ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~ 作:神父三号
フレーバー程度ですので、気にしなくても大丈夫です。
右腕部武装:MWG-RF/220(ロングレンジライフル)
左腕部武装:CLB-LS-2551(緑ブレード)
右肩部武装:CRU-A10(初期肩レーダー)
左肩部武装:CWM-S60-10(10連小型ミサイル)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
グラン採掘所に潜入工作をおこなっていた我が社の特殊部隊が、脱出中に敵に発見された。
現在、採掘所から繋がる地下下水道内で窮地に陥っている。
特殊部隊はミラージュの追跡部隊を凌ぎつつ撤退中だが、兵力差は歴然としている。
また、いくつかの経路も既にミラージュによって封鎖されており、このままでは全滅も時間の問題だろう。
特殊部隊は当採掘所の争奪戦において重要な情報を持ち帰る予定であり、我々キサラギの最精鋭ともいえる貴重な人材も含まれている。
損失は、可能な限り避けたいところだ。
大至急、部隊の救出に向かってほしい。
レイヴンの実力は、我々も高く評価している。
よろしく頼む。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
《依頼主はキサラギ社です。作戦区域は第三層産業区セクション554、以前制圧したグラン採掘所から繋がる地下下水道。報酬は24,000C。特殊部隊の生存率によっては、特別報酬を提供すると言ってきています》
「予測戦力は?」
《現場からの報告では、逆脚MT"エピオルニス"、近接用MT"ギボン"、フロート型MT"カバルリー"。数は不明ですが、かなりの攻勢を受けている様子です》
「グラン採掘所か……俺が一度制圧して以降、相当熾烈な奪い合いになっているとは報道で見たが」
《ええ。当採掘所関連のミッションにおいて既に、レイヴンが数名死亡しています……ミラージュ側が雇ったレイヴンと遭遇する可能性もあるかと》
「見送ってもいいが……24,000Cに特別報酬か……随分と出したな」
《レイヴン、どうしますか?》
「受ける。今すぐ輸送機の手配を頼む。着いた時にはもう救出対象が全滅してた、なんてごめんだ」
《了解しました。ガレージで待機をお願いします》
レインとの通信を終え、ソラは静まり返ったブリーフィングルームで独り項垂れた。
理由は、前回のモノレール防衛での一件だった。
あの時のように、また所属不明の超高性能MTに攻撃されたら。
そう思うと、鳥肌が立った。
「落ち着け。今回はミラージュが相手だ。あんなこと、もう起きるもんか。今まで通り、依頼をこなすだけだ。落ち着け、落ち着け……」
ソラは自分の腕を擦り、何度も呟いた。
………
……
…
作戦区域の地下下水道内は薄暗かったが、非常用照明が点灯しているおかげで、最低限の明るさは確保されていた。
流れる汚水の音、そしてその汚水を描き分けて進むACの足音を頭部COMがしっかりと拾ってくる。
ソラはコンソールを叩き、余分な雑音を拾わないようにCOMの感度を調節した。
調節しながらも、サブモニターのマップデータを確認しつつACの歩みを進めていく。
キサラギから提供された下水道の図面は、かなり複雑な構造となっていた。
《レイヴン、キサラギの特殊部隊は現在、下水道ルートL9にいます》
「L9……思ったより近かったな。分かった、今ルートL8だ。そろそろ合流できる」
ソラは既に2度、サブルートから合流してきたミラージュのMT部隊と交戦していた。
グラン採掘所地下の下水道は、ACやMTが戦闘できるほどの道幅がある。
作業用MTのために建造していたとしても、広い通路だ。
おそらく、今回のような採掘所の争奪戦を視野に入れた上で、キサラギが事前に準備していたものだろう。
レイヤードにおける重要施設は、こういう紛争になった場合のことを考えた構造になっているものが多いのだ。
《通信……AC、ストレイクロウか?》
水路の比較的開けた場所に、キサラギの特殊部隊は留まっていた。
部隊は四脚型MTが3機、パワードスーツ10名。
こちらにパルス砲を向けたまま、四脚型MTのクアドルペッドから通信が入る。
聞き覚えのある、寡黙そうで落ち着いた声だった。
