結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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白鳥歌野の章ー5「喜びも悲しみも」

 

 牧葉ひかるによって案内された先にあったのは独特な形状の飛行機だった。

 

「この飛行機? は何なのですか?」

「この機体はダブルスペイザー改と言います。この諏訪の地で守護神と呼ばれているロボットの話は知っていますか?」

「「はい」」

「バーテックスには神性を纏った攻撃しか有効ではないとされています。あのロボットは他の星の守護神として建造された物ですが神性を纏っているか、そして、纏っていたとしても、バーテックスに有効かは不明です」

 

 何故、彼女がその事を知っているのかに関しては時間も押しているので聞かない事にした。

 

「この機体のベースは元々、そのロボットと合体可能な支援機であるダブルスペイザーをベースに改造された機体です。元々ダブルスペイザーは超合金ニューZ製で並のバーテックスに対してはその力を利用してダメージを与える事は可能でした。当時のこの機体の目的は、守護神のとある欠点を解消する目的にすぎませんでした。改良されたこの機体は勇者と機体を同期させて勇者パワーを一体化させる機能が搭載されています。これは、北海道にかつて存在した獣神のシステムを人の手によって再現した物でもあります」

 

 獣神。この世界は私達が思っていたよりも巨大な厄が定期的に襲い掛かって来ていたのかもしれないと2人は考えた。

 

「ですが、再現して搭載した結果。勇者……現状では白鳥歌野しか操縦できない代物になってしまいました。しかも、あくまで守護神の強化パーツとしての部分がメインの強化なのでバーテックス相手のダメージも通常のダブルスペイザーよりは上ですが歌野さん自身が勇者の力を使って戦う方が上なので、今まで死蔵されていました」

「どうしてこれを?」

「あなた達なら、きっと動かせるって兜シローさんが言ってたのが1つ。もう1つは、力になりたいと思っていても、なれない痛みは誰よりも知っているつもりですから」

 

 その言葉を聞いて牧葉さんにとってのこの機体に対する思いを2人は感じ取った。

 

「とりあえず乗ってみるね」

 

 そういって、乃木園子はコックピットハッチを開ける。中は2人乗りになっており、おそらくは元の機体に搭乗経験あるであろう牧葉さんが後部座席でサポートする予定の作りになっていたのであろう。とはいえ、白鳥歌野が操縦できた以上は簡易化されているだろうし、そもそも園子自身は自家用ジェットの操縦経験があるので問題ないと判断した。

 

「お、なるほどね」

 

 ハンドルを握って理解した。あくまで勇者の力は認証システムであって、勇者の力を持つ者がハンドルを握っている間のみ疑似的な勇者服と同じ役割になるのだ。おそらく勇者に変身したことがない候補生でも操縦は可能だろう。自分やわっしーの中にある神樹様の力を使って変身した方が確かに強いだろうが、それは自らの命を削る行為そのものだ。こっちの方は神樹様の力は関係ないのでどれだけ操縦しても散華の再発の心配はなさそうだ。変身すること自体にリスクがある今の2人にとってはありがたい支援だと言える。

 

「2人を、お願いします」

「うん。受け取ったんよ」

「そうね。この機体はただの機体じゃないわ。この世界を守って来た者への思いと、今まさに守っている者への思い。その2つの思いが翼になって私達が羽ばたかせるんだから」

 

 そういって、2人は勇者の為の機体で空に飛び立った。この世界でできた友達を救うために。

 

 

 

 

 

「来たわね」

 

 少し時は戻って、白鳥歌野の方ではバーテックスの軍団が目視できる範囲にきているのを確認できた。

 

「うたのん……」

「大丈夫だからみーちゃん。だから、そこで見守っていてて」

 

 そういうと同時に白鳥歌野は飛び出した。

 

「はあぁぁ!」

 

 鞭を振るい、先行してくる星屑達をなぎ倒す。星屑1体1体は一撃で倒せるが、何より数が多い。ここで消費しすぎてしまえば、後方に控えている本命まで持たない。それでも、白鳥歌野は1匹も通しはしないと鞭を振るう。それでも一向に数は減る気配はない。

