結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
「……と、いう事がありましたわ」
その後、大社に戻った弥勒は先程の出来事を伝えた。
「何故、千景を無理矢理にでも止めなかったんだ!」
「止めれる表情ではありませんでしたわ」
「それに、千景さんがドクターヘル側にいったのは悪い手ではない」
そこに、人によっては聞き捨てならない台詞を発した者がいた。
「デュークさんだったな。それはどういう意味だ?」
「バーテックスとドクターヘル。同時に相手にする事になった場合、君達は勝てるのか?」
「でも樹海の中ならドクターヘルでも……」
「あのドクターヘルだぞ?」
その言葉には説明しようのない説得力があった。実際、バーテックスによって敷かれていた通信妨害がなくなっていた。間違いなく何をしでかしても不思議ではないのがドクターヘルという存在なのだ。
「千景さんの言っていた事は事実だ。INFINITYにもバーテックスにも今の俺達には勝ち筋が見えない」
「でもグレートマジンガーが人質に」
「INFINITYの頭部あったグレートマジンガーですが、アメリカに確認を取った所、剣鉄也およびグレートマジンガーは健在でした。なので、世界的には贋作だと思われていますね」
グレートマジンガーの件について若葉が口に出すと、ひなたの方からその件に関しての仔細が語られた。
「だけど、にぼっしー……三好夏凜の話から、私達は贋作じゃない可能性を知っている」
ゴラーゴンにとかいうものよって別の世界から持ってこられたマジンガーZであるあしゅらマジンガー。その前例があった事をここにいる者達は知っている。
「あしゅらマジンガーと同じく、平行世界で鹵獲されたグレートマジンガー。でいいのか?」
「その可能性が高い想定でこちらは動いております」
「厄介だな」
「そうですね。バーテックスの通信妨害の解除。これがドクターヘルに味方する層を増やしているのもあります」
「10年前の事やその前の配下の襲撃を考えると彼が人間の味方だとは思えないが、それを知らない人達からすると、味方にしか見えないか」
そんな状況の為、ドクターヘルに対してこちらから動く事が出来ないでいる事が、みんなとてつもなくもどかしかった。
「土居様。いらっしゃいますか」
病院付属の宿泊施設に安芸先生は訪れた。土居球子はそこにいた。
「安芸先生。だったか?」
「はい」
「先生もタマの説得をしに来たのか? それは神官としてか?」
「説得かどうかは土居さんが決めてください。ですが、来た理由は神官としてではないですね」
「タマは説得になんか応じるつもりなんか……」
「私は、今でこそ防人の担当ですが、かつて3人の勇者を受け持っておりました」
球子の発言を聞き流して安芸先生は自分の事を話し始めました。
「私は当時、私にできうる事はしたつもりでした。ですが、それでも力不足でした」
安芸先生は表情は変えずに、しかし後悔の念が乗っているような声色だった。
「それにより勇者を、大事な生徒を私は1人失うことになりました」
その言葉は球子には衝撃だった。
「それは、どんな奴だったんだ?」
「いつも遅刻して世話のかかる生徒でしたね。ですが、遅刻する理由がいつも誰かを助ける為という子でした」
「そうか……」
きっと出会えたなら球子は仲良くなれたであろう。
「勇者として誰かを救いたいという気持ちは私達の世界の勇者も相応にあるけど、あの2人にとってはきっと違うのでしょうね。もう2度と失いたくない。そういう気持ちが傍目からも見えてくるから」
その言葉で、球子にも安芸先生が担当した2人の勇者というのがなんとなくわかった。
「なあ安芸先生。タマは勇者として戦った方がいいのか?」
「それは土居さんが決める事です」
神官としてならば肯定一択だ。だが、それで安芸先生は何度も失敗して勇者に重荷を背負わせてしまった。今、あの2人から許されているのが不思議なくらいに。
「ただ、やめるにしても進むにしても自分で決めた事に後悔はしないでください。あなた達の未来は、まだこれからなのですから」
そう言って安芸先生は土居球子のいる部屋から退室していった。
「タマ自身が決める事か。真鈴もおんなじことを言うだろうなぁ」
何故だか知らないが、その台詞の時の安芸先生から、球子は真鈴の雰囲気を感じたのであった。
サブタイトルは三ノ輪銀の誕生花の花言葉
基本的にはインターミッション回。原作と違い鉄也さんが無事なのは
量産型グレートを持ってこれるならそっちの方が不安要素ない事に加え
ヘル側もバーテックスに対する対策に時間を取られていたのが要因ですね