「そうだ。開示情報で照合してくれ」
《……いや、覚えのあるエンブレムと声だ。部隊長、デルタ1だ。……アレグロの時は世話になったな》
「……ああ、あの時の。どうも」
《雑談は抜きにしよう。……ルートL1まで行き、そこからK28、J37と通って、地上部隊へ合流する》
「了解。ここまで通ってきたルートだ。俺が先行する」
《……頼む》
用件を確認するだけの手短な通信を終え、ソラは特殊部隊から先行した。
距離を200ほど開けて、ACを進める。
進んできた道中を、地上まで逆走するだけである。ACにとっては、それほど長い道程ではない。
《デルタ1、ここまでストレイクロウは既に2度、ミラージュのMT部隊と交戦しています。ミラージュは、この救出の動きに気付いてるはずです》
《……了解した。デルタ2、3は後方に陣取れ。パワードスーツ部隊はMT部隊の内側で可能な限り散開》
レインの報告を受け、デルタ1と名乗った部隊長が滔々と指示を出していく。
輸送車両アレグロの護衛、そして今回の特殊部隊の指揮。
キサラギが言っていた『最精鋭』はこの男で間違いなさそうだった。
「L7クリア、L6に進むぞ」
《レイヴン、L6中間地点のサブゲートが開きます。敵です!》
「了解。排除する」
ブースタを吹かし、下水を跳ね散らしながら、ストレイクロウが駆ける。
L6水路のサブゲートから滑るように沸いてきたのは、フロート型の高機動MT"カバルリー"だった。
水辺に足を取られない良好な機動性とプラズマ砲の火力は、MTにとっては脅威となる。
3機。
「ここは狭いぞ……フロートじゃあな!」
先行してきた1機にライフルを連射すると、速度の代わりに犠牲にした薄い装甲がいとも容易くちぎれ、カバルリーは浅い下水路へと頭を垂れた。
大きく姿勢を崩した先頭に足止めをくらい、後ろの2機も大きく速度を落とす。
そして既に、ACのFCSがその2機を捉えていた。肩部ミサイルが4発放たれ、吸い込まれるようにカバルリー達へと向かう。
汚水の飛沫を散らしながら、ミラージュのMT部隊は吹き飛んだ。
《……まだだ。まだいるぞ》
1機で追いついてきたデルタ1のクアドルペッドが、サブゲート内にパルス砲を連射する。
通路の奥でふよふよと浮かんでいたメカが、ボンと地味な音を立てて爆散した。
「下がってくれ。護衛対象だ、あんたは……片づけてくる」
ソラが言うとデルタ1は素直に下がった。
レーダーがあと1つ、ゲート内に浮遊する機影を捕捉していた。
射程に入れてロックし、トリガーを引く。
ライフル1発でそのメカは簡単に墜ちた。
《これは……探査用自律メカ"アントラーモス"ですね》
《……そうだ。武装はないが自動で動き回り、追加レーダーの役割を果たす機体だ》
「こいつが生きてたら、こっちの位置が知られるってことか」
《……墜としても、そこで何かあったと知られてしまうがな》
《それでも、可能な限り撃墜した方がいいでしょう。敵に詳細な位置を知られてしまいます》
「分かった。こいつには注意して進もう」
ソラは再び特殊部隊から先行し、さらに地下下水道内を進んだ。
探査用自律メカは、水路の至るところに配置されていた。
ルートL3到達までに、サブゲート内を含めて7機のアントラーモスをソラは落とした。
《L3到達。あれから敵の襲撃がありませんね……これだけ探査メカを落とせばミラージュ側も……》
《ああ……こちらの進行ルートは、把握されているはずだ。そろそろだろう》
「そろそろ……っ!?」
突如、水路を薄暗く照らしていた照明が、全て落ちた。
ソラは素早く投光器を起動し、モニター上のレーダーを確認する。
レーダーが、ブラックアウトしていた。
後方から、赤い熱線がACの頭上を通りすぎた。
さらに前方に、カメラアイの輝きが複数。
《……ストレイクロウ、前方を排除しろ!あとは私と後方だ!パワードスーツは天井へ浮上!いくぞ!》
デルタ1の的確な指示に、ソラは素直に従った。
時間が惜しい。オーバードブーストを起動し、一気に詰め寄る。
前方に並んでいるのは、エピオルニスだった。
正面の1機を新型のレーザーブレードで斬りつける。
緑色のレーザー刃は初期配備品より高出力で、MTが綺麗に両断され、数瞬遅れて爆散した。
さらに旋回し、目についたエピオルニスをレーザーブレードで斬った。
