ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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ゲーム本編だと「ユニオン襲撃」ですが、今作では「ユニオン防衛」になります。
戦闘内容もかなり変わっていますので、ご了承ください。
今回の装備はマシンガンと投擲銃、肩に中型ロケットです。
フレーバー程度ですので、武器以外は一切気にしなくても大丈夫です。

右腕部武装:CWG-MG-500(500発マシンガン)
左腕部武装:KWG-HZL50(投擲銃)
右肩部武装:MRL-RE/111(多機能型肩レーダー)
左肩部武装:MWR-M/45(45発中型ロケット)

頭部:CHD-02-TIE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAL-MARTE
脚部:MLM-MX/066

ジェネレーター:CGP-ROZ
ラジエーター:RMR-SA77
ブースタ:MBT-OX/002
FCS:AOX-X/WS-3
オプショナルパーツ:OP-S-SCR(実弾防御上昇)、OP-E/SCR(EN防御上昇)、OP-S/STAB(被弾時反動軽減)、OP-E/CND(ジェネ容量増設)、OP-L-AXL(ロックオン時間短縮)


ユニオン防衛・1

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

FROM:ロイヤルミスト

TITLE:話は聞いた

 

ファナティックから話は聞いた。

不戦勝でも、これでお前はCランクの頂点に立ったわけだ。

 

ファナティックは真面目な女だ。

実力も実績も、C-1に相応しいだけのものを持っていた。

奴がお前を認めて勝ちを譲った以上、どうこう言うつもりはない。

 

クレストとユニオンのくだらねえ喧嘩に、これ以上俺は付き合わない。

お前やワルキューレで何とかしろ。

 

レイヴンは、力が全てだ。

自分の意思を押し通せるのも、結局自分の力でしかないからだ。

それを忘れるなよ、C-1ランカー。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

………

……

 

 

専属オペレーターのレインからソラに連絡があったのは、スパルタンと呑んだ2日後。

専用住居のリビングで、クレストの報道を見ていた時だった。

 

「ソラだ。レイン、依頼か?」

《はい。クレストとユニオンの……両方からです》

 

その手短な説明で、ソラは全てを察した。

リビングの大型テレビには、群れをなして基地を飛び立つクレストの輸送機が映っている。

ユニオンの本拠地が特定され、ついにクレストが本格的な掃討作戦を決行するのだ。

混乱が続くレイヤードにあって、全ての市民が注目するであろう戦闘が始まろうとしていた。

クレスト曰く、地下世界の秩序と安寧を取り戻すための戦いである。

 

「10分後にブリーフィングルームで依頼の確認と打ち合わせを。レイン、データの取りまとめは出来るか?」

《可能です。……レイヴン、どちらの依頼を?》

 

レインの問いかけに、ソラは目を閉じた。

この争乱に対して自分が取る立ち位置は、既に決めていた。

 

「ユニオンの依頼を受ける」

 

レインは何も聞かず、分かりましたとだけ応答した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

我々ユニオンの本拠地に対して、ついにクレストが侵攻を開始した。

 

セクション614最北に存在するこの拠点は、ユニオンが活動を継続していくために必要不可欠なものだ。

当然、そう易々と放棄することはできない。

よってキサラギの全面支援のもと、クレストの掃討部隊を迎撃する。

 

セクション614は、かつて自然区の湿地帯として建造された区域だが、近年、植物が異常な成長を遂げ、一帯はまるで密林のような様相を呈している。

潜伏に最適な場所だったとはいえ、いつまでもクレストの目をくぐり抜けられるわけではないことは分かっていた。

こういう事態に備えて、我々はこの密林の中に多数の大型砲台を設置してある。

クレストがいかに大戦力を送り込んできても、地の利はユニオンにあるというわけだ。

 

だがそれを踏まえても、通常戦力同士の衝突は、消耗戦になることが予想される。

クレストもそれは承知の上だろう。

ならばやはり、この戦いの趨勢を決めるのはレイヴンの存在に他ならない。

 

データバンク襲撃と同様に、今回も複数のレイヴンと契約する。

 

