ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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年内の更新はあと1回だけになる予定です。
訓練補助は本来、キサラギの依頼ですがクレストに変わってます。ご了承ください。


訓練補助

アリーナでのパイソン戦を終え、祝勝会の酔いも冷めた翌日の午前だった。

例によって例の如く、ソラの専用住居付きガレージに、パーツコンテナが複数運び込まれていた。

忙しくハンガーとコンテナの間を往復する整備班を眺めつつ、ソラとアンドレイが話し込む。

 

「ほうほう。アリーナの報酬で何を買ったかと思えば、バランス型マシンガン"MG-500"に、範囲ロック数両立型FCS"WS-3"、そしてキサラギの左腕投擲銃"HZL50"か……」

「ああ。勝利特典の褒賞パーツを売って買ったから、まだ金はちょっと余ってるけどな」

「お前さんも2丁拳銃にデビューか。まあ、悪くねえやな。先日タンクAC相手にして、右腕武器だけじゃ火力に限界感じたってところだろ?」

「……まあな。あと、CランクのトラファルガーとかBランクのファンファーレとかこの前のパイソンとか、2丁拳銃使いのレイヴンを結構見てきた。興味があったんだ、左腕に装備する銃」

「んで、投擲銃な。キサラギも面白いもん作ったもんだぜ。榴弾を投射する銃なんかを左腕に装備するってんだから」

「カタログスペックはかなり良かったし、安いから買ったけどな。使って見ないとなんとも」

「火炎放射機は?これも左腕に装備できるぞい」

「いらねえ」

「なんでぇ、相変わらずロマンの分からん奴じゃな……」

「チーフ、マッチングが済めば、早速テストするからな。投擲銃がモノになれば、今後の依頼でACに出くわしても、火力負けすることは少なくなるだろ?」

「だの。けど気を付けろよ、マシンガンも投擲銃も金食い虫だぜ。依頼は成功したが赤字が出た、なんてことにならねえようにしろよ?」

「そこだな。まあ依頼内容を見極めつつ、レーザーライフルやバズーカやライフルなんかも併用して、やりくりしていくしかねえな」

「わはは、どの道レイヴン様の腕と目利き次第ってことじゃな。せいぜい頑張れ頑張れ」

 

メカニックチーフのアンドレイがいつもの陽気さで、ソラの肩をばしばしと叩いてきた。

少し痛いが、この老人なりの激励であることは分かっている。

ソラは適当に受け流しつつ、ハンガーに佇む自分のAC"ストレイクロウ"を見上げた。

ACとしての基本の形は、既に出来上がっている。そろそろ、次の段階に移行する時期だった。

そのためにまず今回、武装の選択肢を増やした。

左腕部武装に投擲銃が選べるようになれば、それだけで色んな武装の組み合わせができるようになる。

そして次は、新しい脚部だ。今の"MX/066"は中量二脚としては高機動で扱いやすいが、少し積載量が低い。

買い替えというより、武装の択次第で換装できるように、もう1種類は脚部を持ちたかった。

 

「うーん、ミラージュの"SS/ORC"かクレストの"03-SRVT"……」

「お、脚部の話か」

「ああ、こっちも選択肢を増やそうかと」

「ならフロートを買え!買わんか!」

「ぐ、ぐるぢぃ。いやフロートはちょっと俺の美意識に……」

「なんでぇ……あんなにかっこええのに……こっそり注文しといてやるか」

「本社に言うぞ爺さん」

「冗談じゃ冗談、わははっ!」

 

まだ昨日の酒が抜けてないのかと、ソラは髭もじゃのベテランをジトっと睨みつけた。

最初の頃は的確な助言やパーツ知識をくれる凄腕メカニックといった感じだったのに、いつの間にか隙あらば自分の趣味を押し付けてくる厄介な爺さんになっている。

 

「まったく、最初はすげえ頼りになる爺さんだと思ったのに」

「何を言っとる。お前さんもうワシがおてて引いてやらんでも上手くやっていけるようになったろうが。だからワシも、遠慮はやめたんだわ。これがワシの素よ」

「猫かぶってた頃のあんたの方が、俺は好きだったよ」

「わはは、これだから若いもんは!わはははははっ!」

 

