結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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秋原雪花の章ー5「節制」

 

「私は、どうしたいんだろう……」

 

 夏凛が出て行ったあと、雪花は自分がどうすればいいのを考えていた。敵から逃げ出した以上、勇者の力を剥奪されるかもと思ったがそうでもないらしい。実際のところ、相手にするべき存在はバーテックスであって、それ以外からの敵前逃亡は神には別に問題視されていなかったりするのだが。

 

「君はどうすればいいと思う?」

 

 コシンプに話しかけるが、普段と違って何の返答もせずにただ見つめるだけだった。

 

「元々、いざという時に避難する為にこの場所を作ったのに、何で心が休まらないんだろうね」

 

 いや、理由はわかっている。夏凜が死地に飛び込もうとしているのだから。もし、勇者の力を取り戻しても、彼女だけで勝てるとは思えないから。

 

「いや、夏凜だけじゃない」

 

 雀も勇者の力と似た力を持っていたはずだ。そして、雀は今、保育園に行っていると夏凜は言っていた。

 

「せめて、雀にも伝えなくちゃ」

 

 そう思うと、自然と洞穴から出て行って、保育園の方向に向かって体が動いていたのであった。そして、それを見たコシンプは何処か嬉しそうな表情を浮かべているようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじさん。いるんでしょう?」

 

 ベガルーダに導かれてやってきた場所に来た夏凜は開口一番にそう言った。

 

「少し待ってくれ。今野暮用なんだ」

 

 そう言ってしばらくすると、いつもより少し疲れたような顔をして現れた。

 

「ちょっと、おじさんに力を借りたいのよ」

「……なにかあったのか?」

 

 夏凜は、先程あったことを話した。

 

「だから、ベガルーダの力を貸してほしいのよ。それとも、借りるのもルール的にダメ?」

「アーガマから言われたのはバーテックスとの戦いにアーガマの血族が参加する事だから、」

「それなら大丈夫よ。私も、私も勇者だから」

 

 その返答に対して、男は何も答えず無言で夏凜を見つめる。それに対して夏凜は自分の身の上を話すことにした。

 

「私達は今からおよそ300年後の、四国でバーテックスと、天の神と戦っていた勇者の1人だった」

「だった。か」

「ええ。戦いに勝利して、それと同時に勇者の力を失ったわ。こんな感じにね」

 

 そういって夏凜は画面にひびが入って壊れたスマホを男に見せる。

 

「どうして今まで動かなかった。ベガルーダがここに連れて来た時から、ベガルーダの方はおそらく、君に力を貸してもいいと思ってたはずだ」

「私と雀がこの世界にとって異物かもしれないから。わかっている情報だけで300年前よ。でも、今は動く理由が出来たから」

「その理由とは」

「友達に、雪花に助けてと言われたから」

 

 その言葉に対して男は少し嬉しそうな笑みを浮かべた気がしたが、厳しい顔に戻し夏凜を問い詰める。

 

「後悔はしないのか?」

「私の時代では、四国と諏訪以外に勇者がいるなんて情報は残ってなかった。いるなんて考えたこともしなかった」

 

 その問いに対して夏凜は独白にも近い感じで言葉を紡ぎだす。

 

「でも実際にはいた。私達の知らない所でも、勇者がいて頑張って繋いでいた。四国の勇者は複数で戦ってたから当たり前だと思ってた。だけどそれは思い上がりだった。私達に伝わってる諏訪の勇者も伝わってない北海道の勇者も1人で戦っていた。きっと他の場所に勇者がいたとして1人で戦ってたんだと思う。そして、それは寂しい事だとも厳しい事だとも知っている」

 

 そして、そこから勇者部のみんなに救われたと夏凜は思っている。当時は自分でも虚勢だと気づいてなかった完成型勇者という言葉を今は本物の言葉として名乗れるのは彼女達がいてこそだ。

 

「そしていま彼女に私は頼られた。だから私は助けたい。私達の知らないところで私達にバトンを渡してくれた勇者の1人に対する感謝として。そしてこの時この瞬間を共にすごしたかけがえのない友達として」

「それで、未来が変わって勝ち取った未来が失われてもか?」

「目の前の友達1人を救おうとせずに守った所でそんな未来の何の価値があるっていうの?」

 