我々がレイヴン諸君に対して望むのは、2つだ。

1つ目は、クレストが送り込んでくると予測される、敵レイヴン達の排除。

2つ目は、作戦領域に展開する敵MT部隊の殲滅。

長期戦になる。試作型の補給車を用意するので、上手く活用してくれ。

 

非常に困難な任務を依頼していることは分かっている。

それでも、ユニオンはここで消えるわけにはいかない。

力を貸してほしい。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

《依頼主はユニオン。作戦区域は、第一層特殊実験区のセクション614です。成功報酬は70,000Cですが、敵勢力の撃破数に応じて増額。予測戦力は敵AC部隊及びMT部隊。特にMT部隊は、偵察で確認しているだけでも100機近い大戦力とのことです》

「MT100機か……まあ、クレストが各地からかき集めたんだ。精鋭だって多く混ざってるだろうし、まだ数は増えるかもしれない。……レイン、特殊実験区ってのは?自然区とは違うのか?」

《特殊実験区は、自然区の中でもごく一部の区画を指す呼称です。依頼メッセージにあるような生態系異常の観測をおこなったり、特殊な自然環境が再現されている区画で、一般的にその内部は公表されていません。立ち入りも、企業の研究者に限定されているはずです》

「……なるほど。だからクレストはユニオンの本拠地を特定するのに手間取ってたのか。このセクション614はおおかた、キサラギ管轄の実験区域ってことだろ?」

《そのようですね。ユニオンからの情報によれば、キサラギも今回の戦闘に臨むにあたって、クレストほどではないにしろ大戦力を集めたようです。私が調べていた限りでは大掛かりな動きは見られなかったのですが……自社管轄であり、かつ機密性の高いこの特殊実験区ならばそれも可能、ということでしょうか》

「数は及ばなくても、大型砲台の支援と地の利を考慮すれば激戦は必至。となると、戦局を左右するのは両陣営のレイヴンの力になる……か」

 

ブリーフィングルームの椅子の背もたれに背中を預け、ソラは腕を組んだ。

キサラギが自社の機密区画を差し出し、大規模戦力を投入してまでユニオン存続に協力する辺り、両者の繋がりは相当深いものがあるらしい。

以前寄越した礼状でキサラギは、『このまま管理者の気まぐれに踊らされ続けるつもりはない』と宣言していた。

ユニオンをこれほど手厚く支援するということは、やはり潜在的に"脱管理者"の思想が強いのだろう。

この情勢において、今まで巧みに隠されてきたそれが、ついに表面化してきたというべきか。

ここに及んでは、管理者崇拝意識の強いクレストはユニオンのみならずキサラギも、決して許すつもりはないだろう。

この戦いはもはや、単純にユニオンの存続を巡るものではない。

クレストとキサラギ、三大企業のうちの二社による戦争なのだ。

 

「……レイン、ちょっと独りごとを言わせてくれ」

「はい」

「最近、ずっと考え事をしていた。ユニオンはこのまま消えていいのかとか、各企業のスタンスはどうだとか、管理者は何を考えているだとか」

「…………」

「結局、いくら考えても正解と思えるような答えは出てこない。だけど、ある人に言われた。考えて頭を悩ませることは、決して無駄じゃない。"意思"を形にするために必要なことだって」

「…………」

「ユニオンはここで潰させない。別にあいつらの考え方が全面的に正しいとは思ってない。それでも、異常続きの現状を打破しようとあがいてる連中だ。……まだレイヤードにいてほしい。これが色々悩んで何とか形にした、俺の"意思"だ」

 

ソラは、思いを言葉にして口から吐き出した。

誰かに聞いて、意見を言ってほしいからではない。自分で自分の意思を確認するためだ。

レインならばそれを理解してくれることは、これまでの付き合いから分かっていた。

 

「依頼を受けるぞ。手配を頼めるか?」

「もちろんです。……万全に、サポートしてみせます」

「……いつも助かる」

 

ソラは席を立った。

気持ちが昂り、無意識に握った拳が震える。

しかし、嫌な気分ではなかった。

むしろ最高のコンディションにあると、自覚していた。

 

