ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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あの人が再登場します。
今回はレーザーライフルとブレード装備です。
色々変わってますがフレーバー程度ですので、武器以外は一切気にしなくても大丈夫です。

右腕部武装:MWG-XCW/90(90発レーザーライフル)
左腕部武装:CLB-LS-2551(緑ブレード)
右肩部武装:MRL-RE/111(多機能型肩レーダー)
左肩部武装:CWM-S60-10(10連小型ミサイル)
エクステンション:CWEM-R20(4発発射連動ミサイル)

頭部:CHD-02-TIE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAM-11-SOL
脚部:CLM-03-SRVT

ジェネレーター:MGP-VE905
ラジエーター:RMR-SA77
ブースタ:MBT-OX/002
FCS:AOX-F/ST-6
オプショナルパーツ:OP-S-SCR(実弾防御上昇)、OP-E/SCR(EN防御上昇)、OP-E/CND(ジェネ容量増設)、OP-L-AXL(ロックオン時間短縮)、SP/E++(EN武器威力上昇)


重要物資移送

ソラがCランクに昇格した2日後。

専用住居に併設されたガレージには、かつてないほどの量のパーツコンテナが運び込まれていた。

山と積まれた資材の前で、ソラとアンドレイが大量のマニュアルをめくりながら納品を確かめる。

 

「えー、重装甲中量二脚の"03-SRVT"、エクステンション四連動ミサイル"R20"、多機能型レーダー"RE/111"、最新型高出力ブースタ"OX/002"、緊急時重視型ラジエーター"SA77"……ずいぶん買い込んだのう」

「一連の害虫駆除とアリーナでだいぶ資金が溜まってたからな。どの部位も選択肢を増やそうと思ってたのもある。あとチーフ、これも追加だ。はいマニュアル」

「ん?おおっ!ワシの推しとった重フロート"SS/REM"!そうか……ようやくお前さんもフロートデビューか」

「特殊任務があった時用だ。この前のアビア湾に呼ばれた時みたいにな。常用する気はあんまないよ」

「ええわいええわい。じゃが、テストはみっちりしとけよ。フロートの挙動は二脚のそれとはまるで違うぞ」

「分かってる。悪いな、一気に買い物して。午後からはさっそく新装備のテスト地獄だ。メカニックは忙しくなるかもな」

「構うもんかい。こういうのは"やりがい"っつーんだ。なあ、テメエらっ!!」

 

チーフが振り返ってしわがれた声を張った。

おうっ、と威勢のいい声がガレージ中から帰ってくる。

相変わらず、士気の高い整備班である。

ソラにとっては、縁の下の力持ちとも言うべき頼れる仕事仲間達だ。

 

「さてと、これで買いたいもんは買ったし、また小金持ちは卒業だ。使った分、みっちり稼がないとな」

「レイヴンらしい生き方しとるじゃねえか。けど気持ちは分かるぜ。パーッと有り金使う時の心地よさと来たらな」

「アリーナ賭博と一緒にしないでくれよ」

「うむ、だがこれでお前さんも早々とCランクレイヴンか……」

「ああ、おかげさまでな」

「このランクでも飛び級のオーダーマッチが組まれるなら、お前さんはまごうことなき本物だ。気張れよ」

 

ぽんとソラの肩を叩いてくるアンドレイ。

髭もじゃでしわくちゃの顔面は、抑えきれない笑顔で綻んでおり、確かな信頼を感じさせる。

 

「ああ、頑張る。……チーフが俺以外に賭けないようにしないとな?」

「うぐっ、その話はもうええだろ!ワシは"鉄の闘牛"の大ファンだったんじゃ!」

 

アンドレイが笑みを崩してしかめ面を浮かべて絆創膏を張った鼻を弄り、まるで子供のようにそっぽを向いた。

先日のCランク昇格祝いの宴会で知れ渡ったことだ。

メカニックチーフともあろうものが、整備士の密かな伝統を破り、担当レイヴンではなく対戦相手のレイヴンに賭けていたのである。

当然、他の整備班からもソラからも追及され、タコ殴りの憂き目にあっていた。

 

「まさか、大のベテランメカニックとあろうものがねぇ。俺は傷ついたぜ」

「ううう、おのれだってOXの戦い方を称賛しとった癖に……」

「ははは。確かに、相手の戦い方は男らしくて派手だったよ」

「じゃろう?ということで次買うのは腕バズな!」

「却下」

「なにを~?わはははははっ!」

 