 

「みーちゃんに! 諏訪のみんなに! フィンガー1本タッチさせるものですかー!」

 

 それから、体感でどのくらいの時間がたったのだろうか。体感ではもう数時間以上戦っているような気がする。今度はいつもより少し多く星屑達が突撃してきた。

 

「数を増やしたくらいで星屑ならば」

 

 そういって星屑達をなぎ倒すが、その脇を1体の特殊なバーテックスがすり抜けていった。

 

「しまった」

 

 慌てて追いかけようとするが、それを阻止しようと相手は今度は進化体も混ぜて突撃させてきた。その間にも、すり抜けていったバーテックス。ジェミニ・バーテックスはどんどん本陣へ、そしてその進路の途中にいる藤森水都へと走っていく。

 

「みーちゃん。逃げて―!」

 

 バーテックスを倒しながらも、間に合わないと悟った歌野にできるのは声をかける事だけだった。そして諏訪大社が落ち、勇者の力を失った白鳥歌野もこの世を去る。はずだった。

 

「サイクロンビーム!」

 

 上空から突然の光線がジェミニ・バーテックスを見事に捉えてダメージを与え、ひるませる。

 

「あの機体は……」

 

 2人とも機体自体は知っている。しかし、あの機体は今は勇者にしか動かせなくなっていたはず。

 

「この時代ではまだ御魂が存在していないみたいね。でも、倒しきれてないみたい」

「この時代のバーテックスは敵も未完成って事だね。わっしー、後は任せた」

 

 ダブルスペイザーは垂直下降に移行しつつ、コクピットハッチから誰かが飛び降りて来た。

 

「もう誰も、奪わせないんよ!」

 

 スマホから光が溢れ、乃木園子は勇者服を再び纏った。使命ではなく、この世界の友達を守るために。

 

「ほいさー!」

 

 落下の勢いを乗せて、園子は召喚した槍でジェミニ・バーテックスを突き刺すとそのまま消滅した。

 

「そのっち。無茶しすぎよ」

 

 園子のスマホ越しに聞こえてきた声は東郷美森だった。

 

「2人とも、なんで?」

「詳しい説明は後でするけど、わっしーも私も勇者なんよ」

「そのっちは本来は変身できないのを裏技というか無理をして変身していますので無理はさせないように言ってください。私はこの機体で上から援護します」

 

 東郷美森は2人にそう伝えながら東郷は上空から進化体バーテックスを狙い撃つ。一撃とはいかないが、白鳥歌野からこちらへとヘイトターゲットを誘導するだけのダメージはあったようだ。

 

「さすがわっしー」

 

 そう言いながら、ダブルスペイザーへと園子は跳躍し乗っかると、

 

「わっしーが誘導して、私がとどめを刺す。このゴールデンコンボに敵はないんだぜ」

 

 ダブルスペイザーを墜としに来た進化体バーテックスを一薙ぎで一掃した。

 

「園子さん。こんなに強かったなんて。でも」

 

 白鳥歌野は感謝しつつも先程の東郷美森の言葉を思い出した。確かにそうだ。2人はこの世界の勇者でないはずだから、源となる神の力が存在しないはずだ。裏技と言っている以上、長時間の戦闘は期待できないはず。

 

「うたのーん。私達が絶対に通してやんないからー。安心して戦ってー!」

 

 当の本人は、何ともいえない感じでこちらを応援してくれている。それは白鳥歌野の支えとなった。

 

「これで力を出せないとか言ってたらそれこそ勇者としての名折れでしょ。白鳥歌野。勇者パワー120%で行かせてもらうわ! 今の私を、ただの勇者だとは思わない事ね」

 

 そして、そこからの白鳥歌野の戦いぶりは、まさしく3年間諏訪を守りぬいたという噂にたがわぬ実力だった。

 

「こいつは鞭。こいつはキック。こいつは上ぇ!」

 

 時折、進化体バーテックスをダブルスペイザーで倒しやすい位置に誘導したり、投げ飛ばしたりと、園子達が聞いていたような、1人で戦ってきたとは思えない戦い方だった。

 