 

………

……

 

 

《湿度95%……気象管理システムが上手く作動していないようです。レイヴン、機体に異常はありませんか?》

「問題ない。……だけどこんな森は初めて見たな」

《ACの防御スクリーンが作動した状態なら、ある程度の大きさの樹木は通常のブースト速度で体当たりするだけでも容易に排除できるはずです。それでも戦闘では、足を取られないよう十分注意してください》

「ああ。分かった」

 

レインの助言に耳を貸しながら、ソラは額に浮いたぬめつく汗を拭った。

愛機"ストレイクロウ"のコクピットモニターに映るのは、無秩序で乱雑に伸びた、ACの背丈以上の巨木群。

十分な戦闘機動を取ろうとすれば、木々を越えて空を飛ぶしかない有様だ。

都市区はもちろん、通常の自然区ですら見られない、自然の暴走とでも呼ぶべき環境。

これも管理者の管理体制に異常が出ている証なのだろうか。

いずれにせよ、以前訪れた溶鉱炉とは別の意味で悪辣な戦場だった。

 

《AC各機へ。こちらB-4"ワルキューレ"。AC"グナー"よ。ユニオン管制室の要請により、AC部隊の指揮は私が取ります。通信は、コーテックス緊急チャンネルの7番を使用。……緊急回線を使うのはとても不本意だけど、かなりの大規模戦闘になる以上、これが確実よ。警告は無視しても大丈夫。設定が終われば、各自応答を》

 

通信機に、聞き知った声が指示を送ってくる。

 

「ストレイクロウ、設定完了した。各機通信テスト頼む」

《こちらエキドナです。ぼさぼさのジャングルで何も見えません!どうぞ!》

《アトミックポッドだ。ちっ、本当にふざけた戦場だな。木が邪魔過ぎる……受けるんじゃなかったぜ……》

《レッドアイ、設定完了。……それでも地形データがある分、私達の方が有利なはずだ。あとは、敵の出方次第だが》

《こちらヴァルナー……特に問題無し。だけど依頼遂行にコーテックス緊急チャンネルを使うのは、正直賛成できないね。こういうのが常態化していくと、良くないよ》

《こちらゲルニカだ。キサラギの支援があるとはいえ、随分と頭数を揃えたものだ……クレスト側もそうだろうな》

 

コーテックスの緊急チャンネルには、ユニオンに雇われた7機のACが通信を繋いでいた。

指揮を任された、B-4ワルキューレのAC"グナー"。

C-1ソラのAC"ストレイクロウ"。C-4ホスタイルのAC"アトミックポッド"。

C-6ファナティックのAC"レッドアイ"。D-2レジーナのAC"エキドナ"。

D-5スウィートスウィーパーのAC"ヴァルナー"。そしてE-2ゲドのAC"ゲルニカ"。

 

とはいえ、ストレイクロウのレーダーに映っている味方の機影はその内1機のみ。

事前の打ち合わせによれば、ホスタイルのアトミックポッドだ。

AC部隊は管制室の指示通り、南方のユニオン・キサラギの混成部隊とは真逆の方向、西から北にかけて大きく散開し、拠点周囲の広範囲をカバーしていた。

 

《グナーから各機へ。管制室からの戦況報告を共有します。現在南のユニオン・キサラギの迎撃部隊はさらに南方のクレスト部隊と、セクション中央部を東西に流れる河川を挟むようにして対峙中。散発的応酬はあるものの、本格的な戦闘状態には入っていないわ》

《エキドナ質問です。なんでさっさとドンパチ始めないの?》

《ユニオン側の理由は、設置した固定砲台の射程にクレストがなかなか入ってこないからよ。偵察や内通でおおよその位置がバレているためでしょうね。下手に踏み込めばMTの交戦距離に入る前に甚大な被害を受けるから、クレストの判断は正しいわ。でも、クレストだって睨み合いをするためだけにこんなジャングルに大部隊を送ってきたわけじゃない》

