ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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骨休め的な話です。ゲーム本編と作戦内容が著しく乖離していますので、ご了承ください。
ゲームでもダムに潜入してスイッチ押すだけですが、個人的に好きなミッションでした。


毒物混入阻止

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

産業区のバレルダムが先ほど、武装集団に占拠された。

武装集団は我々ミラージュに対して、実弾兵器類の製造を縮小せよと奇妙な要求をしてきている。

 

連中はダム内部に毒物入りのタンクを仕掛けたらしく、こちらの要求に従わなければタンクを爆破すると宣言している。

 

ダム周辺には、戦闘ヘリやガードメカが多数配備されているようだ。

取るに足りない戦力ではあるが、足止めには十分だ。

無理に制圧を図ろうとすれば、その間にタンクは爆破されてしまうだろう。

 

奴らの素性は定かではないが、こんな馬鹿げた要求など、決して呑むわけにはいかない。

 

そこで、レイヴンに依頼したい。

今回は少し特殊な依頼だ。

 

我々が犯人との交渉を引き伸ばしている隙に、バレルダムの貯水湖周辺にACで出撃し、武装集団の注目を引きつけてほしい。

同時に、特殊工作傭兵がダムへと潜入し、毒物入りタンクの起爆装置を解除する手はずとなっている。

 

特殊傭兵が事態を解決するまで、敵戦力を撃破する必要は一切ない。

むしろ、存分に苦戦して時間を稼いでくれ。

毒物混入の危険性がなくなった後は、容赦なく殲滅してもらって構わん。

 

なお、今回は依頼の特殊性を考慮し、ACパーツを報酬とする。

それなりに高価な品だ。報酬には充分だろう。

 

お前の評価は、我が社内でも比較的高い。

その評価を、より高める好機だと思え。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「テスト中に急に呼び出してきたと思ったら、すごい依頼が来たな……」

《すいません、レイヴン。ぜひあなたに、とのことでしたので》

 

ソラはテスト場内の研修室でパイロットスーツも脱がずに、ミラージュからのメッセージを確認していた。

ACの操縦訓練をしている時に、レインが緊急で持ってきた依頼だった。

 

《依頼主はミラージュ社。作戦区域は、第三層産業区セクション575のバレルダムです。成功報酬は80,000C相当のACパーツ。予測戦力は……戦闘ヘリが15機、ガードメカが20機ですね》

「要は潜入工作完了まで陽動しろってことだろ?ミラージュが自前の部隊で出来ないもんかね……」

《特殊傭兵が事態解決にどれほどの時間を要するのか、正確に予測できないからでしょう。大部隊を投入すれば武装勢力を刺激しかねませんし、経歴の浅いEランクのレイヴンなら……》

「この戦力に苦戦しても客観的に不自然じゃない、か。最悪、毒物混入の責任も押し付けられるもんな……」

《企業とはいえ、流石にそんな非道なことは……》

「さあな……特殊工作傭兵ってのは"デュミナス"か?」

《特に情報はありません》

「まあ、80,000C貰えると考えれば、美味い仕事か……分かった、やるよ。レイン、輸送機の手配はこのテスト場に頼む」

《はい。……テスト中とのことですが、ACのチェックは?》

「急ぎの依頼だ。動作テストは良好だったから、連れてきてるメカニック達に最低限のチェックだけさせるよ」

《了解しました》

 

レインが通信を切り、手配に動き始める。

ソラも汗を拭った後、改めてパイロットスーツを着直してACのもとへ向かった。

 

 

………

……

 

 

《輸送機がバレルダム貯水湖に到達。AC投下。……レイヴン、落ち着いて対応してください》

「分かってるよ。せいぜい上手く逃げ回る」

 

ソラは愛機の黒いAC"ストレイクロウ"を輸送機から走り出させた。

着地した場所は、ダムの導流壁から距離1000ほど離れた、貯水湖傍の岸辺だ。

コクピット内には、いつも使用している備え付けの通信機とは別に、もう1つ通信機が後付けで設置されていた。

レインが用意させたそれは、ミラージュからの要求によるものらしい。

さらに、自分が私用で使っている携帯端末まで持ってこさせられている。

一体なんだというのだろうか。

 