 

………

……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

レイヴン、我々クレストが新開発した高性能MTの性能試験への協力をお願いします。

 

今回の試験では、搭載武装による攻撃テストと、機動力による回避テストの2項目を行う予定です。

 

貴方には回避テストにおける攻撃役を頼みます。

こちらの用意した模擬戦用武器を使い、MTに対して攻撃をしかけてください。

 

あくまで模擬戦形式であり、レイヴン及びMTパイロット双方の安全には十分に配慮しますが、1つ条件をつけます。

お互いにより実戦に近い緊張感を持つため、そちらの命中率に応じて、報酬を支払うこととさせていただきたいのです。

 

なお、攻撃テストについては、標的役を別のレイヴンに依頼する予定です。

 

使用する武器については、事前にそちらのガレージに送りますが、新型MTの説明や細かい訓練内容については、現地で伝達します。

また、もし依頼内容が不審であれば、模擬戦用武器以外にも武器を装備して参加してもらってかまいません。

我が社なりの誠意と思ってください。

 

以上です。連絡を待っています。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

《依頼主はクレスト社。作戦領域は第三層産業区、セクション582のガルナット軍事工場の兵器試験場です。報酬額は回避テストにおける命中率で決定し、最大で50,000Cとなっています》

「50,000C……新型MTのテストへの参加ねぇ。その新型MTとやらの情報は?」

《依頼受諾前に明かせるのは、この画像だけとのことです》

 

ブリーフィングルームの備え付け端末に、レインが新型MTの画像を送信してきた。

赤い二脚型MTが、大型のブースタユニットを2基搭載している。

 

「高機動MTか?確かに速そうだ……しかし、AC相手に性能試験とはずいぶんと強気だな」

《AC戦前提の機体に仕上がるとすれば、レイヴン自身の手で厄介な敵を育てることになってしまいますが……》

「……そうだな。けど、所詮管理者が企業に提供したデータで作られたMTだもんな……」

 

レイヤードにおける最強の機動兵器は、アーマードコア。

この大前提を崩すことが許されない以上、企業がどれだけ頑張ってもそう大した代物が出てくるとは思えなかった。

 

《それと、貸与される模擬戦用武器は、初期配備ライフル"RF-200"及び初期配備肩ミサイルユニット"S40-1"をペイント弾仕様にしたものとのことです》

「ああ、初期配備品のな……もう懐かしいな、あれも」

《クレストの依頼ですが……受けますか?》

 

レインが含みを持たせた質問をしてきた。

以前の封鎖済みセクションの一件を言っているのだろう。

だが、どの道いつまでも引きずる話ではないし、自分の中でもある程度整理はついていた。

 

「受ける。輸送機の準備を。ただ、わざわざクレストが断ってくれてんだ。一応、左腕や肩には別の武装を載せていくって伝えてくれ」

《分かりました》

「あ、そうだ。回避テストは俺が担当するとして、攻撃テストは誰の担当だ?」

《待ってください……E-3ランカー"アップルボーイ"ですね》

「……あいつかよ。久しぶりの協働任務だな」

《輸送機は同乗でも?》

「まあ、いいだろ」

《はい。では、準備が出来次第連絡します》

 

同じ日に試験を受けてレイヴンになった赤ら顔の少年。

たまにメールをくれていたが、任務で会うのは久々だった。

 

 

………

……

 

 

セクション582上空。

コーテクックスの最新型輸送機の中には、"ストレイクロウ"と"エスペランザ"、2機のACが乗せられている。

作戦区域に到達するまでの間、ソラは同期の少年"アップルボーイ"と通信機を挟んで話をしていた。

 

《超高性能MT部隊……いえ、僕は遭遇したことありませんね……》

「そうか。それならそれでいいんだが」

《でも、もし企業が運用してるものなら、逸脱行為扱いになったりするんじゃないですか?レイヤードの軍事バランス上、最強の機動兵器はアーマードコアでなければならない、って整備班が言ってたような》

