ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~   作:神父三号

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誰が呼んだか大仏戦です。個人的には大仏というより千手観音っぽいなと思ってます。
今回はマシンガン、ロケット、ブレード、デコイ装備です。

右腕部武装:CWG-MG-500(500発マシンガン)
左腕部武装:MLB-MOONLIGHT(高出力ブレード)
右肩部武装:MRL-RE/111(多機能型肩レーダー)
左肩部武装:CWR-HECTO(18発大型ロケット)
インサイド:MWI-DD/10(10発デコイ)

頭部:CHD-02-TIE
コア:CCM-00-STO
腕部:CAL-MARTE
脚部:CLM-03-SRVT

ジェネレーター:CGP-ROZ
ラジエーター:RMR-SA44
ブースタ:MBT-OX/002
FCS:AOX-X/WS-3
オプショナルパーツ:OP-S-SCR(実弾防御上昇)、OP-E/SCR(EN防御上昇)、OP-E/CND(ジェネ容量増設)、OP-L-AXL(ロックオン時間短縮)


機動兵器侵攻阻止・2

第四層エネルギー生成区の偽物の空は、どす黒く染まっていた。

いつもの人工雲に覆われているからだけではない。

動力施設群から伸びる無数の太い煙が、空をくぐもらせているのだ。

煙の下では、赤い炎がごうごうと燃え盛り続けている。

 

「ひでえもんだな……」

 

ソラはコクピットモニターに転送されてきた輸送機のカメラ映像を見つめて呟いた。

まるで、かつての三大企業がコストもリスクも考えずに本気でやり合ったかのような、地獄の有様だ。

これほどの破壊を敵の大型兵器は単機で、しかもごく短時間で引き起こしたというのだ。

その性能は、戦うまでもなく感じられる。

 

《レイヴン、敵が煙の中から出てきます!》

 

来た。

僅かにシートから身を乗り出し、ソラはモニターに意識を集中する。

6枚の羽のようなユニットを発光させ、管理者の使徒たる大型兵器が煙を裂いて現れた。

まだ距離は2500以上ある。

だが敵は、立ち向かうレイヴン達を威嚇するかのように早々と弾幕を形勢し始めた。

全身から機銃が乱射され、中央部の2門の砲塔からはハイレーザーが撃ち出されて足元を焼き払う。

次いで打ち上げられた垂直ミサイルが破裂し、かつて水没都市でレイヴン達を苦しめた徹甲槍の雨が施設に降り注いだ。

まとまった量の大爆発が立て続けに起き、紅蓮の炎が一気に広がっていく。

 

《ふん。随分とご機嫌じゃねえか。どうやら俺達の到着を喜んでくれているらしいな、あのブサイクなオブジェは》

《こちらタイラント、作戦通りだ。敵から距離2000、中央動力施設から1000の距離で後衛部隊は輸送機から降下。超高エネルギー砲の発射準備を始める。……カイザー、ストレイクロウ、エスペランザは敵から距離1200で出撃だ。いいな?》

《エスペランザ了解です!》

《おう気張っていけよ、ボウズ!林檎少年!》

「分かってるよ。スパルタンの旦那も、レーザー外すなよ」

《ばっきゃろー!俺様を誰だと思ってやがる!》

 

高空で編隊を組んでいた輸送機の群れの内、後衛部隊が高度を落とし始めた。

やがて、戦闘モードに入ったAC達を示す光点がソラの眺めるレーダー上に出現し、素早く散開していく。

ロイヤルミスト、ソラ、アップルボーイの出撃はまだだ。

敵の射程範囲のギリギリまで、輸送機に乗ったまま接近する手はずになっていた。

 

《……ソラさん》

「何だよ、エスペランザ」

《僕、ようやく自分が一人前になれた気がします。こうやって重要な前衛を任されて、やっとソラさんと肩を並べられたっていうか》

「……何言ってんだ。同期だろ、俺達」

《そうですね。でも、僕にとってソラさんは憧れでした。いつも僕より先を行ってて……高く飛んでて》

「…………」

《でももう、憧れるのはやめます。僕はこれからもレイヴンであり続けますから。ソラさんも越えていくべき壁の1つに過ぎないんだって、そう思うようにしたいんです。最終目標は、トップランカー……なので》