「現場に到着。レイン、状況が知りたい。ミラージュの交渉をACにも聞こえるようにしてくれ」

《了解。少し待ってください…………え?レイヴン、バレルダム管理部署から通信を繋いでほしいと》

「何だって?何で俺がダムと通信を……」

《……ミラージュ本社からも通信です。演技しろ、適当に話を合わせて時間を稼げ、とのことです》

「マジかよ……」

《レイヴン、携帯端末を持ってきていますよね?私からの連絡はそちらに入れます》

 

レインがそう言った直後、備え付けの通信機から中年男性の声が流れ込んできた。

 

《えー、レイヴン、聞こえるか。こちらはバレルダム所長だ。レイヴン、どうぞ》

「……こちらレイヴン。あー……Eランカーの"ソラ"だ。どうぞ」

《えー、駆けつけてもらったところ悪いが、手出しはやめてくれ。君が動けば、えー、ダムに毒物を入れられてしまう。えー、そのまま待機するように、どうぞ》

「こちらレイヴン……それはミラージュ本社の命令か?」

《ああ、そうだ。手出ししないように。いいか、くれぐれも手出しは……え?通信を代われ?ちょ、ちょっと待ってくれ……》

 

通信機の向こうで、中年男性が慌てた様子でバタバタガサガサとし始めた。

数秒後、スピーカーから流れてくる声が変わった。

 

《レイヴンさんですか?こちらは犯人グループです》

「……こちらレイヴン。テロリストが何の用だ」

《バレルダムは既に私達の手中に堕ちています。ミラージュからの依頼で来たようですが、手出しはやめていただけないでしょうか?》

 

綺麗な大人の女性の声だった。

武力で企業の施設を占拠し、あまつさえ毒物を仕掛けて脅迫しているとは到底思えない、とても落ち着いた声音だ。

そして、肩部レーダーとモニターの両方に、複数の機影が映った。

戦闘ヘリが、数機まとまってACのもとに向かってきている。

 

「……手出しするかしないかは、俺の判断じゃない。ミラージュ次第になるが」

《レイヴン、緊急の通信です。ミラージュ本社からです》

 

後付け通信機からレインの通信が入り、続けてミラージュ本社と通信が繋がった。

備え付け通信機の向こう側、犯人グループにも、通信が聞こえる状況である。

どうやらわざわざ通信機を後付けしたのは、相手を攪乱するためらしい。

 

《レイヴン、現場の状況は我々が思っている以上に切迫していたようだ。悪いが、攻撃は中止だ》

「……は?ちょっと待て、じゃあどうすんだよ俺は。このまま帰れってか?報酬はどうなる?」

《とにかく、攻撃は中止だ。輸送機を下に降ろして、コーテックスへ帰還しろ》

「いや、あのな……ここまで来て」

《レイヴン、勝手な攻撃は許さん!貴様は知らんかもしれんが、バレルダムは第一都市区の市民の生活用水に利用されている、重要な貯水施設だ。毒物がダムに混入されれば、市民に甚大な被害が出る。一傭兵のお前が、その責任をどう取る気だ?》

「……それは、あー……」

 

ソラは構えていたバズーカを下げ、適当にその場からACを数歩後退させた。

モニターに映る戦闘ヘリを誤ってロックしてしまわないように、適当に機体を揺らす。

額に嫌な汗がじんわりと浮いていた。

緊急の指名で雇われて、現地で寸劇めいた通信をやらされるとは思っていなかった。

台本など貰っていないのだ。今ミラージュから入っている通信が、本当に演技かどうかも分からない。

これが本気の通信だったら――そう考えるとやはり大人しく帰るべきかともソラは思い始めた。

そんな時、携帯端末へレインからメールが来た。

『何とかそのまま続けてください』と。

 

「だ、だが、ミラージュ本社!えー、今、周囲に戦闘ヘリが展開している。こんな状況では輸送機は降ろせない。せめて、犯人グループにこいつらをなんとかするように伝えてくれ!」

《なんだと?戦闘ヘリが周囲に?……少し待っていろ、交渉する》

 

