結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

37 / 57
乃木若葉の章14話「変わらない愛らしさ」

 

「ああっ。ま~け~た~」

「流石です。郡様」

 

 西暦勇者一行は温泉から上がった後、小規模なゲーム大会が開催されたが、球子は千景に速攻で倒されることになった。

 

「携帯ゲームばっかりやっているから、こっちなら大丈夫と思ったんだけどなぁ」

「確かにいつもやっているのよりは慣れてはいないけど、だからと言って苦手とは一言も言ってないわよ」

「そうだけどさぁ」

 

 とはいえ、球子もここで空気を悪くして迷惑かけたくない気持ちもあったもか

 

「ちょっと気分変えてくる」

 

 そういって球子はバルコニーに出て夜空を眺めることにした。

 

「綺麗な夜空だなぁ」

「本当。キレイよねぇ……」

「真鈴か」

「球子も大人になったわねぇ」

「その言い方は卑怯だぞ真鈴」

 

 真鈴はそう言って笑顔でこたえた後、しんみりとした顔になって言葉を発した。

 

「ごめんなさいね」

「? いきなり謝ってどうしたんだ真鈴?」

「私は球子と杏ちゃんの巫女なのに、まともに会えてなかったじゃない。それで心配させてたって話を聞いてね」

 

 球子はひなたに真鈴の事を聞いたのが今回の再会にきっかけになったのだと、それで気づいた。

 

「なんだよ。そんなことかぁ」

「なんだってなんだよ」

「確かに、少しタマらしくない所はあったかもしれない。でもタマは大丈夫。タマは勇者だからな」

 

 球子は胸を張りながら高らかにそう言った。

 

「それに、タマも自分から真鈴に少し会いにくかったのもあるからな」

「勇者として忙しかったんでしょ?」

「忙しくなかったかというとそうでもないけど、会えないほどじゃない」

 

 そう言いながら球子は再び夜空を見上げた。

 

「真鈴は空は好きか?」

「え?」

「タマは空が大好きだ。特に山のテッペンから見る絶景とか最高だと思っている」

 

 球子は夜空を見上げながら、静かに。でも力強く言った。

 

「でも、今の状況で声を出して言えないのもわかっている」

 

 天空恐怖症。バーテックスの襲来により発生した精神病の一種である。その発言を聞いて真鈴も理解した。真鈴の弟もまた、天空恐怖症を患っていたからだ。

 

「そんな事を気にする必要はないのに」

「な、タマだって、繊細な時は繊細なんだぞ!」

「知ってるよ」

 

 そうしてみせた真鈴の笑顔は、巫女としてではなく姉みたいな存在としての笑顔に球子は感じた。

 

「出雲神社での若葉を見た時に思ったんだ。タマにとって杏は1番だけど、それは杏の、そしてタマ自身の成長を阻害してるんじゃないのかって」

 

 いつになく真剣な球子の言葉に真鈴は静かに耳を傾ける。

 

「それで、タマなりに杏以外のタマの大事なものを色々考えて見てタマが出した結論は」

「空。というわけか」

「タマ自身もちゃんと考えるまで気づいてなかった。何で真鈴に会いにくかったのかって」

 

 恥ずかしいのかそれとも後ろめたいのか分からない、今となってはわからない。

 

「気づいた以上、タマは決めた。タマが空を取り戻すんだって。空がいいモノだって心置きなくまた言えるようにするんだって」

「そうね。球子らしい願いだと思うわ」

「真鈴もそう言ってくれるか。なら安心だな」

 

 そういって2人はお互いに談笑を続けるのであった。

 

 

 

 

 

「タマっち先輩。そんな事を考えていたんですね」

 

 そして、その2人の会話を盗み聞きしている人たちがそこにはいた。

 

「空を取り戻すか。私には多分出せなかった答えだろうな」

 

 その言葉に対して若葉は感心するように首をうならせていた。

 

「土居さん」

 

 今の話の内容を聞いて千景は土居球子の評価を改める事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

「デュークさん。いつもセンキューです」

「宇宙空間での生活には一日の長があるからね」

 

 一方、宇宙では白鳥歌野とデュークフリードが地球の公転軌道にスペイザーをのせて宇宙生活を満喫していた。

 

「デュークさんワンクエッションいいですか?」

「どうした?」

「運命は決まっているのとチェンジできる運命があるって言いますが、その違いに関して」

 

 

 

「因果律というのは知っているか?」

「教えてください」

「因が原因で果が結果。律はルールかな? 例を挙げるとすると諏訪への襲撃が因だ。果が君の死亡っていうのが本来の流れだったんだろう」

「それをあの子達が間に介入したことで因果がチェンジしたと?」

「そうだね。実際のところ、因果とはいうけど、因の方はともかく果まで決まっている運命は創作物でも少ない。だけどね」

 

 そういってデュークは歌野自身が気づけるように言う。

 

「彼女達は自分達がしている矛盾に気づいていない。未来どころか前提条件が変わっているのに彼女達は彼女達の過去の記録に沿った未来が来ると信じている矛盾にね」

「オーケー。言いたい事はアンダースタンドできたわ」

 

 白鳥歌野はデュークの言いたい事に気づき、把握した。 

 

「つまり、件のバーテックスは彼女達の予測より早く来る。そうシンキングしているんでしょ?」

 

 デュークはそれが正解だというような表情を見せたのだった。

 




サブタイトルは土居球子の勇者花の花言葉
因果律についてはマイ解釈です。勇者も一番年上の風も高1相当なので
大人視点で見るとまだまだ詰めが甘い方が自然かなって
土居球子と真鈴の会話は、球子の性格なら真鈴に会おうと思ったら会いに行くよなって
脳内解釈から、なぜ会いに行かなかった理由を膨らませたのが今回の話です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。