 

アップルボーイの言葉が、ソラに強く響いた。

少年は地下世界の命運がかかっている場にあってもなお、その先を見ていた。

それはまぎれもなく、少年の強さの証だった。

 

「……まったく。勝手に人様に憧れたり壁扱いしてくれり、忙しい奴だなお前は」

《ですよね、あはは》

「けど、上等だ。なら壁として、何度でも追い返してやるよ」

「はい!じゃなかった、ええと……こういう時なんて言うんですかね……」

「知るかバカ」

《ソラさん、こちらビルバオです。私にもしものことがあったらグリーンウィッチを……》

《急に通信に割り込んでくるなって。そもそもお前簡単に死ぬようなタマじゃないだろ!》

《まぁ。うふふ》

《こちらカイザー、楽しいお喋りはそこまでにしろ。ここからは仕事の時間だ》

《了解です!》

「ったく……了解」

 

前衛部隊長の言葉に思考のスイッチを切り替え、操縦桿を握る。

輸送機の操縦士が旋回を始めると通信してきた。

これ以上の接近は不可能だと判断したためだろう。

 

《レイヴン、目標の性能は底が知れません。……十分に注意してください》

「ああ。ストレイクロウ、出る!」

 

黒い迷い烏が、決戦の空に羽ばたいた。

同じように輸送機から出撃した機体が2機。

ロイヤルミストのAC"カイザー"と、アップルボーイのAC"エスペランザ"だ。

いずれもソラのACと同様にオーバードブーストを装備し、機動性能を高めている。

そして三者は、示し合わせたように加速を開始した。

沸き立つ煙や燃え上がる炎を高速で突っ切り、一気に大型兵器の膝元まで迫るべく猛進する。

 

《後衛各機、こちらタイラント。外付けエネルギーパック及びジェネレータを超高エネルギー砲に接続。ジェネレータオーバードライブ。エネルギー充填開始。……前衛は、後衛のチャージ完了まで粘れ》

《後ろの奴らに手柄をくれてやることはねえ!しかけるぞ!》

「おおぉっ!」

 

威勢のいいロイヤルミストの発破に応じ、ソラは引き金を引いた。

肩の大型ロケットユニットが大口径砲弾を吐き、敵向けて真っ直ぐに飛んでいく。

直撃。爆発。

しかし、いかほどのダメージも負わせられなかった。

やはりそうだ。

この敵も水没都市の大型兵器と同様に、防御スクリーンを展開している。

 

「っ!!」

 

お返しとばかりに、機銃とハイレーザーの群れが殺到。

ソラが操縦桿を捻れば、オーバードブーストが出力を維持したままACを弾幕から逃がした。

ストレイクロウは突進の勢いを弱め、半壊した施設の陰に入る。

三方向から攻め寄せた前衛部隊は、全員無事に一定距離まで近づけたようだった。

彼我の距離は、流石というべきかカイザーが最も近い。

敵の撃ち鳴らす激しい砲撃によって遮蔽物にした建物が破壊されていく轟音が、やかましく響いてくる。

 

《槍が来るぞ!》

 

ロイヤルミストの大声と共に打ち上がった飛翔体が爆散して、真上から徹甲槍が降ってきた。

ソラは素早く機体を物陰から出して、降る雨をさらに敵兵器へ接近することによって躱した。

炎上する施設を盾にしてロケットで砲撃しつつ、じりじりと相手との距離を詰めていく。

前衛部隊の3機は、まだダメージを受けていない。

気がかりだったアップルボーイも、かなり上手くやっているようだ。

 

《よし……これだけ近づけば、あの槍は撃てないはずです!自分にだってダメージが入ってしまいますから!》

《そんなお優しい敵サマだったら、ありがたいがな》

「後衛!チャージはまだか!」

《お待たせいたしました!撃てます!》

 

ビルバオからの通信。

ソラは上方を見上げて気づいた。

自分達の後方が、大げさに青白く光り輝いている。

 