忙しくコンテナの中身を改め始めた整備班の前で、アンドレイはいつもの大笑いをした。

やれやれ、と言った顔で首を振るソラ。

ガレージは今日も、賑やかで活気に満ち溢れていた。

 

 

………

……

 

 

翌日。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

第三層第一都市区セクション518から、セクション517にある我が社の研究施設へと向かう、輸送部隊の護衛をお願いします。

 

積荷は近年我々クレストが研究を続けてきた、新合金のサンプルです。

この合金は兵器開発を始め、様々な分野への応用が可能な極めて画期的なもので、実用化されれば莫大な利益が期待されます。

それだけに、このサンプル完成にこぎつけるまでには多大なコストがかかっています。

 

しかし、ここ最近頻発している、地下組織によるレイヤードの異常によって、この合金を研究していたセクションの閉鎖が決定し、物資の移送を余儀なくされてしまいました。

この合金については、これまでの研究過程において、幾度となく妨害工作を受けています。

今回の移送に関しても見通しの悪い都市部とセクションゲートを通過して行うため、敵の襲撃が十分に予想されます。

万一にもこの合金が他社の手に渡ることだけは、避けなければなりません。

 

輸送部隊を狙う者が現れた場合、これを速やかに排除してください。

 

よろしくお願いします。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

《レイヴン、依頼主はクレスト社です。作戦区域は第三層第一都市区セクション518から517への輸送ルート。成功報酬は30,000C》

「久々にまともな依頼って感じだ。最近は害虫駆除ばっかだったからな。レイン、予測戦力はどうなってる?」

《敵戦力は……不明とされていますね。現れない可能性もありますが、その場合でも輸送が成功すれば、報酬は満額支払うとのことです》

「セクション封鎖時はとにかくゴタゴタするだろ。クレストの監視の目をすり抜けてくるのは容易だ。メッセージ通りの重要物資なら、まあ敵は来るだろうよ。だけど……」

《どうしましたか?》

「いや……」

 

ソラは口ごもった。

クレストからの依頼のメッセージには、はっきりと『地下組織によるレイヤードの異常』と書いてあった。

最近頻発している多くの異常事態を、クレストは地下組織の暗躍によるものだと断じているようだ。

つまりそれは、入院中のソラにも連絡を寄越してきたあの組織――

 

《……文中で暗に仄めかされている、"ユニオン"のことですか?》

「……ああ。クレストらしいといえばらしいが、随分はっきりと断言するんだなと思って」

《そうですね……ユニオンの暗躍と断ずるには、最近のレイヤードの異常はあまりにも規模が大きすぎますが》

「……いや、いいさ。依頼自体に、不審な点はない。受けるよ。レイン、各手配を」

《分かりました。それと、今回クレストは僚機雇用について予算を設けるとのことですが》

「候補者リストを。……ん、今回はレイヴンもありか」

 

レインから送信されてきたリストに、ソラは目を通した。

予算枠15,000Cで、EランクレイヴンからMT乗りまで、多様なタイプの傭兵がリストアップされている。

僚機を雇わなければ、その分の報酬を上乗せするとも記載があった。

しかし、今回は輸送の護衛だ。敵に数で押された場合、自機だけで守りきるのは至難だろう。

出来れば、自分と同じレイヴンがよかった。

それも、信頼できる腕の持ち主が。

 

「ビルバオはうーん……カスケードって奴は知らない……E-2のゲドだな。過去に協働しているから連携が取りやすいし、ACの索敵能力や火力も知ってる。レイン、ゲドに連絡を」

《了解です。ではレイヴンは、いつも通りガレージで待機をお願いします》

「ああ」

 

ブリーフィングを終え、静かになった室内でソラは椅子の背もたれに体重を預けた。

 

「……俺もついに、下位のレイヴンを使える側か」

 

実力で勝ちとった、Cランクレイヴンという地位。

その地位の高さを、ソラは改めて噛みしめた。

 

 

………

……

 

 

第一都市区の上空を飛ぶコーテックスの最新型輸送機が、セクション518へと入った。

機内には、ソラの"ストレイクロウ"とゲドの"ゲルニカ"の2機のACが搭載されている。

ストレイクロウの装備はレーザーライフルとブレード、そして肩部ミサイルとエクステンションの4連動ミサイルだ。

 

