結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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秋原雪花の章ー4「疑惑」

 

 ここはこの世界のとある場所。そこに、とある人物が降り立った。

 

「ゴラーゴンの御力により、再び生を受ける事が出来たと思ったら、何やら面白い事になっているようだな」

 

 男女が半々になってくっついた奇妙な外見をした人物は立ち上がりながらそう言った。

 

「せっかくの余興だ。兜甲児に積年の恨みを晴らす前に、この異世界の機械獣と共に憂さ晴らしを兼ねて遊んでやるとするか」

 

 その人物の近くには、謎の機械獣の片目が光輝くのであった。

 

 

 

 

 

「今日のノルマ終わりっと。なんだか、最近強くなってきてない?」

 

 11月に入り、雪花はいつものようにバーテックスの撃退を終えて一息をついた。どんどんバーテックスも強くなってきていて、自分だけで守り切るのも最近は限界を感じるようにきていた。

 

「お偉いさんに協力でも打診してみるかねぇ……。ん? どうした? 最近いい顔するようになっただって?」

 

 突然、精霊コシンプからそんな事を言われて雪花は戸惑った。

 

「どうだろうねぇ。自分じゃ変化が分かんないや」

 

 でも、変わったとしたら間違いなく雀と夏凜の2人のおかげだろう。2人の凸凹さもそうだが、私を勇者と知りながらも普通に接してくれる事。そして、勇者として大切な事を教えてくれたからだろう。

 

「機会があったら、勇者部の人たちにも会ってみたいなぁ」

 

 2人が何処から来たのかは聞いてないが、聞けば2人とも話してくれるだろう。でも聞かないでいる。聞けば別れが辛くなるから。またきっと心が寒くなりそうだから。

 

「しかし、雀はともかく、夏凜は最近どこにいってんだか」

 

 毎日ちゃんと洞窟に帰ってきているので、そこら辺の心配はしていないがアレ以来、定期的に一緒に行動する事も徐々に多くなった雀と違い、夏凜とは洞窟外で一緒に行動したことがそういえばないなと思った。

 

「ん? 今度は何? え、さっきの数倍のバーテックスがここに向かっているって?」

 

 それは、夏凜達の世界の雪花は連戦になると言う事もあり体力もなく、勇気もやる気も失っている状態だったので一度は逃げ出した相手。だが、

 

「一応、お偉いさんに連絡だけ入れて向かうとしますか」

 

 この世界では2人をきっかけにそれらを失わずに済んでいるので、一直線に向かうのであった。

 

 

 

 

 

「なにアレ……」

 

 現場にたどり着いた雪花は見た光景は異様だった。左目が潰れ、全身にひびが入り、応急処置のようなビス止めと思われるモノがつけられたマジンガーZと酷似した機体がバーテックスを蹴散らしていたのだから。

 

「本物のマジンガーZじゃないはず。でも、強い」

 

 バーテックス側が弱いわけがない。蹂躙されている中には進化体バーテックスも混じっている。逆に言うと、進化体でも叶わない強さがあると言う事だ。

 

「こんなモノに苦戦しているというのならば、勇者という存在にも期待が持てないな」

 

 バーテックスが謎のマジンガーにすべて倒されるとほぼ同時に、何処からか声が聞こえた。

 

「誰!?」

「ほう。勇者とやらの遅いお出ましという訳か」

 

 そういって謎の声は姿を現した。その姿は見たことはないが言い伝えられてる存在に酷似した外見を持っていた。

 

「私の名前はあしゅら男爵。偉大なるドクターヘルのしもべ」

 

 その名前を知らない者はこの世界にはいないと言っても過言ではない名前をかの者は口にした。それが真実であることはその見た目がなによりもの証拠であった。

 

「あしゅら男爵? たしか、10年以上前に死んだはず」

「蘇ったのだよ。いろいろあってね」

 

 マジンガーらしきモノをあしゅら男爵は見上げながらさらに言葉を発する。

 

「このあしゅらマジンガーもその影響の1つだ。マジンガーZが敗北し、別の世界の私達の手によって機械獣へと改造されたマジンガーZらしい」

 

 それを聞いて、雪花は恐怖した。

 

「とはいっても、ジェットパイルダーもない時期のマジンガーだから、この世界の今のマジンガーよりもスペックは2~3段階は下がるようだが、それでもこの戦力だ」

 

 実際、このマジンガーが相手した戦力相手に勝てないとは言わないが、ここまで安定して勝てるかというとハッキリとNoと言えるレベルであった。何よりも別世界とはいえマジンガーZだ。勝てる気がしないという気持ちのが雪花の中に比重が大きくなっていた。

 

「応援に来てみれば、もう終わった後ではないか。余計な手間をかけさせないでくれるかな?」

 

 タイミング悪く、及川さんが率いるイチナナ式部隊が到着してしまった。どうやら、謎のマジンガーを味方だと勝手に思い込んでいるようだ。

 

「ハエがきたか。あしゅらマジンガー。やってしまえ!」

「及川さん。みなさん! 今すぐ逃げてください」

 

 雪花が大声で注意喚起するが、緊張感が抜けていた彼らの対処は一歩遅く、あしゅらマジンガーのブレストファイヤーによって、及川及び、イチナナ式部隊の3割は溶解していった。

 

「あ、あ……」

 

 その光景を見て、雪花は思わず逃げ出した。マジンガーZというこの世界にとっての希望が敵になった事。人が溶け死ぬという想像の遙か上の状況を目の当たりにした事。そして、敵わないと思ってしまった事。様々な要因で本能的な行動だった。

