ARMORED CORE 3 Replay ~ Stray Crow~ 作:神父三号
機体構成が変更されたので記載しておきます。フレーバー程度ですので、あまり気にしなくても大丈夫です。
右腕部武装:MWG-RF/220
その他:全て初期装備(肩部ミサイル無し)
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グラン採掘所の制圧を依頼する。
この採掘所は、これまでキサラギによる採掘が進められてきたが、つい先日莫大なレアメタル鉱脈の存在が確認された。
公正な協議の結果、同施設は三大企業の共同所有物とすることが正式に決定し、我々ミラージュが代表して採掘にあたることとなった。
ところが、この決定に確かに同意したはずのキサラギは既に明渡し期限が過ぎているにもかかわらず、強引に採掘を続けている。
ミラージュの立場を無視したからには、相応の報いを受けてもらう。
採掘所内に存在する敵戦力をすべて排除しろ。
失敗は許されないと思え。
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《依頼主はミラージュ社。作戦区域は第三層産業区、セクション554です。成功報酬は11,000Cで、施設の損壊度に応じて減算があります。予測戦力は……普及型の戦闘MTが10機前後とガードメカですね》
専用住居に併設されたブリーフィングルームでミラージュ社からのメッセージを再生し、レインの補足を聞く。
三大企業のキサラギが保有する採掘所の制圧。
ソラがレイヴンになって、2件目の依頼である。
「レアメタルの争奪戦、それも500系セクションのど真ん中か……重要度の割に、キサラギの戦力が少なくないか?」
《資料によると、明け渡し期限はかなりタイトに定められていたようです。キサラギ側も充分な戦力が確保できなかったのでしょう》
地下鉱脈のレアメタルは、兵器のみならずあらゆる工業品に活用される最重要資源である。
必然的に企業間の大きな火種にもなりやすく、紛争の激化を抑えるために採掘施設を共同所有物にすることも珍しくはない。
だが、依頼のメッセージに漂う不穏な空気は、到底協議の結果ともキサラギの確かな同意があったとも思えなかった。
クレストに至っては協議の場に呼ばれてもいまい。
おそらく、ミラージュによる体のいい侵攻である。
「期限切れを理由にした強襲前提で動いてたってところか。鉱脈が確認された時から武力制圧するつもりだったな、ミラージュは」
《依頼を受諾しますか?》
「ああ、やる。すぐに返事を頼む。俺みたいな駆け出しに依頼してくるくらいだ。多分ミラージュも相当急いでるだろ」
《了解しました。……それと、本依頼では僚機としてMTの雇用が認められていますが》
「僚機?」
《ええ。候補者のリストがミラージュより送付されています。レイヴンへの報酬とは別に予算を設けるとのことです》
「……普及型MTが相手なら要らないだろ。初対面の傭兵同士だと、連携も取りづらいしな。その代わりに報酬額を増やせないか、交渉を頼む」
《やってみます》
レインとの通信を終えて、ソラはふっと息を吐いた。
前回はクレストの依頼で第一層第二都市区へ、今回はミラージュの依頼で第三層産業区である。
MT乗りをしていた頃とは、行動範囲がまるで違っていた。
企業の産業区に立ち入るのは、人生で初めてのことである。
「失敗は許されないと思え、か。分かってますとも」
地下世界最大の企業に相応しい高圧的な言葉が、ソラには発破のように感じられた。
どの道、駆け出しでつまずけば、起き上がることは容易ではないのだ。
レイヴンを続けるためには、今は成功し続けるしかない。
「もしもしチーフ、俺だ。仕事が入った。出撃準備頼む。……ああ、ミラージュの依頼で産業区に下りろとよ。じゃあ、よろしく」
ソラはガレージの整備班に連絡を入れて、更衣室へと向かった。
………
……
…