《そろそろクレストが指定した合流地点となります。ストレイクロウ、ゲルニカは出撃の用意を》

「了解。……頼んだぜ、ゲルニカ。モノレール防衛以来だな」

《うむ……しかし、お前はこの数ヶ月で見違えたな》

「え?」

 

輸送機に乗る際の挨拶以来、言葉少なに黙り込んでいたゲドが通信機の向こうで口を開いた。

 

《いつの間にか、Cランクとは。ふっ……すっかり立場が入れ変わってしまった》

「……色んな経験が出来たからさ。あんたや他のレイヴンと協働したり戦闘したり、そういうのが糧になってる」

《殊勝な態度だな。だが、年季だけは一人前の傭兵からの賛辞だ。素直に受け取れ》

「……分かった。ありがとう」

《よし、ゲルニカ出るぞ》

 

特徴的な武器腕拡散レーザーを装備した赤い逆関節ACが、輸送機から飛び降りていく。

ソラも鼻を擦り、すぐ後に続いた。

合流ポイントはクレストの研究施設の門前。

重装MTスクータムの部隊に守られたトレーラーの群れが待っていた。

 

《護衛のレイヴンだな。このセクション518から、隣のセクション517の研究所に向かう。よろしく頼む》

「ああ。ルートはどうする?」

《隊長機が先導するから、周辺を固めてくれ》

「ストレイクロウ、了解」

《ゲルニカも了解した》

 

簡単な打ち合わせの後、輸送部隊がセクション518の市街地を進み始めた。

輸送トレーラーの速度に合わせた進軍である。

ACやMTにとってはかなり鈍く、長丁場となることが予想された。

 

《ストレイクロウ、索敵は主に俺のゲルニカが行う。だが、そちらもレーダーのステルスセンサーは起動しておけよ。奇襲があるとすれば、ステルスMTの可能性が高い》

「分かってる。レーダー最大範囲表示、ステルスセンサー起動。……さあ、どこで仕掛けてくる?」

 

新調したレーダー"RE/111"の設定をコンソールで弄りつつ、ソラはACの足を動かして輸送部隊に随伴させた。

脚部も中量二脚としては重装甲の"03-SRVT"に変えてあるが、それでも輸送トレーラーの速度程度なら、歩行で十分についていくことが可能だった。

輸送部隊は先頭を走行する隊長機のスクータムに続く形で、研究施設から伸びる大通りを真っ直ぐに進み、やがて大きな交差点に出た。

そこでスクータムが交差点を右に曲がろうとして、少し足を止めた。

 

《なんだ、どうした?なぜ止まる》

《……レイヴン、警備部隊から通信が入った。市民の暴動だ》

「何?」

 

立ち往生する隊長機に追いつき、ソラがACの頭部カメラを進行方向に向けると、確かに大通りの奥に市民の一団がいた。

数百人規模の市民の集団が旗や横断幕、あるいは鉄パイプやスコップを手に携え、クレーン車や一般車両を持ち出して、騒ぎに騒いでいる。

クレストの警備部隊と衝突しているようで、無数の煙が上がっていた。

 

「セクション封鎖への抗議か……まあ、当然の反応だ。どうするんだ?」

《俺に言わせれば、この手の輸送を行う際は、事前に人払いや交通規制をするものだがな。さすがにセクション封鎖と同時並行では無理があったようだな》

《くっ……本社に問い合わせる。レイヴン、少し待ってくれ。トレーラーは走行停止だ》

 

輸送部隊が往来に立ち往生し、本社からの回答を待った。

待機の間にもソラとゲドはACを近隣の建物の屋上まで飛ばし、カメラとレーダーの両方で索敵して警戒する。

敵影は一切なし。そうこうしている内にオペレーターのレインから通信があった。

 

《……レイヴン、クレスト社より通信です。ルート変更はしない……とのことです》

「何だって?暴徒の中を突っ切るってのか?」

《それが……ACで先行し、市民の暴動を牽制するように、と》

《ちょうどいいから鎮圧にACを使おうというわけか。馬鹿げた命令だな。そもそも、輸送部隊の護衛という依頼の趣旨とかけ離れている。オペレーター、報酬の上乗せを提案しておけよ》

《……そうですね》

 

