結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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白鳥歌野の章ー7「悲しみをとめる」

 

 あの戦いから数日後、宇宙科学研究所の一室にて祝勝パーティをしていた。なぜ普段の場所ではないかというと、デューク・フリードが自身の帰還をまだ秘密にしたかった事と、東郷美森が白鳥歌野の生存を秘密にしたいと言い出した事である。白鳥歌野としては自身の生存を隠す理由はわからないが、命の恩人の言うことに従うことにした。今ここにいるメンバーは、あの時に戦っていたメンバーに加えて、牧葉ひかるさんと諏訪に総攻撃が来たと知って戻って来た兜シローさんを加えたものとなっている。

 

「いやぁ。みんな無事に済んでよかったわねぇ」

 

 そういって右目に眼帯をした乃木園子がジュースを片手に祝杯の雰囲気を作ろうとする。

 

「こっちはそのっちが倒れた時に気が気でなかったわよ」

「私もあれだけ暴れて右目だけで済むとはおもってなかったんだぜ」

「そのっちぃ~」

 

 縁起でもない事を言う園子に対して東郷は若干怒りの混じった声を出す。

 

(結局、そのっちは記憶を思い出さなかったのよね……)

 

 あの後、園子にもグレンダイザーとダブルスペイザーの合体をさせてみたが、園子があの世界の記憶を思い出すことはなかった。東郷は若干の寂しさを覚えたが、それはそれとして気持ちを切り替えていた。

 

「色々、2人には聞きたい事もあるんだけど。聞いたら祝杯ムードじゃぜってぇなくなるから、まずはパーティと行きますか」

「賛成だっぜぇ~!」

「それでは、諏訪防衛のミッションコンプリートした事を記念しまして!」

『乾杯!』

 

 

 それからというもの……

 

 

「デュークさん。前から兄貴の事について御礼を言いたかったんですよ」

「シローくん。こちらこそ甲児くんの助けがあってこその今がある」

「そう言ってもらえるとありがたいです。兄貴にはデュークさんが帰ってきたことは」

「わがままだろうけど、自分で甲児くんにあって、自分の口から言いたいんだ」

「そうですよね。兄貴には秘密にしておきます」

 

 

 

「歌野さん。借りてたスマホ返しますね」

「オーケー。それで、何をしてたの?」

「勝手ながら勇者変身機能を入れさせてもらいました。このアプリを起動してここを触れるだけで変身できます。変身後の性能も増加していますよ」

「わざわざ大社に行って着替えるのヘビーだったのよね。サンキューね」

「どういたしまして」

 

 

 などなど、祝杯の中の交流もありつつ、その賑わいが収まってきたころ。

 

 

「そろそろいいかな。東郷美森。乃木園子。君達は何者なのかを教えてほしい」

 

 兜シローがまず声を発した。その問いに東郷はゆっくりと話し始めた。

 

「私達は今からおよそ300年後。人類の生存が四国以外の確認が取れなくなり、年号が西暦から神世紀になった世界の讃州中学校勇者部に所属する6人の勇者の1人でした」

「勇者『だった』?」

 

 歌野達はこの世界に来たことで繋がりが切れた事が原因と思っていたが、来る前から失っていたかのような発言に疑問を持った。

 

「はい。バーテックスとの戦いが終わり勇者としての力を失い、人としての繁栄を取り戻そうという時に、この時代に呼び出されました」

「人類の生存が四国以外の確認が取れなくなったというのは、未来では人類はバーテックスに殲滅されたというのか?」

「海外まで含めると流石に確証はないんだけど、少なくとも日本は四国以外はほぼ滅んだ。大赦と乃木家に残っていた資料的に、ほぼ間違いないんよ」

「300年後にも大社が残っていたのならば、資料的な信頼性は確かだろうな」

 

 今までの話で納得している所に東郷デカい爆弾を投下する。

 

