ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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今回はバズーカと投擲銃です。
OXのゲームでの順位はC-13ですがゲーム本編とは違いCランク上位が何人か死亡しているためC-10になっています。


VS C-10OX

下水道調査の翌朝。

ソラは専用住居のリビングで報道を見ながら、先輩傭兵のスパルタンに連絡を取っていた。

 

《よぉ、ボウズ。ニュース見てるぜ。蜘蛛騒動もようやく終わりそうだな》

「……ああ。旦那に見せてやりたかったよ、超大型の化け蜘蛛。ACの数倍はデカかった」

《ははぁ、その言い方じゃ、あいつらの親玉仕留めたのはお前かよ。やるじゃねえか、レイヴン様》

「……まあね」

《んだよ、その割に元気ねえな……で、用件は何だよ?また依頼の僚機か?》

「いや、なんていうか……旦那の声が聞きたくて」

《はぁぁ!?》

 

携帯端末の向こうで、スパルタンの野太い声が裏返った。

 

《ばっきゃろー!気持ち悪いこと言うな!俺はお前のカノジョかママか!?》

「冗談だってば、ははは……」

《…………》

「…………」

《…………あー分かった分かった。おおかた、知り合いの腕利きが作戦中に目の前で死んだってところか》

「っ!」

《慰めは言わねえぞ。俺はお前に教えたはずだぜ。引きずったら死ぬぞって》

「……分かってるよ」

 

歴戦の傭兵は、ソラが連絡した理由をすぐに見抜いた。

とはいえ、ソラ自身も別に、慰めや励ましが欲しかったわけではない。

ただ、自分の中の言葉に出来ない部分がスパルタンという男の声を聞きたがったのだった。

 

《……なーんて言うが、戦友が死んで一切気にしないってのもクソ野郎みたいでクソだな。いいんじゃねえの、落ち込む時は落ち込めばよ》

「引きずったら死ぬんじゃなかったのかよ」

《そうだ。次の戦場にも、そんな落ち込んだ気分で行けば死ぬ。当然だ。けど、死を悼んでやるのは別にいいだろ。俺だって知り合いがおっ死んで呑んだくれたこと山ほどあるぜ。アジャンテだろ?マスチフだろ?》

「マスチフって。マスチフさん死んだ時、目の上のたんこぶが消えてせいせいしたって言ってたじゃねえか」

《ばっきゃろー。男ってのはそう簡単なもんじゃねえんだ。俺とあの人がどれだけ長い付き合いだったか。あそこまで長く張り合ってたのは、他にはパイソンの野郎くらいだ》

「はぁ……そうかよ」

《そうだよ。……まあ、あれだ。月並みな言い方になるが、死んだ奴はもう生き返らねえ。どんな夢や目標や任務があろうが、死ねばそれで終いだ。なら、お前に出来るのはそいつが稼ぐはずだった分まで稼いでやることだけだろ》

「……分かってるよ」

《ならよし。もうくだらねえ電話してくんなよ。ははは》

 

そう言って笑うスパルタンの声は、とても柔らかかった。

 

《ったく。朝っぱらにかけてきたかと思えば、湿っぽい話させやがって。言っとくが俺スクータム買い直したんだぞ?この前の害虫駆除で穴だらけのスクラップになったからよぉ。これで明日にでもレイヴン試験のメール来たら、俺は買い替え代丸損か?》

「じゃあ来ないんじゃねえの。そのまましばらくスクータム乗っとけよ」

《ざけんなっ!あー早くレイヴンになりてえ!美人オペ子に『スパルタンさん、今日もお疲れ様でした!ちゅっ』って言ってほしい!》

「そっかー。じゃあな、あんま朝から呑むなよ」

《やだね、呑む!蜘蛛騒動一件落着祝いだ!わははは、たまにはお高い奴開けるか!》

「ははは……」

 

どたどたと端末から離れて冷蔵庫に向かったらしいスパルタンに苦笑をこぼし、ソラは携帯端末を切った。

 

「……ありがとう、旦那」

 

それから、ソラも冷蔵庫に酒を取りに行った。

別にアルコールに溺れるためではない。

それは大蜘蛛騒動集結の祝いであり、デルタ1への弔いであり、あるいは自分は絶対に生き抜いてやるという誓いであり。

つまりは、けじめをつけるための一種の"儀式"のようなものだった

 