《撃て》

 

BBの短い号令と共に、雷のような音が轟いた。

極太のレーザー光が5つ、空を裂いて飛来する。

光の束はそのまま、大型兵器の防御スクリーンにぶち当たって破裂した。

膨大な量の粒子が周辺に舞い散り、灰や火の粉と混ざってACのコアにも降りかかってくる。

 

《す、すごい。これほどの武装は初めてだ!》

《おお、何という撃ち心地……!》

 

ガガガと乱れる通信機から、グランドチーフとサンドヴァルのいまいち緊張感のない感想が聞こえてきた。

だが、大型兵器はひるまない。

攻撃を一瞬止めはしたが、すぐに立て直して侵攻を再開する。

 

《レイヴン、後衛部隊が全機チャージング状態に入りました!現在徒歩で後退中!大型兵器は後衛に距離1500まで接近!足止めしてください!》

「分かってる!」

 

徐々に近づいてくる巨体に向けて、ソラはロケットを連射した。

ジェネレーターのチャージング中、ACは防御スクリーンの機能が低下してほぼ無防備な状態に陥る。

超高エネルギー砲の弾数は残り2発。

後衛が撃ちきるまで、敵を近づけることは許されない。

前衛の腕の見せ所だった。

 

《行きます!!》

 

アップルボーイが気を吐き、一気にしかけ始めた。

エスペランザから大量の垂直ミサイルが、空に放たれる。

 

《ガキが……一人でやれると思うな!》

 

同じくロイヤルミストが、重量級ACカイザーの火力を発揮した。

両肩デュアルミサイルと4発連動ミサイル、そして拡散投擲銃が唸りを上げ、分厚い弾幕を形成する。

 

「よぉし!」

 

負けてはいられぬと、ソラも猛った。

機銃の掃射をやめない敵に向けて突っ込んでいき、度重なるハイレーザーの迎撃を回避しながら、ロケット砲を叩きつけていく。

戦意は極限まで高まっていた。

この戦場にいるのは、皆選りすぐりの戦士達だ。

生き残るべくして生き残ってきた者達だ。

だから、きっと――

 

そう思った矢先だった。

 

大型兵器が、脚部と思しき部分に装着されていたユニットから、何かの物体を撃ち上げた。

ACほどの大きさのそれはソラ達の上空で制止し、下部のハッチを開いた。

 

ボボボボボ。

 

降ってくるのは徹甲槍ではなかった。

大量のマイクロミサイルである。

打ち上げられたそれは、超大型のミサイルコンテナだったのだ。

戦場に小爆発が無数に発生し、前衛部隊の気勢を一気に削ぎ落とす。

 

「くっ……前が見えねぇ!」

 

あまりの爆発密度にモニターが乱れ、シートを揺らす激しい振動のせいで回避すらおぼつかなくなり、舞い上がる粉塵が行く手を遮る。

その間も撃ち放たれる機銃とハイレーザーの雨によって、APの減少が止まらない。

もしもの備えとして仕込んできたデコイを撃ち出しても一瞬で破壊され、コアの迎撃レーザーでさえも何の気休めにもならない。

レーダーを見れば前衛の頭上を、大型兵器がゆっくりと通過しようとしていた。

 

《抜かれますよ!》

《いや構わねえ、抜かせろ!》

《先にこのミサイル弾幕の外に出るべき、ということですね!》

《そうだ!この中じゃ反撃も出来ねえ!……後衛部隊、もっと下がれ!》

 

ソラはロイヤルミスト達の通信を聞きながら、操縦桿横の赤いレバーをどうにか引き上げた。

展開された大型ブースタが一気に機体を引きずって、連鎖爆発の外へと運んでくれる。

他の2機も無事に抜けたようだった。

素早く体勢を立て直し、今度は後方から進軍を食い止めるべく、ソラはトリガーに指を当てた。

しかし。

 

《!?レイヴン、気を付けてください!敵の反応が増えています!》

 

レーダー上に輝いていた光点が、2つに増える。

ソラは己の目を疑った。

6枚羽の天使がもう1体、天使を産み落としたのだ。

 