「ああ、そうだな。そういう話もある」

《念のためコーテックス本社にも報告しておくとか?》

「それも一応、うちの専属補佐官がやってくれてはいるんだがな……うーん」

 

アップルボーイはレジーナとは違って、正体不明の高性能部隊との遭遇経験はなさそうだった。

反応を見る限り、そういうMT部隊が出没していることすら知らなかったようだ。

 

「ところでお前、何でACが丸腰なんだ。ブレードすら無いって」

《え?だって、MTの攻撃を回避し続けてほしいって依頼ですよ?》

「いや、だけどよ……」

《武装を積んでいたらその分、動きが鈍くなって不利じゃないですか》

「……まあ、そうだけどさ」

《え?……え?》

 

純粋に疑問符を浮かべている少年レイヴンに、ソラは頭を抱えた。

これがもしクレストの騙し討ちならばとか、もしテスト中に他の企業が邪魔しに来たらとか、微塵も考えなかったのだろうか。

クレストがわざわざ依頼メッセージで『武装してきても構わない』と言った意味を、どうやら分かっていないらしい。

ちなみにソラのストレイクロウは模擬戦用武器の他に、左腕に投擲銃を、肩に10連小型ミサイルユニットをそれぞれ装備してきている。

 

「お前……ちなみに依頼遂行率とかどうなんだ」

《え、あはは……正直あまり良くなくて。間が悪いというか、救援に行ったら到着前に全滅してたとか、追撃に出たら1回も追いつけずに逃がしたりとか、そういうの多くて》

「……はあ。そうかよ。頼むから頑張れよ。一応同期なんだから、死なれると夢見が悪くなるからな」

《ソラさん……!はい、頑張ります!》

 

あまりに純朴で素直な返事に、ソラはもう一度頭を抱えた。

 

《あ、でもアリーナはなんだかんだでE-3まで来たんですよ》

「知ってるよ。早くDに上がれよな」

《うーん、どうなんでしょう。次の対戦相手が誰か次第ですし。そういえば僕達の後輩の……レジーナさんでしたっけ。あの人はもうD-7になってましたね。すごいですね!》

「……そうだな」

 

こいつはその内、こっぴどく騙されて死にそうだ。

ソラは適当に返事をしつつ、レイヴンとしてはあまりに真っ直ぐすぎる性格の少年の未来を慮った。

 

《レイヴン、ガルナット軍事工場の試験場に到達。降下してください》

「了解。行くぞエスペランザ」

《はい!》

 

2機のACが、クレストの巨大工場横に併設された大きな試験場へと降りたつ。

その直後、試験場の管制室から通信が入った。

 

《レイヴン、よく来てくれた。まず、紹介しておく。我が社の最新型高機動MT"フィーンド"だ》

 

地下よりせり上がってきたハンガーから、5機の見慣れぬMTが姿を現した。

事前に画像で見た通り、赤く細身な人型の胴体に大型のブースタユニットが2つ装備されている。

 

《本機体はミラージュやキサラギの高級機に対抗すべく開発されたもので、非常に高い滞空能力に加え、3連射バーストパルスとデュアルミサイル、そして高度な操縦補助システムを備えた、高火力高機動MTである。間違いなく今後の企業間経済戦争の趨勢に大きく影響するだろう、我がクレスト社の傑作機だ。ちなみに本体の赤いカラーリングはただのお洒落ではない。対レーザー防御を高めるための特殊コーティングとなっている。また、左肩には"9"の意匠が刻印されているが、これは人類が地下に潜る前に実際に存在したとされる……なお、機体名の"フィーンド"についても人類史に残る伝説上の……》

《なるほど、かっこいい……》

「そうか……?」

 

途中から意匠や機体名の由来といった蘊蓄の域に入り始めた管制室の自慢げで冗長な説明を聞き飛ばしながら、ソラは肩を回した。

アップルボーイは聞き入っているようだが、ソラにとってはただのMTの性能試験だ。

早く始めてほしかった。

 

《というわけで、試験を開始する。1から3号機が攻撃テスト。4、5号機が回避テストだ。所定の位置から離れすぎないように頼む》

 