レインもゲドも、不平そうに声を低めた。

ソラも思わず舌打ちを漏らす。

ルート上の暴動の鎮圧など本来は警備部隊の仕事であり、ゲドが言うようにクレストが事前に済ませておくべきことなのだ。

これも、セクションの封鎖事業と並行して重要物資の移送をするという忙しさから言えば、仕方のないことなのだろうか。

 

「やるのかよ、ゲルニカ」

《やるしかないな。まあ、発砲もいらん。適当に目の前まで突っ込めばいい》

「はぁ……仕方ないか」

 

輸送トレーラーが再び移動を開始した。

ストレイクロウとゲルニカは大通りをブースタを吹かして先行、暴動を起こす市民の群れへ一気に迫った。

ソラのコクピットモニターに、突然のAC登場に慌てふためく市民達が映る。

先ほどから傍受していた怒りの叫びが一瞬で恐怖の悲鳴に変わり、蜘蛛の子を散らすように数百人の人間が慌ただしく逃げ回り始めた。

クレストの警備部隊も怯えたように足早に道路脇へ避難していく。

当然である。最強の機動兵器であるACが突如、2機も暴動の最中に現れたのだ。

そんな異常事態に狂騒が長続きするわけもなく、騒がしかった大通りは一瞬で静まり返った。

 

「そりゃそうだろ……俺でも逃げるわ」

《レイヴン、すまんが路上に放置された車両が邪魔だ。道路脇に寄せてくれ。トレーラーの邪魔になるから、破壊は厳禁だ》

「……了解」

 

市民がバリケード代わりに置いたクレーン車や一般車両。

それらを、ソラとゲドは黙々と処理した。

クレーン車はACの腕部で押すようにして寄せ、一般車両は大通りの脇に蹴り飛ばして排除する。

武装集団や企業の部隊を相手にする際には感じない、何ともいえない後味の悪さがあった。

通信機の向こうで、レインが悩ましそうに小さく息を吐いた。

 

《進路クリア。レイヴン、協力に感謝する。この大通りを真っ直ぐ進めば、517へのセクションゲートだ。ここからが本番だぞ》

「……ああ」

《さっさと終わらせるぞ。輸送部隊を急がせろよ》

《う……分かった》

 

ゲドのドスのきいた通信に、クレストの隊長が圧倒されて呻いた。

不機嫌なのは、ソラだけではないらしい。

トレーラーの走行速度が上がり、ACやMTを随伴させながら大通りを進んでいく。

そして、セクションゲートがACの望遠カメラに映った時だった。

 

《む……敵影感知。数は8》

「ようやく来たか……レイン!」

《待ってください。都市部の管制システム経由で確認していますが、こちらでは捕捉できません》

「決まりだな。ステルスMTか。クレスト隊長機、敵襲だ」

《来たのか!?》

《我々レイヴンがやる。お前達はそのまま進軍を続けろ。何かあれば、こちらから指示を出す》

《た、頼んだぞレイヴンっ!この物資は奪われるわけにはいかんのだ》

 

ソラは気を引き締めつつ、ゲドのゲルニカと共に少しだけ輸送部隊から先行した。

索敵に優れたゲルニカが先に捉えていた敵影が、ストレイクロウのレーダー上にも表示され始める。

右に5、左に3だ。試しにステルスセンサーを切ると、それらの反応は消失した。

これではっきりした。やはり最新型のステルスMT。

つまりこの敵襲はおそらく、ミラージュによるものだ。

 

「ゲルニカ、左の3を頼む。俺は右の5だ」

《了解した。しかけるぞ!》

 

ソラはフットペダルを踏み締める。

ビル街をストレイクロウが高出力ブースタで駆け抜け、敵の潜んでいるビルの陰へと辿り着いた。

道路と建物の狭間がほんの少しだけ不自然に乱れており、かつ徐々にその乱れがACから遠ざかっていく。

光学迷彩機能を纏った、ステルスMTの挙動に違いなかった。

 

「見え見えなんだよ!」

 

レーザーブレードを発振。不自然な場所に向けてストレイクロウが左腕を払った。

高出力の緑色の刀身に切り裂かれたMTが、ボンと爆発して姿を現して沈黙する。

かつて立体駐車場で見た機体と同じだった。

 

《レイヴン、最近各地のミラージュの戦線で多く確認されるようになったため、コーテックスのデータベースにこの機体についての情報が入っています。重装型ステルスMT"フリューク"と言うそうです》

