ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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前回機体構成が変更されたのでまとめて記載しておきます。
今回はライフルで戦います。
フレーバー程度ですので、武器以外は一切気にしなくても大丈夫です。

右腕部武装:MWG-RF/220(ロングレンジライフル)
左腕部武装:CLB-LS-2551(緑ブレード)
右肩部武装:CRU-A10(初期肩レーダー)
左肩部武装:CWM-S60-10(10連小型ミサイル)
エクステンション:MWEM-R/24(2発発射連動ミサイル)

頭部:CHD-02-TIE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAM-11-SOL
脚部:MLM-MX/066

ジェネレーター:MGP-VE905
ラジエーター:RMR-SA44
ブースタ:MBT-OX/E9
FCS:AOX-F/ST-6
オプショナルパーツ:OP-S-SCR(実弾防御上昇)、OP-E/SCR(EN防御上昇)、OP-E/CND(ジェネ容量増設)、OP-L-AXL(ロックオン時間短縮)


封鎖地区侵入者排除

Dランク昇格から3日後。

レインの連絡に応じ、ソラはいつものようにブリーフィングルームに入っていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

極秘の任務を依頼します。

至急、第三層第一都市区セクション513に向かってください。

 

セクション513は、数年前に発生した地殻変動によって都市の大部分が壊滅、多数の市民が犠牲となったため、管理者権限により封鎖されました。

同セクションは現在も不安定な状況にあるため、管理者の指示を受けて無人のまま我々クレストが管理し、立ち入りを厳重に禁じています。

 

ところがここ最近、セクション内部に侵入者の痕跡が何度も認められていました。

目的は不明ですが、あそこで何か騒ぎを起こされれば、周辺セクションへも影響を与えかねない重大な事態に発展する可能性もあります。

 

そして先ほど、配備してあった警備部隊から、件の侵入者をついに発見したとの連絡が入りました。

彼らが何者であろうと、この行為を認めるわけにはいきません。

管理者の決定は、絶対なのです。

 

今回の依頼に限り、レイヴンには特例的にセクション513への立ち入りを許可します。

 

侵入者を1人残らず、殲滅してください。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

《依頼主はクレスト社です。作戦区域は第三層第一都市区の封鎖済みセクション513。報酬は先払いが5,000C、成功報酬が17,000C。予測戦力は……パワードスーツ部隊が多数ですね。MTは報告されていません》

「敵はパワードスーツのみって、何だそりゃ……その程度の戦力相手に、先払い報酬まで出すのか?」

《現地写真等の提供はありませんでしたが、地殻変動が原因で封鎖された区画の1つです。おそらく路面コンディションは相当劣悪。MT部隊の走破性能では無理があるからACを、という判断でしょうか……》

「極秘の依頼で、特例的に立ち入りを……管理者権限の封鎖……」

 

ソラはクレストのメッセージ文章を読みながら、以前貰ったアップルボーイからのメールを思い出していた。

貧困層が多く居住する第三層第一都市区では数年前に、大規模なセクション封鎖が行われた、と。

ソラは第一層第二都市区の出身な上に当時は工場勤務だったため、あまりその手の報道を気にしたことはなかったが、地殻変動が原因というのは初耳だった。

レイヤードは地下世界。確かに地殻変動が広範囲に発生すれば、多くのセクションを管理者が封鎖するというのも頷ける。

 

《レイヴン、どうしましょうか?》

「パワードスーツ蹴散らして20,000Cなら、受けない理由はないな。けど……」

 

管理者の命令で封鎖された壊滅済みのセクションに、敵がわざわざ危険を冒して侵入する理由は何なのか。

そんなことをして、何になるのか。何が狙いなのか。それが、ソラの中では強く引っかかっていた。

 

《……レイヴン?》

「悪い、考え事してた。依頼は受けるよ。レイン、輸送機の手配を」

《はい……確かに少し、妙な依頼ですね》

「まあな。けど、依頼は依頼だ。受ける以上は、言われたことをやるだけだ」

 

自分は傭兵なのだから、とソラは心の中で呟いた。

企業には企業の思惑が、侵入者には侵入者の思惑がある。

そしてそれは、本質的にはソラには関係のないことなのだ。

自分はレイヴン、ただのコーテックス所属のAC乗りの傭兵。

鎌首をもたげかけた疑念を、ソラは自分の中に抑え込んだ。

 