ソラはACのブースタを吹かして、広い試験場の東端へ向かった。

アップルボーイのエスペランザは反対の西端へと向かったようだ。

クレストの新型MT"フィーンド"が2機、ふよふよと浮遊するように飛行しながら、ストレイクロウを追ってきた。

 

「速度は……時速200㎞前後か?まあ、高機動MTならそんなもんか」

 

一瞬、時速300km近い速度を叩き出していたファルナ研究所のスクータムが脳裏をよぎる。

だがソラは、すぐにそれを頭の中から叩き出して、フィーンドにライフルを向けた。

 

「こちらストレイクロウ。どうする?まずライフルの回避テストでいいのか?」

《こちらフィーンド4。それでいい。距離400を確保した後、通信で合図してから射撃を開始してくれ》

「了解。…………距離400だ。射撃訓練を開始するぞ」

《よろしく頼む》

 

ソラはとりあえずFCSがロックした4号機に向けて、模擬戦用ライフルを1発撃った。

フィーンドが躱そうとして横に動くも躱しきれずに、大型ブースタにペイント弾の黄色が付着した。

 

《フィーンド4。何をやっている!》

《こちらフィーンド4。どうやら、ブースタの加速開始に計算以上のラグがあるようだ。この距離のライフルがかわせないとは……》

《ブースタ出力を全開にした状態で試せ。レイヴン、射撃再開だ》

「了解」

 

ソラはライフルを3秒刻みの規則的なタイミングで撃った。

1発、2発、3発、4発、5発――全弾命中。

フィーンド4号機は胴体もブースタも黄色一色になった。

実戦ならば、木っ端微塵だろう。

 

《こ、こちらフィーンド4!やはりブースタ全開でも避けきれない!モアのライフルはオートで避けきれたのに!それと、モニターがペイント弾で染まって見えん!》

《放水車を回す!後退しろ!次、フィーンド5!ミサイル回避テストだ!》

《了解!》

「おいおい……全然ダメじゃねえか」

《レイヴン、模擬戦用ミサイルで5号機を狙え!》

「……了解」

 

4号機が後ろに下がっていき、放水車の放水を受け始める。

ソラは武装を模擬戦用肩ミサイルユニットに切り替え、次は5号機に狙いを定めた。

これもただ、FCSのロック通りに単発を撃つだけだ。

ミサイルは噴射炎を輝かせて放たれ、そしてフィーンド5号機の赤い胴体に当たって、黄色の塗料を撒き散らした。

 

「…………」

《フィーンド5!なぜ避けられん!計算では、単発の小型ミサイルならばオートで回避できるはずだぞ!》

《こちらフィーンド5!オート回避プログラムの反応開始があまりにも遅すぎる!一度セミオートでやらせてくれ!レイヴン!》

「ああ、もう1回ミサイル撃つぞ」

《来い!》

 

ソラはもう一度、5号機をロックしてミサイルを発射した。

フィーンドが大きく横にスライドし、ミサイルの追尾を引きつける。

そして、十分に引き付けた後、逆方向に加速。

ミサイルの直撃を受けた。

 

《こちらフィーンド5!ブースタの逆噴射が前回試験時より鈍い!あと、オートパイロットの操縦補正が邪魔だ!》

《そんなはずはない!装甲車のミサイルは十分にオートで回避できたんだぞ!》

「…………」

 

管制室とMTパイロットの唾の飛ばし合いを聞きながら、ソラはシートに背中をもたれた。

回避の試験を頼んできた割に、クレストの新型高機動MTの動きはあまりにもお粗末だった。

もしかしなくても、腕利きの乗ったスクータムの方が遥かに上手く避けるだろう。

結局、フィーンド4号機と5号機は整備ハンガーに戻っていった。

 

《すまん、レイヴン。とんだ失態だ……》

「いいけど、攻撃テストはどうなってるんだ?」

《ああ……そちらは順調なようだ。バーストパルスガンもデュアルミサイルランチャーも、上手くACを捉えている》

「なるほど」

 

つまり、アップルボーイは良い的にされているということだった。

 