 

レーダー上の残りの敵影が、ゆっくりとだが輸送部隊に向けて動き始めた。

だが、遅い。スクータムがブースタを吹かしてもまだこれよりは速いという程度の速度だ。

ステルス機能を付与している分、機動性を確保できないのだろう。

これならば、十分に対処できる。

 

「一気に片づける!」

 

まず最も輸送部隊に接近している反応に向かった。

ビルの上に飛び乗り、そこからオーバードブーストで急行する。

着地した路地では、フリュークが姿を消したまま、ブースタを吹かして移動していた。

光学迷彩がブースタの噴射炎を隠しきれずにゆらめいていて、FCSでも位置を捉えることが出来る。

ACの登場に気付いたのか、ブースタを止めて、旋回し始めるMT。

だが、もはや遅かった。

ソラはレーザーライフルをマニュアル照準で撃った。

命中する度にもげた部位が、光学迷彩から切り離されてこぼれ落ちる。

3発目で、迷彩機能自体が解除されて、敵機は爆散した。

残り3機。

 

《敵機撃破。残り2》

 

ゲルニカから通信が入った。

次の敵反応へと向かう。2機が固まっていた。

輸送部隊が進む大通りへと向かう敵機の行く手をふさぐように、ACを躍り出させる。

フリュークは透明な状態のまま、レーザーとマシンガン、そしてミサイルを発砲してきた。

最新鋭の高級機らしく、MTとしてはかなりの重武装だ。

だがACの防御スクリーンを大きく削るほどの威力はない上に、攻撃のせいで姿を消していても位置が丸分かりだ。

ソラは肩部ミサイルと四連動ミサイルを起動し、敵の位置に向けてトリガーを引いた。

大量のミサイルがMT及びその周囲に着弾して爆炎を巻き起こし、噴き上がった煙で敵影がしっかりと炙り出される。

あとは簡単だった。ブースタで一気に接近し、2機ともにブレードで両断して処理を完了した。

 

《こちらゲルニカ、あと1機だ》

 

こちらも残り1機。最後の1機は他が餌食になっている間に、大通りに出ていた。

輸送部隊まで、距離500の地点。

ソラは再びビル街の上にACを飛翔させ、オーバードブーストを起動した。

すっかり慣れた強烈なGと共に景色が流れ、レーダー上の敵影に急接近する。

明るく開けた大通りにおいて、ステルスはあまり機能していなかった。

ぼんやりとだが、光学迷彩と周囲の切れ目が分かり、敵MTの位置が見てとれる。

ソラはオーバードブーストを切り、加速の慣性で流される機体を巧みにコントロールして、ステルスMTの頭に飛び乗らせた。

 

《ぐぁっ!?》

 

接触回線でMTのパイロットの断末魔が聞こえてくる。

ACに勢いよく足蹴にされたフリュークは爆散こそしなかったが、光学迷彩機能を解除して沈黙した。

念のためにレーザーブレードで、コクピットがあると思しき部位を焼き貫いた。

 

《ゲルニカ、敵機の掃討を完了。合流するぞ》

「ストレイクロウだ。こっちも終わった」

《レイヴン、見事な手際だ!さすがだな!》

 

崩れ落ちた敵機をオーバードブーストを使って道路脇に寄せていると、隊長機のスクータムが興奮した様子で通信を入れてきた。

フリュークはどうやら通信の傍受でステルス性が損なわれることを恐れてか、あまり連携が上手く取れないらしい。

移動速度も遅く、待ち伏せに特化した機体といってもよかった。

とはいえ、クレスト管轄セクションの市街地で奇襲をかけようとすれば、有効な手が限定されるのも確かだった。

新調した多機能型レーダーが早速役立ったことを密かに喜びつつ、ソラは輸送部隊の随伴に戻った。

ゲドも、セクションゲート間際で合流してきた。

 

《ゲートロック解除。輸送部隊の内、合金サンプルを搭載したトレーラーと隊長の私、及びAC2機が先行。後は待機だ》

《518セクションゲート開放中。セキュリティ維持のため、ゲートが閉じるまで517セクションゲートは開放できません。518セクションゲート開放中》

 