「ここまで話しておいてなんですが、直接の未来ではない可能性が高いのですよね」

「ん? そうなのか?」

「こちら世界の記録と照らし合わせてもらいましたが、事件の起こりと経過年数。今回の場合ですと白鳥歌野が3年間守ってたとかバーテックスの総攻撃が3年目の9月だったなどの部分は同じですが、2022年ではなく2018年でした。4年の差があるのならば、この世界の歌野さんは高校生のはずが、私達の世界で勇者をしていた時期と同じく中学生です」

「なんだか難しい話をしているね。うたのん」

「要は園子さんの世界の私よりこの世界の私のがフレッシュって言いたいのよね」

「それで問題ないんよ~」

(そういえば歌野さんはこういう人だったわね……)

 

 平行世界の話を聞いて、こういう反応をする当たり良い意味でも悪い意味でも白鳥歌野の本質は変わらないのだと東郷美森は少し頭を抱えた。

 

「話を戻します。で、私達の世界ではこの総攻撃が起きた時点で、四国と諏訪以外との生存が確認できなくなっていました」

「そうか。それならば少なくともマジンガーZが存在しない理由には、なりうるな」

 

 バーテックスの強さは完成型でも機械獣には遠く及ばない。マジンガーZとグレートマジンガーの2体がいれば日本全国とはいかなくても、諏訪と四国だけという事態にはなっている筈がない。

 

「そして、この総攻撃で諏訪の生存も確認できなくなった。で、あっているか?」

「はい」

「じゃあ、2人とデュークさんは私達の命の恩人ね。あらためて御礼を言わせてもらうわ」

「御礼を言われる程の人間じゃないんよ」

 

 あらためて御礼を言われて園子は遠慮がちにしながら淡い笑みを浮かべた。

 

「あのぅ。1つ質問というか、疑問いいですか?」

「藤森さん。どうしたの?」

「東郷さん達をこの世界に送ったのは神樹様なのかなって」

「! わっしー。確かにそうだよ! 私達の世界の神樹様に異世界に転移させるほどの力はもう残ってない!」

「え、ええ。確かにそのことは頭から抜け落ちていたわ」

 

 抜け落ちていたのは嘘ではない。あの世界の記憶を取り戻した東郷にとっては、犯人が既に別に考察済みだったため神樹が転移させたという可能性を排除していたからだ。

 

「こちらの世界の神樹様側の神が呼んだ可能性は?」

「その可能性は少ないと思うわ。もしも救援をコールしたのなら、私を切り捨てるような選択肢をするはずがないのも理由のワンポイントね」

 

 歌野のその発言は納得のいくものだった。

 

「そうなると、こちらの世界の何者かとなりますね。一応、候補としては1つ思い浮かびますが」

「聞かせてくれ」

「はい。バーテックス側でも神樹様側でもない神。中立神とでも呼ぶべき神ならば、この度の争いに参加していない以上、余力は残されている筈です」

 

 あくまで候補と装ったが、東郷は自分の世界からこの世界へ送り込んだのは中立神とほぼ確信していた。あの世界の記憶を取り戻した事で、中立神の存在と今回の事を行う理由の両方が説明できるからだ。

 

「中立神か。てか、今の話だとバーテックスも神なのか?」

「神ではなく、神の使い。一般的に天使と呼ばれるものが一番近いと思われます」

「物騒な天使がいたもんだ。でも、何故バーテックスが神の力の宿ったモノでしか傷つかない事に対する説明としては納得がいく」

 

 相手も神ならば神の力でしか傷つかないのも当然だ。薄々予想はしていたが、確定できたことに兜シローは納得の意をこたえる。

 

「あと話すべきことは、この右目の事かな? 簡単に言うと、裏技じみた変身をした代償だね」

「確かに本来変身できないのを裏技を使ってってスピーチしてたけど」

「はい。なので歌野さんに渡した変身システムで歌野さんが変身しても、このような事は起きないので安心してください」

 

