結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
「乃木さん。後はよろしくお願いします」
「まって、白鳥さん」
9月末。その言葉を最期に白鳥歌野からのその日の定期通信は終わりを告げた。その後、四国は初の樹海化現象と共に、5人チームとしての初めての戦いがあり、それに勝利した。そして1週間がたった10月初頭。
「高嶋さん……」
四国の勇者一行。それに大社代表として乃木若葉の巫女である上里ひなた及び神世紀組より楠芽吹は高嶋友奈のお見送りに来ていた。諏訪の総攻撃および今回の四国への襲撃の報告を受け、奈良の人間は自県の防衛力強化のために高嶋友奈を奈良に呼び戻す事を決定したからだ。
「みんな大丈夫だよ。共同訓練が一時中止になっただけで、きっとまた会えるから」
「そうだな。奈良と四国は比較的に近い。こちらから行く事もあるかもしれない」
「ほい。とっとと行くぞ」
「烏丸さんわかりました。それじゃあ、またね!」
「またな~! タマ達も頑張るから、友奈も頑張れ~!」
そうして手を振りながら、烏丸久美子が運転する車に乗って奈良へと帰っていくのであった。
「白鳥さんが生きているのなら、今日のこの時間に定期通信が来る頃だが」
高嶋友奈を見送った後、僅かな期待にかけて、いつもの定期連絡の席について待っていると、通信音声が聞こえてきた。だけど、その声は白鳥歌野ではなかった。
「こちら東郷美森。白鳥歌野の代理として、この席に座らせていただきました」
「こちら乃木若葉。諏訪は、白鳥さんは無事なのか?」
「諏訪は無事です。白鳥歌野に関しては、私が代理として出ている事で察してください」
それを聞いて諏訪が無事という嬉しさと歌野がいなくなったという哀しみで何とも言えない気持ちになった。その気持ちを何とか静めようとしている最中に乃木若葉はある違和感に気づいた。
「東郷美森さんと言いましたか? あなたは、勇者なのですか?」
神樹の結界内である四国内や比較的近距離ならともかく結界の外の、しかも他県にまたがる遠距離ともなるとバーテックスにジャミングされているのか、まともに通話できなくなるのだ。この通信機器はその対策がされた代物であるが、それ故に特定の人物にしか使用できなかったはずだ。
「はい。私は元勇者です。いろいろありまして勇者としての力の過半数を失っていますが、こうして通信する程度の力は残っています」
これに関しては嘘である。この通信機器は諏訪の勇者用に調整されているので、東郷美森には使えない。そのため、実はすぐ近くで白鳥歌野が一緒に聞いている。
「それでも、諏訪自体が無事でよかった」
「その件について詳しく話したいのですが、いいでしょうか?」
「むしろ、こちらにとっても重要な情報だ。お願いする」
そうして、乃木若葉と東郷未森による定期通信が行われたのであった。
「東郷と園子は諏訪にいること確定と……」
ひなた経由で定期通信の話を聞いた神世紀組の反応は様々だった。
「それでさ、ダブルスペイザーって何よ?」
「たしか10年程前に諏訪の宇宙科学研究所と旧光子力研究所の協力で製作された、ジェットスクランダーみたいなロボットの飛行補助ユニットにもなれる戦闘機としての試作機の1つだったはずです」
風の質問にひなたはそう答えた。実際には光子力研究所側で協力したのは兜甲児ただ一人なので彼女が知っているのは表向きに改変されたものだったりする。
「10年前って流石に型落ち機だと思うけれど、大丈夫なのかしら?」
「流石にそこまでは。ですが、超合金ニューZ製との事なので下手すれば現行量産機であるイチナナ式より強い可能性は十二分にありますね。さすがに日本の三大巨頭とされるマジンガーZ、グレートマジンガー、ゲッターGの3体には劣るでしょうけど」
「マジンガーZの話は前に聞いたが、この2体は初めて聞くな。何処にいるんだ?」
初めて聞く名前に楠芽吹は純粋にその2体の戦力に期待する部分もあった。
「グレートマジンガーの方はパイロットと一緒に今は援軍として渡米中です。ゲッターGの方は、今は月にいるらしいと」
「月? あの夜空にあるアレですか?」
「ですね。本来は宇宙開発用のロボットでしたので。当初の目的に使われているとも言えます」
最も、彼らが作り出した平和をバーテックスによってまた侵略されているともいえるが。
「ただ、バーテックス襲来以降、3年以上も音信不通なので戦力として考えている人は今はいませんね。兜博士いわく、あの人達が月に取り残されたくらいで死ぬような人達ではないと言いきったので、おそらく大丈夫でしょうが」
「とりあえず、諏訪が落ち着いたらそのダブルスペイザーってので2人で四国に来るってことでいいのね」
強引に話を戻しつつ、風としては行動力の化身ともいえる園子と結城友奈を一時も早く捜したいであろう東郷が諏訪に留まっているのに違和感を少し感じているが、そこはダブルスペイザーが借り物だからだろうと納得させた。
「でも、こうなると友奈と夏凜も間違いなく、この世界に来ているでしょうね」
少なくとも私達をこの世界に送り込んだ存在は神世紀の勇者達に、この世界で何かをさせたいのだろうか?
「防人の方は32人全員って訳では流石に多すぎるからあり得ないわよね。このメンバー的に雀は確実に来てるでしょうけど」
「そうなると、巫女である国土さんが来ているかどうかが問題になりますわね」
「弥勒さん。亜耶ちゃんは来てない。もし、来てても無事。いいね」
「は、はい」
迂闊な発言で、芽吹の機嫌を損ねた弥勒は明日の訓練のノルマ増大を覚悟するのであった。
「そういえば、樹は来てないみたいだけど」
「ああ。樹は保育園のヘルプに行っているわ」
「何か出来る事はないかって、樹さんの方から言い出したんですよ」
そう言い放つひなたは上機嫌だった。
「私達は訓練づけだったのに、羨ましいですわ」
「まぁ、私達はいつもこんなことをやっていたわね」
「勇者として活動してたのに、凄いんですね」
赤嶺美姫は口では誉めつつも表情ではそう思ってないように見受けられた。すると、彼女の上空から何かが降って来た。
「ぺ、ペロさん?」
それは、ペロと名付けられた銀毛の犬の精霊だった。
「よくわかんないけど、ペロは元気づけたかったんじゃない? 勇者部六箇条が1つ、悩んだら相談だから、話したくなったらいつでも相談に来なさいな。私の女子力で解決してあげるんだから!」
「その時が来たら、お言葉に甘えさせていただきますね」
(若葉ちゃん達も、こうなれるようになれたらいいんですけどね)
そういって笑っている風をひなたはほほえましく見ていたのであった。
サブタイトルは東郷美森の勇者花である朝顔の花言葉
歌野の章から乃木若葉の章に戻って来たと同時に
(特に神世紀組の)登場人物の再確認となっております