どうかお付き合いください。妖ウォ二次増えてください。
プロローグ アーマーテラス、子孫を憂う
あれは、暑くも寒くもある、まるで僕みたいに半端で退屈な秋の日。
────僕はあの日、
「どうぞどうぞ、つまらないものですが」
「……つまらないも何も、ここは
粘土製の小さな手でご丁寧にもお茶と菓子を用意してくれる、秘宝妖怪としての弟分かつ子孫に対し、アーマーテラスはやれやれと肩をすくめた。
ニョロロン族は一般的に掴みどころがないと言われているが、彼はある意味非常に分かりやすい。もう千年以上の付き合いだ、言動も思考回路も容易に読解できる。
妖緑茶から立ち昇る湯気は、日輪の恵みを浴びて多少神気を帯び、そして部屋の空気に溶けていく。
アーマーテラスは赤福餅をひとつ手にとり、線をなぞるように優雅な所作で召し上がった。うむ、美味でございます。
「私は喜ばしいのです……貴方に、人間や他の妖怪の友達が出来たことが。パトラから聞きましたよ。貴方が妖魔界でやっていけるのかと不安で仕方ありませんでしたが────」
「おっとそういえば歯医者の予約が」
「日本一の健康優良児が何を
アーマーテラスは知っている。この間抜け面は意外と真面目で、食後の歯磨きを欠かさないこと。そもそも妖怪は人間より虫歯になりにくいこと。
すると突然、ヒョロヒョロフラフラと動いていたハニワの妖怪は、山地を鳴動させるような低い声で呟いた。
「チッ………ツッコミとかマジ要らねえから、アホ先祖」
「黙らっしゃい、バカ子孫」
仕方ない子だ。いつまで反抗期のつもりなのだろうか。神たるアーマーテラスが、つまらない人間が面白がるという年齢弄りに付き合うと思っているところが、大変可愛らしい。
アーマーテラスは太陽の光をそのまま映し取った瞳を眇め、愛しく愚かな子孫をまじまじと見つめた。
「────喪に服すのも、そろそろおやめ」
ヤマトボケルは振り向かない。
「聞いていますか?」
ドロン、と音を立てて、ヤマトボケルは紫煙と共に姿を消した。妖怪の数ある術のひとつ、闇から彼方へ神出鬼没。
「お得意のボケも成せませんか……これは時間の問題でしょう」
あの、おとぼけた顔の下では、未だ────
アーマーテラスは茶に口をつけ、身体の中の妖気と陽気を細く吐き出した。
「……もう一押し。何か、もう一押しあれば」
季節は
風が吹き渡る。────昔の人間ならば、凶兆のしるしとして恐れたのだろう、絡み付くような風が、太陽の屋敷を、妖魔界を、別次元の人間界を包んでいた。
妖魔界からのアクセスが快適な日本の都市、さくらニュータウンにある、さくら住宅街。
ひとりの小学生が、ふたりの妖怪を伴って、空の下に元気よく飛び出していった。
「いってきまー……さ、さっむぅぅぅ!!」
「オレっち寒いの嫌いニャン……こたつで丸くなりたいニャン」
「夏休みが終わった途端、こんなに寒くなるなんておかしい! これ、絶対に妖怪の仕業だ!」
「いやいやケータくん。季節の変わり目でいきなり暑くなったり寒くなったりするのは地球温暖化の影響であって、そんなことまで妖怪のせいにされては……」
「いた!!」
「うぃすー!?」
夏が終わり、秋が始まる。
出会いはもうすぐ、紅葉と共に訪れる。