビルの壁面へと突き刺さり、搭載していた大量の爆弾もろとも大爆発して、木っ端微塵に消し飛んだ。
《爆撃機の撃墜を確認!レイヴン、お見事でした!》
《……よくやってくれた、レイヴンネーム"ソラ"。短期間で、随分と見違えたな》
通信機が珍しく上ずったレインの声に続けて、低く落ち着いた音声を発した。
忘れもしない、適性試験の時の管制室の声だった。
降って湧いた増援のスクータムを全て仕留めろと冷酷に告げてきた、あの声である。
「……悪い、試験管制室。カバルリーを1機、試験区画に逃がしちまった」
《構わん。レイヴン試験に不測の事態は付き物だ。高機動型MT1機程度なら、かえって受験者のいい刺激になる》
「そう言ってくれると助かる。さてと……レイン、あとは戦闘ヘリをできるだけ片づけて撤退するぞ」
《了解しました》
「その前に……ジェネレータの回復が先か」
ソラはビルの陰にACを入れてヘリ部隊から隠れながら、コクピットに鳴り響く警報音を聞いていた。
ジェネレータのチャージング(強制充電状態)。
防御スクリーンの出力が大幅に低下し、ブースタも吹かせなくなる、ACにとって最も危険な状態だ。
「はぁ……間一髪だったな。あのカバルリーがこっちに残ってたらと思うと……まあいいか。頑張れよ、受験生」
やがて、ジェネレータのチャージが完了し、ストレイクロウが息を吹き返した。
本社ビルのロビーで出会った勝気そうな赤毛の少女の顔を思い出しながら、ソラは再びフットペダルを踏み込む。
黒いACがビルの陰から躍り出しながら、露払いを完遂すべく、ヘリ部隊へと向かっていった――
《……武装勢力の殲滅を確認。作戦は成功です。レイヴン、お疲れ様でした》
いつものレインの労いの言葉。
その直後だった。
《力は見せてもらった。ようこそ、新たなるレイヴン。君達を歓迎しよう》
レイヴン適性試験は、受験者の合格をもって、無事終了したのだった。