《……痺れを切らして、必ずしかけてくる。被害を最小限にするために、まずは少数による奇襲で。MTの機動性では無理だから、ACを使うんだね》

《正解よ、ヴァルナー。ユニオン管制室は、クレスト側のACが河川を大きく回り込んでくるのを予測しているわ。その上で二手に分かれるはずよ。一方は固定砲台の排除、もう一方はセクション最奥の拠点への強行突撃》

「これだけ鬱蒼とした密林地帯だ。とりあえずこうして広範囲に散らばっておけば、空をオーバードブーストで飛ばれても捕捉できるし、地上を行かれても割って入るのは容易……ってことか」

 

ソラは通信機に向かって喋りながら、コンソールを叩いてACの集音性能を高めた。

鳥のものと思しき不気味な鳴き声を、頭部COMが拾う。

そしてさらに遠方から、まるで他人事のように響いてくる少数の砲声。

確かに戦闘の激しさは、今のところまったく感じない。

どちらの陣営も、とりあえず威嚇で撃っているという程度でしかないようだ。

それはまるで、開戦を待ちわびているようでもあった。

 

《攻めてくる敵の配置やランクが分からない以上、重要になるのは迅速な情報共有よ。各レイヴンはオペレーターに厳命、戦況分析は敵ACのランク確認を最優先にすること。その上で通信を使って即座に伝達、あまりにもランクが上の相手なら付近の味方と合流して対応しましょう。レーダーを搭載したACは特に周囲の様子に気を配って。ストレイクロウ、レッドアイ、ゲルニカ、大丈夫?》

《ああ、俺のゲルニカは索敵性能特化型だ。可能な限り素早く状況を知らせよう》

「ストレイクロウも問題なし。もう少し前に出ておく」

《適材適所で行くってことだよね。でもグナーさん、その対応プランには1つ問題があるよ》

《……ヴァルナーの言う通りだ。もしクレストが雇ったレイヴンの総数が私達より多い場合はどう対応するか……だな》

 

ファナティックが発した問いかけに、レジーナが少しだけ不安そうに唸った。

だが、ワルキューレの回答は明朗だった。

 

《その場合は固定砲台に向かう敵を放置するわ。ユニオンの拠点死守に戦力を集中します。撃破された味方機が増えてきて戦力の均衡が崩れた場合も同様よ。指示はその都度私が出すから従うように。……以上よ。何か質問は?》

《ねえよ。さっさと来いっての。無駄に肥えた木を見てるだけでムカムカしてくるぜ》

 

ホスタイルがそう吼えた直後だった。

轟く砲声と共に、火球が密林の空を切り裂いて遠方から飛んできた。

鳥達が騒がしく鳴き叫びながら、ばたばたと一斉に空へ舞い上がっていく。

ソラは咄嗟にレーダー表示に視線を走らせた。

何も映っていない。

 

「ゲルニカ!」

《捕捉した!南西から敵影が4つ!速度からしてAC!……散開しているが、全機拠点狙いだ!》

《7対4なら楽勝!すー……よぉし!》

《待ちくたびれたぜ……!憂さ晴らしさせろぉ!》

 

北のレジーナとホスタイルが気炎を吐き、動き始める。

だが、ソラは動かなかった。

違和感を覚えたためだ。

 

「データバンクの時は5機以上集めたのに、この局面に4機だけ……?グナー!砲台側の様子を管制室に聞いた方がいい!」

《確認したわ!砲台陣地の傍にもACが出現!数は2!上手いことばらけたわね……!》

《……グナーさん、指示を》

《部隊を分けます!ヴァルナーとゲルニカが砲台の防衛に急行!あとの5機で拠点狙いを撃破!5対4と2対2の構図よ、有利なのはこっちだわ!》

《行ってきます》

《状況は適宜報告する!そちらは任せたぞ!》

 

スウィートスウィーパーとゲドが砲台の防衛のために、南方へと向かっていく。

ソラもフットペダルを踏み締め、目の前の邪魔な木々を新装備の肩部中型ロケットで薙ぎ倒しつつ前に出た。

肩の多機能型レーダーが、赤く輝く敵影を捉える。

映っているのは、2機。

その内の1機に、先行したホスタイルのアトミックポッドがぶつかった。

 