茶番もいいところだ。

ソラはそう思った。にも関わらず、普段の依頼より遥かに心臓がバクバクと高鳴っている。

 

《すみません。今ミラージュ本社と交渉中です。少々待ってください……その間に、レイヴンさん?いいでしょうか?》

「え?」

 

備え付けの通信機から、犯人グループの女が声をかけてきた。

 

《開示情報であなたのデータを拝見しました。E-1ランクの"ソラ"さんでお間違いないでしょうか?》

「はあ、そうだけど……」

《ソラさんはACの武装をバズーカとミサイルで構成していますが、何故ですか?》

「は?……なんだよ急に」

《それらは実弾兵器ではありませんか?》

「……だったらなんだよ」

《なぜ、EN兵器を使わないのでしょうか?》

「…………はい?」

 

何だこいつ、とソラは首をひねった。

突如まったく場違いな話題を始めた、通信機の向こうの女。

 

《ACにはレーザーライフルやパルスライフルが装備できると思いますが》

「……あー、よくご存じで」

《なぜ、それらを使わずに実弾兵器を?弾薬費も抑えられるはずでは?》

「……いや、俺も最初は弾薬費のこと考えてレーザーライフル積もうと思ったんだよ。けど、メカニックにジェネレータを変えないとって言われて」

《今のジェネレータでは装備できないのですか?》

「いや、今はもう出来るんだけど、何となくタイミングを逃がしてたっていうか、他のパーツとの兼ね合いで金銭面が……ってこの話今しなくてもいいだろ?」

《いえ、とても重要なお話です》

「何で」

《ソラさんは今回の私達の要求を知っていますか?》

「実弾兵器の製造縮小だろ?」

《はい。何故そんな要求をするのか、分かりますか?》

「……さあ」

《終わることなく続く企業の経済戦争。その戦争によって、日々どれほどの武器弾薬が消費されているか、ソラさんは考えたことがありますか?》

「まあ、すごい量だろうけど」

《そうですね。特に消費が著しいのは、弾薬類なのです。三大企業が一部の富裕層向けに出している経済白書を、ソラさんはご覧になっていますか?》

「……ご覧になってない」

《例えば5年ほど前、自然区のアヴァロンヒル西部で数か月間の長きに渡り行われたミラージュとクレストによる大規模紛争ですが……》

 

『まだか?』

ソラは犯人グループの女のご高説を聞き流しながら、携帯端末でレインにメールを送った。

『もう少しの辛抱です。頑張って』

レインからメールが帰ってきた。

 

《つまり、企業がその戦争における武器の主流を実弾兵器からEN兵器に転換するだけで、レイヤードの鉱脈資源の消費量が大幅に削減でき、ひいては市民生活の向上と環境の改善に繋がるのです》

「……はぁ」

《ちなみに、今あなたのACを包囲している戦闘ヘリも、ヘリ施設内に展開させてあるガードメカも、実弾は一切装備していません。全て、レーザーまたはパルスを発射するように改造しています》

「そうですか……」

《ですからソラさんも、環境保護の観点からEN兵器の採用をぜひ検討してください。ね?》

「まあ、お金が溜まったらね、うん……」

《うふふ、ありがとうございます。ところでソラさん。せっかく現役のレイヴンと交流できる機会ですので、少し個人的にお話したいのですが》

「え、まだ話続くのか……それよりミラージュとの交しょ」

《ここ最近メディアで盛んに報道されているミラージュとキサラギのグラン採掘所争奪戦についてですが、採掘所を巡って複数名のレイヴンが死亡しているとの旨が報道されていますよね?》

「……ああ、らしいな」

《だからでしょうか。ここだけの話、私も今日管理者様から……はい?……えっ、起爆装置が?》

 

《レイヴン、待たせたな。あとは存分にやれ》

 

ソラは備え付けの通信機を切断し、バズーカで戦闘ヘリを吹き飛ばした。

 

「遅えよ、気が狂うかと思った」

 

事態の急変に何もできないヘリを片っ端から、バズーカで叩き落としていく。

周囲を手早く片づけ、ソラはACの頭部カメラをダムの導流壁へと向けた。

まだ戦闘ヘリは、10機近く残っている。

 

