結城友奈は勇者である 花結いのINFINITISM 作:朔月新
千景がゴラーゴンの光に包まれたのと同時刻。
「球子ちゃん。おはようございます!」
「うん、おはよう?」
そう言って土居球子は返事を返したが、意識がはっきりすると、刀を腰に差した見た事もない服を着た少女が目の前にいた。場所も古ぼけた神社みたいな場所だ。
「貴様は誰だ? ここはどこなんだ?」
「私、私は○○○○○。ここは夢の中だよ」
名前が上手く聞き取れなかった。何かが妨害しているのだろうか。
「夢? 夢の中にどうやって入って来た?」
「それに関しては私の方の力とだけ言うね。球子ちゃんの世界と私の世界は別世界だからね。きっかけがないとこうして会話は無理だけどね」
「きっかけ?」
「うん。この世界は今、異世界と繋がりやすくなっているの。だから夢の中とはいえ私から声をかける事ができたわけ」
「でもタマは君のことを知らないぞ?」
「私は知っているの。あなた達の事も勇者部の事も。そして、あなたが私の知っている球子ちゃんとは別の球子ちゃんな事も」
それは当時の事を懐かしんでいる様子であった。
「それじゃあ、どうして?」
「別人だと頭では分かっていても、友達が泣いてるって知ったら助けにいきたくならない?」
そういって、目の前の人物は満面の笑みを浮かべた。
「でも、今のタマには若葉達の力が……」
「若葉ちゃん達なら、そんな事気にしないと思うけどね……よし」
そういって、目の前の少女は腰に差していた刀を球子の前に突き出してきた。
「この刀を貸してあげる。これも由緒正しき刀だからね。みんなを守り抜くための刀」
「タマはいいけど、大丈夫なのか?」
「間違いなく○○ちゃんは怒るだろうね。でも大丈夫。それは楔でもあるから」
やはり、名前らしき部分は聞こえない。こちらの世界にいない人間の名前は妨害が入るのだろうか? それとは別に球子は気になる事を聞く事にした。
「楔?」
「そう。今はまだそっちの世界に直接いけないけど、やっぱり直接行って助けたいじゃん。だから、必ず助けに行くって約束の楔」
「そっか。楽しみに待ってるよ」
「あと、1つ言伝を頼まれていたけど大丈夫?」
「タマに出来る事ならば」
だが、その伝言に対して球子は驚愕する事になる。
「私の知っている千景ちゃんからこの世界の千景ちゃんへ。『あなたは私じゃないのだから、私の罪を背負う必要はない』だって」
「千景の罪ってどういう事だよ!?」
「私も知らない。それでも、あの千景ちゃんが言うって事は余程の事だと思うから」
そう言いながら、土居球子は夢から覚めるのであった。
「何か変な夢を見た気がする……」
そう球子はつぶやきつつ起き上がろうとすると右手に何か違和感を感じた。目を向けるとそこには刀があった。
「たしか、千鳥……」
何故だか知らないけど、この刀の名前を球子は知っていた。そして自分の力になってくれることも。
「ありがとうな」
夢の中であった謎の人物に御礼を言った。それから少しして、球子の下に呼び出しの電話がかかってくるのであった。
「若葉ちゃん。それ本当?」
「ああ。千景がグレートマジンガーらしき巨大ロボットを複数連れて高地にいるのを確認した。東郷達の方には風さんに連絡を入れてもらっている。友奈も戻れるなら戻って手を貸してほしい」
「わかった。出来る限りすぐに」
「千景を説得できる可能性が高いのは友奈だと思っているから。それじゃあ」
そういって乃木若葉からの通話が途絶えた。どうやら、千景ちゃんが何かをやらかそうとしているから助けてほしいという声だった。
「そういう訳で四国に戻らさせていただきます」
「戻らされてって、友奈。君は奈良の勇者なのだよ。むしろ、四国は戦力過剰ではないかって話をしている者もいる。君を行かせる理由がこちらにはないのだよ」
友奈がそう言うと奈良大社の神官に止められた。
「そもそも、その友人とやらを助ける必要はあるのかね?」
「勇者とはバーテックスを倒すだけをしていればいい。友情ごっこは必要ないのでは?」
神官の中には友奈の事を全く考えていない言葉も飛び交った。
「……失礼します」