「背面ユニットを分離させた!?何でもありかよ!」

 

産み落とされた子機は素早くソラ達に向き直り、ブースタを唸らせて高速で迫ってくる。

撃ち下ろされるのは、大火力のグレネードキャノンだ。それが何発も。

避けきれなかったエスペランザがもろに直撃を貰い、大きく吹っ飛ばされた。

グレネードとしてはかなりの連射速度である。

この横槍を受けながら親機を狙うのは、現実的ではなかった。

 

《ちっ、おいタイラント!》

《心配するなカイザー、これは好機でもある。ユニットの分離でジェネレータの総出力が落ち、防御スクリーンの強度も低下するはずだ。各機、チャージは済ませたな?砲撃準備!》

 

再び後方の空が、青白く輝く。

 

《やるぞボウズ!巻き込まれんなよ!》

 

乱れる通信機から、スパルタンの声が聞こえた。

そして、稲妻のごとき破裂音。

5本の巨光がまたも戦場を駆け抜け、敵の本体に直撃した。

大型兵器が一瞬傾き、防御スクリーンがバチバチとスパークして確かなダメージを感じさせる。

だが、止まらなかった。

大型兵器は、再度超大型ミサイルコンテナを撃ち上げた。

凄まじい爆発の渦が天使の周囲に発生し、対峙する者達を慄かせる。

 

《凄い、前回よりも……これが管理者様の力……!》

《グリーンウィッチ、びびるな!ただの脅しだ!まだ距離は1000ある!少しでも後退して距離を稼ぐんだ!》

 

怯えるビルバオを勇気づけるグランドチーフの声が聞こえてくる。

ソラ達前衛は何とか追いつこうともがくも、周囲を高速で旋回しては砲撃をしかけてくる子機に阻まれ、思うようにいかない。

そうこうしている内に、大型兵器がにわかに加速し始めた。

ACとほぼ変わらぬ速度域で、ぐんぐん後衛に迫る。

そして、その後方の中央動力施設にも。

 

《くだらねえ、時間の無駄だ!エスペランザ、囮をやれ!子機を引きつけて遠くまですっ飛んで行け!》

《はいっ!》

 

アップルボーイのエスペランザが垂直ミサイルを撃ち出しながら、子機に向かっていく。

カイザーとストレイクロウは、オーバードブーストで大型兵器に一気に追いついた。

渦巻く爆炎を抜け、コンテナから乱射されるマイクロミサイルの中を突っ切って、敵のすぐ背面まで迫る。

 

「止まれ、この化物!」

《ぶっ殺せぇ!》

 

投擲銃が、連装ミサイルが、大型ロケットが唸る。

しかし、巨体はまるで揺るがない。

敵の主砲であるハイレーザーは既に、後衛に向けられていた。

 

《ユニオン及びグリーンウィッチMT部隊、援護射撃を開始する!AC部隊は気にせず下がれ!》

《助かる!この素晴らしいキャノンを、何とかもう一発撃たせてくれ!》

 

後方で待機していたMT部隊が、後衛部隊の援護のために前面に展開してきた。

スクータム、カバルリー、クアドルペッド、エピオルニス、モア。

まるで統一感のない有象無象だが、数の多さを生かして何とか敵の猛威を食い止めようとしてくれている。

それに勇気づけられ、レイヴン達も奮戦した。

戦場に膨大な量の火線が交錯し、砲声と爆発音が絶え間なく響いては消えていく。

 

《駄目です……!敵大型兵器、いっこうに止まりません!後衛部隊まで距離500!中央動力施設まで距離1500!》

《このばっきゃろーが!いい加減くたばりやがれ!どうするよ、タイラント隊長!》

《敵の速度が速すぎる……この長物を背負ったままでは、仕切り直しは出来ん。後衛各機、MT部隊を盾にしつつ砲撃準備!チャージは半端でも構わん!エネルギーパックを今すぐ使い切れ!》

 

黒い槍の雨が、マイクロミサイルが、ハイレーザーが、MTの群れを無惨に蹴散らす。

針山のような機銃の連射が、ソラ達の妨害を食い止める。

そして光が、三度矢となった。

 