機械音声と共に開き始めたセクションゲートの狭い内部に、トレーラーと隊長機のスクータム、そしてストレイクロウとゲルニカが入った。

セクション518側の巨大なゲートがゆっくりと閉じていく。

閉じきった後に、セクション517のゲートロックが解除できる仕組みである。

第三層第一都市区の、古いセクション間を結ぶ地上ゲートではよくある仕様だった。

管理者か企業にロック解除権を付与された者が少数でしか、セクション間の地上移動をできないようになっているのだ。

これが比較的新しい第一層第二都市区になるとまた話は違ってくるのだが、この古めかしくも厳重なセキュリティ性から、わざわざ第一都市区に企業の施設が建造されることは珍しくない。

 

《レイヴン、セクション517はまだ封鎖もされてないクレストの管轄区だ。先ほど念のために、追加の護衛部隊も頼んだ。518での奇襲を切り抜けた以上、もうこの移送作戦は成功したも同然だ。517のゲートロックを解除する!》

《……随分と呑気な隊長だな。なぜ最悪の事態を想定せん?》

《え?》

《俺が襲撃側なら、このセクションゲートで部隊が分断される時を狙う。それも、最大戦力でな》

 

ゲルニカがそう言ってセクション517側のゲートが開き、全員が外に出た瞬間だった。

 

《……っ!レイヴン、クレスト本社から通信です!こちらに向かっていた護衛部隊が急襲されました!壊滅は時間の問題!敵はAC1機に、ステルスMT複数!》

《そら、来たぞ。どうする?》

《そんな……どうやってこっちにまで潜入を!?いや、それよりも今は……ど、どうすれば!?》

「どうもこうもないだろ隊長さん。企業がその気になれば、抜け道はいくらでもあるってことだ。レイン、研究施設と護衛部隊の位置を俺とゲルニカに送ってくれ。トレーラーは迂回してでも移動を開始した方がいい。ここで後続を待ってたら囲まれる恐れがある」

《わ、分かった……レイヴンの指示通りにしよう。後続は後で合流させる》

《まったく、クレストも質が落ちたな。重要物資の護衛に精鋭も回せんとは》

 

交戦していると思しき護衛部隊から距離を取るように、新合金を積んだトレーラーとスクータムが迂回を始める。

ソラとゲドは随伴しつつ、レーダーを見ながら作戦を練った。

 

「こっちのレーダーにはまだ反応がない。ゲルニカ、そっちは?」

《捕捉している。機影は11機。うち、護衛部隊と交戦中が6機、こちらに向かっているのが5機だ。……交戦中の機影の中に激しく動いているのが1機いる。これがACだろう。それと……ステルスセンサーのオンオフで確認した。残りは全部ステルスMTだ》

「レイン、敵ACの詳細を」

《はい。この市街地の管制システムと接続しています。敵AC捕捉……データ照合開始。少し待ってください》

「ステルス野郎は足が遅いから先手が取れるが、ACにゴリ押しで攻めてこられたら護衛は困難だ。俺が敵ACの迎撃に向かう」

《それがいいな。トレーラーは任せろ》

「ああ、頼んだぞゲルニカ!」

 

ソラはゲドと別れてビル街から飛翔し、護衛部隊の交戦地点に向けてオーバードブーストを使用した。

コア内蔵の高出力ブースタがジェネレータ容量を一気に喰らい、機体に爆発的な機動力を与える。

時速700km超で市街地上空を飛んでいると、ストレイクロウのレーダーに反応があった。

敵の反応だ。それも、かなり速い。

相手もオーバードブーストを使っているらしい。

彼我の距離が一瞬で詰まっていき、距離400まで迫った。

 

《……C-9ランカーAC"クラッシュボーン"確認!護衛部隊は既に全滅です!》

 

大きな交差点にソラがACを着地させた瞬間、レインが声を張り上げた。

緑色のACが前方の曲がり角でオーバードブーストを切り、慣性に流されてビルの壁面を肩で荒々しく削りながらも体勢を立て直して現れる。

ソラは息を止め、肩部ミサイルと連動ミサイルを起こし、敵ACに多重ロックをかけていった。

 

「くらえ!」

 

7発ものミサイルがクラッシュボーンにめがけて殺到。

しかし、敵は避ける素振りすら見せず、左腕のENシールドを展開した。

爆発が連鎖し、大通りが黒々とした煙で充満する。

ソラがレーザーライフルに武装を切り替えて待ち構える中、敵ACは煙から勢いよく抜け出してきた。

 

「回避しないのか!?減速も無しで……!」

 