そして、その儀式を終えた直後。

管理者からメールがやってきた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

FROM:管理者

TITLE:アリーナ参加要請

 

D-2ランカー"ソラ"に、アリーナにおけるオーダーマッチへの参加を要請します。

対戦相手は、C-10ランカー"OX"となります。

 

勝利報酬:67,000C(別途褒賞あり)

 

参加手続きを専属補佐官に確認し、指定の日時にアリーナ用調整ガレージA-2へ出頭してください。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

………

……

 

 

アリーナの試合を控え、ソラはいつも通りブリーフィングルームでレインと通信を繋いだ。

ソラがアリーナに参加するのは、ルグレン研究所の任務で入院して、正体不明生物の駆除に追われてと色々あって、かれこれ1ヶ月ぶりである。

 

「久々のアリーナ戦だな。しかし、害虫駆除は一段落ついても停電騒ぎその他は収まってないのに、アリーナだけはきっちりやるんだな、管理者の野郎」

《それが……実はそういうわけでもありません》

「え?」

 

ソラがついこぼした皮肉に、レインが思わぬ返答を返してきた。

 

《レイヴンはあまりアリーナの配信を見ないでしょうからご存じないかもしれませんが、実はここ最近、管理者の組むオーダーマッチの開催傾向が変わってきています》

「傾向が?どんな具合にだ」

《開催頻度は週に数回で変わりませんが、上位ランクのマッチングがなくなりました。このCランク以下でしか、試合が組まれなくなっているのです》

「妙な異常だな。なんでそんなことに……」

《理由が無いかと言えば、一応は説明がつきます。ミラージュとキサラギのグラン採掘所争奪戦以降、レイヴンの死亡率が急激に高まってきているからだと思われます。レイヴンは定員制ですので、現役が1人戦死すればEランカーの新人が1人補充されます。オーダーマッチは、新人レイヴンが優先される傾向がありますので……》

「なるほど。それで必然的に最近のアリーナは下位のレイヴンばかりが戦う羽目になってるってことか」

《はい。ですが、それでもこれまでのローテーションから言えば、上位ランクがアリーナで戦うスケジュールは組めると思います。皆無になっている現状はどうにも説明が……》

「結局、こんなところにも管理者の何らかの不自然さが出てきてるのかもな」

《ええ……とはいえ、各地で頻発している異常現象に比べれば、グローバルコーテックスが現状受けている影響は微々たるものと言っていいかもしれませんが》

「依頼の逸脱性なんかも管理者が判断してるんだったよな?」

《その部分については、特に支障はないようなのですが……申し訳ありません、レイヴン》

「別にレインが謝ることじゃない。……まあ愚痴言っても仕方ない、アリーナの話するか。報酬が出る以上、頑張らないわけにもいかないしな」

《……はい》

 

レインが対戦相手の情報をまとめたデータを送信してきた。

ブリーフィングルームの備え付け端末に表示されたのは、青い四脚型ACだ。

 

《今回の対戦相手は、C-10ランカー"OX"です。武器構成は……武器腕のバズーカと高出力イクシードオービットのみですね》

「ずいぶんと潔い構成だな。肩に積んでるのは、俺がこの前キサラギに貰った追加弾倉か」

《はい。調べたところ、OXのAC"パルテノン"はかつてはライフルとチェインガンを装備した機体で、ランクもCランク上位で安定していましたが、一度Bランクとの戦闘において現在の武器腕バズーカを使用。勝利して以来は、ずっとこの武器腕をメインとしたアセンブリを構築しているようです》

「武器腕バズーカね……なんかやたらチーフが好きでな。飽きるほど聞かされたよ。4発同時発射モードの瞬間火力はあらゆる武器の中でもトップクラスだとか」

《ええ。試合に関してもかなり大味な展開になることが多く、1回の砲撃の当たり外れがそのまま勝敗に直結する展開も少なくありません。最近は勝ち星に恵まれず、ランクを落としてきていますが……》

「Bランクに1回勝ったせいで、病みつきになってんじゃねえだろうな……まあ、いいや。なら、バズーカにはバズーカで勝負してやる」

《……この試合に勝てば、いよいよCランクですね》

「ああ。勝つから、見ててくれよ」

《はい。……ちゃんと見ています》

 

