結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
「はぁ……。聞いての通りよ」
夏凜からの電話を切った後に東郷美森はそう言った。
「あしゅら男爵にあしゅらマジンガー……」
兜甲児は敵にマジンガーを使われたことに何処か思うことはあるようだ。
「切り札を使ってようやくってレベルか。しかし、切り札を使えばマジンガー相手にも勝てると言う事だな」
「そうなるとイチナナ式じゃあ力不足もいいわね。機械獣にても足も出ないんじゃないかしら」
その話を聞いて球子は楽観的に言い、千景もそれに同意する形で言葉をつづけた。
「本当にそうか試してみるか?」
それに対して、兜甲児は不敵な笑みを浮かべながら言った。
「俺がイチナナ式で5人を相手する。そうすればわかるんじゃないか?」
「ちょっと待ってくださ……」
「待たなくていい」
その言葉に対してひなたが考える時間が欲しそうにするが、若葉が遮った。
「あの兜甲児と手合わせできるのだぞ! こんな機会、いつ来るかわからないのに断る理由などないはずだ」
そういう若葉の瞳は、まるで憧れのヒーローと握手出来る時の子供のような表情になっていた。
「あの乃木若葉が意外だな」
「そうでしょうか? 私の中のイメージとは然程離れておられませんが」
楠芽吹の。いや、神世紀の人間の中の乃木若葉は勇者の中の勇者であり、一騎当千の完璧超人だったというイメージが強い。しかし、弥勒は乃木若葉は長所も短所も十二分に知っている。この世界の若葉がマジンガーか兜甲児かは不明だが彼らを強く意識していたのは以前から分かっていたので、特に疑問に感じなかったのだ。
そこから、数日後。兜甲児のイチナナ式と西暦の勇者5人による模擬戦が行われる事となった。
「こうして間近で相対すると大きいなぁ」
球子は目測で20mほどあるイチナナ式を見てそう言った。
「バーテックス相手には私達は勝てているのに、この模擬戦意味があるのかしら?」
それに対して千景は意味もない事だと思いながら戦闘態勢に既に入っている。
「とにかく、お互い全力でがんばればいいんだよ」
「友奈の言うとおりだ。兜博士の胸を借りるつもりで行かせてもらおう」
そして、試合開始の合図がなる。それと同時にイチナナ式は飛びあがり上空から牽制のマシンガンを連射する。
「マシンガン中々厄介だな」
勇者側の唯一の遠距離手段持ちの杏を中心に放たれるそれを球子が守りながら愚痴る。
「でも、防げないほどではないよ」
マシンガンの弾をなぐって撃ち落としながら、友奈は言う
「適当に撃っているようで、私の矢を的確に撃ち落としていますね」
「消耗戦になるだけだし一気に行かせてもらうわ」
千景はそういうと自らの衣装が白装束に変化し、自らも7人になった。切り札『七人御先』を使ったのであった。
「切り札のパワーならひとっとびで、避けろ千景!」
イチナナ式の胸が光ってるのに気づき若葉は千景に警告する。避けれた1人と最初から外す予定であった1人を除いた5人が一気にブレストファイヤーに飲み込まれる。
「どうした。勇者って言ってもこんなもんか。バーテックス特効あるだけで勇者ってのも大したことないなぁ」
「なんだとぉ」
「悔しかったら実力で示してみろよ」
「ああ、示してやるさ。力を貸せ『義経』」
兜甲児の挑発に乗って、若葉は切り札を使用して近づく。対する甲児はマシンガンによる牽制をやめて、いつの間にかブレードに持ち替えていた。
「いい刀を持っているのに、俺ごときの剣捌きでしのがれているようじゃ、せっかくの技術が泣いてるぜ」
体格差もあってか若葉の攻撃はブレードによってしのがれる。
「まだだ!」
そう言って深追いする若葉。
「いや、おしまいだ」
そう言って、ブレードの腹で若葉は叩き落された。立て直そうとするが、ブレストファイヤーの発射準備態勢になっている。これ以上続けるつもりなら、彼は間違いなく撃つだろう。
「若葉ーっ」
気づいたら他の4人とかなり距離を離されてしまっていた。
「完敗……だな」
「これがイチナナ式の本来のスペックだ。話に聞くよりも遙かに強いだろ?」
「ですが、あれは兜博士が操縦したからであって、私達はまだバーテックスに負けてなんか」
「そのいつかが来たら終わりなんだよ」
若葉の発言に対して兜甲児は冷血に返す。
「今回は自分だけの失敗で済んだからまだいい。自分の無茶で誰かを巻き込んでしまったらどうするんだ。その時に自分を責めずにお前はできるのか?」
「うっ……」
「他のみんなもだ。このままでは確実に誰か死ぬ」
そう言いながら、兜甲児は部屋を出て行った。
「じゃあ、私はどうやって戦えばいいんだ……」
そう言いながら崩れ落ちる若葉を、ひなたと4人の勇者はただ見ている事しかできなかった。
サブタイトルは乃木若葉の誕生花のクリの花言葉
イチナナ式との戦いがメインというより、それによる西暦の勇者組の挫折がメインですね
原作では若葉の挫折イベ自体は発生するけど
原作における大量のバーテックスによる不可抗力ではなくて
人間側によって意識的に自覚されられるルートに入った感じです
それにより、若葉だけではなく他の勇者にも課題を突き付けた感じになりました