グラン採掘所のメインフロアに続く通路を、ブースターを噴射してAC"ストレイクロウ"が一気に突破していく。
道中の迎撃にMTは含まれておらず、自動制御のガードメカと天井に据え付けの自律砲台のみだ。
FCSが自動でロックした砲台に向け、ソラは操縦桿の引き金を引いた。
つい先日購入した新型のライフル"RF/220"が砲声を轟かせ、徹甲弾を発射する。
豆鉄砲を無感情にバラ撒いていた砲台に風穴が空き、一瞬スパークして爆散した。
通路を塞ぐように居並ぶガードメカが反撃の機銃を撃ち込んでくる。
狭い通路ではかわしようがなく被弾するも、ACの防御スクリーンの前には到底有効なダメージを入れることはできない。
ほんの少しだけ低下したAP表示に一瞥をくれた後、ソラはライフルを連射した。
1機、2機、3機とガードメカが次々に吹き飛び、ほどなくして通路にはソラの駆るACのみが残った。
《進路クリア。コードキー入力。メインフロアへのゲートロックを解除します。少し待ってください》
「……良い買い物をした。チーフに礼を言わないとな」
ソラはコクピットの中で1人、新調したライフルの性能を称賛した。
連射性能はそのままに、威力、射程、弾数、射撃精度の全てが確実に、初期配備のライフルより向上している。
ここまでの侵攻で既に、その使い勝手の良さを実感していた。
そしてそれは同時に、ACという兵器の発展性を再確認することでもあった。
まだ、初期配備品からライフルを変更しただけなのである。
まだまだこの機体は強くなる。ソラはそう確信していた。
《ゲートロック解除。レイヴン、突入を》
「了解。……いや、待て」
ソラはゲートの開き方に違和感を覚え、突入する前にその四隅をライフルで撃った。
瞬間、ゲートが爆発し、通路を大量の光る粉塵が覆った。
ソラは息を呑み、ブースターを吹かさずACを素早く、大きく後退させる。
一瞬遅れて粉塵の向こうから砲声が轟き、通路を激しい爆炎が包み込んだ。
ナパーム弾が撃ち込まれ、引火性の化学物質と反応して大爆発を起こしたようだった。
大きな振動と共に黒色の煙が充満し、モニターの視界が塞がる。
《……!レイヴン、何かありましたか!?》
「問題ない、無事だ。クソっ、流石に一筋縄じゃいかないな、キサラギは……」
無意識に悪態が口をついた。8500近くあったAPが一気に7000まで減少している。
乗っているのがACでなければ、木っ端微塵だっただろう。
手荒な歓迎をなんとかやり過ごしたソラは、レーダーとFCSの予測を頼りに通路の奥からメインフロアに向けて砲撃した。
ロングレンジライフルの砲弾が煙の中を飛び込んでいき、レーダーから機影を消滅させた。
手応えが弱すぎる。おそらくはこれも、自動制御のガードメカだろう。
さらなる反撃が来ないことを確認した後、ソラはACの脚部を走らせ、採掘所のメインフロアへと乗り込んだ。
鉱山内とは思えないほどに広大な空間には、いたるところにコンテナや鋼材が積まれ、クレーン車が放置されている。
「敵影なし。いや……レーダーに障害か。表示範囲が虫食いになってやがる」
《開いたままのゲートが複数箇所ありますね。採掘所内には、ミラージュも把握していないルートがいくつかあるようです。脱出したのでしょうか?》
「非戦闘員は全員逃げてるだろうな。だが、さっきの歓迎とこのレーダー妨害を見るに居残りがいるはずだ。そいつらだけでも片づける」
ソラはコクピット内のコンソールを操作して、肩部レーダーの表示範囲を最大にした。
やはりレーダーは正常に機能せず、ところどころが虫に食われたようにブラックアウトしている。
だが、それは言い換えれば目印でもあった。
「索敵を妨害する何か」がそこにあるということである。
「ストレイクロウの頭部COMじゃ地形解析はできない。レイン、非表示範囲の内、大きなところを調べてくれ」
《はい、マップデータと照合します》
レインがソラの指示を受け、解析を開始する。
ミラージュから事前に提供された採掘所内の見取り図と照らし合わせれば、おおよその敵配置は予想できるはずだった。