 

………

……

 

 

時刻は13時30分。

 

《レイヴン、そろそろセクション513のメインゲートです。残り距離500。ゲート付近に、クレストの警備部隊が待機しています》

「了解。一報入れて、このまま進行だ」

 

封鎖されていないセクションから伸びる大橋の上をブースタを吹かして走行し、やがてソラのAC"ストレイクロウ"は巨大なゲートへとたどり着いた。

レインからの通信通り、ゲートの周辺にはクレストのMT部隊が展開していて、ソラの到着を待っていたようだった。

 

《本社が依頼したレイヴンだな?》

 

黄土色に塗られた逆脚MT"モア"が前に進み出て、通信を繋いできた。

他の一般機とは異なり、連装ミサイルランチャーと思しき武装を頭部にくっつけている。

どうやら隊長機らしい。

 

「そうだ、ストレイクロウだ……あんたは?」

《こちらはクレストMT部隊長、ハート1だ》

「ハート1、内部の状況は?」

《侵入者達はまだ内部にいるようだ。遠慮はいらない、殲滅で頼む。それと……本社から伝達事項。内部で見たことは他言無用、だそうだ》

「……分かってるよ。極秘の任務だと聞いてる」

《話が早くて助かる。待っててくれ、封鎖を解除する。あとは任せるからな》

 

ガシャン、ガシャンとハート1のモアが後ろに下がり、警備部隊が慌ただしく動き出す。

ソラがその場で待つこと1分ほど。封鎖済みのセクションへと通じるメインゲートが、地響きを立てて持ちあがり始めた。

 

《俺達クレスト部隊は、このままゲート付近で待機する。何かあれば、通信する》

「ああ。じゃあ、行ってくる」

 

ソラはACを走らせて、ゲートをくぐった。

幸い、偽物の空の人工気象システムは生きていたようで、昼過ぎの時間帯に見合った明るさは確保されている。

 

「システムは生きてるのか……レイン、オペレートは?」

《可能みたいです。封鎖済みなのに電力供給が止まっていない……?どうして……》

 

そのまま大橋を進んでいるとやがて、セクション513の市街地が見えてきた。

それは、土埃をかぶって色褪せた高層建築群だった。

遠目に見ても人が住んでいる気配などない、静寂に満ちた、放棄された街。

しかし――

 

《これは……どういうこと?地殻変動の痕跡なんて、どこにも……!?》

 

通信機からレインの困惑が伝わってくる。

ソラもまた、ビル群を見上げながら言葉に窮していた。

地殻変動によって都市の大部分が壊滅したセクション。

クレストは確かに、依頼のメッセージでそう言っていた。

だが、市街地はまったくの無傷だった。

ブースタを吹かして交差点を曲がり、大通りに入った。

確かに、居住区としての都市機能は稼働していない。建築物や看板の照明も、街灯も信号機も、全て消えたままだ。

だが、道路の舗装や立ち並ぶビル群は何一つ、地殻変動のダメージを負っていなかった。

 

「……これで、封鎖?何で……っ!」

 

ソラが疑問を口にした瞬間、レーダーがいくつかの反応を捉えた。

無数の光点が3つずつほどで束になって市街地を動き回っている。

パワードスーツ部隊だ。

 

「レイン、とりあえず掃討を開始する。何かあれば、知らせてくれ」

《……分かりました》

 

ソラはフットペダルを踏み込み、都市の交差点をもう1つ勢い良く曲がった。

やはり、パワードスーツの一団がそこにはいた。

ビルに張りつき、何やら作業をしている。

 

「悪いが、死んでくれ」

 

ACが右腕の武装を持ち上げる。今日の装備は、取り回しと連射力に優れたライフルだ。

パワードスーツを蹴散らすだけなら、バズーカよりも効率的だという判断だった。

ソラが操縦桿のトリガーを引くと徹甲弾が発射され、パワードスーツを着た人間を1人、一瞬で血霧に変えた。

 

《AC!?クレストの差し金か……!》

《待機部隊に報告しろ!我々はサブゲートへ!急げ!》

「サブゲート……レイン、都市のサブゲートの位置を念のため調べてくれ。それとクレストに伝達だ」

《了解しました》

《クソっ……く、来るなぁっ!》

 

