結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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乃木若葉の章ー10「精神の美」

 

「「「……」」」

 

 暗い。とても暗い暗闇の中。3人の少女が自分を見つめている。忘れもしない。あの日、友達になった子達だ。なったその日に奪われた自分の日常だったものだ。彼女達が何を言っているのか分からない。暗闇のせいで表情も見えない。彼女達は私を貶めているのだろうか? そして、見ているとそこにもう1人現れた。顔も見たことないのに、その4人目が歌野だと本能的に分かった。

 

(待ってくれ。これ以上、私を置いていかないでくれ!)

 

 4人が私から遠のいていく様に見えて、そう声に出そうとしたのに、何故か声にならなかった。そのまま、遠くに行くのを自分は見ている事しかできなかった。

 

「はっ」

 

 若葉が目を覚ますとパジャマが寝汗でぐっしょりとしていた。

 

「また、この悪夢か」

 

 いや、今回は歌野と思われる人物も加わっていた。自分が守れなかった者達をこうして夢で見る事は前からあった。この悪夢を見る日は、自分が不調であるという証拠でもある。

 

「兜博士は、もう沖縄に行ったか」

 

 今回の不調の要因である兜博士は東郷美森のダブルスペイザーで沖縄にいる謎のマジンガーの調査に向かったので、もう四国にはいない。で、彼女と一緒に来た園子の方はというと、

 

「ははははは。エターナルフォース郡よ。ダークネス園子とデスクィーン千景の2人がかりに叶うとでも思っておるのかぁ」

「流石は私の心の闇、デスクィーン千景。だけど私はプリンセス友奈がいる限り負けたりしない」

 

 集合場所である教室に入ると何故か園子が千景と台本を持って朗読劇をやっていた。

 

「何をやっているんだ? 特に千景」

「園子さんに勧められて、1人複役で演劇の真似事をしていたところよ」

「それに何の意味があるというんだ」

「あ、乃木さん。私の切り札は7人になるの。で、分裂している時に深く考えた事はないけど1人の脳で7人分を動かすには限界があるはずよね」

「そこは脳も分裂しているんじゃないのか?」

「私もあの戦いがなければそう思っていたけどね。ブレストファイヤーで倒された時には、全員同じ行動しかできなかったわ。だから、今度は似たような状況で負けない為に出来る訓練はするつもりよ」

 

 そういって園子と訓練を続ける

 

「千景の奴も真面目だよなぁ」

「たしかにな……。そういえば、ひなたはまだ来てないのか?」

「ひなタンなら巫女さん達の祭り事でしばらく来れないって」

 

 若葉の問いに対して園子から返信が来た。

 

「そ、そうか……」

 

 なんだか、ひなたが遠いところに行ったように感じてしまった。

 

「ちょっと、空気変えてくる」

 

 そう言って若葉は教室から出て行った。

 

 

 

 

「それでここに来たと」

 

 訓練所に来ると防人達が訓練に使用していた。

 

「模擬戦は見れなかったが勝敗は聞いている」

「だから鍛えなおしに来た。他に思い付かないからな」

「なら、私と立ち会いましょう?」

 

 若葉の言葉に対して芽吹はそう提案する。

 

「前にやった時に、実力差は然程ないのはわかっている筈だから、お互いにいい訓練になるはずよ」

「面白い」

 

 若葉はそう言って手を取った。それから数十分後、

 

「くっ」

「これは予想外」

「ですわね。まさかここまで」

 

 全開の模擬戦の事もあってか、今回もいい勝負になると思ってた。だけど、

 

「ここまで若葉さんが勝てないなんて」

 

 あの時の模擬戦より精神的な影響か若葉の動きが悪くなっているところはある。だがそれ以上に、以前にも感じた違和感を何度も相対する度に大きく感じていた。

 

「若葉さん。あなた自身も勝てない理由はわかっているようね?」

 

 芽吹が若葉に手を伸ばしながら言った。

 

「あなたは、何のために戦っていたのかしら?」

 

「私は、バーテックスに大切な物を奪われた。そんな奴らに報いを与える事が行動原理だった。行動原理だと思っていた」

 

 芽吹に誘導されるかの如く、若葉は自分の思いのたけを話し始めた。

 

「だが最近は、それではダメだって。そのままではいけないと周りが諭してくるんだ。では、私は何を支えに奴らと戦えばいいのだ? あの子達や歌野の時みたいに、自分が何もできず奪われるのは、もう嫌なんだ」

 

 それが乃木若葉の本音であった。復讐心というのは自分の心の表層でしかなく、自分でも気づいていなかった部分は、もう誰も失いたくない。ただ、それだけだったのだ。それ故のすれ違いも多かったが故の神世紀側の世界での悲劇につながるわけだが。

 

「私もそうだった」

 

 それに対して、芽吹も自分の事を話し始めた。

 

「防人の大半はな。勇者になれなかった勇者候補生なんだ」

「それは何となく気づいていた」

 

 彼女達が異世界から来たという話を聞いて、防人自体が異世界で設立された組織だったというのは想像に難くなかった。

 

「私は夏凜と、東郷さんの電話にかけて来た勇者と、勇者選抜の最終候補にまで残った。そして、選ばれなかった」

「あの時の芽吹さんの荒れ様は未だに覚えておりますわ」

「今となってはいい思い出だがな。だから、防人発足当時は、防人という組織自体を快く思っていなかった」

「全然そうは見えないのだがな」

「今はむしろ防人であることに誇りを持てる事になったからだ。何処であろうと、何があろうと、私が楠芽吹である事に変わりはないのだからな」

「私は、君達みたいになれるだろうか?」

「なれる。ほら」

 

 そう言って芽吹は訓練所の入り口に指をさした。すると、若葉の様子を心配したのか杏が様子を見に来ていたのだった。

 

「どうしたのだ杏?」

「気分転換にでしたら、いい場所を知っていますのでついてきてくれませんか?」

 

 杏の言葉に対して戸惑いながらも手に取る若葉を見て、防人達は安心する。

 

「若葉さんはこれで大丈夫だな」

「ええ、きっと若葉さんならば」

 

 その言葉の通り、杏に連れられた場所でまた何物にも代え難い経験をして、若葉の精神は成長するのであった。

 




サブタイトルは楠芽吹の誕生花の花言葉
今話最後の終わり方に関しては、続きは原作でって感じの終わらせ方ですね
若葉の本音に関してはマイ解釈です。実は誰よりも失うのを恐れてたが故に
最終的に何も守れなかった存在。それがマイ解釈の原作の乃木若葉の顛末です
もちろん、その未来にたどり着かせないために神世紀組は色々やっている訳ですが
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