ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~ 作:神父三号
空が好きだった。
孤児院にいたあの頃、遊び疲れてふと見上げる空が。
空はいつも曇り空で、太陽が雲の向こうでうっすらと光っていて。
だけど本当にたまに晴れていて、そうしたら太陽は真っ直ぐに見つめられないくらいにまぶしくて。
《時間ですよ》
「あ、先生」
先生が呼びに来てくれた。
呼ばれて初めて気づいた。
もう夕方だ。夕食の時間だ。
いつも柔らかく微笑んでいる先生の顔が今日はなぜか、夕日に一際強く照らされて、よく見えない。
泥まみれのボールを抱えて戻ろうとして、その場に立ち止まった。
《どうしたのですか?》
「うん、ちょっと」
先生に背を向けて、空を振り返る。
西に沈む太陽がじんわりと赤くなっていた。
雲も淡い赤に染まっている。
この色が、自分はすごく好きだ。
《あなたは本当に、空が好きなんですね》
「うん。大人になったら、空を飛ぶ仕事がしたいな」
《空を飛ぶ仕事って?》
「うーん、分かんない。飛行機のパイロットとか?」
先生がクスクスと、後ろで笑った。
なんだか恥ずかしくなって、ボールをぎゅっと強く抱いた。
「……笑わないでよ、先生」
《ごめんなさい。あなたは本当に変わりませんね。私が……初めて出会った頃のままです》
先生が後ろから、優しく抱きしめてくる。
自分に、親はいない。
天涯孤独の身で、気づけば孤児院にいた。
でも、愛される温もりを知っていた。
いつも誰かが見守ってくれていることを、知っていた。
だから、寂しくなかった。
俯かずに前を向いて、生きていけそうだった。
《いつまでも、ここにいてはいけませんよ》
「うん、夕飯できたんだもんね。行かなくちゃ」
《いいえ、そうではありません》
《……ソラ。あなたが勝ち取ったものを、その目で見に行きなさい。皆がそれを、待っています》
「先生?………………フレデリカ?」
………
……
…
ソラが昏睡状態から目覚めた時、既に1週間が過ぎていた。
最先端の高度医療をもってしても1週間、ソラは生死の境を彷徨い、目覚めなかった。
中枢のデータを得るための連続出撃と管理者相手の死闘によって、心身を極限まで消耗したためである。
目覚めた時、傍らにはレインがいた。
珍しく感情を爆発させて抱きついてきた彼女を軋む体で受け止め、ソラは自分が生きていることを実感した。
窓から見える偽物の空にもう"雪"はなく、いつも通りの曇り空が広がっていた。
目覚めたその日は次から次へと、見知った顔が病室へやってきた。
ある者は泣き、ある者は笑い、ある者は安堵のため息を吐き、またある者は「起きるのが遅い」とぼやきながら、皆等しくソラの生還と戦果を祝福した。
夜になると、面会時間は終わっているにも関わらず、2人の人物がソラを訪ねてきた。
グローバルコーテックスの代表と、ユニオンの指導者だった。
「よくやってくれた。コーテックス全職員を代表して、心から感謝する。……ありがとう」
コーテックス代表はソラに対して深々と頭を下げてきた。
ソラにとっては、一切面識のない人物だ。
今さらになって言葉を交わしても、という気持ちが少なからずあった。
それを慮ったのか、代表はそれ以上は何も言わずに退出していった。
「ソラ。君が昏睡している間に何があったのかについては、これを見てほしい」
残ったユニオンの指導者が、携帯端末を手渡してきた。
画面に映っているのは、1通のメールだった。
差し出し人は、管理者である。
「君が管理者の本体を破壊した後、このメールがグローバルコーテックス及びユニオン、そして三大企業のトップへと送信されてきた」
そこには、こう書かれていた。
再生プログラム、全工程を終了。
地上へのゲートロックの解除権限を、レイヴン"ソラ"に移譲する。
レイヴン"ソラ"の地上進出後に、管理者が管轄していたレイヤード全土の機密ブロックを開放。
各企業は開放された機密ブロックより地上へ進出、速やかに調査を開始すること。
なお、後日送信するレイヤードの維持管理プログラムの保全及び調整は、三大企業の合議によってのみ可能なものとする。
「……地上への、ゲートロック?」