(違う。この世界のうたのんは、シローさん達とイチナナ式の人達と連携してバーテックスを倒してきたんだった。そしてダブルスペイザーに対しての知識もある。だから、何処にどうすればいいのかもわかっているんだ)

 

「すごい。うたのんも、園子さん達も」

 

 藤森水都はその光景は決して見逃さないように、その光景を眺めていた。

 

 

 

 

「流石にバーテックスの方も玉切れといったところかしらね」

 

 どのくらいの時間戦っていたのだろうか。一面にいたバーテックスが今や、僅かな量の星屑と、完成型バーテックスが1体だけとなっていた。

 

「わっしー、あのバーテックスは」

「ええ。わかっているわ」

 

 2人は忘れもしない。三ノ輪銀の命を奪ったバーテックスの1体。サジタリウス・バーテックスがそこにはいた。ちなみに、園子達の世界ではサジタリウスはこの場にはいなかった。動く前に決着がついたともいう。

 

「うたのん。私の後ろに!」

 

 園子は槍を傘状に展開しながら、白鳥歌野にそう呼びかけた。その数瞬後、サジタリウスは大量の針をこちらに向けて飛ばしてきた。

 

「わっしーの方は大丈夫?」

「ええ、超合金ニューZとかいうのを貫くには、こっちの針では威力不足みたいね」

 

 とはいえ、装甲を貫けなくともエンジン部に刺さったりしたら大惨事なことには変わりはない。

 

「そのっち。やっぱり私も変身した方が」

「わっしーはまだ待機でお願い」

 

 東郷は危険を最小限にするためにダブルスペイザーを低空状態にさせた後、園子に提案するが断られた。それは予め話し合っていた事ではあった。2人とも変身した場合、園子が死んで東郷が記憶消失する可能性はどうしても発生する。

 おそらく勇者部のみんなもこの世界に来ている以上、この戦いが終わった後に私達の事をちゃんと説明して協力を得るのは必要不可欠との判断からだ。とはいえ、あの針の群れを突っ切るのは精霊バリアなしでは不可能ではないが正直いって厳しい。今は園子が歌野を後ろに連れて少しずつだがサジタリアスに近づいていっている。

 

(満開さえできたら、問題ないのに)

 

 できない事を嘆いてもしょうがないが、どうしても頭によぎる。

 

「園子さん!」

 

 それ故に、園子はサジタリウスのもう一本の矢に反応が遅れてしまっていた。有効射程的にこっちの射程圏内より相手の射程圏内のが近かったのだ。

 

「よくここまで耐えきった」

 

 しかし、その時だった。遙か空の彼方から、誰かの声が聞こえたような気がした。白鳥歌野は上を見上げてみると、カラフルなUFOがこちらに近づいている。

 

「あれは……」

 

 白鳥歌野は驚きの表情をあげる。

 

「シュートイン、ダイザーゴー!」

 

 UFOから巨大ロボットが射出され、勇者達とバーテックスの間に立ちふさがるように降り立った。バーテックスの方は間に入った存在の正体こそわからずとも、貫く対象が増えたことに変わりはないと巨大な針を発射した。しかし、その質量と弾速に少しだけ押されるも、宇宙合金グレンには傷1つ付けられずに槍はその役目を果たせずに静止した。

 

「貴様が何者かは私は知らない。どんな理由で彼女達を襲っているのかも知らない。だが、友が妹がみんなが愛したこの地球を、そしてそれを守ろうとする人々を汚そうとするのならば、このデュークフリードとグレンダイザーは許しはしない!」

 

 宇宙の王者にしてフリード星の守護神。グレンダイザーが今再び、この地球に降臨した。




サブタイトルは蕎麦の花言葉その2(前半)

情報量が、情報量が多い。
グレンダイザー登場は次話に持ち越すかどうか考えて
インパクト的に、この話で出した方がいいやって結論になりました
歌野がジェミニによって間接的に倒されたというのはオリジナル設定です
だけど単純に物量に負けたのではなく、勇者の力を失ったから負けた方が
3年間諏訪を守り抜いた勇者の実力としてはイメージしやすかった事によるものです
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