ACの高性能頭部COMが敵の通信を傍受し、その狼狽えようを伝えてくる。

そして、ロケットランチャーや携行マシンガンによる散発的な迎撃。

ACにとっては何ら痛手にならない、無意味な豆鉄砲である。

だが、ソラは無慈悲に引き金を引き続けた。

パワードスーツの金属反応をFCSが捉えてロックし、ライフルの銃口から吐き出された砲弾が的確に相手を消滅させていく。

人間が虫を踏み潰すよりも手応えのない、一方的な虐殺である。

小隊を1つ消した後は市街地を走って進み、また見つけた小隊に向けてライフルを撃ち込む。

それをただ繰り返すだけで、レーダー上の敵反応はどんどん減っていった。

こんな任務に雇いやがって――ソラが思わず舌打ちした、その時だった。

 

《れ、レイヴン、こちら……ハート1!ゲートがACの攻撃を受けて……突破された!》

「何だって、AC……!?部隊は無事なのか!」

《ほぼ壊滅だ……クソッ。奴はそっちに行ったぞ、気を付けろ!》

「レイン!」

《こちらでも捕捉しました!っ、速い!識別コード特定、少し待って……!》

 

焦るレインの声。

レーダーが、急接近してくる機影を捉えた。

ソラは元来た道を旋回して振り返り、ライフルを向けて待ち構える。

土埃舞う薄暗い大通りの曲がり角の向こうから、それはやってきていた。

肌がひりつき、額に汗が滲む緊張感。

 

《……D-8ランカーAC"ブラッククロス"確認!!》

 

レインが声を張った瞬間、曲がり角から赤いACが飛び出してきた。

 

「ついに来たな、AC!」

 

ソラは唾を飛ばして、ライフルを連射した。

しかしブラッククロスは大通りを縦横に飛び跳ね、ソラの先制攻撃を躱しきって、さらに接近してくる。

一目でわかる巧みな動き。D-8ランク。自分より上。

ソラの思考が、警戒レベルを一気に跳ね上げた。

 

《……あー、格下?よかった、消えてちょうだい》

 

いまいち緊張感のない女の通信と共に、敵ACの速射マシンガンと連射型イクシードオービットが同時に火を噴く。

実弾とレーザーの分厚い弾幕を、ソラは大通りを素早く退きながら躱した。

後ろからも機影、パワードスーツ部隊がロケットランチャーでちょっかいを出してくる。

構っている暇などなく、目の前のACに集中した。

 

《敵は軽量二脚AC、高機動と連射力の高い武装が特徴です!》

「見れば分かる!」

 

思わずレインに言い返しながら、ソラは肩部ミサイルと連動ミサイルを起動した。

跳ね回っていても、所詮はACにとっては窮屈な都市の大通りだ。

大きな回避運動は取れない。

FCSが3発分のロックを完了、トリガーを引くとミサイルが連続発射されて、ブラッククロスに群がっていく。

ブラッククロスのエクステンションが、迎撃ミサイルを吐いた。

爆発力の大きなそれに吸い込まれるようにしてストレイクロウの発射したミサイルが無力化され、爆煙の向こうからしつこく反撃のマシンガンが撃ち返されてくる。

 

「……っ、手数が多い!」

 

敵はそれほど射撃精度はよくないが、とにかく弾幕が厚かった。

ソラが2発ライフルを撃つ間に、相手は10発は連射弾を撃ち込んでくる。

アリーナとはまた違う、市街地の大通りというバトルフィールドでの対AC戦は、ソラにとってはまったく未経験だった。

だが、ブラッククロスのレイヴンはちょこまかとACを走らせ、時には跳ばせ、ブースタを吹かしてはこちらを攪乱してくる。

ソラがビルの壁面に少し引っかかれば、即イクシードオービットを起動、連射レーザーが一気にAPを削ろうと狙う。

慣れていた。市街地戦に。

だが、負けるわけにはいかなかった。

アリーナとは違い、これは本物の戦場。

AP0は即ち、死を意味するのだから。

 

「く、ぅぅっ!」

 