レーザーライフルを撃ちながら、ソラはあまりに無謀な敵機の突進に驚かされた。

クラッシュボーンはENシールドを構えたまま、被弾をものともせず真っ直ぐに突っ込んでくる。

真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐに。

そして――

 

「ぅぐっ!!」

 

躱しきれずに、AC同士が激突した。

大きく揺さぶられるコクピット。

機体表面の防御スクリーンが干渉を起こしてスパークする。

モニターにでかでかと映った敵ACが密着したまま、右腕を大きく振りかぶった。

その右腕には、射突型ブレード。

まずい。ソラはそう思った瞬間に、左腕のレーザーブレードを発振した。

 

ズドンッ。

 

ストレイクロウのコアめがけて撃ち込まれる、重金属の杭。

そこにすんでのところで、左腕が割り込んだ。

干渉で出力の落ちた防御スクリーンが容易くぶち抜かれ、レーザーブレードの発振器ごと左腕が敵の実体ブレードに貫通される。

一撃必殺の威力によって風穴の空いた左腕が無惨にもげ落ち、爆散した。

だが、コアへの直撃は避けられた。

ソラの頭に嫌な汗が一気に沸いた。

 

《……見事だ!》

「うるせえ!」

 

ソラは機体を大きく後退させながら、レーザーライフルを連射した。

敵はシールドで耐えつつもしつこく追いすがり、肩のロケット砲を撃ち込んでくる。

クラッシュボーンはこちらより高出力なブースタを搭載しているらしく、ロケットの直撃で機体が揺れる度に相手との距離が縮まる。

避けられない。またぶつかる。

そう思った瞬間、先ほどと同じく2機のACが衝突した。

そして、右腕を振りかぶるクラッシュボーン。

ソラは咄嗟に、操縦桿横のレバーを握っていた。

 

《撃墜する!》

 

ストレイクロウはオーバードブーストによる横方向への急加速で、強烈な一撃を躱した。

射突型ブレード。鋭く研磨された重金属の杭を炸薬によって高速で撃ち出し、ACの防御スクリーンすら半ば無視しての一撃必殺を可能とする武装。

パーツカタログで知っていたが、そんなリスキーな代物を本当に運用しているレイヴンがいるとは思いもよらなかった。

 

「よくやるな……まったく!」

 

なんとか距離を取りつつレーザーライフルで応戦するソラ。

しかし、クラッシュボーンは高出力ブースタとENシールドの防御力に物を言わせ、何度でも間合いを詰めてきた。

市街地はACが機動性を発揮するには少々狭く、思うように距離が離せない。

必然的にクロスレンジでの戦闘を余儀なくされ、さらにここまで執拗に接近され続けては、ロックに時間のかかるミサイルも役に立たなかった。

C-9ランカーAC"クラッシュボーン"。C-10である自分の一つ上。

こんな正気の沙汰とは思えない突撃戦法で、それなり以上のランクに至っているのだ。

被弾を恐れずひたすら至近距離に食らいつき続ける敵レイヴンの腕前と度胸は、相当な物だった。

称賛せざるをえないその攻めの激しさに、ソラは歯を食いしばった。

左腕が吹っ飛んだせいでAPも一気に減り、残り5000。

面白い。やってやる。

ソラは乱暴に汗を拭い、操縦桿を握り直した。

頭の中で瞬時にこの強敵への対抗策をひねり出し、そして。

 

「ついてこい!」

 

オーバードブーストを起動。

すると、敵もやはり高出力ブースタがせり上がった。

甲高いチャージ音が響き、両方の機体が急加速。

クラッシュボーンはこちらに対して真っ直ぐに。

そしてストレイクロウは、そんなクラッシュボーンに対してすれ違うように直進した。

 

《っ!?》

 

傍受した通信から、敵が息を呑んだのが伝わってくる。

おおかたこちらは横方向に逃げると思っていたのだろう。

そんな敵レイヴンの予測を逆手に取り、ソラは前方に障害のなくなった大通りを長々と直進した。

距離を800まで稼いでオーバードブーストを切り、ガリガリと舗装路を脚部で削りながらも荒々しく180度旋回する。

そして、ミサイルユニットを起動した。

やはり、クラッシュボーンは再びオーバードブーストでこちらに真っ直ぐ向かってくる。

格好の的だった。

最大までロックし、肩部ミサイルを6連続発射。連動ミサイルの4発も合わさり、計10発もの弾頭がクラッシュボーンに殺到した。

市街地の往来では大きく回避行動をとることも出来ない。

さすがにオーバードブーストとは併用が苦しいのか、ENシールドも展開していない。

そして、急加速の勢いのままに敵機は正面から全弾直撃を浴びた。

ミサイル群が起こした爆発の衝撃で周辺のビルのガラスが一斉に割れ砕け、輝く破片が撒き散らされる。

 

