結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
8月31日。その日、突如として香川、長野、北海道、沖縄の4か所で謎の発光が目撃されたとされる。光が収まると、そこには見慣れない少女達がいたとも……。
「あれ……。ここはいったい?」
弥勒弓海子が目を覚ますと、そこは古めかしい木造の建物の中にあるベッドの上で寝かされていた事に気づいた。
「あら、ようやく起きたみたいね」
聞き覚えのある声がするので、そちらの方を見ると犬吠埼風がそこにいた。
「あなたは確か勇者部の部長の犬吠埼風さんでしたかしら?」
嘘だ。犬吠埼風の事は忘れられたくても忘れられる存在ではない。日常方面で勇者達の精神的支柱の中心になっていたのは間違いなく彼女であったのだから。
「夏凜にでも聞いた? 私もさっき知ったばかりなんだけど防人として私達の後始末してたって言うじゃない。そんな役割させてごめんなさいね」
「いえ、わたくしには弥勒家再興の思いがありましたので、弥勒家の誇りを胸に抱いていればどんな困難も苦に感じたことはありませんわ」
「うん、弥勒は確かにそんな感じだった」
後ろから突然声がしたと思ったら、銀毛の小犬を撫でている山伏しずくがそこにいた。
「しずくさんもいらっしゃいましたの。それじゃあ、芽吹さんもいらっしゃるのかしら?」
「うん、楠と犬吠埼の妹と赤嶺っていう人と安芸っていう神官の1人が一緒にいたらしい」
赤嶺は弥勒自身が先程まで会話していた赤嶺美姫の方だろう。
「先程から撫でているその小犬は何ですの?」
「私達が一纏めで倒れている所に一緒にいたらしい。見えない人もいたみたいだから何らかの精霊みたいだけど、今のところは普通のおとなしい小犬」
「そうですか……」
そういった会話をしていると、部屋の扉が横開きに開いた。開いた先には安芸さんと思われる見覚えのある神官、赤嶺美姫、犬吠埼樹の他に上里ひなたに見覚えのない巫女、そして見覚えのない白衣を着た男性がそこにいた。
「お待たせいたしました。あなた達の扱いに関して、仮の処置が決定いたしましたので、お話ししたいと思います」
「処置って、穏やかな表現ではありませんわね」
「そうですね。ですが、こちらとしても劇物なので、慎重に扱わなければいけませんから」
「まずは、自己紹介をさせていただきます。私は乃木若葉の巫女。上里ひなたと申します」
「私は烏丸久美子。奈良の勇者、高嶋友奈の巫女代理をしている」
「俺は兜甲児。光子力研究所で科学者をやっている者だ」
(私があの世界で出会った高嶋さんから、烏丸さんが巫女だとは聞いておりましたが、巫女代理? 平行世界で何かが歪んだのでしょうか?)
「高嶋友奈が奈良の勇者? 私達の世界では四国で活躍した4人の初代勇者の1人のはずなんだが」
「そこら辺の話のすり合わせは彼女達と既にしてますので、少し待ってください」
上里ひなたは芽吹の発言に、そう言って諭した。
「まず、話を聞いた結果から言います。あなた達の世界は、私達の直接の未来ではなく平行世界になると思われます」
「根拠は?」
「1つはまず数年のズレがあることです。あなた達の世界では2015年にバーテックスに最初のバーテックス襲来がありましたが、こちらでの最初のバーテックス襲来は2019年です。ですが、どちらも乃木若葉がその襲撃にあったのは小学5年生の時であり、現在は中学2年生であるのも事実です」
「後は日本自体の状況もだな」
そう言ったのは兜甲児と名乗った男性だった。
「君達の世界に光子力エネルギーというものは存在したか?」
「いえ、全く耳にした事がありませんわね……」
「バーテックスには通常の兵器が通用せず、勇者と呼ばれる者のみの力が有効だった。それ故に君達の世界では、この時点で既に長野と四国以外には人類の生存が確認されていないんだったか?」
「友人の家にあった本にあった内容だと、北方の果てと南方の孤島には生命反応が存在したらしいわね。でも、確認までは至ってないから、確認できていたという意味ではそれであっている筈よ」
兜甲児の確認を込めた質問に対して犬吠埼風は自分の知る情報で補足をした。
「なるほど……。そっちのこの時代の状況は大体把握できたと思う。ありがとう」
そう軽く口で礼を言うと、兜甲児は光子力エネルギーに関しての説明を始めた」
「光子力エネルギー。こちらの世界には富士山近郊でのみ取れるジャパニウムと呼ばれる鉱物を特定の金属に加工する事で発生するようになるエネルギーの事だ。このエネルギーを用いた攻撃はバーテックスにも有効だった。故に、こちらの世界は47都道府県がいまだに健在だ」
「それほどの代物なのですか?」
「軍に配備されている物だと1体の星屑とよばれるバーテックスに対して2~3体で対抗する必要があるから、今は対抗できているが時間の問題だな。故に、俺も勇者の育成の手伝いをしてほしいという事で四国に呼ばれていたという訳だ」
「バーテックスには神の力を宿してないとダメージが与えられないとされています。富士山は霊峰としての知名度もありますから、わずかながらに神の力を光子力エネルギーも宿しているのでしょう」
「こちらも同じ見解のようだ。だから、基本的には勇者単体の方が戦力としては上だ。もちろん、例外といえる存在もあるけどな」
安芸先生の発言に対して兜甲児は肯定の意見を述べる。
「とりあえず、凄いんだなって事が分かりました」
「どんな理由で連れてこられたかは不明らしいが、君たちは巻き込まれた側なんだ。こちらの事についてはゆっくりと理解してくれて構わないさ」
その後、楠芽吹をリーダーとして彼女達は大社の管理下のもとで保護されて生活する事が決まったのであった。
サブタイトルは花結のサービス告知日である8月31日の誕生花リンドウの花言葉。
2022年と原作とずれているのは、花結いのサービス終了をきっかけに書き始めたので、
小説でもここをスタート地点にしたかったのが理由の1つ。
もう1つは平行世界である事をわかりやすく説明する材料の1つでもあります。
そしてマジンガーがこの世界に存在しますが、これは平行世界である事の説明の他に
勇者達が逆行する前に日本が無事である事の理由付けの面もあります。