「そうだ。おそらく管理者は一連の騒乱で、我々人類を試していた。再生を終えた地上へ、出る資格があるのかどうか。そして人類がその資格を得るのに最も貢献したのは間違いなく、実働部隊と戦い続けて最後には管理者を破壊した……君だ、ソラ」
ユニオンの指導者は、ソラの肩を軽く叩いて微笑んだ。
まだ、よく実感が沸かない。
本当に地上へ行けるというのか。
それも自分が、人類で一番最初に。
ソラはあまり上手く働かない頭で、しかし目の前の男に言うべきことを考えた。
「……行方をくらました、フレデリカ・クリーデンスのことなんだが」
「言わなくていい。何となく、察しはついていた」
「……いつから?」
「あの日……"雪"の降る中で君がレイヴンの墓場にいることを、彼女が私に教えてくれた時から」
「ACのレコーダーに、通信記録が」
「他のレイヴン達が君を回収して脱出してきた際に、全て確認している。……最後のゲートに突入して通信不良が起きた後のことは、何も残っていなかったよ。何も」
「……そんな」
「だからもう、彼女のことはいい。フレデリカ・クリーデンスは、確かに我々の同志だった。レイヤードの未来のために戦い、その最中で消息を絶った。それで、いいんだ」
「……そうか。そうか」
ソラは目を閉じ、ベッドに身を横たえた。
一筋の涙が、頬を伝った。
「……レイヤード中の機密ブロックや地上の調査を巡って、また企業が派手に争い始めるな」
「間違いなく、な。早くも一部のセクションでは、その兆候が見え始めている。おそらく都市区の復興も、そっちのけになるだろう。企業はずっと、君の地上一番乗りを今か今かと待っている」
「生き残った市民も、いずれ状況を察するぞ。そしたら皆、管理者を恨むだろうな。勝手に試されて、勝手に苦しまされて、それでこれからもまた、新たな争いの犠牲にされるなんてな」
「そうだな。管理者への畏怖と崇敬は、そのまま全て怨嗟と憎悪に変わるだろう。だがそれは当然のことだ。……地下世界の秩序は、根底から覆る。レイヤードは上も下も、かつてないほどに荒れ始める」
「……コーテックスとユニオンはどうする気だ?」
「コーテックスは当分、三大企業の争いに関与しないことを既に各代表へ通達している。一連の戦いでレイヴンが減りすぎた。しばらくは新たなレイヴンを選抜しながら、不干渉を貫くだろう」
「企業連中が許すか?」
「ミラージュ、クレスト、キサラギ……いずれもコーテックスの方針を認めている。生き残ったレイヴンは君を含めて、歴戦の手練ればかりだ。どの企業も勢力が弱りきっている今、レイヴンを相手に無駄な出血は避けたいはずだからな」
「俺達はしばらく羽休め、か。仕方ないな」
「……管理者との戦いの中で、君達レイヴンは何度も共闘を繰り返している。コーテックスが活動を再開すれば、共に死線を乗り越えた仲間とも戦場で相対するだろう。……それは大丈夫なのか?」
「俺達はコーテックスに所属していても、チームじゃない。あくまで独立傭兵だ。ここ最近つるんでたのは、そういう大がかりな合同作戦の依頼があったからってだけさ。また個別に依頼が入ってくるようになれば、今まで通りに戦うだけだよ。戦場で出くわせば、もちろん敵同士だ。そんなこと、生き残った連中は皆分かってる」
「そうか……強いな、レイヴンというものは」
ユニオンの指導者は感心したように、しかしどこか悲しげに呟いた。
管理者との戦いに積極的に参加し、戦果を上げたレイヴンは当然、企業も把握しているだろう。
となれば重要な戦局を左右するような依頼は必ず、自分も含めた現在の上位ランカーに集中する。
遠からず、潰し合いは避けられない。
だがそれもまた、レイヴンの宿命である。
「……あんたらユニオンはどうする?」
「我々はある意味、これからが本番だ。また支持者や同志を集めつつ、市民の復興を出来る限り支援していく。コーテックスの協力も取り付けた。……復興とは、ただ衣食住を再建するだけではない。新しい時代を生きていくことを、レイヤードの市民皆で考えていかねばならない。『未来を創ること』……それは地上への進出を急ぐことが全てではないと、私は考えている」
ソラは無言で頷いた。
「そういえば、君はグリーンウィッチの指導者を引き継いだらしいな」