《……おおおっ!!》

 

それでもなお、クラッシュボーンは爆炎から抜け出して迫ってきた。

猛烈な突進力を保ったまま、肩部ロケットをばら撒いてこちらの動きを牽制し、射突型ブレードの直撃を狙う。

ソラは冷静にレーザーライフルで迎撃しながら、機体を少し右方向にずらして、再び操縦桿横のレバーを引き上げた。

互いに時速700㎞を超える超高速で、2機のACが再びすれ違う。

振り抜かれた射突型ブレードは、虚空を貫いた。

そして、距離が大きく開いたのを確認して、ソラはもう一度ミサイルの多重ロックをしかけた。

 

《見事だ……!》

「見事なのはあんただよ」

 

クラッシュボーンは最後まで突進をやめなかった。

最後の最後まで射突型ブレードの一撃に賭けて突っ込み、そしてミサイル弾幕の直撃を真正面から受け止めて大爆発した。

 

《レイヴン、ゲルニカが目標の施設までの護衛を完了しました。トレーラーは無事です》

「そうか……やっぱりゲルニカに任せてよかった」

《ゲルニカより、残存する敵機がまだ施設に向かってきているとのことでしたが》

「クラッシュボーンが置き去りにした奴らだろう。AP4000か……俺が片づける。ゲルニカには、終わるまで施設の防衛をするように伝えてくれ」

《了解しました》

 

その後、ソラは市街各地のステルスMTを掃討し、任務を完了した。

レインが指定したAC回収地点では、ゲルニカが先に待っていた。

 

《随分と手ひどくやられたな。左腕がもげているぞ》

「ああ。凄腕のレイヴンだったよ。C-9ランカーだってよ。俺より1つ上だ」

《……そうか》

「レーザーブレードも腕部も買い直しだ。大赤字だぜ……」

《…………》

 

グローバルコーテックスの輸送機が降りてきて、格納ハッチを開く。

ストレイクロウとゲルニカが格納庫内に乗り込むと、輸送機の管制室から発進すると連絡があった。

 

《……ストレイクロウ。良いレイヴンになったな》

「え?」

 

不意に、ゲドが通信を繋いできた。

 

《初めてアリーナ防衛で協働した時、はっきり言ってお前は、どこにでもいる少し筋が良いだけの新人だった。だが、今は違う。クラッシュボーンのレイヴン"シャドーエッジ"は、俺も知っている。偏屈だが近接戦の名手……かなりの腕利きだ。狭い市街地戦で、そう容易く破れる男ではない》

「……ええと」

《モノレール防衛の時にも片鱗を見せていたが、お前はやはり、高く飛ぶべくして飛ぶレイヴンなようだ》

「な、なんだよさっきから。作戦開始前といい、そんな褒めても何も出ないぞ、ゲルニカ」

《そうか。ならば、褒めて損をしたな》

「あのな……」

《ははは》

 

ゲドが通信機の向こうで笑った。

その笑い声は、どこか寂しいような、何とも言えない雰囲気を纏っていた。

 

《まあ、ロートルの戯言だ。あまり真面目に受け取るなよ。次に会うまで、せいぜい死なずにいることだ》

「……分かってるよ。……あんたも、死ぬなよな」

 

ソラはゲドの通信に言葉を返しながら、高鳴る胸を手で押さえていた。

ベテランのレイヴンに直に認められたことが嬉しかった。

ランクは既に自分より下だが、ゲドが信頼に値するレイヴンであることは3度の協働を経て分かっていた。

 

「……あー、今日は助かったよ。あんたに僚機を依頼して、よかった。索敵に敵の掃討に、大活躍だったじゃねえか」

《ふん、褒めても何も出んぞ》

「そっか。なら、褒めて損したな」

《……くくっ、ははは!》

 

ソラとゲドは笑い合いながら、偽物の空を飛ぶ輸送機に揺られて帰ったのだった。

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