ソラは接近してきて少しでも弾幕を当てようとする敵ACから退きつつ、ライフルを粘り強く連射した。

最初は虚しく通り過ぎていた砲弾も、ソラの目が軽量型ACの高機動に慣れ始め、ロックサイトが追いついて、敵を捉えるようになっていく。

だが、大通りで回避行動を十全に取れないまま打ち合えば、ライフルだけしか決め手のないソラの方が不利なのは否めなかった。

敵にはマシンガンとイクシードオービットで2種の連射武装があるのだ。

 

「レイン、地形を探れ!」

《次の交差点を右折です!開けた公園があります!》

「よし、そこだ!」

《スポットを!》

 

ソラはひたすら引き撃ちに徹しながら、レーダー上のレインのスポットを頼りに公園まで下がっていった。

 

《粘るわね、あんた……っ!》

 

ブラッククロスのレイヴンが、ACを公園に飛び込ませて息を呑む。

ストレイクロウが、大量のミサイルを発射したからだ。

迎撃ミサイルが片っ端から撃ち落とすも、それでも弾幕は消し切れず、3発が命中。

軽量機故の安定性能の低さでブラッククロスは大きく体勢を崩してよろめき、武器の連射を止めた。

その好機に、ソラがライフルを何発も叩き込んでいった。

 

《っ……しつこい!なら、これはどうよ!》

 

立て直したブラッククロスがぶんと腕を振るうと、地面に何かがばら撒かれた。

その正体が分からず、ソラの集中が思わず地面に奪われる。

ソラが目線を下げた一瞬の隙を突き、ブラッククロスは大きく飛んだ。

さらに何かがばら撒かれて。突っ込もうとしてそれを踏んだストレイクロウの脚元で、大きな爆発が起きた。

 

「っ、地雷か!?腕部インサイドの!」

《ほら、足元見ないとドカンよ!》

 

叫びながら、ブラッククロスは空中からマシンガンとイクシードオービットを連射し続けてくる。

ソラは歯を食いしばった。モニター上のAPが4000を切っている。

ここはアリーナではない。敵のAPは分からない。

地面には大量の地雷。空中からはACの弾幕。

形勢は圧倒的に不利だった。

公園に出ればと思ったが、この公園は行き止まり。

逆に自分の状況を悪くしてしまっていた。

 

「くっそぉっ!!」

 

ソラはトップアタックをしかけてくるブラッククロスに、ライフルを何度も撃ち放った。

当たれば敵はよろけ、弾幕が止まる。そこにさらに当てていく。

当てさえすれば、相手の攻撃は止まるのだ。

弾幕から逃げ回りながら忍耐強く、一発一発当てていく。これしかなかった。

やがて、ブラッククロスが空中から地上に降りて、歩行で距離を取り始めた。

イクシードオービットのレーザー連射で、EN残量が苦しくなったのだ。

ソラは攻め時だと直感し、肩ミサイルを起動しつつACを突っ込ませた。

動きの鈍った敵にミサイルを一斉発射、さらに地雷の爆発も気にせず、がむしゃらに突撃する。

 

「くたばれ!」

《誰が!》

 

迎撃しきれなかったミサイルの直撃でまたもよろめいたブラッククロスめがけ、レーザーブレードで斬りかかる。

敵は左腕のENシールドを咄嗟に展開して、受け止めた。

ほんの数拍の鍔迫り合い。だが腕部のパワーは、中量型のこちらが勝っていた。

ぎりぎりと押し込み、そして――敵のコアを斬った。

 

《やばっ……死んじゃう!もういいでしょ!報酬分はやったわ!退くわよ!》

 

敵が誰かに通信し、背中を見せて大通りを逆走し始めた。

逃走方向は、パワードスーツが言っていたサブゲートのようだ。

ソラは追いすがりつつ、ブラッククロスの背中に向けてライフルを何度も放った。

砲撃はあくまで牽制、このまま逃がしてもいい。そう思っていた。

レーダー上の光点は、気づけば敵ACだけになっている。

ソラがブラッククロスに気を取られていた間に、パワードスーツ部隊は上手く逃げていたのだ。

殲滅作戦は、失敗だった。

 

「……クソ、負けた」

 

