結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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秋原雪花の章ー3「心のやすらぎ」

 

「雪花さん。一緒に街に遊びに行かない?」

 

 雀が雪花に突然そんな事を言ってきた。

 

「私は勇者なのよ? そんな暇あるわけ……」

 

 雪花は上の人たちとの談合やバーッテクスの戦いに付き合わされて気疲れしているのもあって断ろうとしたのだが。

 

「勇者だからでしょ? オンとオフをきちっと切り替えなきゃ」

 

 夏凜の横やりによって街に遊びに行く事になった。

 

「全く、」

 

 そう言いながら、久々に私服での外出だ。勇者になってからはもしかしたら初めてかもしれない。

 

「しかし、遊びに行こうって、何処に遊びに行くのさ」

「ふふふ。今日行くところはここだよ」

 

 そうしてきた場所は保育園だった。

 

「マジ?」

「うんうんマジマジ」

 

 雀ってこういう子だったっけかなと思ったが、普段の雀達が何をしているかを1ヶ月以上たってもよくわかっていない事に気づいた。2人とも朝練をしている事は知っている。でも、夏凜と違って雀が一日中訓練をするような性格の子ではない。では、この1ヶ月の間、彼女は何をしていたのだろうか?

 

(雪花さん。騙すような感じでごめんね)

 

 そう雀は心の中で考えながら、夏凜に言われたことを思い出す。

 

 

 

 

 

「雪花さんが無理しているって? 夏凜さん、何を当たり前のことを言っているの?」

 

 1人で勇者として頑張っているのだ。何処かしら無理をしていない訳がないはずがない。

 

「雀も気づいていたならそう言いなさいよね。で、理由を考えたわけよ。アレは昔の私ね」

「昔の夏凜さん?」

「そ。大赦と勇者部に挟まれて、完成型勇者である事だけが自分の支えであり、取り柄だと思ってた頃の私」

 

 そんな脆い壁をみんなは壊してくれたんだけどねと、夏凜は嬉しそうな顔で思い返す。

 

「それで、私めにどのようなお手伝いをしろと」

「ほら、私とあんたで、最近手伝いに行っている保育園があるじゃない」

「そうだね。夏凜さんに無理矢理に手伝わされた時はアレだったけど、始めてみると案外悪くなかったね」

「適当に理由をつけて、あそこに雪花をつれていきましょう」

「ん? どういうこと?」

「今の雪花には必要なのよ。あのくらいの年齢の純粋な意見が」

「夏凜さん自身がやればいいじゃない」

「私がやると雪花に気づかれると思うのよ。あんたに対しては私より警戒心がないからね」

「……しょうがないなぁ。貸し1だからね」

 

 

 

 

 

 夏凜との会話を思い返しながら幼児とじゃれていた雀は視線を雪花の方に向ける。

 

「雪花おねえちゃ~ん」

「わあぁ。乗っかんな」

「雪花ねえちゃんの顔、おもしろおぉ」

「言ったなぁ。こいつっ」

 

 雪花に次々とじゃれていく幼児達に戦々恐々している保育士達。それとは裏腹に困惑しながらも楽しそうな雪花がそこにいた。

 

「どう? 子供たちってパワフルでしょ?」

「私達もまだまだ年齢的には子供だよっと」

 

 雀の言葉に反論しながらも、雪花は自分の心がいつもより軽くなっている事に気づくのだった。

 

「雪花おねえちゃん」

「ん? どうしたの?」

「おばあちゃんがね。雪花おねえちゃんに助けられたことがあるの。だから、ありがとうって言いたくて」

 

 それを聞いて雪花はありがとうって、ちゃんと言われたのはいつぶりだろうか。いや、もしかしたら助けた時に言われてた時があったのかもしれない。でも、思い出せないくらいくらいには感謝の声が自分の耳に届いてなかったのは事実だ。

 

「うん、そうだね。こちらこそありがとう」

 

 想定していた遊びとは全然違ったけど、これはこれでいいなと雪花は感じるのであった。

 

 

 

 

 

「雪花様。今日はありがとうございました」

「いえ、友達に誘われてきただけですし。こっちも久々に楽しめましたし」

 

 勇者である雪花にとんでもない事をさせてしまったのではないかと距離を取られているのが雰囲気でわかる。

 

「ねぇねぇ。何で雪花おねえちゃんを怖がってるの?」

 

 その時だった。お礼を言ってきた少女がひょこっと会話に入って来た。

 

「おねえちゃんはゆうしゃなんでしょ? ゆうしゃってなんなの?」

「それは……」

 

 純粋な少女に化け物とはいえ、バーテックスを倒す存在だと、誰かを守る為に別の誰かを傷つける存在だというのは雪花に憚られた。

 

「勇者というのはねぇ。みんなの笑顔を守るために頑張る存在なんだよ」

 

 そこに雀が割って入って来た。

 

「じゃあわたしもゆうしゃになれる?」

「うんうん。お婆ちゃんや友達や保育士さんを笑顔にするために頑張れば、みんな勇者になれるよ」

「雀おねえちゃん。わたし、がんばるから―」

「うんうん。頑張れー」

 

 少女の介入があったおかげで、嫌な雰囲気にならず保育園を立ち去る事ができた。

 

「ああよかった。保育士の皆さんには少し迷惑かけちゃったかもだけど」

「少しでいいのかな?」

 

 私が来たことで嫌な気分になったとしたらそれは嫌だった

 

「でも、行ってよかったでしょ?」

「不本意ながらね。で。これ、雀じゃなくて夏凜の発案でしょ?」

 

 雀がこんな大それた発案できる度胸を持っている正確ではないと雪花は思っている。

 

「うっ。でも、夏凜さんも勇者部の皆さんに教えてもらった事だって言ってたから」

「どういうこと?」

「勇者は戦うためだけの存在ではなく、何を守っているのかを身近に感じる事も大事なんだって。実際、勇者部に1度行った事あるけど、あれ実質ボランティア部だったよ」

 

 実際、あそこは雀のイメージしている勇者の雰囲気とは程遠い場所だった。でも、悪い気分はしなかった。

 

「だから、保育園の手伝いをさせるのが一番いいんじゃないかって提案されたんだけど」

「それで向こうに迷惑かけている辺り、完成型をなのる割に何処か抜けているのよね夏凜は」

「それは言えてるねぇ」

 

 どこかで誰かのくしゃみが聞こえた気がするけど気にしない。

 

「それにさ。昔から言うじゃない。勇者は何でもできるけど、勇者だけじゃ何にもできないって」

「それってゲームの話でしょ?」

「そうかもしれないけど、案外間違ってないんじゃないかなって私は思うんだよね」

 

(だから、夏凜も雀も頑張ってくれたんだね)

 

 2人のやさしさにバーテックスが来る前の日常を思い出せたような気がした。

 

(なんか、寒くないや)

 

 心の寒さは、いつの間にか、どこかに行っていたのであった。

 




サブタイトルは雀の誕生花であるペチュニアの花言葉
ありがとう言った幼女はゆゆゆいの方でも雪花にありがとうを言っている子ですね
個人的に彼女は原作の雪花の章でも重要な要素だと思ったのでこうして出すことにしました
後、見ての通り夏凜は自分が勇者であることを雪花に全く隠していません。
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