結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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秋原雪花の章ー7「悲しくそして美しい」

 

 戦闘音を頼りに夏凜が近づくと、そこにはボロボロの2人がいた。

 

「雀! 雪花! 大丈夫?」

「夏凜さん。無事に変身出来たんですね……」

「こっちはなんとか」

「夏凜お姉ちゃん……」

「もう大丈夫だからね」

 

 少女を守りながら戦っていたから苦戦していたんだと夏凜は解釈した。

 

「今更勇者が1人増えたところで、おそるるに……」

「あら、避けるの上手いじゃない」

「貴様! 話している最中に攻撃するとは、それでも勇者か」

「ええ! 私こそ完成型勇者よ!」

 

 そういって、あしゅら男爵を夏凜が抑える。当然、遠隔操作されているあしゅらマジンガーも動きが鈍くなる。

 

「これなら」

 

 そう言って、雪花はあしゅらマジンガーに対して全力の一撃を込めた一撃を放った。

 

「くっ」

 

 しかし、腐ってもマジンガー。強度で劣る雪花の槍の方が先に悲鳴をあげた。

 

「雪花お姉ちゃん。大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

 

 少女のいる前で落ち込んでいられない。そうして、気丈な振る舞いをする事で図らずも雪花は心が折れずにすんでいた。

 

「もう1人の勇者では、あしゅらマジンガーの攻略は無理そうだな」

「出来るわよ」

「ほう、その理由は?」

「5年以上も彼女とは一緒にいたからね。いいところも悪いところも大抵は知ってるわよ」

「何言ってるの夏凜さん!? 私達が雪花さんにあってまだ2ヶ月ほどだよ?」

「まだ思い出してないの雀。まぁ、私も思い出したのはついさっきなんだけどね」

 

 勇者の力を取り戻して変身している最中に夏凜はあの世界の事を自然と思い出していた。まるで、初めから覚えていたかのように。

 

「まぁ、雀の記憶は後で思い出させるとして」

「何かトラウマ追加されそうな悪寒」

「あしゅら男爵。あなた、聞いた話だと死んだはずじゃないの?」

 

 雀の発言を無視して夏凜はあしゅら男爵と撃ち合いながら質問する。

 

「異世界のマジンガーがきているのに私がいるのがそこまで不自然か?」

「この世界のマジンガーのスペックを把握している以上、この世界のあしゅらか、この世界のあしゅらに近い世界のあしゅらでしょ」

「存外に察しがいいな。いや先程の話的に、貴様も似たような立場か」

「残念ながらね」

「それならばそれほどの強さなのも納得できる」

 

 あしゅら男爵は疑問を解消しつつ、夏凜の不意を突いて距離を取る。

 

「あしゅらマジンガー、アイアンカッターだ! そこの赤い勇者を切り刻んでやれ!」

 

 そういうと、巨大な拳が夏凜に向かって放たれる

 

「夏凜!」

「夏凜さん!」

「おっと邪魔はさせんぞ! ブレストファイヤーでそこの盾の邪魔をするんだ!」

「くっ」

 

 カバーしに行こうとした雀はブレストファイアーで止められて、アイアンカッターも片方は雪花が抑えるがもう一方が夏凜の方に迫る。

 

(さて、私と戦いながらアイアンカッターを対処できるか?)

「私自身がやるのは初めてだけど、力を貸しなさい! ベガルーダ!」

 

 夏凛はそう宣言すると、今までの赤い服装から、背中に翼が生えた青い鎧の服装に見た目が変化していた!

 

「ベガホーク! ベガシールド!」

 

 夏凛がそう叫ぶと両手に斧と盾が出現した。すかさず、斧の方はあしゅら男爵の方に投げて牽制。そして、アイアンカッターも拳部分を盾で受け止める。

 

「ベガファイヤー!」

 

 そして、受け止めた盾が両開きになったかと思うと中から火炎放射が起きて、アイアンカッターが吹き飛ばされた。

 

「その姿はいったい……」

「『切り札』という精霊と勇者が一体化する強化形態よ」

 

 切り札。神世紀時代にはオミットされていた機能ではあるが、その方法は神樹様の精霊データバンクにアクセスできなくして、精霊を貸与できなくする事および、自分の精霊では切り札化出来ないようにする事で間接的に封印していた。そもそも切り札とは、精霊と人間の一体化をシステム的に補助しただけであり、システムなしでもお互いの合意があれば切り札化は可能なのだ。

 

「雪花。あなたもできるはずよ!」

 

 自身で試してみて確信を得た夏凜は雪花に対して檄を飛ばす。実際、自分の世界の雪花は切り札を使用できていた。だからこそ、この世界の雪花もできると確信していた。

 

 

「そんな事を言われても!」

 

 しかし、あの世界とこちらの世界で雪花に覚悟の差があった。そんな時だった

 

「大丈夫だよ。雪花お姉ちゃん」

 

 少女が雪花の方に近づいてくる。

 