追撃の最中、ストレイクロウがじりじりと敵ACに離され始めた。

こちらは中量ACで、相手は軽量ACなのだから、逃げに徹されれば当然のことである。

やがて、退き続けていたブラッククロスが、隣接セクションに繋がるサブゲートと思しき場所まで到達した。

そこから逃走するつもりのようで、もはや戦意は感じられない。

ソラ自身も、もう戦う気はなかった。

あとはブラッククロスの撤退を見届けて終わり――

のはずだった。

 

《な、ゲートロック……!?はぁっ!?操作不能って……それどういうこと!?話が違うわ!ユニオン、ねえ、ユニオンっ!!》

「……っ!?」

 

ブラッククロスが、作動しないサブゲートの前で右往左往し始めた。

絶好の好機だった。ソラは状況を呑み込めないまま反射的にブラッククロスを多重ロックして、ミサイルの群れを放った。

背面に全弾命中。ブラッククロスの全身から煙が噴き出した。

 

《ちく、しょう……ふざけないでよ……こんな、ところ、で……》

 

バチバチと各部がスパークし、膝から崩れ、やがて敵ACは大爆発を起こして消滅した。

金属片が多数散らばって、舗装路がズタズタになった市街地には、ソラのACだけがポツンと取り残された。

 

「"ユニオン"……?なんだ、それは……」

《レイヴン、クレストより通信です。偵察部隊が敵の逃走経路を捕捉。あとはこちらで処理する、とのことでした。作戦は……成功です》

「…………」

《レイヴン、お疲れ様でした。輸送機を最初の場所へ……レイヴン?》

「悪い、レイン。ちょっと……」

 

ソラはACを飛ばせ、一際高いビルの上に着地させた。

そして、望遠カメラで市街地の様子を確認する。

ストレイクロウとブラッククロスが戦っていた場所からは煙が立っているものの、それ以外はやはり、全くの無傷といってよかった。

天井の人工気象システムも、何の支障もなく作動している。

ACまで雇った侵入者達、ユニオン。

彼らは一体、ここで何をしていたのか。

 

《……何なのでしょうか、ここは一体……》

「分からない。このセクションが封鎖された時は確か、他のセクションもまとめて封鎖されたんだったよな」

《……はい。もしかして、他の封鎖セクションも無傷で……?それに、ブラッククロスが言っていた"ユニオン"とは……》

 

ソラは、ACの頭部を上空に向けた。

偽物の空が、見慣れた曇り空を映していた。

幼い頃、学校で真実を突きつけられたあの日から何度見上げたかもわからない、規則的な雲の流れ。

思わず、フットペダルを踏み込んでいた。

 

《……レイヴン?》

 

機体がブースタの助けを借りて、空へ空へと上がっていく。

ジェネレータのEN容量が減っていき、レッドゾーンに達して警告音が鳴り響き、やがて、チャージング状態に入った。

機体が偽物の空の天井に届かずに、重力に引かれて自由落下を始めた。

まるで『お前にはまだ早い』と、抑えつけるかのように。

 

《……っ!レイヴン、クレストより通信です。作戦は終了した、すぐにメインゲートまで引き返せ、と言っています》

「ああ、分かってるよ」

 

ソラは市街地の地面に着地した後、大人しくすごすごと元来た道を引き返した。

自分自身でもよく分からないものが、胸の奥でざわついていた。

ただ、はっきりと分かるのは。

 

 

『皆さんの見ている空は、本物の空ではありません』

 

 

あの日の言葉が、鬱陶しいくらいに何度も何度も、頭の中で響き続けていることだけだった。

 

 

………

……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

FROM:クレスト

TITLE:礼状

 

この度はご協力、感謝します。

 

あのセクションの封鎖は、管理者によって決定された事項です。

我々レイヤード市民は、その決定を守らねばなりません。

それが、このレイヤードの秩序です。

 

レイヤードは、閉ざされた地下世界です。

心無い一部の者達の暴走は、この世界全体に取り返しのつかない事態を引き起こす可能性を孕みます。

 

それを阻止するために、我々は秩序を重んじ、管理者に全てを委ねているのです。

その事実を、貴方も忘れないでください。

 

あのセクションは確かに、地殻変動によって封鎖されました。

優れたレイヴンである貴方なら、それが正しい事はわかるでしょう。

 

では。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 




ゲーム本編ではブラッククロスの性別は不明です。イクシードオービットもなぜか使ってきません。ご了承ください。
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