《アトミックポッドだ!B-6テン・コマンドメンツと交戦するぜ!へっ、管理者狂いのイカレ野郎が……!先手必勝、くたばれや!》

「アトミックポッド、そいつは手強い!合流して対処……っ!?」

 

反射的に機体を跳ばせた瞬間、さきほど空を切り裂いた火球が地面に着弾した。

高速で放たれた榴弾が起こした爆炎によって草木が燃え散り、黒煙が周囲に充満する。

歯を食いしばってモニターを凝視したソラの眼前に、武器腕のキャノン砲を突き出した真紅のタンク型ACが現れた。

 

《まさかこんな所で会えるとはな……ストレイクロウ!》

「何?」

《……C-9ランカーAC"カルマ"確認!》

 

レインの報告と同時に、タンク型の両腕が再び火を吹いた。

轟音と共に榴弾が飛来し、ストレイクロウの肩をかすめて後方で爆ぜる。

襲来した敵AC"カルマ"の武装は両腕、両肩全てグレネードキャノン。

怒りと憎悪を剥き出しにしたかのような、極端な構成だった。

 

《ミダスの仇め……!お前をずっと探していた!》

「ミダス?確か"セミラチス"の……ぐっ!」

 

砲撃を間一髪躱し、ストレイクロウは木々の間から空へと舞った。

カルマがオーバードブーストを起動し、真っ直ぐに飛翔してくる。

向けられた砲口から殺意にまみれた砲弾が放たれるも当たらず、しかしACとACが空中で激しく激突した。

 

《おおおおっ!!》

「こちらストレイクロウ!C-9カルマと交戦開始!……離れろてめぇ!!」

 

肩部中型ロケットと左腕の投擲銃を放ち、相手の視界を塞いで蹴り返す。

至近距離で撃ち出された榴弾が虚しく外れ、空の彼方へと消えていった。

木々の隙間に上手く降り立ったストレイクロウと対照的に、カルマは不格好ながら荒々しく巨木をへし折って着地する。

 

《こちらエキドナ!C-10バトルフィールドと接敵!何あれ、二脚にあんなキャノン積んでどういう……?》

《レッドアイ、B-3アルルカンを捕捉。アリーナの"アーティスト"か。よくクレストの依頼に応じたものだな……》

《こちらグナー、レッドアイ合流しましょう。……ストレイクロウ聞こえる?拠点狙いの4機の中では、テン・コマンドメンツが一番危険だわ。アトミックポッドと上手く連携して》

「ああ、そうしたい……が!」

 

ソラはワルキューレからの通信に応じながらも、カルマが砲撃するより先に機体を跳び退かせた。

ACの背中に当たる木々は防御スクリーンの干渉で抵抗なくへし折れ、戦闘機動には懸念していたほどの支障はない。

だが、それでもカルマの敵レイヴンが放つプレッシャーは異常だった。

まるでリロードの隙や動きの見極めなど眼中にないとばかりに、矢継ぎ早に大火力の榴弾を押し付けてくる。

 

《くらえ、くらえぇっ!》

「仇討ちか……そういうの初めてだな。だけどな……!」

 

傍受する通信から伝わってくる激昂。

かつて討った敵の家族か、恋人か。

 

「やられてはやれねえよ」

 

高めた集中が同情や慮る気持ちを消し去り、無情に引き金を引き、フットペダルを踏む。

腕部から同時発射される2連装グレネードの業火を最小限の動きで避けながら、ストレイクロウはマシンガンと投擲銃を撃ち鳴らした。

 

《ぐぅぅっ!?なんだこいつ、何でフロートが空中で……!?くっ、そっ……おい、早く合流してくれっ!》

「数分耐えろアトミックポッド。救援に行く」

 