「え……はぁっ!?だだだ、誰がそんなふざけたことを!?」
「違うのか?グリーンウィッチのメンバーは皆、口を揃えてそう言っていたが」
「……そういや前にビルバオがそんなメールを寄越してたような。あれ本気だったのかよ……」
「彼らもまた、レイヤードの復興活動に賛同してくれている。環境テロリストと言われがちだがその実、あの組織は貧困層から富裕層、企業の一部の派閥に至るまで幅広いコネクションを有している。君が本当に指導者になるならば、話が早いのだが」
「……まあ、あいつらには色々と借りもあるけどよ。でも、勘弁だぜ。そんな大仰なポジションは」
「だろうな。……ふふっ、はははは」
「笑い事じゃねえよ……ったく。はぁ……一度ちゃんと、頭下げて断りに行くか。……ビルバオには悪いけど」
「それがいいな。グリーンウィッチは……あー、非常に精力的で活動的な組織だ。早めに話をつけておかないと、本当に指導者にされてしまいかねないぞ」
馬鹿げた話の後、2人の間にしばしの沈黙が訪れた。
「…………なぁ。もし俺が目覚めなかったら、どうなってただろうな?」
「どうもこうもないさ。どの勢力も君が目覚める前提で、話を進めていたからな」
「高度医療受けてても、目覚めるのに1週間もかかったんだぜ?俺、そんなに信頼厚い男か?あんたとツーカーのキサラギ代表はともかく、クレストやミラージュ共は」
「それでも皆、君が目覚めると信じて疑わなかったよ」
「……どうして?」
ユニオンの指導者は答えた。
「管理者が君に、人類の未来を託したからさ」
………
……
…
2週間後。
すっかり快復したソラは愛機のAC"ストレイクロウ"に乗って、決戦を繰り広げたあの坂道を、再び訪れていた。
《レイヴン。管理者本体の遥か頭上に、地上へのゲートがあるはずです》
「ああ、分かってる」
立ち並ぶ柱は無惨に崩れ去り、瓦礫の山と化している。
最奥の途方もなく巨大なコンピュータユニットは、既に役目を終えて、停止していた。
ソラは無言で操縦桿を倒し、ACで坂道を上っていく。
途中には、管理者の使徒達の残骸が転がっていた。
真っ二つになった、純白の天使も。
ここで起きたことは、戦闘記録に残っていない。
ソラしか知らない。
それでいいと、今は思っていた。
いずれ、レインには話すかもしれない。
でも今は胸に秘めたままにしようと、ユニオンの指導者との会話を振り返りながら思った。
「よっと……」
ストレイクロウのメインシステムを通常モードにしたまま、管理者の本体や周囲の壁面をよじ登っていく。
ACが足を休めるのにおあつらえ向きの足場が、何故かいくつもあった。
ある程度の高度まで登ると、見覚えのある浮遊ユニットが1機、ストレイクロウの前に降りてきた。
《不思議ですね……おそらく本来はメンテナンス用のユニットでしょうが、管理者は停止しているのにこのユニットだけは生きているなんて》
訝しむレインに構わず、ソラは浮遊ユニットにACを乗せた。
ふよふよと、ユニットが上昇していく。
管理者の本体よりも、高く、高く。
何分上昇しただろうか、やがて天井に1枚のゲートが見えてきた。
《シリアルを確認。管理番号……0824-FK3203……権限を確認。ゲートロック、解除》
古めかしい機械音声が流れ、ソラが何もせずとも、ゲートが開き始めた。
まばゆい光が、溢れ出す。
「レイン……頼みがあるんだ」
《何でしょうか?》
「地上に出たら少しだけ、1人にしてくれ」
《…………》
「気が済んだら、こっちから通信を入れるから」
《……了解しました》
「ありがとな」
《いえ……レイヴン、いってらっしゃい。……おめでとうございます》
………
……
…
青かった。
突き抜けるような澄みきった青色の中に、眩しい太陽が1つと、真っ白な雲が幾つか漂っていた。
こんな青色を、ソラは見たことがなかった。
空だった。
偽物ではない、本物の空だった。
ソラはACのモニター越しでは我慢できずに、思わずコクピットから降りた。
踏みしめた地面は、一面美しい緑だ。
いや、よく見れば緑の中に白や赤、黄色や紫、様々な色が小さく混じっている。
それらはなだらかな傾斜を描きながら、盛り上がった丘を形成していた。