「止まった……?」

 

三度目の超高エネルギー砲斉射を受け止めた大型兵器が、重力にとらわれて空中から落下した。

ズズン、と重たい音が周囲に響く。

山のような巨体が纏う防御スクリーンは激しく明滅し、迎撃作戦の成果を伝えている。

 

《やりましたよ皆さん!私達の勝利です!》

《うぉぉぉ、キャノン万歳!》

《落ち着け、まずこいつへのトドメだ。その次は子機を……》

「……!?」

 

ソラは謎の悪寒がした。

同じだ、あの時と。

水没都市で、皆我先に停止した大型兵器に群がろうとしていた、あの時と。

 

「全機下がれ!今すぐに!!」

 

悪寒がしたのはソラだけではなかったらしい。

BB、ロイヤルミスト、スパルタンが即座に動いた。

6枚羽が、大きく展開した。

 

ビィィィ。

 

ソラがオーバードブーストで離脱した直後。

羽から全方位に放たれた禍々しいレーザーが、無茶苦茶にエネルギー生成区を薙ぎ払った。

 

「っっ……!!」

 

暴れ狂う6本の超高出力レーザーが動力施設群をチーズのように斬り裂き、逃げ惑うMTを次々に呑み込んでいく。

ACも例外ではなかった。

ストレイクロウのモニター上に表示されていたヘルハンマー、グリーンウィッチ、バタイユのAPが一瞬で蒸発した。

 

《っ、ソラさん!?ビルバオさん達のAPが消えましたよ!?そっちで一体何が……うわっ!》

 

子機を引きつけているアップルボーイの通信に、応じる余裕もなかった。

ACやMTの残骸がひしめき合う戦場は、先ほどまで以上の地獄と化していたからだ。

 

「ビルバオ、死んだのか……?お前みたいな奴が……嘘だろ?」

《大型兵器のエネルギー反応が再び増大!浮上します!……レイヴン!!》

 

レインからの呼びかけに我に返り、ソラは操縦桿を握り直す。

そして状況を確認した。

生き残ったのは、AC5機とMT少数。

うち、タイラントとテンペストはチャージング中だったため回避しきれずにいくらかレーザーに被弾し、もうほぼAPは残っていない。

エスペランザは遠方で子機を相手に苦戦中だ。

満足に戦えるのは、カイザーとストレイクロウだけだった。

 

《タイラント、テンペスト。足手まといは撤退しろ。後は俺達がやる》

《あんだとこの……》

《やめろ、テンペスト。……すまんなカイザー、そうさせてもらう》

《俺に退けってのかよ!ボウズも林檎もまだ戦ってるのによ!》

「スパルタンの旦那、いいから下がれよ。後は任せろ」

《ぐぐぐ……!》

 

作戦領域から離れていく手負いの僚機をソラ達が見届ける暇もなく、大型兵器は侵攻を再開した。

機銃がばら撒かれ、ハイレーザー砲が追いすがる2機のACを的確に狙う。

そして、その進路は依然として中央動力施設だった。

 

《あんな大火力を10発以上くらって無事なわけがねえ。防御スクリーンでやせ我慢してるだけだ。攻めるぞ!》

「ああ、絶対止めてやる!」

 

ロイヤルミストに応答し、ソラはフットペダルを踏み込んだ。

撃ちきったロケットをパージし、武装をマシンガンに切り替える。

一発一発は豆鉄砲でも、スクリーンにかける負荷は大きい。

それで防御力が低下すれば一気に突撃し、左腕のブレードで致命傷を負わせることができるはずだ。

そこまで辿りつければ、だが。

 

「っ!」

《避けろ!》

 

相方の警告より先に、ソラは反射的に動いた。

またも敵の6枚羽が展開され、レーザーの束が後方のAC達向けて縦横無尽に薙ぎ払われる。

切り裂かれた地点は一瞬遅れて爆発炎上し、その異常な高火力を存分に見せつけてきた。

しかし、一度見た大技に被弾するほど、ソラもロイヤルミストも腑抜けてはいない。

吹き荒れる高出力レーザーの迎撃網をくぐり抜け、トリガーを引き絞りながら前進する大型兵器をひたすらに追いかける。

 