ソラはレインとの通信を終えて、ガレージに向かった。

整備班を集めてアリーナの対戦相手と今回の武装構成が決まったことを告げ、機体の調整を依頼する。

バラバラと己の持ち場に散っていく面々の中、チーフのアンドレイだけはでんとその場で腕組みをして構えていた。

 

「どうしたんだよチーフ」

「うむ……ついにあやつとの対戦が決まったか」

「OXと知り合いなのか?」

「いや別に。じゃが、その戦いぶりはよう知っとる」

「はぁ」

「奴は"鉄の闘牛"の異名で知られるアリーナ随一の暴れん坊よ。ワシのイチオシレイヴンじゃ」

「はぁ」

「ロマンが分かる男じゃ。両肩に追加弾倉を背負ってまで腕バズの必殺に賭けるあの漢気!一人の男として、この勝負を受けないわけにいくまい」

「はぁ……」

「ということで腕バズ買わんか?」

「買わねえ」

「何でじゃい!?」

「うぐぐ、趣味に合わねえしそもそも使いづらそうだし、ていうか今買っても戦闘までにテストできねえだろうが!」

「そこをなんとか!」

「いだだ、今回はバズーカで戦うからそれで勘弁してくれ!」

「いやじゃー!腕バズ欲しいー!」

 

アンドレイは見かねた整備士達によってつまみ出された。

 

「げほっ……"鉄の闘牛"ね。なんかこの前のパイソンも猛牛がどうのって言ってたっけ。流行ってんのかな、牛……」

 

携帯端末に表示させた、対戦相手の開示情報。

角を突き出した雄々しい牛のエンブレムを眺めながら、ソラは呟いた。

 

 

………

……

 

 

ビーーーーーーー。

 

アリーナ開戦の合図と共に、戦場に滑り出たソラのAC"ストレイクロウ"。

右腕にはバズーカ、左腕には投擲銃を装備した、高火力戦特化の武装構成だ。

まずは敵の出方をと思った瞬間、バズーカの砲弾が2発並んで真っ直ぐに飛来してきた。

 

「っ、いきなりだな!」

 

ソラは咄嗟に操縦桿を操り、先制攻撃を回避して息を吐いた。

開示情報から、遠距離攻撃用のFCSを装備していることは分かっていた。

だが、バズーカの遅い弾速を考えれば、距離を開けての射撃はあまり利口とはいえない攻撃である。

それでも対戦相手"OX"のAC"パルテノン"は構わずに、開幕から間断なく武器腕のバズーカを撃ち込んできた。

絶えることのない砲撃の連打に、ソラはアリーナの戦場に飛び込んで早々回避行動の連続を強いられる。

こちらのFCSは、まだ相手を捉えてすらいない。

"闘牛"の異名に相応しい、あまりにも荒々しい攻めだ。

 

「弾切れなんか怖くないってか……負けてられるか!」

 

攻撃を通して伝わる対戦相手の気迫に、負けじとソラも猛った。

フットペダルを踏み込み、ブースタを全開。

敵の捕捉をかわすように回り込みつつ、距離を詰めていく。

距離400。中距離用FCSが機能し始めた。だが、まだバズーカの間合いとしては遠い。

ソラは牽制のために肩部ミサイルと連動ミサイルを起動し、弾幕を放った。

素直な軌道のミサイルはCランクまで来るとさすがにまともに当たらず、相手は上手く躱しつつ自ら距離を詰めてくる。

距離300。互いに、良い間合いとなった。

 

「いくぞ、牛野郎!」

 

ソラは空中で機体を踊らせながら、携行バズーカと投擲銃を発射する。

榴弾は外れるも、バズーカが命中。だが、四脚ACの安定性ゆえか相手は体勢を崩さず、即座に腕のバズーカで反撃をかましてきた。

2発ではない、4発同時発射である。

適度にバラけた大口径砲弾がストレイクロウの頭上をかすめていく。

これだ。

ソラは一瞬息を止め、ぐっと警戒を強めた。

バズーカは1発でもライフルやマシンガンとは比較にならない破壊力を持つ。

それが4発同時に発射されるのだ。

至近距離でまともに浴びれば、戦闘の流れは即変わるといっていい。

 

「っ!」

 