友奈は勝手に飛び出そうとも思ったが、出来なかった。自分が奈良の勇者である事も事実で、友達の為と奈良の人々の為のどちらを取るかを選ぶことが出来なかったからだ。
「私って弱いなぁ」
巨大バーテックスに敗北して、そして奈良に帰還命令で、今は軟禁生活。四国にいた時みたいに用がない時には自由に外を出歩くなんて時間は奈良ではない。むしろ、バーテックスに対する重要戦力という意味では四国の状況が例外だったのかもしれない。
「ぐんちゃん……」
若葉ちゃんからの連絡でぐんちゃんが大変なことになろうとしていると聞いていて、それを止められない事に何故だか胸が締め付けられる。
「……」
それから数時間悩んで、友奈は動くことにした。
「奈良のみんな。ごめん」
「高嶋友奈。高嶋友奈が脱走しました。今、四国方面に向かって爆走中」
高嶋友奈は
「全力で止めろ! イチナナ式も導入するんだ!」
そう言って、イチナナ式を高嶋友奈に差し向ける。
「遅い!」
イチナナ式は高嶋友奈をとらえる事が出来ずにいた。兜博士との1戦だけだが、イチナナ式との戦いを経験したことで、どう対処すればいいのかを無意識に構築が終わっていた。そして、兜博士と一般兵の認識と技量の差がここにあった。兜博士はマシンガンの弾丸を当たってもいい。当たっても防げるくらいでないといけないという考えて使用していたが、一般兵は人間サイズ相手に撃つのにためらいがあり、それで狙いがまばらで避けるのも容易かった。故に友奈はイチナナ式の懐に苦も無く潜り込むと
「勇者、パーンチ!」
勇者の必殺技でイチナナ式を行動不能にする。
「すみません。私にはいかないといけない場所があるんです」
「そんな、こんなことしてまで行かないといけない場所なの?」
いつの間に追いついたのか、後ろを振り返ると巫女代理である烏丸久美子と本来の巫女である横手茉莉がそこにいた。
「何でゆうちゃんが戦わないといけないの?」
「茉莉さん……」
「他の勇者もそう。まだみんな中学生くらいじゃない! なんでそんな年齢の少女に戦わせて皆平気なの? おかしいよ普通じゃないよ」
普通の生活。それが茉莉さんが求めたものだ。だから普段は烏丸久美子が巫女代理をしているのである。
「ねぇ、茉莉さん。クリスマスの用事ってなんだったのですか?」
あの時、茉莉さんだけ用事があってこれないと言っていた。
「……行きたくなかったんです。普通じゃない人と同じ場所に行きたくなかったんです」
「そう」
それを聞いて、高嶋友奈の中で決心がついた。
「それじゃあ茉莉さんの意見には私は従いません」
「何でですか? どう見ても普通じゃ「あなたの普通を私に押し付けないでください!」」
茉莉の言葉を遮るように高嶋友奈は言った。
「ぐんちゃんも若葉ちゃんも、タマちゃんもアンちゃんもヒナちゃんも。戦いのない時には普通の女の子だったよ。喜んで苦しんで笑って泣いて。みんなみんな」
若葉ちゃんが友人を失った事を引きずっていた事も、タマちゃんが大切な者を失いかけて落ち込んでいるのも、そして今、ぐんちゃんが大変になっているのも彼女が普通の人間だからこそだ。勇者になれるけど、それ以外は私達は決して特別ではない。何処にでもいる普通の女の子だと高嶋友奈は思っている。
「だから、彼女達を知ろうともしないで彼女達を批判するのは私は絶対に許さないから」
その時の表情は普段の彼女からは見られない鬼神のような雰囲気が現れていた。
「そして、私は私の普通を取り戻しに行く。それで勇者にもう慣れなくなってもいい。私は大切な友人を助けたい。そういった普通の、当たり前の想いで向かうだけだから」
「お前の負けだな横手」
「久美子さん?」
「乗ってけよ。大切な友達を助ける為にも力は温存した方がいいだろ?」
「……はい!」
そうして、友奈も千景の下に向かうのであった。
サブタイトルは土居球子と会話してた子の誕生花の花言葉です
ゆゆゆいでコラボしてたわけなので隠すほどではないですが
(むしろコラボしていたから出す場面を考えていたわけで)
球子の武器がない事に対する自分の回答がこれです
あくまでメインが修復されるまでのレンタルくらいの立ち位置です
球子に剣の心得がそんなにないはずだし(若葉とかがいるのでゼロではない)