ソラは視線を上げたまま、丘の上を目指して歩き始めた。
頂上に辿りつくのが待ちきれなくて、途中から走り出した。
石につまずき、花が密集して咲く中に顔から転げた。
目の前の小さな紫色の花から良い香りが漂ってきて、鼻をくすぐった。
その場でソラは、仰向けに寝転んだ。
青い空の中を、黒褐色の大きな鳥が1羽、大きく旋回している。
大声をあげて、呼びかけてみた。
鳥はこちらに構わず旋回を続け、やがて丘の向こうへと飛んでいった。
草を踏む、足音が聞こえた。
ソラが体を起こすと、見たこともない小さな動物がいた。
四つん這いになって息を潜め、ゆっくりと、ゆっくりとそれに近寄った。
動物は耳と鼻をひくひくと動かしつつも、逃げようとしなかった。
しかし、手が触れそうな距離になった途端、一目散に逃げていった。
ソラは立ち上がり、また丘の上まで全力で駆けた。
息を切らしながら頂上に辿りつくと、眼下には環境区のような山と川と森が広がっていた。
だがそれはレイヤードの物よりも遥かに鮮やかで、まるで生きているかのようだった。
いや、実際に生きているのだ。
この自然は誰に管理されるわけでもなく、自分達の力で生きている。
生命を、育んでいる。
また空を見上げた。
青の中を漂う雲の流れが、少しだけ早くなっている。
山の向こうに、薄暗い色の雲が見えた。
ソラは腹の底から叫んだ。
遠くの雲を呼ぶように、あるいは遠ざけるように。
何度も、何度も叫んだ。
雲はソラの叫びなど知ったことかとばかりに、じわじわと近づいてくる。
やがて叫びは、笑い声へと変わっていった。
膝を折り、その場にどかっと座り込んで、じっと雲を見つめて、待った。
どれくらい待っただろうか。
薄暗い雲が、ソラの頭上までやって来た。
ぽつぽつと、雲から水滴が落ちてくる。
"雨"だ。
最初は小降りだった雨は、次第に強く降り始めた。
ソラはあんぐりと口を開けた。
舌を雨の滴が何度も叩いた。
髪が濡れ、顔が濡れ、パイロットスーツが濡れた。
雲が通り過ぎていった。
ソラは全身びしょ濡れにされたことを、去っていく雲に向かって怒鳴った。
気が済むまで怒鳴った。
怒鳴り疲れて、その場にうつ伏せに倒れ伏した。
雨にじっとり濡らされた草花の香りは、先ほどまでとまた違って、濃厚だった。
耳を澄ませば、風の音、草がそよぐ音、動物の鳴く声が聞こえた。
そうして何もしないまま、時間だけが経っていった。
青かった空が、浮かぶ雲が、徐々に赤みを帯びていく。
ソラは起き上がって座り直し、膝を抱えた。
視線の先では太陽が遠くの山に向けて、ゆっくりと落ちようとしていた。
子供の頃から、一番好きだった空の色である。
だがそれはもう、偽物の色ではない。人工の色ではない。
間違いなく本物の、本物の空の色だ。
――そろそろ、レインに通信を入れなければ。
そう思いながらも、ソラはじっと夕焼け空に見入っていた。
眩しい夕日に目を細めながら、ソラは色々なことを思い返した。
孤児院のこと。
学校の教師のこと。
企業のこと。
グローバルコーテックスのこと。
ユニオンのこと。
共に戦ったレイヴン達のこと。
死んでいったレイヴン達のこと。
管理者のこと。
フレデリカのこと。
ユニオンの指導者は、人類の地上進出に最も貢献したのはお前だと、言ってくれた。
だけど、自分が今この場所でこうしていられるのは、自分独りの力によるものでは決してない。
支えてくれた人達がいた。
導いてくれた人達がいた。
奮い立たせてくれた人達がいた。
そして――管理者が最後の最後で、背中を押してくれた。
涙が溢れ出る。
拭っても拭っても、溢れ出る。
きっと、夕日が眩しいせいだろう。
そうに違いない。
ソラは涙を流しながら、夕日を見つめ続けた。
やがて、太陽が完全に山に隠れ、じんわりと夜が訪れた。
夜空には、たくさんの光が瞬いた。
それは、レイヤード中枢の広場で見たものによく似ていた。
だがそれよりもずっと、空の光は数が多かった。
淡い光、強い光、白い光、赤い光、青い光、そして本物の月の光。
夜を彩る光の数を数えようとして、100を超えた辺りで面倒くさくなって諦めた。
夜空を眺めながら、ソラは時間をかけてゆっくりと、丘を下っていった。
りー、りーとまるで鈴が鳴るような音がそこかしこから聞こえてくる。