 東郷の生贄や友奈の神婚の時の様な事は2度とさせない。あの時に感じた辛い思いだけはもうしたくない。そして、

 

「違うとこで生まれ、違う時を生きて、同じ場所にたどり着いた。その奇跡に報いるために」

「それは奇跡なんかじゃないぜ」

 

 その言葉に対して男性は否定したかと思ったら即座に言葉をつづけた。

 

「君達が考えて動いて、それで起きた結果なら奇跡ではなく君達の思いが起こした必然だ」

 

 それは男にとって間違いなく本心だった。自らも戦いの渦中を体験したからこそ言える言葉であった。

 

「三好夏凜とかいったか?」

「ええ」

「そっちが、正体明かした以上、こちらも明かそう。30年前の獣神伝説の当事者の1人だ」

「やっぱりね」

 

 その解答自体は予測していた。

 

「そして、あしゅらマジンガーに関しても別口から知っていた」

 

 そっちに関しては少し予想外だった。

 

「どこからか聞いても大丈夫かしら?」

「魔神皇帝と終焉の魔神。姿は見せずに声だけだが、彼らは自らの事をそう呼んでいた」

「そいつらの目的は何ですって?」

「邪悪なるマジンガーに対するマジンガーが魔神皇帝と終焉の魔神の役割だ。まぁ、2人の対処法は違うけどな。魔神皇帝はそのマジンガーのみを滅するのに対して、終焉の魔神はその宇宙ごと滅する事で解決するらしい」

「前者はともかく後者はずいぶんと手荒ね」

「他の宇宙に悪影響が出る前に被害を最小限にとどめるって意味では必要悪の部類だ」

 

 納得は出来ないが理解はできるという表情で男はそう語った。

 

「とはいえ、あしゅらマジンガー程度の格ではどちらも直接顕現できないらしいから、その世界の別の力で補填してって事で俺に話がきていたって訳だ。でもそこにちょうど君が来た」

「私も未来人という意味で異端具合で言うならさほど変わらないと思うんだけど」

「それでもだ。現役ならともかく引退していた40代のおっさんに頼らないと守れない平和とか、遅かれ早かれどこかで崩れる。それに」

 

 男はそう言いながら夏凜を真剣な眼差しで見つめて言い放つ。

 

「明確に守りたいモノの戦うって意志がある奴が目の前にいるんだ。そいつの意思を無碍にしてまで戦いに戻る意味はないんだ」

 

 最初にあった時には、男は自ら戦場に戻ろうとしていた雰囲気があった。すなわち、託す先がなかったのだろう。その男に、こうまで言われて、夏凜はいい気分にならない訳がなかった。

 

「なら、あなたの出番が来ないようにしないといけないわね」

 

 夏凛にとって今できる最善の事は受け取ったバトンをしっかりと握りしめる事だ。覚悟を決めて、ベガルーダが夏凛のスマホの中に入っていくと、ひび割れたスマホが元に戻り、再び変身できるようになったようだ。

 

(アプリの内容を見る限り、満開と精霊バリアは使えないみたいね。そこは本来の精霊である義輝じゃないからしょうがないわね)

 

 それでも再び勇者としての力を手にしたのだ。ならば、やる事は1つだ。

 

「さあさあここからが大見せ場」

 

 男に背を向けながら、夏凜は自分を鼓舞するように仰々しいセリフを叫ぶ。

 

「太古の神の力さえも、及ばぬ今は世紀末。勇者を目覚めさせる時、その名は讃州中学2年勇者部所属。三好夏凛だあぁ!」

 

 夏凜の魂の叫びと共にスマホが輝いたかと思うと、夏凜は再び勇者の姿に変身していたのだった。

 




サブタイトルは夏凜の勇者花の花言葉
元々は夏凜の勇者復活回だったのはそのままだったけど、異世界からあしゅらマジンガー登場→
ならカイザーとZEROも来れるはずよね→そこら辺の理由付けした方がいいよね。とピタゴラスイッチ状態に。その影響で某機体の登場フラグもたちましたが。
作中では登場自体させない事でバッサリとカットしていますが、ベガルーダの力に関しては敵側に囚われていたゆいの方の力は残っていて、まいの方はアーガマに回収されたため、直接ベガルーダを実体化させる事は出来ないという裏設定です。
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