ソラが機体を着地させ、敵の武器腕の砲口に集中しようとしたその時、パルテノンの重量級コアが自律砲台イクシードオービットを射出した。

青白い高出力レーザーが飛来、反射的に反応して避けたストレイクロウの足元を焦がす。

レーザー回避のために動きが直線的になった瞬間、敵の武器腕バズーカが火を噴いた。

4発のうち、3発が命中。APが1000以上、一気に吹っ飛ぶ。

 

「やるな、そうこなくちゃ!」

 

自律砲台で気を逸らし、高火力砲撃を叩き込む。

パルテノンの攻めはとても分かりやすかった。

しかし、それだけに洗練されている。

これで勝つと決めた戦い方なのだろう。

確かに潔く、真っ直ぐだ。アンドレイが褒めるのも頷ける。

だが、それでも。いや、だからこそ。

ソラも全力で相手にぶつかり、叩き潰してやろうといきり立った。

 

「今度はこっちが!」

 

またも放たれた砲弾の群れを避け、お返しに両腕の武装を叩き込む。

距離200。

互いに、とても射撃を見てからかわせる距離ではない。

この距離で重要なのは、相手に撃たせずに自分が撃てるような、立ち回りの精度である。

ソラは操縦桿をひねりながら、機動力重視の脚部"MX/066"の力を存分に活かした。

敵の追尾を振り切りながら側面に回り込み、2丁拳銃を当てる。

さすがにバズーカだけではなく榴弾も同時に浴びれば、パルテノンの四脚も一瞬動きが止まった。

そこにつけ込み、さらに回り込んでいって、砲撃を当て続けた。

 

パルテノンの四脚は、武器腕で割を食った防御力を補うように重量級が選択されているため、同カテゴリの中では旋回性が低い。

加えて、遠距離特化のFCSでは至近距離で激しく動く相手を、まともに捕捉できようはずもない。

至近に張り付くストレイクロウに追いつけないまま、敵ACは武器腕バズーカを苛立ったように虚空に放った。

とはいえ、そんなこけ脅しで距離を取るソラではない。

ひたすらしつこく旋回戦に持ち込み、丁寧に自分の攻撃を当てていった。

 

「っと!……退いたか、上手いな……!」

 

不意を打つイクシードオービットの射撃をソラが避けた瞬間、パルテノンは素早く一気に後退した。

距離を離しきらない程度に離し、またも4発同時発射のバズーカ砲弾をばら撒いてくる。

集弾性の低さが幸いしているのか、ある程度捕捉して撃つだけでも時折1発か2発がソラのACに当たり、APを削った。

だが、ほぼまぐれ当たりに近い射撃は、長続きしない。

ソラは再び回り込むように距離を詰め、今度はミサイルの束を放った。

突然迫った誘導弾にパルテノンの動きがおざなりになり、かわすのに集中して砲撃の追尾が途切れる。

好機と、ソラはまたも旋回戦の間合いに入った。

敵のAPは既に2000を切っている。こちらはまだ、5000以上。

 

「観念しろ!」

 

ソラは最後の攻めをしかけていった。

敵ACも、意地を見せようと粘る。

パルテノンは旋回でストレイクロウを追いかけるのを諦め、オービットをしまってブースタで宙に飛んだ。

武器腕バズーカをもはや撃ちっ放しにして、ソラの接近を強く拒絶する。

ヤケクソのような砲撃だが、これだけ距離が近ければ少なからず効果はある。

ソラはあと少しのAP奪取を追い求める内に、いくらか被弾した。

それでもソラは、既に勝利を確信していた。

冷静に敵をロックサイトに納め、バズーカ砲と投擲銃を同時にかます。

クリーンヒット。空中で体勢を崩したパルテノンが、無様な姿勢でドスンと着地した。

これで最後。ソラは締めのバズーカを見舞い、敵のAPを削りきった。

 

ブォーーーーーーー。

 

戦闘終了を告げる、いつものサイレンの轟音。

ストレイクロウのモニターにひと月ぶりに、『WIN』の文字が景気よく躍った。

 

「はぁー……よし。これでCランクだ!いい勝負だったぜ」

 

モニターの向こうで煙を噴き上げる"鉄の闘牛"の健闘を讃えながら、ソラは額の汗を拭って笑った。

 

ついにCランクに上った。

誰にも文句は言わせない、名実ともにひとかどのレイヴンである。

 

普段のあれこれを忘れ、今はただ、ソラは勝利の美酒に酔いしれた。

 

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