ふと、モニター上部を身軽な影が2つ横切った。
ミラージュの近接用MT"ギボン"だ。
ブースタで接近しつつ、天井に張りつくパワードスーツ部隊を狙って、腕の銃器を持ち上げている。
「待て!!」
ソラはギボンを追った。残ったエピオルニスに背中を撃たれるも、無視する。
FCSのロック先にライフルを連射し、ギボンの腕をもぎ、足をもぎ、胴体をひしゃげさせ、1機片づけた。
だがもう1機のギボンは僚機の撃破を気にせず、ショットガンを撃った。
パワードスーツが2名、天井から落ちた。
「くそっ!」
接近し、ギボンへと素早く斬りかかる。ギボンは躱そうとブースタを吹かして跳んだが一歩遅く、胴体から真っ二つになった。
《レイヴン!エピオルニスさらに増援!計5機です!》
レインの通信に、ソラは脚部を旋回させ、置き去りにしてきたエピオルニス部隊へと振り向く。
数が増えたエピオルニスは、逆関節をバタつかせて少しずつ近づいてきていた。
ミサイルユニットに切り替え、複数機にマルチロックをかける。
ロック数が5機になったところで、ストレイクロウはミサイルを放った。
コクピットに当たって行動不能になったのは3機。
残る2機はダメージこそ受けたものの健在で、天井にガトリングを向けようとしている。
ソラは再び武器を切り替え、ライフルで始末した。
「デルタ1、そっちは!」
《……デルタ2のパルスがもがれたが、敵のフロートMTは全て始末した》
「すまん、パワードスーツ部隊を2人やられた」
《……合流まで気を抜くな、レイヴン》
「……了解」
キサラギの部隊長デルタ1はどこまでも冷静な通信を返してきた。
ソラも落ち着いて前方を確認、今さらながら頭部パーツ"TIE"のECMキャンセル機能を思い出して、起動した。
表示範囲こそ半分以下に短縮されたものの、肩部レーダーがブラックアウトから復帰する。
レーダーの表示範囲に、敵影はない。
そのままソラは特殊部隊と共に、ルートL1へと入った。
L1は見通しの良い直線状に伸びた水路だった。ここを抜ければ、目標の合流地点まであとわずか。
しかし―――
「デルタ1、ACの望遠カメラに、敵の投光器とおぼしき光が見える。レーダーはまだ捉えてないが、5機以上はいる。多分L1の出口付近だ」
《……任せる。パワードスーツ部隊は再び天井まで浮上。デルタ2はスーツ部隊の真下で護衛。デルタ3は私と後方を警戒》
「突っ込むぞ。いいんだな」
《……手早く頼む》
ソラは操縦桿横のレバーを引き上げた。
オーバードブーストが火を噴き、一気に機体を急加速させて、暗い水路を駆け抜ける。
《……エピオルニス4、ギボン2、カバルリー3です!レイヴン、まずカバルリーを!》
フロートMTはACの急接近を見るやいなや、全機真っ直ぐ突っ込んできた。
プラズマ砲が着弾し、防御スクリーン表面で赤い粒子が弾け飛ぶ。
1機でもACを抜ければいい。そう思っているのだろう。
だが、1機でも抜けてしまえばと思っているのは、ソラも同じだった。
「ミサイル!」
ソラは急ブレーキを踏み、慣性を殺してGに耐えながら、既に起動していた肩部ミサイルユニットをカバルリーに向けた。
3機をロックしきるのに、数秒とかからない。
距離100。トリガーを引いた。
《ギボンが来ます!》
水路へ盛大にばらけたフロート部品の金属片を気にする暇もなく、2機のギボンが突進してくる。
今度は抜こうとしない。1機はミサイルを、もう1機はショットガンを放ちながら、ストレイクロウへと迫ってきた。
ソラは冷静にブースタで下がりながら、ライフルを撃った。
ギボン達は持ち前の運動性で水路を縦横に跳びはね、FCSの追従を器用に躱す。
ブレードの間合いだった。お互いに。
《死ね!》
頭部COMが、裏返った雄叫びを拾う。
ACのモニターを、橙色の閃光が横切った。
「お前がな」
ストレイクロウは反撃のレーザーブレードでギボンを両断した。
APが800近く削れたが、それでもギボンのブレードでは一撃でACの防御スクリーンを断ち切ることはできない。
ACとMTでは、それだけ差があるのだ。
僚機の惨状に、残るギボンは怖じたのか後退し始める。
ショットガンをめくらに垂れ流し、ただ下がっていくだけだ。
ソラは散弾を受けながら冷静に敵をロックし、ライフルを連射した。
ギボンは徹甲弾を数発躱すも着地の際に水路のぬめりに足を取られたのか突如姿勢が崩れ、そこに何発もくらって、爆ぜ飛んだ。