そして、ストレイクロウの元に帰り着いた。
コクピットに戻り、通信を入れると、レインが呆れた声をあげた。
滔々とした専属補佐官のごもっともな説教を適当な相槌と謝罪で聞き流している最中、ソラはレーダーに反応が出現していることに気づいた。
反応の色は、緑――味方だ。
近い。距離500。
レインに一報を入れ、ソラはACを走らせた。
距離400。300。200。
何も見えてこない。
距離100。50。0。
ソラはACの足元に、何かが転がっているのに気づいた。
小さなテーブルほどのサイズの、平らな石板だ。
嫌な予感は、特にしない。
月の光に照らされた石板は、キラキラと輝いて見えた。
再びACから降り、ソラは石板を間近で確認した。
綺麗な長方形に整えられたそれは、明らかな人工物だった。
しかし、何も刻まれていない。
何となしに、手のひらを置いた。
文字が浮かび上がった。
知っている文字だ。
レイヤードで使われている文字だ。
読める。
『苦難を乗り越え、地上に回帰した同志達へ』
『我々は、何度も過ちを犯した』
『過ちの果てに、地上を捨てるしかなかった』
『過ちの果てに、管理者に全てを託し、君達を地下へ送るしかなかった』
『その過ちの多くはいずれ、君達によって繰り返されるだろう』
『しかし』
『それでも我々は、信じている』
『地下世界から帰ってきた、君達の意思を。力を。可能性を』
『そしていつか』
『いつか空の果てで、"宇宙"の彼方で、また巡り会おう』
『我々は、いつまでも待っている』
「空の果て……"宇宙"……」
ソラは、夜空を見上げた。
天を覆い尽くす光が、ソラをうっすらと、だが確かに照らしている。
「じゃあ、次は"宇宙"だな」
ソラは大きく身体を伸ばし、両手を本物の空へと掲げた。
「待ってろよ。いつか必ず、俺達は追いつくぞ」
レイヴン。
"意思"と"力"と、"可能性"の表象。
それはいついかなる時代も、変わらない。
人類の歴史が、続く限り。
このお話はこれでおしまいです。
ここまでお読みくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。
本作は2022年から投稿を開始して、極めて不定期に連載し、さらに途中で1年以上の更新停止を挟み、2025年になってようやく完結となりました。
特に連載当初からリアルタイムで読んでくださっていた方々につきましては、最終決戦の手前で止まってから完結まで非常に長くお待たせしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
本作を書き始めたのは、アーマードコアシリーズが25周年を迎えた中で「なにとぞAC6が発売しますように」という祈願のためでした。
連載中に本当にAC6が発表された時は感無量でした。
しかし同時に、本作に込めた願いがかなったことで、「もうここまででいいか、切り上げるか」と何度も思いました。
それでもなんとか全編完結まで書ききれたのは、本作を読んでくださった皆様のおかげです。
実はこれを書き始めた頃はもっとお話をコンパクトにまとめて、続編のSLまで書こうと思っていました。
SLの主人公は昔のキービジュアルに倣って女主人公にしようとか、ゼロとカラードネイルの因縁を深く描こうとか、サイプレス(テン・コマンドメンツ)の3からSLに至るまでの話も描こうとか、色々考えていました。
ただ、思っていたよりも3のお話作りに多くの苦難が伴い、SLを書くのは断念してしまいました。
だからゲーム本編ではほとんど活躍しない僚機のカバルリー乗りなデュミナスに盛ってSLのゼロへ繋げたり、フレデリカ・クリーデンスというSLのセレ・クロワールのオマージュなオリジナルキャラをいきなり出したりと、3のお話の中でSLの要素を少しでも盛り込もうと色々あがきました。
本当に色々紆余曲折がありましたが、自分が納得するまで何度も捏ね繰り回し、何とか一つの作品として完結まで至れました。
透明です。気分が良いです。
どうかこれからも、末永くアーマードコアシリーズが続きますように。
最後に改めて、この作品を読んでくださって、本当にありがとうございました。
おわり