結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM   作:朔月新

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乃木若葉の章ー18「悲しき思い出」

 

「そうか。タマのやってたことは道化だったんだな……」

 

 あの会議の後、若葉が球子に会議の内容を話した時の反応に、いつもの球子らしさがなかった。

 

「道化ってそんな訳が」

「だってそうだろ! タマ自身どころか杏も守れず、それどころか友奈にも自分が大怪我させるような力を使わせて、弥勒達がいなかったらそうなってたって、タマ自身がわかってる。叶いもしない夢を本気で言ってたタマのどこが道化じゃないっていうんだよ!」

 

 その心からの叫びに若葉は答えられなかった。

 

「それに、タマはもう戦えない」

 

 先程の戦いで神屋楯比売は半壊してしまった。大社によって修復手段は模索されているが、現状は芳しくなかった。戦う手段が存在しない以上、球子が戦場に戻れる可能性はかなり低い。

 

「杏の事はタマが一緒にいるから安心してほしい。タマはもう無理なんだ……」

 

 そんな球子の姿に、若葉は無力感を噛み締めていた。

 

 

 

 

 

「弥勒さん。何も自宅にまでついてこなくても……」

「そうはいきませんわ。それに千景さんは1人にしたくありませんですし」

 

 一方その頃、千景は自宅に帰還する事になったが、何故か弥勒さんが一緒について来ていた。

 

「それはあなたの世界の私の影響?」

「そうなりますわね。千景さんにはご迷惑をおかけしていると思いますが」

 

 そう一言いってから弥勒は千景についてきた理由を述べた。

 

「正直な事を言いますと、最後の懸念事項ですからね。球子さんと伊代島さんは救えましたし、高嶋さんも酒吞童子を使わなかったので私達の世界の死因からは外れました。若葉さんはバーテックスとの戦いでは命を落としておりません。ですが」

「つまり私だけまだあなた達の世界での死の運命のレールから外れてない。そのための護衛ってところかしら」

「護衛っていうほどではありませんが」

 

 自分達の世界で郡千景の存在が抹消されているなど、口が裂けても言えるわけがなかった。原因が分からないからこその同行していつでも対処できるようにするしか対策が思いつかなったのである。そうこうしているうちに千景の自宅についたようだ。

 

「ただいま」

 

 千景が帰宅の挨拶をするが返事はない。

 

「お仕事中でしょうか?」

「いいえ。今のお父さんが自宅から離れてる事はあり得ないわ」

 

 千景がそう言いつつ、千景の母が寝ている部屋に行くとやつれた顔の彼女の父がいた。

 

「ああ、千景か」

「お邪魔します」

「彼女は誰だ?」

「彼女は弥勒弓海子さん。大社での協力者の1人よ」

「ああ、大社か……」

 

 千景がそう説明すると彼は幻滅する目をしたように感じた。

 

「一体、何があったというのですか?」

「何があった? よくも白々しく言えるな」

 

 そういって彼が見せてきたものは衝撃の物だった。千景の事をけなすような紙が大量にあったのだ。

 

「え、なんですのこれ……」

「勇者がイチナナ式に負けたという話が出てからこういった嫌がらせが増えてきた」

 

 実際、兜甲児に対して勇者5人は敗北したのは事実だ。それでこんな嫌がらせが起きるなんて弥勒としては予想外過ぎる出来事だった。

 

「トドメは勇者の2人が入院したらしいじゃないか。バーテックスに勝てない勇者に何の価値があるというんだ?」

「そんな。私達は一生懸命に……」

「一生懸命とかどうでもいいんだよ! お前がバーテックスに勝てないのがいけないんだ! そうだ全部お前達のせいだ! クズめ!」

「あなた! 実の娘になんてことを言いますの!」

 

 弥勒は千景の父親に対して抗議するが、千景は顔色が真っ青になりながらもばらまかれた紙の中に見つけてしまった。自分だけでなく他の勇者をけなす事を書かれた紙があるのを。

 

「っ……!」

 

 千景はその内容に耐え切れず口を押えながら部屋を、いや家を飛び出していった。

 

「千景さん!」

「待て話が途中だぞ」

「ここで娘を心配できないあなたに引き止める資格はございませんわ」

 

 こうなっても娘の心配をしない彼女の父親に弥勒は見切りをつけつつ、飛び出していった千景を追いかけるのだった。

 

「はぁはぁ……」

 

 無我夢中で飛び出していった千景はしばらくして息を切らせながら立ち止まった。

 