 

「所詮は勇者もただの小娘か……」

 

 最初から勇者という存在にあしゅら男爵はそれほど期待していなかったかの様に一言呟いてから、その者はあしゅらマジンガーによる破壊活動を再開した。

 

 

 

 

 

「あ、あんな相手どうすればいいのよ。それに、私の性で……」

 

 今いる場所がすぐにはわからなくなるくらいに逃げ出した後に、余計な事をしたと雪花は思った。自分の力だけでは万が一がと思って頼った結果がこれだ。

 

「寒いなぁ」

 

 今にも折れそうな自分の心が警告を発するように自然とつぶやかれた言葉と同時に、雪花の頭の中に浮かんだのは2人の姿だった。初めにあった時、彼女達はバーテックスと戦える力を持っているように見えた。その程度なら、あの悪魔には勝てないかもしれない。

 

「もしかしたらって思っちゃう私は、弱くなったなぁ」

 

 それでも、藁にも縋る思いで雪花はいつもの洞窟へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

「雪花。そんなに慌ててどうしたのよ」

 

 洞窟に戻ると夏凜はそこにいた。

 

「夏凛。雀は今どこにいるの?」

 

「今日は前にあんたが行った保育園の手伝いよ。私は別の用事を終わらせて、いま帰って来たところ」

「危ないから避難させなくちゃ!」

「ちょっと待って。何があったの? それを話してからにしなさい」

「わ、わかったから力を入れて掴まないで!」

 

 そうして、雪花は先程あった事を話す。それを夏凜は何も言わずに静かに聞いていた。そして、全て話し終わった後に聞き返した。

 

「それで雪花。あなたはどうしたいの?」

「……助けたい。でも、怖いの。あのマジンガーZよ! 無敵のヒーローであり、何者にも負けない存在。そんなのに、勝てっこないよ」

 

 雪花は自分で言いながら、見捨てられても仕方がない。勇者としては失格なこと言っているなと思った。

 

「そう。それなら、私の出番ね。雪花はここで待ってなさい」

「何を言ってるの!?」

「雪花が、この世界の人達が、今まで頑張って守ってきた平和よ。相手も別の世界の存在だというのなら、遠慮する必要がないからね」

「別の世界って何を言っているの?」

 

 いや、よく考えると初めてあった時に雀の方は見たことない恰好をしていた。あの服装は何処にしまったのかを考えていなかった。

 

「私は今から約300年後の未来よりバーテックスの親玉を追い返して、地上に平和を取り戻した勇者の1人よ!」

 

 雪花は混乱しつつも、聞き逃すまいと耳を傾けた。

 

「そんな私でもあなたの事は知らなかった。四国以外の勇者はどんな戦いをしていたのか考えた事もほとんどなかった」

 

 白鳥歌野の事だって、夏凜は園子の家で初めて知ったくらいだ。高嶋友奈も奈良出身だが、基本的には四国の勇者として扱われている。後は沖縄の勇者である古波蔵棗も赤嶺家をはじめとして一部の人は知っているが、秋原雪花に関しては情報が北海道(と沖縄)に生存反応があったという勇者御記の一文からのみから、いたかもしれないレベルの話だ。夏凛自身は存在自体を想像できなかった。

 

「だから、私の知らない勇者であるあなたの事を知りたくなった。そして、知っていくうちに助けたくなった」

 

 雪花にむける夏凜の表情は、責め立てるような表情ではなく、頑張った人に対するネギ体の顔であった。

 

「私にも経験があるんだけど、勇者って奴はみんな。限界まで自分に溜め込む人が多いのよ。貴方の限界が、今だけだっただけ。恥じる事ではないわ」

 

 自分自身が手を差し伸べられたこと。逆に友奈がそんな状況で手を差し伸べようとして逆に喧嘩してしまった事。いろんな事があったからこそ、雪花が何処かで心が折れる時期が来ると夏凜は予測しており、その時に雪花の心の支えになれる様に動いて来たのであった。

 

「ただ、今の私は雀と違って勇者の力を失っているのよね。取り戻す当てはあるから説得しに行って、そしてその力で、あしゅらマジンガーとやらをぶっ壊してやるわ」

「無理だよ! 上位種のバーテックスすら相手にならないんだよ! そもそも取り戻せる確証なんてどこに」

「大丈夫よ」

 

 その時の夏凜の微笑は、雪花にはとても輝いて見えた。

 

「勇者部6箇条が1つ。なせば大抵、なんとかなる。それに言ったでしょ。私は完成型勇者よ。すなわち、この世界で言うグレートマジンガー。偽物のマジンガーZに負けるわけがないわ!」

 

 グレートマジンガー。偉大な勇者とも呼ばれるもう1体のマジンガー。彼がマジンガーZの窮地に駆けつけて一命を救った話はあまりにも有名だ。

 

「そう言われたら、止められないじゃない」

「だから、今は休んでなさい。貴方の頑張りを無駄にはさせないから」

 

 そういって夏凛はどこかへと出かけて行ったのだった。

 




サブタイトルはマジンガーZ第1話の放送日の花言葉

あしゅら男爵&あしゅらマジンガー登場。
登場の経緯としては原作で雪花さん。単機でこのバーテックス軍団に勝利しています。
ですから、それを超える敵戦力でないと夏凜達を参戦させる意味がないわけであって
そうなるとインパクトも合わせると、あしゅらマジンガーが適任かなとなりました。
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