「エスペランザ。こちらストレイクロウ。調子は?」

《……くっ!この新型機、すごいですよ!特にパルスの連射が!ミサイルも回避がきつくて……!》

「そうか。相手がパルスガンを構えたら、機体を大きく、不規則に左右に振り回してみろ。パルスは、目視してからの回避は難しいだろ。反射でかわそうとするより、FCSの偏差ロックを攪乱するように動く方が結果的に回避しやすいはずだ」

《……あ、なるほど!やってみます!》

「それとミサイル。ギリギリまで引きつけたら、一気にブースタを切り返せ。それで通常の追尾弾頭ならほぼやり過ごせるから」

《そんな手が!ありがとうございます、ソラさん!》

 

純粋な感謝の言葉に、ソラは頭をかいた。

同じ年頃のレジーナが異常に練達しているから考えなかったが、そう言えばアップルボーイも本来はまだ学生の年齢だ。

まともな操縦訓練もアドバイスも受けたことがないまま、完全な我流でここまでやってきたのだろう。

逆に言えば、それでもE-3に上がってこれているのだから素質は十分にあるはずだった。

 

《すまん待たせた、レイヴン。再び距離400から、フィーンド4へのライフル射撃を再開してくれ》

「了解、さっきと同じく規則的に撃つぞ」

《頼む》

 

管制室と通信し、また出てきたフィーンド4号機にライフルを3度撃った。

フィーンドは1発目をかわし、2発目は当たったが、3発目も上手く切り返して回避に成功した。

さっきよりも確実に機敏に動いている。

 

《やったぞ!かわせるようになった!》

《うむ……オートを完全に切ったマニュアル回避ならば、か。だがこれでは結局、熟練パイロットしか生き残れない機体になってしまう。このままロールアウトすれば、生存率の低い従来のMTと同じだ……》

《しかし管制室、現状のAI補助技術ではこれが限界では?》

《それではいかんのだ!フィーンドは双発式大型ブースタに細身の胴体と、全身がバイタルポイントの塊だ。スクータムのように堅牢なフレームでない以上、1発でも直撃を受ければそれで戦闘不能になってしまう可能性が高いし、パイロットの生存率にも……》

《いっそ被弾時にブースタを切り離して、地上戦に対応できる仕様にするというのは?》

《そうなれば今度は脚部の姿勢制御バーニアが邪魔になる!……いや待て、ミラージュのカバルリーのような一撃離脱を、空中から地上に降りたって行うというのは……?今のフィーンドとはまったく別のフレームが必要だが、管理者に設計を提案してみる価値は……おい、メモとペンを取ってくれ!》

「……なあ、回避訓練の続きは?」

《ああ、すまん!次はミサイル回避だ!フィーンド5に対しておこなってくれ!》

「企業の開発部ってこんな奴らかよ……傑作機じゃなかったのか?MTの設計図は管理者から貰ってるはずだろ……」

 

ソラは少しうんざりしながら、入れ替わりに前に出てきた5号機にミサイルを撃った。

1発目がかわされ、2発目もかわされ、3発目は当たった。

 

《……ダメだ、管制室!マニュアル回避はなんとか出来るようになったが、やはりオート回避プログラムでは回避できん!》

《いや……それはおかしいぞ。前の試験では、装甲車のミサイルは十分にオートでかわせたんだ。ACのミサイルであってもそこまで性能が変わるはずが……》

《だが、実際にかわせていないぞ!》

《ちょっと待て!さっきの回避ログを再生する…………そうか、やはりカメラが飛来するミサイルの軌道を正常に認識できていない。オートフォーカスシステムが、ACのジェネレーターが発する防御スクリーンの影響を微弱ながら受けているとしたら……?FCSならば無視できる影響でも、回避プログラムでは無視できないのか……だが、現行のAI技術でそんな影響を自動で補正することは……》