またグレネードを外したカルマが、苛立ったようにオーバードブーストで突進してくる。

ソラは一瞬だけ起こしたオーバードブーストで横に素早く急加速し、向けられたロックを切ってすぐさま反撃した。

横合いから放った弾幕を、カルマはあえてオーバードブーストを解除せず加速し続けることで躱す。

さらに脚部を旋回させて滑らせながら、一際大きい巨木にぶち当てることで無理やりこちらに向き直り、続けて砲撃を見舞ってくる。

Cランクに相応しい判断力と技量の片鱗を感じさせる動きだ。しかし、今はその全てが鈍っていた。

怒りで手元が震えているのか、せっかくの強烈な一撃がまったく当てられない。

冷静でさえあれば、仇討ちに燃えていなければ、今のソラにとっても間違いなく強敵だっただろう。

だが、そうはならなかった。

ソラは何度も敵の突進をやり過ごし、その都度タンク脚部が旋回しきるよりも早く両腕の火器で集中砲火を加え、タイミングよくオーバードブーストで捕捉を振りきった。

やがて、カルマの両腕が沈黙した。

 

《ぐ、うぅぅうぅっ……!!》

 

世を呪う狂犬のような呻きが、スピーカーを震わせる。

投擲銃の榴弾がカルマの頭部に直撃した時、敵レイヴンは雄叫びを上げた。

何度目かも分からないオーバードブースト起動。

木々を薙ぎ倒し、カメラアイをぎらつかせ、肩のグレネードキャノンを構え、タンクがまるで1個の砲弾となったかのような勢いで特攻をかけてくる。

躱せる動きだった。躱すべきだった。

だが、ソラは冷めた判断を下す理性を追いやってオーバードブーストを吹かし、あえて相手の気迫と真っ向からぶつかった。

2機の防御スクリーンが激しく干渉し、スパークする。

ジェネレーターが出力低下を訴え、あっという間にEN容量が減っていく。

零距離で向けられた長い砲身。それよりも早くストレイクロウの肩ロケットが唸る。1発。2発。

カルマのキャノンが轟いた。APが1000消し飛ぶ。

ロケットで反撃。3発。4発。5発――

 

《ミダ、ス……》

 

2機のACが離れた時。

真紅のACはうなだれるようにキャノン砲を下ろしながら、爆散した。

上半身の破片が無惨に飛び散り、タンク脚部だけがぽつんとその場に残って復讐者の末路をソラに訴えかける。

憎悪で燃え盛る火球の連射によって、気づけば周囲は火の海になっていた。

 

「……C-9カルマ撃破。アトミックポッド、すぐ援護に……」

《雑魚が……》

 

低い呟きと共に、レーダー上のアトミックポッドが消滅する。

 

《Cランカーなら、この程度だろうな》

「……誰のことを言ってる?」

《決まっているだろうが》

 

炎上する大木がミシミシと音を立ててへし折れ、地面に倒れた勢いで黒煙を霧散させる。

風で揺らめく炎の向こうから、赤いフロートACが姿を見せた。

 

《さっきの負け犬と、そこの負け犬だ》

 

B-6ランカーAC"テン・コマンドメンツ"だ。

クレストの最重要戦力と呼ばれる、ただならぬ強者。

 

《そしてお前も、じきにそうなる》

 

敵は肩のチェインガンをゆっくりと起こしながら、ソラに向かって宣言した。

 

 

 




続きます。現状の両陣営レイヴンを載せておきます。

◆ユニオン側
B-4ワルキューレ(グナー)
C-1ソラ(ストレイクロウ)
C-4ホスタイル(アトミックポッド)→死亡
C-6ファナティック(レッドアイ)
D-2レジーナ(エキドナ)
D-5スウィートスウィーパー(ヴァルナー)
E-2ゲド(ゲルニカ)

◆クレスト側
B-3コルレット(アルルカン)
B-6サイプレス(テン・コマンドメンツ)
C-9バーチェッタ(カルマ)→死亡
C-10サンダーハウス(バトルフィールド)
???
???

これまでの話で死亡したレイヴンが多いため、ランク設定は必ずしもゲーム本編と同じではありません。
ファナティックはC-1でしたが、アリーナ棄権のペナルティで大幅にランクが低下しています。
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