残るは、エピオルニス部隊のみ。
ドオォォンッ。
その時だった。
後方で大爆発が起き、下水路を激しい爆風が駆け抜けた。
「……!?」
エピオルニスがここぞとばかりに動き、ガトリングの嵐を浴びせてくる。
だが、ソラは被弾を気にせずに後方へ旋回した。
「デルタ1っ!!」
《……無事だ。スーツ部隊が3名、爆風にやられたが。ミラージュめ、水路の合流口に機雷を流したようだ》
「機雷……」
《……おそらくもう猶予はない。全速で突っ切るぞ。レイヴン、先導を頼む》
「……了解!」
ソラは進行方向へと向き直った。
ガトリングの弾幕へと、ライフルを撃ちながら突進した。
そして、ルートL1に待ち伏せていたMT部隊を撃破した後、もう一度水路からの機雷攻撃があった。
だが、デルタ1の状況判断により一行は爆発をやり過ごし、ルートK28、J37を通過、キサラギの地上部隊との合流に成功した。
《作戦終了です。レイヴン、お疲れ様でした》
「ああ、レインもな。……デルタ1、結局パワードスーツ部隊は半数しか生き残れなかった。俺の失態だ」
《……ミラージュの追跡部隊がやり手だった。レイヴンは十分な仕事をした。本社には、私からそう報告しておく》
「そう言ってくれると、気が楽になるが」
特殊部隊の撤収作業をACのコクピットから眺めながら、ソラはデルタ1と話していた。
コーテックスの輸送機は、既に到着している。
本当は、すぐに帰還してもよかった。
だが、今回そうしなかったのは、気まぐれに近い興味か、あるいは同じ窮地をくぐり抜けた故の連帯感か。
いずれにせよ、ソラはなんとなく通信をデルタ1のクアドルペッドに繋いだままだった。
《……元々、パワードスーツが全滅しても、MT3機のうち1機でも生き延びれば作戦は成功だった》
「つまりスーツ部隊は……最悪囮か」
《……特殊部隊はそれが仕事だ。皆承知の上だ》
「あんたもか?」
《……当然だ。私が犠牲になることで誰かが地上部隊と合流できるならば、躊躇いなくそうした》
ソラは通信相手に気づかれないように息を吐いた。
企業の特殊部隊とは、こういう職業意識なのだと、改めて思い知らされた。
思えば、グラン採掘所を自分が制圧した時、MT達は現れたACに目もくれずに、資機材のみを攻撃していた。
MTを資機材にぶつけて自爆させる時も、自身が爆風に巻き込まれるかなど関係なく、躊躇せずに任務を実行した。
ジダン兵器開発工場を占拠した、手練れのスクータム乗りもそうだった。
相手がACだろうと関係なく、自分の任務を遂行しようとしていた。
これが、三大企業の特殊部隊――『精鋭』と呼ばれる人間ということなのだろう。
ACに質で劣る兵器で戦場を駆けるとは、こういうことなのだ。
ソラも一応、先輩のスパルタンに教わったことではある。
だが、MT乗りの傭兵と企業の特殊部隊とでは、また意識が違うのだとソラは感じた。
《……それでも、多くの部下が生き残れたのは、お前のおかげだ。改めて礼を言う、レイヴン》
「こちらこそだ、デルタ1。……あんた、良い声してるな」
《……声?》
「いや、人を落ち着かせる、渋い声だと思ってな」
《……はははっ》
デルタ1が、通信機の向こうで笑った。
《……声を褒められたのは、初めてだ》
「そうかよ。失業したら、ナレーターかラジオパーソナリティにでもなればいい」
《……ああ。考えておこう》
そう言って、デルタ1はまた笑った。
やはり良い声だと、ソラは思ったのだった。
………
……
…
―――――――――――――――――――――――――――――――――
FROM:キサラギ
TITLE:礼状
レイヴン、よくやってくれた。
今回の作戦成功により、我々はグラン採掘所争奪戦を優位に進められそうだ。
ミラージュ側もレイヴンに追撃させてきていたようだが、君の迅速な救出が功を奏し、特殊部隊は予想より多くの隊員が生還できた。
よって、今回は特別に追加報酬を用意した。
AC用エクステンションパーツ"OX/MB"だ
本来はミラージュで開発されたものだが、紆余曲折を経て生産・販売権は我が社にある品だ。
これを報酬として提供させてもらう。
また依頼する。その時は是非、協力してくれ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――