《中央動力施設まで、残り距離800!施設が敵の射程に入ります!もう時間がありません!》

《ストレイクロウ、もっと背中にはりつけ!プレッシャーをかけ続けろ!》

「やってるよ!けど……止まらねえ!」

 

いくら撃ちまくろうが、大型兵器は構わず最終目標の施設向けて進み続ける。

派手な大技は避けられても、その先に待ち構える弾幕の密度が凄まじい。

APがどんどん削られていく。

2500。2200。1900。

機銃の砲門はいくつあるのか。

ハイレーザーに冷却の隙はないのか。

レイヴン達の死で揺さぶられた心に焦りの感情が巣食い、圧倒的な敵の性能に有効な対抗策を思いつくこともできず、ソラはトリガーを引きっぱなしにした操縦桿をやたらめったらに振り回していた。

やがて近寄ることすらままなくなり、徐々にだが相手に離され始める。

もう中央動力施設は目と鼻の先だ。

時間が無い。全てが終わる。

 

そんな時、カイザーがオーバードブーストを使って大型兵器の前面に躍り出た。

 

「カイザー!?」

《来やがれクソったれ!ミサイルと槍で来い!!》

 

ロイヤルミストの挑発を受け取ったかのように、大型兵器が無数の飛翔体を撃ち上げる。

マイクロミサイルと徹甲槍が同時に敵の前方に降り注ぎ、嵐のような爆風と共にカイザーのAPをがりがりと抉り取っていった。

缶コーヒーを片手に笑う大男の姿がソラの脳裏に過り、その考えを悟った。

賭けたのだ。

大型兵器が自身の攻撃に巻き込まれないよう、進撃速度を緩めることに。

そしてその賭けは、見事成功した。

あとは、ソラが応えるだけだった。

 

「おおおおおぉぉっ!!」

 

オーバードブースト全開。

躊躇を捨て、弾幕に突っ込み、突き抜け、超高出力ブレード"MOONLIGHT"で本体を斬りつける。

防御スクリーンに青白い刃が干渉し、稲妻が巻き起こった。

手応えはある。それでも仕留めきれないかもしれない。

理性はそう告げていた。しかし、レイヴンとしての本能は別だ。

戦友が捨て身で作った、最後の好機。

活かさなければ、男じゃない。レイヴンじゃない。

エネルギーがレッドゾーンに達するのも構わず、ソラは吼えた。

 

「貫けぇぇぇっ!!!」

 

本能が、敵の盾をぶち破った。

ブレードが厚い装甲に食い込み、溶断していく。

そのまま縦一文字に、真っ二つに斬り裂いた。

大型兵器の装甲の亀裂から大量のエネルギー光が溢れ出て、赤い爆発に変わっていった。

大がかりなボディを駆動させるための動力機関がスクリーン消滅の過負荷と強力な一撃で暴走し、内部から一気に破裂したのだ。

 

《はっ、それで、いい……ぐ……何やってるんだ、俺は…………ワル、キューレ……》

 

カイザーのAPは、とっくに0になっていた。

 

「……!ロイヤルミスト、何で俺に……!!」

《そ、ソラさん……奴にとどめを……!》

 

ソラが勝利の余韻に浸る間もなく、息も絶え絶えのアップルボーイの声が聞こえた。

エスペランザのAP残り200。

そして、レーダー範囲に高速で入ってくる赤い光点。

子機だ。本体がやられて、すぐさま引き返してきたのだ。

もぎ取れたエスペランザの左腕が頭部に突き刺さったまま、最後の天使はソラに向かってくる。

防御スクリーンをばちばちと唸らせながら、グレネードキャノンの砲口を持ち上げた。

狙いはチャージング中のストレイクロウだ。

逃げられない。

ここまできて――

 

《ぐぉおぉぉっ!!》

「っ、旦那!?」

 

オーバードブーストで無理やり割り込んできたのは、スパルタンの赤いタンクAC"テンペスト"だった。

退いたはずなのに、ダメージを承知で戻ってきたのだ。

テンペストは子機の横っ腹に勢い良く特攻し、そのまま両腕のマシンガンと投擲銃を叩きつける。

 