特に大きな非表示範囲が、マップ上の空間と一致するのだ。
《ACにデータ転送。レーダー上にスポットします》
「……怪しいのは3ヶ所か。どれもサブフロアで別方向。面倒だな」
時間を稼ぐ意図が見え透いた配置である。
既にもぬけの殻になり、放棄されたも同然の採掘所でそんなことをする意味は、1つだけだ。
「……回収しきれない資機材を破壊してるな、こいつら」
《そんなことを?》
「やるだろうよ。ミラージュに奪われるよりはマシだ。……急ぐ!」
ソラはACのブースタを全開にして、最も近いサブフロアへと急行した。
ゲートが半ばまで開いた瞬間、小さな爆発音と共に先ほどと同じ光る粉塵が舞う。
「くどい!」
予想していた迎撃にソラはブースタで一気に機体を後退させ、襲いかかる爆炎を躱した。
煙の中でうごめく複数の影に、反撃のライフルを撃ち込む。
たやすく吹き飛んだのは、やはりガードメカだった。
炎の勢いが収まったのを確認して突入すると、資機材が散乱するフロアの奥にMTが3機見えた。
普及型の逆脚MT"モア"だ。頭部にECM装置と思しき装備をつけている。
迎撃の砲火は、ない。
モアは突入してきたACに構わず、コンテナやクレーンに向けてロケットを撃ち込んでいた。
「やっぱりな……そこまでだ!」
ライフルを向けると、FCSがフロア奥の敵をロックする。
従来のライフルでは届かなかった距離も、新調したロングレンジライフルならば届く。
砲声が轟いたその時、モアは積み上げられた鉄骨の山に身を隠す寸前だった。
隠れきれなかった機体の後ろ半分が砲弾に抉られ、そのまま頓挫して、鉄骨へともたれかかる。
山が崩れ、フロアにガラガラと耳障りな金属音が響いた。
そしてソラが舌打ちした瞬間。
残り2機のモアから、パイロットが飛び降りるのが見えた。
だがモアは2機とも、動きを止めない。
1機は巨大クレーン車へ、もう1機は一際大きなコンテナへと脚を向けている。
「くそったれが!!」
咄嗟の判断。
ソラはクレーン車に突っ込もうとしたモアを撃った。
コクピットを的確に撃ち抜く射撃がモアをのけ反らせ、さらに追撃が片脚をへし折った。
止められた――と思ったのも束の間、止められなかったもう1機がコンテナに衝突し、爆散した。
爆音と共にAC大のコンテナが紙のように吹き飛び、金属片を撒き散らしながらフロアの床を転がった。
自爆、だった。中に入っていた部品はひしゃげ、炎上し、もはや使いものになるまい。
《……レイヴン、残りのフロアの制圧を!》
落ち込むより前に、専属オペレーターの通信がソラの耳を貫く。
『失敗なんてすぐに忘れろ。生きてるなら、次上手くやればいい』
先輩の傭兵スパルタンに教わった言葉を思い出し、ソラはACを旋回させた。
残り2つのサブフロアでも、キサラギの手口は同じだった。
ゲート際でのガードメカと化学物質での足止め、そしてACを無視して破壊工作に専念するMT。
その全てに十全に対処できたのは、最後のフロアだけだった。
採掘所内は、まるで爆撃でも受けたかのように煙がいたるところから噴き上がり、惨憺たる有様となっていた。
《……全目標の排除を確認。レイヴン、お疲れ様でした》
「採掘所はボロボロだ。キサラギが一枚上手だったな」
《……それは》
「レイン、良いサポートだった。おかげでなんとか、この程度で済んだってところだ」
《いえ……あの……逃亡したMTパイロットの確保を、ミラージュに提案しておきます》
「ああ。まったく……いくら報酬から差っ引かれるか、楽しみだな」
ソラはパイロットスーツの胸元をくつろげ、側面の計器を軽く殴りつけた。
キサラギは急成長著しく、近年一気に台頭してきた企業である。
その躍進は決して勢いだけのものではないらしい。
新興企業とは思えない老獪さが、この採掘所の放棄1つとってもソラには感じ取られた。
「帰還する。輸送機を回してくれ」
《了解しました》
巨大企業の洗礼。いい勉強が出来た。
そう思うしかないと、ソラは息を吐いた。