《スケール認識に切り替えて、一定スケール以上の認識をオートフォーカスから外せばいいのでは?》

《……ダメだ!そうすると、今度は回避行動中にFCSが敵機をロックできなくなる!それでは機動兵器として欠陥品だ……そもそも回避と攻撃を同時に処理すること自体が問題か?ACのコア迎撃システムの構造流用をしているから理論上は問題ないはずだが……こうなったら回避周りのシステムを一から再構築し直すしか……クソッ!我々のフィーンドは、このままでは……このままでは……!》

 

ダンッ、と机を叩いた音が、通信機の向こうから聞こえてきた。

ソラは試験場の床を眺めながら、次に買うパーツのことを考えていた。

やはり、脚部か。積載量でいえばミラージュの"SS/ORC"だと思ったが、これはレジーナが使っていたはずだ。

あいつと構成が被るのもな、と思っていた矢先、何やらヒートアップしていた管制室から通信が入ってきた。

 

《……レイヴン、ご苦労だった。回避テストはこれで一旦終了とする》

「え、もう?というか模擬戦になってないだろこれは」

《非常に有意義なデータが取れた。はぁぁぁぁ~~……あーあ。礼を言う》

「いいのかよ、終わりで……」

 

この世の終わりかのようなため息と投げやりな感謝が、通信機から漏れ出てきた。

ため息を吐きたいのはこっちだと言いそうになったのをソラはこらえ、攻撃テストの標的役を務めるアップルボーイの見学に向かった。

こちらでは、比較的まともな訓練が続いていた。

フィーンド3機が順番に繰り出すパルスやミサイルを、エスペランザが躱している。

 

《よし、パルスのデータは十分取れた!次は距離450、最大射程だ!ミサイルだけの訓練になるぞ、レイヴン!》

《はい、いつでもどうぞ!》

 

アップルボーイのエスペランザはセオリー通りにミサイルを引きつけ、一気に逆方向に加速する動きで、ミサイルを上手く避けていった。

フィーンドのデュアルミサイルも中々しつこく追尾しているが、中量二脚ACの運動性を捉えるほどではない。

先ほどのちょっとしたソラのアドバイスだけで、アップルボーイは短時間の間にミサイルを躱しきれるようになっていた。

 

《いいぞ、いいぞレイヴン!有意義なデータが取れているぞ!この回避運動をAIに学習させれば……!》

《ありがとうございます!僕も、どんどん上手くかわせるようになってきました!》

「やるなぁ、あいつも……レジーナといい、俺より年下なのによ」

 

ソラは端っこで自分のACを休ませながら、ミサイルを回避しようと必死に躍動する赤いACを眺めていた。

あのアップルボーイも、いずれ依頼かアリーナでかち合うことになるかもしれない相手だ。

本当は、塩を送るべきではなかったのかもしれない。

だが、そのひたむきなACの動きを見ていると、ソラにも過去の思い出がよぎった。

 

先輩傭兵のスパルタンに見出され、借り物のスクータムのコクピットで必死に操縦桿を握っていた頃のことを。

スパルタンの乗るスクータムを相手に、何度も何度も罵声を受けながら、砲弾を避けたりシールドで受ける訓練をさせられた。

死と隣合わせの厳しい訓練だった。だが、今となっては自分の操縦技術の根幹を形作っている、大事な思い出だ。

蘇った懐かしい記憶に笑みをこぼし、ソラはつい偽物の空を見上げた。

 

「こうやって、皆、進歩していくのかな……」

 

結局、ロクに攻撃を回避できずにペイント弾の黄色に染まったフィーンド。

パルスにもミサイルにも順応し始め、ACを振り回せるようになってきたアップルボーイ。

そして、また1つ変わった依頼の経験ができたソラ。

 

人間も、機械も、こうして進歩していくのかもしれない。

たとえその進歩が、管理者の掌の上だったとしても。

見上げた空が、偽物の空でしかなかったとしても。

 

《レイヴンっ!レイヴンすまん!もう一度回避テストに付き合ってくれ!今度はいい結果が出せそうだ!早く!この入力データを検証せずに君を帰すわけにはいかん!》

「……はいはい、了解了解」

 

ソラは、鼻息を荒くして通信機から喚き散らしてくる管制室に応じ、また回避テストに付き合うのだった。

 

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