 あの世界で勇者システムに緊急招集MODを入れるのをはじめ、色々いじくりまわした東郷にとって、勇者システムのコピーは造作もない事だった。そもそも体の一部の機能が喪失する理由は現在に問題があるのではなく過去に問題があるので歌野には、ほぼ起こりえない。なお供給元を諏訪大社に変えれば普通に変身できるのではないかと記憶取り戻した後に試したが、諏訪の勇者である歌野だけ許可されて東郷と園子は諏訪大社の方から拒否られた。その事に東郷は少し不服を感じた。

 

「どちらかというと過去に無茶したツケ。かな? 満開という今より強くなった完成型バーテックスに対抗するための強化形態。その初期バージョンでは、満開を解除した時に体の一部が喪失して神樹様に奉納される散華というデメリットがあったの」

 

 敵ではなく味方であるはずの存在によって喪失したという発言で、部屋一帯に静寂が走る。

 

「色々あって奉納された体の一部は全部ちゃんと返還されたんだけどね。その時に奉納された身体には神樹様の力が宿っている」

「だから、私とそのっちがこの世界で変身できるのは、返納された身体を神樹様の力に再変換して消費することでの残機制ともいえる代物です」

「そんな無理をしてたのね」

「無理じゃないよ。わっしーとも話し合ったし最後の最後まで悩んだ。それでも、大切な友達を失う事はもう二度と味わいたくない気持ちの方が勝っただけだから」

 

もちろん、第三者目線で見たら無理しているのはわかっている。だから、自分達自身も含めて必要のない無理をしないために、2人はこれからの予定を話していく。

 

「そして、これからの話なのですが、デュークさん。白鳥歌野をスペイザーに乗せて宇宙で待機してもらいたいのですが大丈夫ですか?」

 

 宇宙に避難させるというのはスペイザーが単独で宇宙空間に行けるからこそ出せる案だ。

 

「問題ないが、何をするつもりなんだい?」

「バーテックスの目を欺き、白鳥歌野を表向きには死んだことにします」

「バーテックス側のも地球の神だからね。地球の外側に出てしまえば、索敵範囲外になるって推察だねぇ」

「わざわざ隠す意味は?」

「私達の歴史をなぞる事で未来を読みやすくする事かな?」

「来年の桜の開花が始まるくらいの時期、完成型バーテックスによって四国の勇者が2人戦死。そして、その夏には乃木若葉以外の勇者も死亡し、四国の外が炎の海に書き換えられました。その未来を変える為に」

 

 その話を聞いてまず、声をあげたのは白鳥歌野だった。そして、他のメンバーもそろって声明を出していく。

 

「オーケー。要は四国の勇者を救うタイミングを分かりやすくするために、私の生存を隠すって事でしょ。そんなお願いなら100%聞いてあげるわよ」

「そうだな。かつて、フリード星が壊滅した時に私は地球に救われた。今、地球がかつてのフリード星のような危機に陥っているのを見過ごすのは、看過できない」

「東郷さんも園子さんも平和を勝ち取ったのに、この世界に無理矢理に連れてこられて、それなのにうたのんを、諏訪を救ってくれた。私もできる限り力になりたい」

「個人的にも軍人としても賛成だな。他の軍に対するごまかしは任せてくれ」

「宇宙科学研究所も全力で協力します。表向きは開店休業状態なので好きに使ってください」

 

 その言葉は2人に対して、改めて力強い支えとなった。

 

「みんな、本当にありがとうなのさ」

「勝ち取りましょう。未来を、明日を!」

 

 新たな誓いと共に、彼女達は大切なモノを守る決意をするのだった。

 




サブタイトルは白鳥歌野の勇者花である金糸梅の花言葉

歌野の章の最終話のサブタイトルはこれにしようと最初から決めていました
ゆゆゆ世界のはじまりの勇者である白鳥歌野に相応しい花言葉であり
全ての勇者にバトンされて受け継がれていく思いであると感じていたからです
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