「どうしてなの……」

「人間って醜いモノだろう?」

 

 そんな千景に話しかけてくる存在がいた。

 

「いきなり見ず知らずの人に……」

「千景さん。だいじょうぶですか? この人は一体?」

 

 千景は拒絶の意志を示そうとしたが、声をかけてきた人物を見て言葉が詰まった。

 

「あしゅら男爵」

「いかにも。これから、面白い余興が始まるから付き合ってもらえるかな?」

「北海道で私達の仲間を襲った貴方に付き合えですって? ふざけないでくださいまし」

 

 気落ちしているだろう千景の代わりに弥勒が間に入って邪魔をする。

 

「お前の方には聞いてないんだがな。まぁ、余興をするのは私ではない」

 

 そう言って、空に指さすとそこに巨大スクリーンの様になって謎の人物が映し出された。

 

「皆の者、久しいな。我はドクターヘルじゃ」

「あれがドクターヘル……」

 

 見た目はただのひげが生えた老人がそこにいた。

 

「久々にこの世に戻ってきたら、何やらバーテックスとやらにてこずっているようではないか」

 

 それはある意味こちらに対する挑発であった。

 

「お前たちにとっては厄介な相手でも我の手にかかれば」

 

 そう言って別アングルのカメラになった。そこにはとても巨大なマジンガーが映し出されていた。そして、そのマジンガーから放たれるブレストファイヤー系の一撃でバーテックスが蒸発した。

 

「このように今の我が新たに手にしたINFINITYの手にかかればこのような物よ」

 

 しかし、弥勒達にとってはバーテックスを一掃した事よりも気がかりなことがあった。

 

「千景さん。あのINFINITYの頭部に存在しますの。あれって……」

「あれはグレートマジンガー……。確か、あの機体は今はアメリカにあるはず」

 

 頭部にあるグレートマジンガーの存在。それがINFINITYに対する脅威度を増やしたのは間違いではない。

 

「ついでにこいつらが敷いている通信妨害を解除してやったぞ」

 

 その発言を聞いて、ドクターヘルの凄さと恐ろしさが深まる。

 

「1週間。1週間待ってやろう。我の軍門にくだるか否か。我らにとってもバーテックスは邪魔な存在である事には変わらないからな」

 

 ドクターヘルは不敵な笑みを浮かべながらそう宣言した。

 

「さぁ、精々考えるのだな」

 

 ドクターヘルは最後にそう言うと、空に展開されていた映像が消えるのであった。

 

「ドクターヘル様の偉大さが分かった所で、お前たちはどうする?」

「どうするって、どういうことです?」

「決まっておろう。ドクターヘルの下につくか否かだ」

「そんなのつかないに決まってますわ」

「世界が滅亡したら世界征服しても意味はない。そういう意味では今は味方になれると思うが?」

「先ほども言いましたが、仲間を襲ってから言われても私には受け入れるつもりはありませんわ」

「ふむ。じゃあ、もう1人の方はどうかな?」

 

 弥勒の方は鋼の意志で拒否するため、千景の方にあしゅらは矛先をむける。

 

「千景さん」

「弥勒さん。私はドクターヘルのところに行くわ」

「嘘ですよね」

「今の現状が見えてないのは弥勒さんでしょ!」

 

「土居さんと伊代島さんは今は戦えなくて、高嶋さんは四国にいなくて、乃木さんも先程の戦いで切り札で対抗するのも厳しくなってきているのよ!」

「白鳥さんもいます。私達もいます」

「あなた達も私達と同じくらいだったじゃない! それに」

 

 そこには、諦めや悲しみの表情をした彼女の姿があった。

 

「それに、私なら何やってもこれ以上嫌われようがないでしょうから」

 

 先程の出来事を見た直後なのもあって、弥勒は少し衝撃を受けるが、すぐ持ち直して千景に言うのだった。

 

「1つだけ言わせてください。私達は千景さんの事を待ってますから」

 

 その言葉に対して、千景は何も答えなかった。

 

「決まったようだな」

「はい」

 

 そして、千景はあしゅら男爵に連れられて行った。四国の勇者と呼ばれた5人はこの時をもって崩壊したのであった。

 




サブタイトルは郡千景の勇者花の花言葉
郡千景の離脱回ですね。原作エピソードで精神的ダメージ受けている所に
悪魔の囁きがきたらこうなるかなって。
ちなみに、神樹様的にはバーテックスを倒すための行動なのでセーフ判定です
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