「こっちに近づいちゃ危ないよ」

「大丈夫。そっちには私が通させないから」

 

 雪花の忠告に対して雀がマジンガーの攻撃を防ぎながら叫んでいる

 

「私は夏凜さんと違って、その世界の記憶はまだ思い出してないけど、雪花さんがどんだけ頑張っているか知っているから」

「雪花お姉ちゃん」

「なに?」

「痛いの痛いの飛んでいけー」

 

 少女の突然の行動に雪花は戸惑いを隠せなかった。

 

「ママがね。私が泣いている時や泣きそうな時はいつもそうするの。だから私もしてあげるの」

 

 その言葉を聞いて、雪花は不思議と力が沸いた。いや、違った

 

「ありがとうね。もう大丈夫だから」

「そんなおまじないみたいなものでどうにかなったとでもいうのかね」

「おなじない。そうかもね。でも、大切な事を思い出したよ」

 

 信じるというのを難しく考えすぎていたのだ。今のおまじないだって、そうされて実際に痛くないと感じたのだ。信じる事で起きる力や奇跡なんて、眉唾ではなく実際に当時はあったのだ。それを、いつの間にか信じられなくなっていたのだと、少女から雪花は気づかされたのだ。

 

「それに」

 

 雪花はそういって、あしゅらマジンガーをみる。

 

「マジンガーをこれ以上悪魔として暴れているのを、私自身が見たくないから」

 

 そう思うと不思議と雪花は力が沸いてくるのを感じた。

 

「いくよ、コシンプ」

 

 その力を込めてマジンガーに雪花は挑んでいく。超合金Zのボディにその力は何度ぶつかっても届かない。夏凜があしゅら男爵を妨害しているので相手からの反撃は減ってはいるが、それでも来ないわけではない。

 

「力の差は歴然だな。夏凛とやら、雪花を手伝ってやってはどうだ?」

「する必要はないわ」

「見捨てたというわけか」

「雪花ならやれるからにきまってるでしょ。あの子は今まで1人で戦ってきたのよ。なら私達が手を貸すより、1人で戦わせた方が力を出しやすいはずよ」

「どうしようもないのは私が守るから、安心してください」 

「雪花お姉ちゃーん」

 

 みんなの声が聞こえる。そのたびに、自分の力が高まっていくのを感じる。

 

「こんな私でいいの」

『大丈夫。秋原雪花は勇者であるから』

 

 ふと、コシンプからそんな声が聞こえたような気がした。それは秋原雪花が勇者だからではなく、秋原雪花だから勇者だと、秋原雪花自身をコシンプ自身も信じているのだと言っているように聞こえた。

 

「お願いコシンプ! そしてカムイの力! 私に力を貸して!」

 

 その瞬間、雪花の体は紫色に包まれ、夏凜はかつて見たことある切り札使用時の姿に変貌した。

 

「これでー!」

 

 そういって、マジンガーに再度突撃した。腹にぶつかり、少し亀裂が入るが、そこで勢いが一度止まる。

 

「火力は確かに上がったようだが、足りなかったようだ……」

「まだよ!」

 

 そう言って雪花は槍に力を籠める。

 

「私は、秋原雪花は、勇者なんだから―!」

 

 その叫びと共に再加速したかと思うと、雪花は槍と一緒にマジンガーの胴体を貫いていった。元々、あしゅらマジンガーは全身に亀裂が入っていたのもあり、その衝撃で他の部位もばらばらとなり、崩れ落ちていった。

 

「……所詮は敗北した世界のマジンガーか。まぁ、今回はこれで充分だ」

 

 あしゅら男爵はそういうと一瞬で離れていったかと思うと姿を消した。

 

「あ、待ちなさい」

 

 夏凜はそう呼び止めるが、すでに姿は見えなくなっていた。しばらく警戒していたが、問題ないと判断して夏凜は警戒を解いて雪花に話しかけた。

 

「雪花お疲れ様」

「夏凜。ありがとうね」

「ちょ、私には何もないの」

「雀もありがとうね」

「お姉ちゃん達。助けてくれてありがとう」

 

 少女たちの軽快な声があたりに響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 そこから少し離れた場所。そこに、バーテックスの追加の軍勢がきていたのだが、

 

「バーテックス。あんた達から見たら人間同士の醜い争いに見えるかもしれないけどよ。あいつらにとっては必要な事だったんだ」

 

 赤い服を着た謎の少女が大きな刃を突き付けながら言った。

 

「一応、今の私の役割は勇者ではなく監視役だから、ここで引くなら何もしない」

 

 少女はそう警告するが、バーテックスは歩みを止めない。

 

「警告はしたからな」

 

 少女はバーテックスの群れの中に飛び込むのであった。

 




サブタイトルは北海道の道花の花言葉。
あしゅらマジンガー戦終了。大まかな流れは決めていたけど、結構難産な回でした
雪花の章のテーマは「信じる」、雪花が周りも自分も信じられなくなっていたのを
取り戻していく話だと原作から感じていたのでその方向性で行かせてもらいました
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