《へっ、カイザーの野郎、かっこよかったじゃねえか!俺にもかっこつけさせろ!》

 

複雑な形状の装甲に無理やり機体を挟み込ませ、防御スクリーンをぶつけ合いながら零距離射撃を続けるテンペスト。

激しい乱射に、子機はのたうち回るようにしてバランスを崩した。

だがそれは同時に、もつれ合うテンペストの危険をも意味した。

ソラはモニターを睨みつける。チャージングは、まだ終わらない。

それに下手に攻撃すれば、テンペストまで巻き込んでしまう。

 

「旦那、無茶だ!離れろ!後は俺がやる!やるって言ってんだろ!」

《うるせえっ!弟子2人とA-2サマが奮戦してんのに、俺が指咥えて見てると思ったかよ!一度は逃げて廃った男のかっこつけ、見届けやがれ!!》

 

防御スクリーンの衝突が無くなった。

テンペストのAP、0。

それでもスパルタンは火器の連射を止めなかった。

戦士の雄叫びが、豪快な砲声と共に戦場に轟き渡る。

テンペスト、その名の通り暴風の如く。

 

《あばよボウズ!達者でやれよ!俺より強くなれよ!林檎少年もな!ああちくしょう、俺も美人のオペ子といちゃつきたかったな、ばっきゃ》

 

大爆発が起きた。

炎に包まれた天使が、瓦礫の上へと落下していく。

粉々のACパーツと共に。

 

《っ……目標、全機撃破……作戦は、成功です……》

 

レインが声を震わせて、死闘の終了を告げる。

戦場に、ついに静寂が訪れた。

後に残されたのは瓦礫と骸と、僅かばかりの生き残りと、守りきった中央動力施設だけである。

 

「……何だよそれ。……何だよ、バカ師匠……!何だよ、どいつもこいつも……!くそっ!!」

 

サイドモニターをぶっ叩いた拳が、じんじんと痛んだ。

身体の震えが止まらない。

涙がとめどなく溢れる。

戦場で泣いたのは、初陣以来だった。

男なら泣くなとスパルタンに殴られてから、一度も泣いたことはなかった。

大敵を退けた安堵と多くの戦友を失った悲しみで、張り詰めていたソラの心の堰が、ついに決壊したのだ。

 

「応答しろ、してくれよ……ビルバオ!ロイヤルミスト!スパルタン!!」

 

応える者は、誰1人としていなかった。

そして。

 

 

《フェーズ4、クリア。フェーズ5へ、移行》

 

 

ソラの慟哭に応じたのは、あの男女が入り混じった機械的な声だった。

 

《……っ!レイヴン、コーテックス上層部より緊急通信です!今回の戦闘と同じ大型兵器が、さきほど第三層産業区に出現!!市街地の蹂躙を始めたそうです!とにかく一度帰還してくだ……えっ……?》

 

ソラは涙に濡れた視線を上に上げた。

いつの間にか偽物の空が、真っ白になっていた。

そして、白い灰のような物が、とめどなく落ちてくる。

 

「これはまさか……リツデンの時と同じ……」

《"雪"?どういうこと……?特殊実験区ですらない場所で、どうしてこんなものが……》

 

フェーズ5。

レイヤードが、地下世界が、終わろうとしている。

ソラは誰に言われるでもなく、はっきりとそう感じた。

 

散っていった者達も、生き残った者達も。

無慈悲な純白の"雪"は、全てを覆い尽くしていった。

 

それが管理者の意思だと、言わんばかりに。

 

 

 




ゲーム本編だとロイヤルミストをここで雇えるのはとても熱かったですね。
アリーナの道中で何度も言及される存在ですしね。
でもってアップルボーイもレジーナも出られるし、戦闘方法を工夫することで色々な楽しみ方が出来るいいミッションです。

毎度死にまくりの重たい話ですいません。
あと更新は2,3回で終わりそうです。
ここまできたら最後までお付き合いくださいますよう、お願いします。
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