《レイヴン、貯水湖上空のヘリを撃墜すると、破片が水面に落下する恐れがあります》

「ああ。そこはミラージュの判断を、ってあいつら……」

 

ソラが何をするでもなく、湖上を飛んでいた戦闘ヘリ達は、全て陸地のACの方へと突っ込んできた。

何の統制も駆け引きもない、戦力差も弁えない愚直な突撃だった。

 

「楽で助かるけど……何がしたいんだか」

 

ソラは気休め程度のレーザー砲を撃ちながら突っ込んでくるヘリに対して、無感情にバズーカの引き金を引き続けた。

全てを墜としきるにのに、2分とかからなかった。

殲滅を終えたソラが念のためにレーダーの表示範囲を広げて索敵していると、機影が1機入り込んできた。

カメラで確認すると、いつかの輸送車両護衛で見かけた、白銀色の高機動型MT"カバルリー"だった。

 

《レイヴン、起爆装置は解除済みだ。毒物入りタンクも回収してきた。あとはダムの内部を頼むよ。まだ多数のガードメカがそのまま残っていてね》

「あんた"デュミナス"だな。アレグロの時の」

《……そうだよ、待たせてすまない。フフッ、随分と気を揉ませてしまったみたいだね》

「まったくだ。もっと早く何とかしてくれよ」

《いや、私もあの通信は傍受していた。おかげで手元が狂いそうだったよ》

「そうかよ……お疲れ様」

《ああ。私の仕事はここまでだ。では、後はお願いするよ》

 

カバルリーを駆る特殊傭兵の女"デュミナス"は、そのままいずこかへと去っていった。

 

《ミラージュより通信です。導流壁内部のガードメカも掃討するように、とのことです》

「分かってる。さっさと片づけるぞ。もうダムはこりごりだ。あの女、ちゃんと捕まるだろうな……」

 

その後、特に波乱もなくソラはダム内部の武装勢力を掃討した。

地下世界の広さを、噛みしめながら。

 

 

………

……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

FROM:ミラージュ

TITLE:礼状

 

レイヴン、バレルダムでは世話になった。

礼を言おう。

 

犯人グループの正体は、環境保護団体"グリーンウィッチ"だったようだ。

奴らは元々小規模な市民運動から始まった組織だが、物好きな富裕層を取り込んだらしく、近年その勢力を大きく拡大していた。

 

少々過激な活動も目立ち始めていたところだったが、今回の一件で、その主要メンバーの多くを捕らえることができた。

このバレルダム占拠の件を市民に報道すれば、組織だった活動も縮小していかざるをえないだろう。

 

レイヤードの環境保護を謳っておいてやることがこれとは、どこまでも救いようのない奴らだ。

 

レイヴンには今回の成功報酬として、パーツをガレージに送っておいた。

AC用肩武装パーツ"M/45"だ。好きに使うがいい。

 

今後とも、我が社への貢献を期待する。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

………

……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

FROM:ビルバオ

TITLE:よろしくお願いいたします

 

ソラさん、バレルダムではお世話になりましたね。

 

私はこの度、管理者様に選ばれ、晴れてレイヴンとなりました。

ビルバオと申します。

 

私達の団体はダムの一件でとても大きな痛手を被り、方針転換を余儀なくされてしまいました。

よって、今後は私が団体の代表として、レイヴン活動によって得た収入を緑化運動等に提供することで、レイヤードの環境保護に貢献していければと考えています。

 

私達の、環境に対する想いは決して変わりません。

ただ少し、今までとやり方が変わるだけです。

大丈夫です。強い決意さえあれば、世界はより良いものにできる――私達はそう信じていますから。

その強い決意の証として、ACネームは団体名と同じく"グリーンウィッチ"としています。

 

ソラさんもご縁があれば、その時はご協力をお願いしますね。

 

長くなりましたが、地下世界を愛する同志として、今後ともよろしくお願いいたします。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 




AC6ついに出ますね。元々新作発売の願掛けで書いてたものなのでここで打ち切ろうかとも思いましたが、せっかくなので最後まで頑張ろうと思います。
読んでくださっている方々、本当にありがとうございます。
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