結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
あの戦いから数日後。私と雀が勇者の力で戦えるのは表向きは秘密のままにしてもらった。あしゅらマジンガーも、どこかが作り出した偽物のマジンガー扱いで、ドクターヘルの事は一部軍人にのみのトップシークレットとかした。
「ここが雪花の家か」
そう言って眺めている家は、無事とはいえなかった。1階の居間があったであろう部分にトラックでもぶつかったのかという大穴が開いていたからだ。おそらく、バーテックスの襲撃による者だろうというのは想像に難くない。
「私自身も久しぶりなんだけどね。いつまでも洞穴掘って逃げる準備するのは、もうやめたから」
そういう雪花の顔は吹っ切れたというか、勇者としての重圧から解放されたような。そんな顔をしていた。
「それじゃあ入りましょうか。2階は比較的無事だからさ」
雪花は自分にも言い聞かせる様に言ってから玄関の扉を開けて、夏凜と雀を連れて自宅に入っていった。
「それで、夏凜。あらためて話したい事って何よ?」
「いくつかあるけど、まずは体の調子はどう?」
「どうって、なんともないけど? 何かあるの?」
「一応、確認ね。切り札って心身共に疲弊が激しいから、精神が不安定になりやすいらしくて」
「でも、それにしては2人ともそこまでですよね?」
雀がそういって2人を見る。
「それに関しては、私なりの結論は出ているんだけどね」
「聞かせてもらおうじゃないの」
「ずばり、精霊との友好度が高いと切り札のデメリットは減ると私は考えているわ。神樹様の中の世界では若葉達も切り札を使っていたけど、基本的に疲弊は少なかったし精神も不安定というほどではなかった」
「あの世界だと、本来は精霊が搭載されてない私達防人にも精霊が宿ってましたからねぇ」
「他に考えられるのは、本来の切り札は神樹様のデータバンクから精霊を借り受けるから、それによるラグが心身に影響を及ぼしてたんじゃないかって」
「でも、まだお互い1回しかしてないし、結論出すのは早くない?」
「そうかもしれないわね。まぁ、こっちは問題ないとして、重要なのはこっちの方よ」
そういうと夏凜は自分のスマホを取り出した。
「ベガルーダって精霊の力でまた勇者に変身できるようになったのよね」
「まぁね。一度変身したらエネルギーが満タンにまで再チャージに最大5時間かかるみたいなのよね。これに関しては雀の変身システムもほぼ同じだったから、置いとくとして」
「それが本題じゃないの?」
「記憶を思い出させた時みたいにあの世界のあなたの所業を語ってもいいんだけど」
「その件はもう結構です」
1時間くらい夏凜があの世界の雀の事を話したら、雀も記憶が戻ったのだった。雀にとっては黒歴史暴露みたいな状態で胃が痛くなってたのは小さい犠牲だ。
「で、当然、向こうのメンバーの電話番号は登録してたわ」
「それはそうなるわよね」
「そもそも今までスマホが壊れていたから、雪花の電話番号を私は登録してない訳じゃない? でもね」
そういって夏凛が見せたスマホの電話帳には雪花を含めた西暦の勇者に赤嶺友奈達やリリ達も含めた電話番号が電話帳に載っていた。
「雀の方はどう?」
「私の方も電話帳戻っているけど、雪花さんのは記憶戻る前から登録していたし、そもそも電波が届かないからなぁ」
バーテックスによる妨害で、長距離の通話は不可能になっている。なので、雀も他の防人と連絡が取れず、別の場所の話になるが東郷達も既存の通信手段を用いたのだ。
「私のは精霊入りの特別性よ。妨害を突破できる可能性があるわ」
「その前に、その電話番号で連絡取れるかどうかが問題じゃない?」
「それなら、簡単よ」
そういって、夏凜は雪花の電話番号に通話をかけると、雪花のスマホが鳴り響く。
「もしもし」
雪花は電話を取ると夏凜のスマホから自分の声が出ているのが聞き取れた。
「これで、検証は完了ね」
夏凜は通話を切りながらそういった。
「もし突破できるとして、何処にかけるの? 勇者部の誰か?」
「それはもう決めてあるわ」
夏凜は待ってましたかのような笑みを浮かべながらその質問に答えた。
「白鳥歌野よ」
「理由は?」
「白鳥歌野は私達の歴史なら9月末になくなっている。で、今は11月。生存確認も兼ねて連絡を取るのが1つ。もう1つは生存してた場合、きっと勇者か防人の誰か関わってるでしょうから、そこからその人物に電話をかける」
「他の人が歴史を変える事に躊躇する可能性は?」
「そんなものより誰かを救うことを優先する奴らよ。私達を含めたみんな」
「なにそれ」
そこで3人に笑いがこみあげていく。
「では、かけさせてもらうわ」
「で、歌野さんに見事繋がって、いろいろ話を聞いた後にあんたにかける事にしたって訳。相変わらず無茶したみたいね」
そして現在、東郷と夏凜の通話となったわけである。
「相変わらずって酷い言い草ね」
「歌野さんからあなた達が何をしたいのかは聞いているわ。こっちもそっちの都合にあわせるわ」
「こっちは移動手段もっているから北海道から四国まで往復することも可能だけど」
「まだいいわよ。まだその時じゃないわ」
バーテックスだけなら、自分達の本来の歴史通りに雪花に北海道を任せる選択肢もなくはないが、あしゅら男爵の存在がいる以上、ドクターヘルやほかの幹部も復活していると考えるのが自然だ。ならば、自分達は北海道に待機して来るべき日までは雪花に協力する事にしたのだった。
「それじゃあ、今回はこっちの生存報告って事で。また連絡するわね」
「その時は風先輩の方にも連絡を。私は沖縄行く可能性があるから」
それは兜博士が沖縄に行くのにダブルスペイザーを使う可能性があるからだが、棗との遭遇を期待しての発言でもあった。
「なるほどね。了解したわ。じゃあね」
そう言って夏凛は電話を切るのであった。
「本当によかったの?」
電話を切った後に雪花は夏凜達にあらためて聞いて来た。
「やるべき事があるのは事実だしね。それに、私自身で見届けたいのよ」
「それに、雪花さんを一人にさせるわけにもいかないもんね」
それは夏凜にとっては一種の希望的観測だ。かつて園子が炎の壁に覆われるまで生き残っていたのなら、神世紀でも生き残っている可能性はあるとは言っていた。本当に北海道はその時まで残っていたのか。それを夏凜は自身の目で確かめたいのだ。
「ありがとうね」
その言葉だけで夏凜達が何をしたいのか察した雪花はお礼を言った。彼女の心が寒くなる事は、二度とない。
サブタイトルはゆゆゆいの雪花のURより
雪花の章終了。雀の記憶復活はあっさりですが、色々真面目な展開も考えてました
でも、それやると雪花の活躍が減るなって事で没プロットにシュートへ
夏凜は精霊(ベガルーダ)の力で変身しているので園子の時のような反動はないです
逆に園子の時の変身方法は精霊を用いてないので、すぐに全開で再変身できます